ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

イケてる？ 私の立志編

第42話 ライブダンジョン伝説

　ダンジョン化した廃トンネルをどんどん下っていく。
　モンスターは次々に出てくるけど、こっちは頭数が違うもんね。

「あっはっはっはー！　遅い！　遅いですよモンスター諸君！」

「委員長、加勢します！　呪文詠唱省略……！！」

「卯月、吶喊しまーす！！　おりゃああーっ！！」

「はいはい、詠唱しまーす！」

　みんな頑張ってるなー。

※『はづきっちまた一休みしてて草』『自分が目立たないとでも思っているのかね？』

「やめろ、フラグ立てるな」

　そんな事を言うからー！

『もがー！！』

　床からボコボコっと起き上がってくるモンスターがいる！

「あひー、ゾンビ！　ゴボウでこれ叩くの抵抗があるんですけど！」

　ゴボウは後で食べるし！

「はづきさん、これをお使いになって！」

「カンナちゃーん！　ありがとうー！！」

　放り投げられてきたのは、キラキラと透き通った……。

「50cm定規だこれ！」

「はずきさんゴボウだし、使えないこともあると思って百均で買っておいたのよ！」

「ありがとう……！　愛を感じる～」

　これ、私のために買ってた！？

※『ああ～』『尊い』『ありがてえ……』おこのみ『唐突なはづカンの供給、俺じゃなかったら死んでたね』

　はづカン！！
　そんなのがあるのか……。

「後でその造語調べてみるね……！！」

※『任せろ』『このアドレスだ』『リクシィ百科事典を見ろ』

「もうネットに詳細な説明が載ってるの！？　本人が知らないうちに！！」

※『はづきっち雑談してる場合じゃないよ！』『ゾンビ迫ってるってー！！』

「えっ！？　あひー！」

　ぶんぶんと定規を振り回す私。
　なんか定規が光り輝き、ブォンブォンと音を立てた。
　触れたゾンビがスパスパ切られて『ウグワーッ』と崩れ落ちていく。

※『定規がレーザーソードに！！』『はづきっちもその領域に！？』

「りょ、領域！？」

※もんじゃ『優れた冒険配信者は、手にした道具のスペックを最大限すら超越して引き出す！　例えば凍結殺虫剤でデーモンを凍てつかせ、部屋ごと用殺虫剤で村一つに潜むモンスターを全滅させたり、エアコンでトンネル一つを凍結させたり……』『有識者ニキ！』『……あれ？　全部はづきっちじゃね？』『割りと序盤から突破してたんじゃん』『俺たちの姫って天才……！？』

「わ、私って天才……！？」

　呆然としながら雑に定規を振り回し、ゾンビをなます切りにする私なのだ。
　いやいや、調子に乗ってはいけない。
　こうしているともっと凄い人が……。

「斉射ーっ！！」

　ダンジョンに叫び声が響いた。
　いきなり壁が爆発して破られる。
　そこから、『ウグワーッ！！』とモンスターたちがこぼれ落ちてきて光になって消えた。

「やれやれ、アクアはめちゃくちゃなことをするピョン」

「みんなが外で頑張ってるでしょー。ここでキャプテンたちが頑張らなくちゃ大変なことになるじゃない」

　まず出てきたのは、白いワンピース姿の女の子だ。
　緑色の髪と、そおっから生えたうさぎの耳が特徴的で……。

「あっ、あなたはー！」

　委員長がなんか叫んだ。

「ライブダンジョンの首狩り兎ピョンパルさん！」

「ピョン！　風花委員長！？」

「ええーっ！？　風花委員長いるの！？　マジ？　マジ？　ちょ、ちょっとキャプテン心の準備ができてないんだけど……！！」

　次に出てきたのは、赤いマントと青い海賊風スーツを纏った、アイパッチの女性。
　海賊っぽい黒い帽子を被ってる。

「……誰かなあ？」

　私が首を傾げてポツリと言うと、トライシグナルの三人が「ええーっ！？」と叫んだ。
　うちのコメントも凄い勢いで流れる。

※おこのみ『ご存知ないのですか！？　彼女こそ、ライブダンジョン第三期生、異世界の偉大なる海賊にして配信者、海王星アクア！　ライブダンジョンの高度な技術を用いて作られた術式で、砲火と幻影海賊団を用いた戦闘を得意とする！　なお、古いゲームやアニメにやたら詳しいので公称年齢はサバ読んでるよねって言われてる。そしてもう一人……いや一羽は首狩り兎ピョンパル！　卓越したトーク力とリアクション技術により瞬く間にライブダンジョンのトップ配信者に躍り上がったやはり三期生の最強暗殺者！　手足に仕込まれた刃でモンスターの急所を掻っ切りますぞ！！　あとやっぱりサバ読んでる疑惑も……』

「ちょっとちょっと！　そこのコメントやめてくださーい！　キャプテンの営業妨害やめてくださーい！」

「そこのコメントのやつぶっ殺してもいいピョン！？」

「あひー」

　こっちまで海賊服のアクアさんが走ってきて、コメントの辺りをパパパパパっと手で払った。
　ピョンパルさんも微笑んでるけど、周囲に怒りマークみたいなの浮かんでる。

※おこのみ『アクア船長に手で払われた！　幸せ……』

　おこのみが昇天しそう！
　とにかく、このいきなりな登場人物に、チャットはめちゃくちゃに盛り上がった。

　ライブダンジョンの二人は、風花委員長と仲良くおしゃべりをしている。
　というか、二人共委員長をリスペクトしてるなー。

「これだけのメンバーが揃えば完璧ですね！　同接を食い合わないベストな人選でしょう！」

　委員長が宣言した。

「では皆さん、ダンジョン最深部へ向かいます。カンナさん、ミナさん、桜さん、わたくしの近くにいてください。ではキャプテンアクア、お願いしますね」

「お任せ！　術式展開！　艦砲一斉射撃！　目標、床ーっ！！　撃てーっ！！」

　アクアさんの周りに、大きな大砲が幾つも出現した。
　そして、床に向かって猛烈に射撃を開始する。

　すると……当然のことだけど、地面が粉々に粉砕されて崩れ落ちる！

「あひー！？　落ちるー！！」

　……と思ったら、私のジャージマントがたなびき、風をはらんで落下速度をゆっくりにする。
　私の衣装にこんな機能がー！

※エメラク『よっし！　狙い通り機能した！』

　エメラクさん！？
　ありがとうありがとう！

　トライシグナルの三人は、委員長が鞭で作り出した輪っかのなかに収まり、一緒にゆっくり効果してる。
　委員長は足元からすごい風を吹かせていて、これで落ちる速度をコントロールしてるみたい。

　アクアさんは帆みたいなのを背中に広げて、ピョンパルさんは空いた穴の壁面を、ぴょんぴょん飛びながら降りていく。

　す、凄い人たちだなあ……！
　というか、もしかして業界のトップが揃ってたりしない！？

「これは私、何もしなくても良さそうじゃない……？」

※『またサボること考えてて草』

　いいのだ！
　ということで、ダンジョンハザードも最終局面。
　ダンジョン最深層まで一気に向かうのだった。