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受けてる私の拡大編

第58話 こんな状況でもクイズするの伝説

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「問題。2023年7月23日配信の委員長のチャンネルで、ダンジョンに突撃してきたリスナーを袋詰めにする企画がありましたが──」

 なにそれ!?
 次々と繰り出される問題は、私の想像の遥か上を行くよくわからない状況のものだった。

 ピョンパルさんとキャプテンは大砲に詰め込まれて打ち出された時の話だし!

「はづきさんが混乱していますね」

「ちゃんと予習してきたピョンかー?」

「うっ! じ、実は皆さんのアーカイブを見て勉強してたんですけど、途中から自分のアーカイブと切り抜きで復習始めちゃって……」

「あー、根が真面目なんだねえ……」

 キャプテンさんがニコニコしている。
 この親戚の子を可愛がる大人たちみたいな雰囲気!
 いやまあ、周りにベテランしかいないから仕方ないんだけど!

 コメント欄は物凄い賑わいを見せている。
 あまりにも同接が多いので、なうファンタジーとライブダンジョン双方から同じ配信をしているくらいだ。

 スパチャが舞いまくるので、回線が重くなる可能性があるとか、なんとか……。
 異世界の話だあ。

 あっ、問題を間違えたピョンパルさんがすっごく苦いお茶を飲まされている。

「ぐえーっ、し、死ぬピョン~~!!」

 あれは本当に苦い顔だ……。

「一緒に飲んでみますか、はづきさん……」

「えっ、私が!?」

 なんて無茶ぶりをしてくるんだ委員長!
 だけど、周りの目がその方が美味しいシチュエーションだと語っている。

「じゃあ、少しだけ……」

 ピョンパルさんと同じお茶を頂いてみる。
 なるほど、物凄く苦い……!

「あー、顔をしかめてるのが可愛い」

「リアクションがもう全部可愛い」

 バトラさんとキャプテンさんが嬉しくないところを褒めてくるんですけれど!

※『かわいい』『あまりにもかわいい』『とてもかわいい』『苦すぎてプルプルしてて草』

 そんな和やかな雰囲気のまま進行していたら……。

『デーモン発生です! ゲート型デーモンが出てきました! ダンジョン内でモンスターが大量発生します!』

 運営側からの緊急連絡が入った。
 私たちに緊張が走──────らない。

「はい、それではこの問題を間違えた方が、罰ゲームとしてはづきちゃんとモンスターを迎撃に行ってもらいます」

「わ、私も!?」

「はづきちゃんは動いている方が可愛いもの」

 バトラさんはそう言って笑った。
 結局ここで、風紀委員長さんが間違い、私と肩を並べて戦うことになってしまった。

 押し寄せてくるモンスター!
 多分、オーガとか豚に似た頭のオルクとか、そういうパワー系が多い。

 でもまあ、委員長さん曰く。

「わたくしたちレベルになると、ネームド以外のモンスターは大した脅威じゃなくなるんですよね!」

 鞭を振り回しながら、すごい勢いでモンスターを消滅させていく。

「まあ、わたくしたちをモデルにしたエッチな同人誌ではこういう雑魚モンスターに……」

「ピピーッ! 委員長風紀違反です!! リアル女子高生にふしだらな情報を教えこんだらだめっ!」

 バトラさんから指導が入った。
 風花委員長がテヘペロしてくる。

 エッチな同人誌では……!?
 人気になってしまうとそんなことがあるのか……!

 私は気もそぞろになりながら、ゴボウを振り回した。
 手近なモンスターが『ウグワーッ』と消滅していく。

※『はづきっちが動揺している……!』『安心するんだ、年齢フィルターがかかってるからはづきっちの目に届かないから!』『気にしなくていい』

 お、お前らー!!
 なんか私の方の配信もOKが出たらしくて、リスナーたちがコメントを残してくれている。
 いや、全然安心できないコメントなんだが!?

「それってつまり、私の同人誌が……!?」

※『出るやろなあ』『あるぞ』『ナマモノは大変センシティブだからな』『いかがわしいのは斑鳩が対処してくれると思う』

「おお、持つべきものは兄……」

※『斑鳩シスコンだから』

 最近、あちこちでシスコンと呼ばれる兄!
 本人は必死に否定しているんだけど。

※『ちなみにはづきっちとトライシグナルの仲良し同人誌なら今書いてます』

「ほんと!? う、売って!!」

※『完成したら一部はづきっちの事務所に送ります!!』

「た、楽しみにしてます!!」

※『俺も読みたい』『読みたい』『売ってくれー!』『どこで出すんだ!?』

 しばらく、私の同人誌の話で盛り上がってしまった。
 モンスターを退治しきった頃には、私の同人誌はオンデマンド印刷での販売形式になることが決定していた。

 楽しみすぎる……。

「リスナーと仲良くお喋りしながら戦ってたピョンなー! すっかり一流の風格ピョン! 成長したピョンねえ」

「若い子は成長早いもんねー」

「おやキャプテン、まるで若くないような物言いピョン……?」

「は、はあ!? キャプテンは若いんですけど!? 17歳なんですけど!?」

 こうしてイベントはつつがなく進行し……。
 三回のモンスター襲撃を乗り越え、最後にボスモンスターであるグレーターデーモンをみんなで退治したところで大団円となったのだった。

 なお、私とのコラボ権は風花委員長が獲得した。
 これはライブダンジョン側のお二人がプロレスを開始し、お互いの足を引っ張ったためだ。

 いやあ……見事なプロレスだったなあ……!
 勉強になった……。
 私もいつか、ああやってこちゃこちゃやり合える相手ができるんだろうか。

 それともずっとぼっちで……!?
 うううっ!

※『はづきっちがまた自家中毒になっておられるぞ!』『いらんこと考えるな』『ゴボウのこと考えろ』

「お、お前ら優しい~!」

 そしてよく考えたら、カンナちゃんが相方みたいなポジションであることを思い出し、精神的にも安定したのだった。

「それじゃあはづきちゃん、何か告知とかある?」

 司会進行のバトラさんに聞かれて、私は話すべきことを思い出した。

「あ、あの! 今秋葉原でお試しの、私のコラボカフェやってて! 八月の半ばにはカフェチェーン全部で展開するので、ぜひ行ってみて下さい! でもその、お料理は全部ゴボウなんでガッツリ食べるつもりで行ってもらうと……」

 するとコメントに、『うおおおおおお』と歓声が溢れた。
 た、たくさんの人にアピールができた!

 ゴボウ料理、たくさん売れて欲しい……!!
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