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ドカ盛り! 私のアメリカ編
第113話 ご存知ないのですか!?伝説
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きら星はづきちゃんねるの配信は、はづきが寝てしまったので、その寝顔と寝息を楽しむマニアックな配信に様変わりしていた。
※『作業がはかどる』『助かる』『かわいい』『女の子の寝顔を見るなんてサイテーなんですけどはかどる』『起きたらたくさんスパチャしてあげようねえ^^』
流れるコメントの数々がはづきに読まれることは、彼女がアーカイブを見返さない限りない。
だが、リスナーたちはそれでも満足なのだ。
空の旅をぐっすりと眠りながら過ごす、彼らの姫を見守ることが何よりも楽しい。
時間は永遠に続くかと思われた。
だが。
フライト後十二時間経過。
リスナーの顔ぶれが入れ替わり、あるいは寝てから起きてきたリスナーが再び加わり。
また、きら星はづきちゃんねるのコメント欄は盛況になってきている。
ここで誰かが気づいた。
※『あれ? CAさん乗ってたっけ?』『ほんまや。画面の端に映り込んでる』
リスナーの言葉を受けて、Aフォンが動き出す。
使い魔であり、ドローンであるこのスマートフォンは自ら判断して撮影を行うのだ。
※『金髪でボンキュッボンって感じだな』『もう一人は黒人の美女って感じだな』『お前ら冷静だなw』『趣味ではない……』『そうだな……』
リスナーたちの反応は、スンッ……というものである。
彼ら彼女たちが愛でるのは、きら星はづきという愛らしい生き物なのだ。
故に彼らは冷静に状況を見ることができた。
突如出現したCAが英語で何か告げる。
Aフォンが翻訳する。
『ご搭乗の皆様、残念ですが空の旅はここで終わりでぇす』『私たち、色欲のマリリーヌ様からお力を賜ったデーモン、サキュバスがお客様がたを永遠の旅にご案内するからですぅ』
くねくねと豊かな肢体をくねらせながら、CAの二人が告げる。
その背中からコウモリのような翼が生え、尻からは黒く、先端が槍のようになった尻尾が生える。
隣室から兵士たちが飛び込んできた。
「GOGOGOGOGOGOGOGOGO!!」
隊長らしき人物が叫ぶ。
機内で銃弾を放つことは愚かしい行為だ。
機体に穴があけば、内外の気圧差で地獄のような状況が生まれる。
だが、この機体は結界処理が施されていた。
銃弾は結界によって阻まれ、壁に届くことはない。
故に、嵐のような銃撃が行われた。
放たれる弾丸は全て、ロスの教会で聖別された銀混じりのモンスター殺し。
並みのモンスターであればずたずたにするこれを……。
サキュバスたちは平然と受け止めた。
彼女たちの体どころか、衣服に僅かなほつれすら作り出すことができぬまま、銃弾が地面に落ちていく。
『無駄でぇす。信仰なき、力なきお前たちに私たちを傷つけることはできませぇん』『先制攻撃しないと即ゲームオーバーだものねぇ。残念でしたぁ。ゲームオーバーですぅ』
二人が扇情的な動作で体をくねらせ、胸元を開く。
溢れ出すのは、目に見えるほどに濃厚な妖しいフェロモン。
それが機内に充満し、兵士たちにも届いた。
彼らはマスクで防御していたが、この守りをフェロモンが容易に貫通する。
物理的なものではない。
魔法的な力なのだ。
兵士たちが次々膝を突き、倒れていく。
『夢の中で、たぁっぷり搾り取ってあげるぅ』『ほんっと、配信者も兵士も雑魚よねぇ。私たち色欲の使いって無敵ぃ。人間だった頃の私たちを、ふしだらだって否定してたお前たち、見てるぅ?』
得意げに、サキュバスたちは笑った。
なお、彼女たちはセンシティブなため、きら星はづきのAフォンではモザイクが掛かり、翻訳されたセリフにもいちいちピー音が被さっている。
※『なるほどわからん』『クッソ強いデーモンだって事はわかった』『一気に兵士が制圧されたぞ……』『これは普通の配信者じゃ勝てないわけだ』
リスナーたちは絶望するでもなく、妙に冷静だった。
画面の端で聞こえる、はづきのぐうぐうという呑気ないびきのせいだろう。
※『いびきかいてる!』たこやき『立派なものが胸の上に乗ってるからな……』おこのみ『あんま形崩れないのほんとすごい、はー、ありがたやありがたや』『ありがたやー』いももち『はづきちゃんの寝息聞いてたら私も寝てた……。最高のASMR、無限に推せる……』
サキュバスたちは、機内に施された結界を制圧していく。
彼女たちはどこから乗り込んできたのか?
