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キラキラ? 私の夏休みラスト編

第79話 プール配信企画伝説

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「むむむむむ」

「どうしたのはづきちゃん」

 私が唸っていたら、アイスカフェラテを買ってきたカンナちゃんに心配されてしまった。
 今日はオフ。
 いや、今日もオフ。

 ショートな配信はしてるけど、あんまりがっつりとダンジョンに潜ったりはしてない。
 これは兄の方針なのだ。

『お前の切り抜き動画が多数出回っている。つまり、お前のことをより多くのリスナーが見ているということだ。ここで雑にいつも通りの配信をするのではなく、練り上げた面白い配信をして彼らを取り込んでいくとしよう。計画を立てているから少し待っていろ』

 そういう戦術があるの……!
 なので、ツブヤキックスでフォロワーとプロレスしたりしながら、基本的に配信はショートだけという感じになっている。
 今朝は朝食配信をして、みんなの朝ごはんを聞いた。

 パン派が多かった。
 意外……!

 そこに集まってくるリスナーからも、次のダンジョン配信はいつだって聞かれたりするんだけど……。

「うーん、多分、ボイトレ配信とか水着配信の後だと思う……」と言ったら、

※『水着配信!?!?!?!?!?!?!?!』『はよ! はよ!!』『うーんこれはたまりませんぞぉ』いももち『はづきちゃんの水着! 私もそこに行きたい!』

 とか大盛りあがりになってしまった。

 ついでに、

※おこのみ『絶対に……絶対に予告してくだされ……! わしの命が掛かっておるんじゃあ!!』と懇願するので、お願いを聞くことに。



「……ということでね」

 私の説明を聞いて、カンナちゃんが「うーむ」と唸った。

「水着配信もなかなか難しくてね。一般のプールを使うと、昼だと他のお客さんたちの邪魔になるし。ナイトプールという手もあるけど、はづきちゃん門限があるでしょ」

「はっ、夜七時です」

「だよねえ」

 門限は、いつもはなんでも許してくれる父が唯一譲らないところだ。
 なので、私のダンジョン配信も必ず夜七時には家に到着するように行われている。

「ボイトレは先生のお願いすればねじ込めると思うけど……斑鳩さんの担当もしてた人だし」

「そっちが無難かなあ……」

「でもリスナーは」

「はっ、水着を所望してます。私の水着のどこがいいんだか……」

 解せぬ。
 カンナちゃんはこれを聞いて、ハハッ、とか笑いを漏らしていたが。

 さてこの配信問題。
 なんとなうファンタジーを巻き込むことになった。

 斑鳩合同会社の事務所に、げんファン株式会社のマネージャーさんもやって来て、兄と予定について詰め始めている。
 私はここで、初めて受付さんと出会った。

 げんファンのマネージャーさんに挨拶されて、ひきつり笑いで挨拶を返していた女性だ。
 小柄でハキハキした感じの、元気そうな人。

「きら星はづきさん! 受付してます! 配信者ネームはなうファンタジーに置いてきたんで、斑鳩さんの子分とだけ覚えといてください! えっへっへ」

「あっは、はい! よ、よろしくお願いします!」

 ペコペコする私。
 その横で、マネージャーさんと兄がどんどん予定を決めていく。

「昼に撮りたいですよね。やっぱり日差しは映えますし。はづきさんの門限を考えると……」

「この時間帯、夜七時は少しだけ明るさが残ってますからね。分かりました。では例のプールでどうです?」

「撮影によく使われる……例のプール……!?」

「例のプールです。貸し切りできるでしょう」

「あそこは予定が詰まっているはず……いや、待って下さい!! 斑鳩さん、ここ、こう言っちゃ不謹慎ですが、ジャストのタイミングでダンジョン化しましたよ!」

 な、なんだってー!
 例のプール。
 ネットミームを多少知ってる私は覚えがある。

 なんか、斜めになったガラス窓がついてて日差しが差し込んでくるプールで、グラビア写真とかエッチな動画で使われるやつだ。
 エッチな動画は父のPCのセキュリティを突破して見たことがあるぞ。パスワードが私の誕生日だった。
 動画はなんかすごかった。

 ちなみに例のプールは、グラビアとかエッチな動画反対の活動をする人が、アピールのために撮影現場に乗り込んで暴れて、最後は足を滑らせて頭からプールに落ちて死んでしまったらしい。
 で、逆恨みして一瞬で怨霊化してダンジョンになったと。
 ひえー。

 ひどい、ひどすぎる。

 一緒に来てた活動家たちは取り込まれ、なんかゾンビとかにされて配置されてるらしい。
 これもひどい。あまりにもひどすぎる。

「よし、ここを攻略すれば配信もできるし、そこから即座に水着の配信もいけるだろう」

 兄がニヤリと笑った。
 勝機を見出したのだ。

 ここで受付さんが口を挟む。

「……ダンジョン攻略も水着でやってはどうです?」

 ハッとする兄とマネージャーさん。

「な、何言ってるんですかあ!?」

 私は思わず突っ込んだ。
 だけど、受付さんの言葉は男性二人に火を付けてしまったらしい。

「いいな。やはりお前は天才だな」

「うちを卒業してしまったのが本当に悔やまれる……。あの炎上さえなければ……」

 そんな事を言いつつ、受付さんの意見が採用される。
 そしてそして。

 先日、モチベーションを溢れさせていたエメラクさんが、超速で私の水着衣装を納品してきたのだ!
 こっちからは慌ててダンジョンコアを報酬として振り込んだ。
 契約とか手続きを始めるより早く納品してくるってどうなの!?

 そしてこれがもう……。
 タンキニなんだけど、パーツ分けがバッチリで全く太って見えないように工夫をされて、それでいてプロポーションとかちゃんと分かるような、ピンクにぐにゃぐにゃ柄(ペイズリーというのだと受付さんから聞いた)の凄いやつだったのだ。
 こ、これを私が着るんですか!?

「きら星はづき、トライシグナルの水着でコラボ配信だ! これは話題になるぞ……!!」

 妙にやる気になっている兄なのだった。
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