上 下
90 / 517
キラキラ? 私の夏休みラスト編

第90話 訪問、きら星はづきの学校伝説

しおりを挟む
「ねえ! ハヅキの学校が見たいわ!!」

 翌日。
 ホテルから、私の最寄りの駅前までやって来たメイユーがとんでもないことを言い出した。

「ヒェッ、な、なんでですかー」

 駅に呼び出され、朝食の直後でまったりしていた私の頭が一気に覚醒してしまった。

「あの学校、ハヅキが世に知られることになった大きなきっかけでしょう? あそこから世界の配信者は貴女に注目したのよ。そのモニュメントとなる場所を見ておきたいじゃない」

「いやー、ふ、普通の高校なんで面白くないですよ……」

「面白いかどうかは私が決めるわ! あ、ライカはもうすぐ来るから」

「お待たせしました」

「既にいた!!」

「わたくし、小心者なので基本的に時間の30分前には現地にいます。そこでコーヒーを飲んでました」

 駅ナカのコーヒーショップにいたのね委員長……。
 ということで、大物配信者二人を連れて、なぜかうちの高校を見せに行くことになってしまった。

 なんでだー。

 渋々案内を開始する私。
 メイユーは風花委員長との会話もそこそこに、街をきょろきょろ見回すので忙しいらしい。

「古いものがたくさん残っているのね。私のところはもう、新しいビルに建て替わっているわ。古いものがある場所は古いものしかない。だけど、ここは新しいものと古いものが混ざっている……。楽しいわねえ」

 中国の方だと、古いところから発生するダンジョンは妖怪みたいなのがたくさん出て、新しい場所から発生するダンジョンには人間が変じたモンスターが多く出るらしい。
 なので、どの地域で活動するかで配信スタイルが変わってくるんだって。

 もちろん、メイユーは都会派。
 ビルが変化するダンジョンを専門で対応している人だ。

「ハヅキは旧市街担当なんだとばかり思っていたわ。だってそういう配信ばかりなんだもの」

「うちから自転車で行ける範囲で活動してるので……」

 学校が我が家から徒歩圏内なので、通学定期券なんて持ってないのだ。
 貧乏性の私はダンジョン探索のために毎回電車を使うなんてできず、結果的に市内のダンジョンに行くだけになっている。

 すぐ帰れるし、門限もあるからこれでいいのだ……!

「日本はメイユーの言う通り、新しいものと古いものがごちゃごちゃに混ざっていますからね。全部スクラップアンドビルドできる国とはまた違った趣があるんです。散歩が楽しいですよ」

 委員長がなんか達観したことを言った。

「ワビサビね」

 メイユーもなんか分かった風なことを言ってる!

「あー、そ、そですね。そうですねー」

 私はなんか適当にもちゃもちゃ合わせつつ、もごもご言いつつ、二人を連れて坂道を登っていくのだった。

「ここ! ハヅキが自転車で下ってきて、デーモンをジェノサイドしたところよね!」

「表現~っ」

「はづきさんがツッコミに回るのは珍しいですねえ! これは愉快」

「愉快がらないでください!」

 業界の大物は変な人ばかりだ!
 あとに出てくる新人さんたちは大変だなあ……。
 しみじみ思いながら、高校に到着です。

 夏休みだと言うのに、生徒の声が聞こえる。

「今日は学校やってるんだ」

「休みです」

「え? だって声が……。ああ、ブカツ! ブカツね! アニメで見たわ」

 部活動って海外には無いらしい……!

「まあ、私は帰宅部なんですが……」

「奇遇ですね。わたくしもそうでしたよ」

「……でした……?」

「キャラ設定上は風紀委員会現役ですが」

 そんなやり取りをしつつ、入り口で守衛さんに挨拶する。
 人見知りだった私だけど、配信者生活で、ちゃんと人に挨拶したりできるようになったのだ!
 うーん、成長している。

 メイユーと委員長は私の友達ということにして、入校許可をもらった。

「ちゃんと学生証持ち歩いてて偉いですね」

「お父さんが身分証は持ち歩くべきだって言ってるので……!」

「いいお父さんじゃない。でも身バレには気をつけるのよ?」

 そんな会話をしつつ、学校内を練り歩き、私の教室まで案内した。
 特に目新しいものは無いと思うんですが……。
 こんなので観光になる……?

「新鮮……!! アニメで見ていた光景は、実際に歩いてみるとこうなっているのねえ! ちょっと感動だわ……」

 メイユーが目をうるませてる。
 受けてる受けてる!
 なぜだ、わからん……。

「懐かしいですねえ……。わたくしが通っていたころを思い出します」

 学生という設定の委員長が、ポロッとそういう発言を漏らした。
 そして三人で、私の教室からグラウンドを見下ろす。

「あれはクリケット部ですね」

 私が説明すると、メイユーが頷き、委員長が首を傾げた。

「クリケット部ね」

「クリケット部……!? 珍しい……。そう言えばクリケット部全国大会出場!という垂れ幕があったような」

「うちのクリケット部、強豪なんですよ……」

 しばらく、クリケット部の練習を見下ろした。
 それにしても、冷房が切られた校舎内は暑い。

 すぐに外に出て、近くの喫茶店で涼もうという話になった。
 校門から外に出ようとすると、なんか学校の写真を撮ってる人たちが守衛さんに注意されている。

「ああ、聖地だものね。その気持ち、よく分かるわ」

 メイユーが彼らを、なんだか生暖かい感じの目で見守っているのだった。

 何が聖地なのだ……?
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...