それは、最初からである。
米国の高官はすでに籠絡されており、彼がVIPルームに二人を乗せていた。
外から入り込めない結界でも、内側からなら容易に破壊することができる。
『せっかくジャパンからステイツまでやって来ようというのにざぁんねん』『ここで旅はおしまいねぇ。あ、でも運が良ければ落ちる前にハワイくらいは見えるんじゃない?』
サキュバスたちは軽口を叩き合いながら、勝利を確信していた。
この状況から逆転できた配信者などいない。
そもそも、その配信者とやらはヘソ天状態で爆睡しているではないか。
サキュバスのフェロモンに当てられてなお、平然と寝ている姿は解せないが……。
『あら、後ろの席で一人だけ、個人用の結界で身を守ってる人がいる』『へえ、結構イケメンじゃない。睨んでる睨んでるぅ。ねえ、アタシがいただいちゃっていぃ?』『ダメよ、こういうのは早いものがちなんだからぁ!』
サキュバスは動き出した。
ただ一人の生き残りである男性、斑鳩を狩るために……。
だが。
ここで、爆睡している配信者の少女が、ビクッと動いた。
寝ていると突然ビクッとするあれである。
「あひ~」
間抜けな声が漏れる。
どうやら目覚めたらしい。
サキュバスの二人は少し驚き、振り返った。
寝ていた配信者の少女が、動き始めている。
『起きただけ? もう……驚かせないでよ』『目覚めたところで余裕でしょぉ? 私たちの力は無敵なんだから。誰も、色欲には逆らえないもの……』
サキュバスは余裕を取り戻す。
これまで常勝無敗。
色欲の力は、あらゆる男女を屈服させてきた。
だからこその慢心。
故に気づかない。
起き上がっていくその少女の周りには、すでにサキュバスのフェロモンが存在していないことに。
「お……お腹が……減った……!」
起き上がりなが呟く彼女の周りで、フェロモンは急速に、異なる欲望の色に書き換えられていく。
※『姫の目覚め』『逆転の時間だ!』もんじゃ『なるほど、睡眠と食欲……!! 性欲を上回る最強の欲求を持つ彼女こそ……!』
「あれ? みんな倒れてる? あ、CAさんがいる……。ヤバい、英語話せない……。お、お前らー、ヘルプー」
※たこやき『そのCAさんデーモン。みんなやられて、斑鳩社長ピンチ』
「あ、把握……。参ったなあお腹へってるのに……」
彼女はドリンクホルダーから、ぬるくなったオレンジジュースを取り出してグビッと飲んだ。
「あの、二人とも食べ物を配膳してもらうことは……」
サキュバスたちは笑いながら近づいてくる。
彼女たちは、眼の前の、全く脅威を感じない少女をどう料理してやろうかと、そればかりを考えていた。
「あひー、やっぱり言葉が通じてない! じゃあ仕方ない……。バーチャライズ」
少女の姿が変わる。
ピンクのジャージに、リュックを背負った……なんというかイケてない姿だ。
『なぁに、それ! ギークやナードみたいなカッコじゃなぁい!』
サキュバスたちはこれを見てあざ笑い……その笑いが止まった。
眼の前にいる少女が全くの別物になったことを、ようやく悟ったのだ。
「あ、ゴボウ、ゴボウ……。ひい、リュックが久々な感じがする……。抜けない、抜けない……うわーっ」
すっぽ抜ける、ゴボウ。
それは予知能力を持つサキュバスたちにも、予測できない軌道を取りながら壁に跳ね返り、天井に当たり、床をバウンドして……。
『ウグワーッ!?』
サキュバスの一人に激突。
半身をごっそり粉砕しながら跳ね返り、少女の手の中に戻った。
『な、なに……なんなのこいつ!?』『なんなのよあんた!!』
余裕を失い、叫ぶサキュバス。
ようやく気づいた。
眼の前の少女は、これまで相手をしてきた配信者どもとは全く違う……あまりにも違って形容がし難い、彼女たちのボキャブラリーでは表現できないナニカであるということに。
これを、この反応を待っていた。
きら星はづきチャンネルのコメント欄が、ワーッと盛り上がる。
※おこのみ・その他大勢『ご存知ないのですか!?』
同接数、55万5千。
未だにカウントが上がり続ける。
世界の耳目が、この一戦に集まる。
世界が知る。
この少女のことを。
※『ゴボウ一本で同接三名から成り上がった!』『押せばあひーと可愛く鳴く!』『アクスタ抱きまくらカバー好評発売中の!』『あらゆるモンスターとデーモンの天敵!』『メイド服実装が楽しみな!』『人気急上昇中配信者の!』『現役高校生配信者!』『フッ軽で有名な!』『いてほしい時に必ずやって来てくれる彼女の名は!』
※『きら星はづき!!』
※『作業がはかどる』『助かる』『かわいい』『女の子の寝顔を見るなんてサイテーなんですけどはかどる』『起きたらたくさんスパチャしてあげようねえ^^』
流れるコメントの数々がはづきに読まれることは、彼女がアーカイブを見返さない限りない。
だが、リスナーたちはそれでも満足なのだ。
空の旅をぐっすりと眠りながら過ごす、彼らの姫を見守ることが何よりも楽しい。
時間は永遠に続くかと思われた。
だが。
フライト後十二時間経過。
リスナーの顔ぶれが入れ替わり、あるいは寝てから起きてきたリスナーが再び加わり。
また、きら星はづきちゃんねるのコメント欄は盛況になってきている。
ここで誰かが気づいた。
※『あれ? CAさん乗ってたっけ?』『ほんまや。画面の端に映り込んでる』
リスナーの言葉を受けて、Aフォンが動き出す。
使い魔であり、ドローンであるこのスマートフォンは自ら判断して撮影を行うのだ。
※『金髪でボンキュッボンって感じだな』『もう一人は黒人の美女って感じだな』『お前ら冷静だなw』『趣味ではない……』『そうだな……』
リスナーたちの反応は、スンッ……というものである。
彼ら彼女たちが愛でるのは、きら星はづきという愛らしい生き物なのだ。
故に彼らは冷静に状況を見ることができた。
突如出現したCAが英語で何か告げる。
Aフォンが翻訳する。
『ご搭乗の皆様、残念ですが空の旅はここで終わりでぇす』『私たち、色欲のマリリーヌ様からお力を賜ったデーモン、サキュバスがお客様がたを永遠の旅にご案内するからですぅ』
くねくねと豊かな肢体をくねらせながら、CAの二人が告げる。
その背中からコウモリのような翼が生え、尻からは黒く、先端が槍のようになった尻尾が生える。
隣室から兵士たちが飛び込んできた。
「GOGOGOGOGOGOGOGOGO!!」
隊長らしき人物が叫ぶ。
機内で銃弾を放つことは愚かしい行為だ。
機体に穴があけば、内外の気圧差で地獄のような状況が生まれる。
だが、この機体は結界処理が施されていた。
銃弾は結界によって阻まれ、壁に届くことはない。
故に、嵐のような銃撃が行われた。
放たれる弾丸は全て、ロスの教会で聖別された銀混じりのモンスター殺し。
並みのモンスターであればずたずたにするこれを……。
サキュバスたちは平然と受け止めた。
彼女たちの体どころか、衣服に僅かなほつれすら作り出すことができぬまま、銃弾が地面に落ちていく。
『無駄でぇす。信仰なき、力なきお前たちに私たちを傷つけることはできませぇん』『先制攻撃しないと即ゲームオーバーだものねぇ。残念でしたぁ。ゲームオーバーですぅ』
二人が扇情的な動作で体をくねらせ、胸元を開く。
溢れ出すのは、目に見えるほどに濃厚な妖しいフェロモン。
それが機内に充満し、兵士たちにも届いた。
彼らはマスクで防御していたが、この守りをフェロモンが容易に貫通する。
物理的なものではない。
魔法的な力なのだ。
兵士たちが次々膝を突き、倒れていく。
『夢の中で、たぁっぷり搾り取ってあげるぅ』『ほんっと、配信者も兵士も雑魚よねぇ。私たち色欲の使いって無敵ぃ。人間だった頃の私たちを、ふしだらだって否定してたお前たち、見てるぅ?』
得意げに、サキュバスたちは笑った。
なお、彼女たちはセンシティブなため、きら星はづきのAフォンではモザイクが掛かり、翻訳されたセリフにもいちいちピー音が被さっている。
※『なるほどわからん』『クッソ強いデーモンだって事はわかった』『一気に兵士が制圧されたぞ……』『これは普通の配信者じゃ勝てないわけだ』
リスナーたちは絶望するでもなく、妙に冷静だった。
画面の端で聞こえる、はづきのぐうぐうという呑気ないびきのせいだろう。
※『いびきかいてる!』たこやき『立派なものが胸の上に乗ってるからな……』おこのみ『あんま形崩れないのほんとすごい、はー、ありがたやありがたや』『ありがたやー』いももち『はづきちゃんの寝息聞いてたら私も寝てた……。最高のASMR、無限に推せる……』
サキュバスたちは、機内に施された結界を制圧していく。
彼女たちはどこから乗り込んできたのか?
それは、最初からである。
米国の高官はすでに籠絡されており、彼がVIPルームに二人を乗せていた。
外から入り込めない結界でも、内側からなら容易に破壊することができる。
『せっかくジャパンからステイツまでやって来ようというのにざぁんねん』『ここで旅はおしまいねぇ。あ、でも運が良ければ落ちる前にハワイくらいは見えるんじゃない?』
サキュバスたちは軽口を叩き合いながら、勝利を確信していた。
この状況から逆転できた配信者などいない。
そもそも、その配信者とやらはヘソ天状態で爆睡しているではないか。
サキュバスのフェロモンに当てられてなお、平然と寝ている姿は解せないが……。
『あら、後ろの席で一人だけ、個人用の結界で身を守ってる人がいる』『へえ、結構イケメンじゃない。睨んでる睨んでるぅ。ねえ、アタシがいただいちゃっていぃ?』『ダメよ、こういうのは早いものがちなんだからぁ!』
サキュバスは動き出した。
ただ一人の生き残りである男性、斑鳩を狩るために……。
だが。
ここで、爆睡している配信者の少女が、ビクッと動いた。
寝ていると突然ビクッとするあれである。
「あひ~」
間抜けな声が漏れる。
どうやら目覚めたらしい。
サキュバスの二人は少し驚き、振り返った。
寝ていた配信者の少女が、動き始めている。
『起きただけ? もう……驚かせないでよ』『目覚めたところで余裕でしょぉ? 私たちの力は無敵なんだから。誰も、色欲には逆らえないもの……』
サキュバスは余裕を取り戻す。
これまで常勝無敗。
色欲の力は、あらゆる男女を屈服させてきた。
だからこその慢心。
故に気づかない。
起き上がっていくその少女の周りには、すでにサキュバスのフェロモンが存在していないことに。
「お……お腹が……減った……!」
起き上がりなが呟く彼女の周りで、フェロモンは急速に、異なる欲望の色に書き換えられていく。
※『姫の目覚め』『逆転の時間だ!』もんじゃ『なるほど、睡眠と食欲……!! 性欲を上回る最強の欲求を持つ彼女こそ……!』
「あれ? みんな倒れてる? あ、CAさんがいる……。ヤバい、英語話せない……。お、お前らー、ヘルプー」
※たこやき『そのCAさんデーモン。みんなやられて、斑鳩社長ピンチ』
「あ、把握……。参ったなあお腹へってるのに……」
彼女はドリンクホルダーから、ぬるくなったオレンジジュースを取り出してグビッと飲んだ。
「あの、二人とも食べ物を配膳してもらうことは……」
サキュバスたちは笑いながら近づいてくる。
彼女たちは、眼の前の、全く脅威を感じない少女をどう料理してやろうかと、そればかりを考えていた。
「あひー、やっぱり言葉が通じてない! じゃあ仕方ない……。バーチャライズ」
少女の姿が変わる。
ピンクのジャージに、リュックを背負った……なんというかイケてない姿だ。
『なぁに、それ! ギークやナードみたいなカッコじゃなぁい!』
サキュバスたちはこれを見てあざ笑い……その笑いが止まった。
眼の前にいる少女が全くの別物になったことを、ようやく悟ったのだ。
「あ、ゴボウ、ゴボウ……。ひい、リュックが久々な感じがする……。抜けない、抜けない……うわーっ」
すっぽ抜ける、ゴボウ。
それは予知能力を持つサキュバスたちにも、予測できない軌道を取りながら壁に跳ね返り、天井に当たり、床をバウンドして……。
『ウグワーッ!?』
サキュバスの一人に激突。
半身をごっそり粉砕しながら跳ね返り、少女の手の中に戻った。
『な、なに……なんなのこいつ!?』『なんなのよあんた!!』
余裕を失い、叫ぶサキュバス。
ようやく気づいた。
眼の前の少女は、これまで相手をしてきた配信者どもとは全く違う……あまりにも違って形容がし難い、彼女たちのボキャブラリーでは表現できないナニカであるということに。
これを、この反応を待っていた。
きら星はづきチャンネルのコメント欄が、ワーッと盛り上がる。
※おこのみ・その他大勢『ご存知ないのですか!?』
同接数、55万5千。
未だにカウントが上がり続ける。
世界の耳目が、この一戦に集まる。
世界が知る。
この少女のことを。
※『ゴボウ一本で同接三名から成り上がった!』『押せばあひーと可愛く鳴く!』『アクスタ抱きまくらカバー好評発売中の!』『あらゆるモンスターとデーモンの天敵!』『メイド服実装が楽しみな!』『人気急上昇中配信者の!』『現役高校生配信者!』『フッ軽で有名な!』『いてほしい時に必ずやって来てくれる彼女の名は!』
※『きら星はづき!!』
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