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それなり私の飛翔編
第19話 企業案件会食伝説
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卯月さんとLUINEアドレスを交換した。
おお……。
どんどんトモダチが増えていく……!
感動しちゃうなあ。
だけど、それはAフォンの中だけでのこと。
学校で開くわけにはいかない。
寝たふりをしながら、ニヤニヤしつつ一日を過ごした。
そして放課後……。
「外にイケメンがいる!」「誰だろう?」「誰か待ってるのかな!」「誰かの彼氏?」
……兄です。
やっべえ。
なんで目立つのあの人。
「V-MAX2000じゃん!」「かっけー……」「あの顔にして金もあるのかよ。世の中不公平だぜ……」
……兄です。
あの男……!
妹が陰キャとして息を潜めて生活しているというのに……!
私はこっそりと学校の裏口から出て、兄にDMを送った。
『目立つな。裏で待つ』
『なぜだ』
『目立ちたくないの! わかって! わかれ!』
考え込むアイコンが送られてきた。
くっそー!
ナチュラルボーンで人の中心に立つべく生まれてきた男めえ……!!
青いスポーツカーが走ってきた。
兄の車だ。
ちなみに兄はこの間合宿で免許を取った。スポーツカーにでかでかと若葉マークが貼られている。
「乗れ。行くぞ」
「お、おう」
キョロキョロして、ひと目が無いことを確認して、私は助手席に乗り込んだ。
兄からサングラスを借りて、変装をする。
「無駄だぞ」
「気持ちだけでも目立たない自分でいたい……!」
兄の車は、それはもう目立つ!
免許を取得した後、テンションが上ってカッとなって購入したらしい高級スポーツカーなのだ。
自然と注目を集めてしまうことになる。
到着したのは、明らかにお高そうなホテル!
そして案内される、最上階のレストラン!
「あわわわわ」
「別にお前が望めばいつでも連れてきてやるのに、ずっと断り続けていたからこういう時に慣れていなくて困るんだろうが」
「ううう、うっさい。落ち着かないし、絶対高級な物の味とか分からないし……」
高級レストランの個室では、スーツ姿のおじさんが二人待っていた。
兄と私を見て、二人とも立ち上がって頭を下げる。
こちらも会釈だ。
「そちらがきら星はづきさん……! 新進気鋭の冒険配信者と聞いています。まさか、本当に学生さんだったとは……。あ、わたくし、モスキラーの案件担当でございます」
「きら星はづきのマネージャーをしております」
兄が名刺交換している。
いつの間にそんなことに……?
そう言えば今気付いたけど、兄はどういう伝手で企業案件を持ってきて、それでここまで話を纏めたんだ……!?
緊張と混乱で、頭の中がぐるぐるだ。
兄とモスキラーの人たちが商談するのを、水をごくごく飲みながら聞くばかり。
何を話しているのか、全く頭に入ってこない!
「先日の殺虫剤を使った配信で、やはり当社が声を掛けたのは間違っていなかったと確信を!」
「アンドロコックローチを気後れ無く粉砕するあの姿!」
あ、頭に入ってきた!!
覚えがありすぎる!
ってことは、モスキラーって……。
記憶を探ってみる。
モスキラーの社名がついた製品はうちにもあった。
ゴキジェノサイX。
強力殺虫剤だ。
モスジュデッカ。
超低温スプレーで不快害虫を凍殺するアイデア商品。
他、数々の虫を殺すことに特化した商品を生み出すメーカーだ。
「弊社の製品を持ち込んでいただき、実際に使用してもらえると」
「商品名をこう、読み上げていただき」
「ふむ、ふむ」
商談が進んでいく!
でもこれ、いけるな。
私、やれるぞ。
「が、がんばります」
私がどうにか言葉を絞り出したら、モスキラーのおじさんたちの目がキラキラ輝いた。
「ほ……本当にはづきっちの声だ……!」
あっ、おじさんの片割れ、私のリスナーだ……!!
「な、な、なんかすみません、陰キャで……」
「いえいえ! イメージ通りで! 本当にありがとうございます! いつも仕事を頑張る元気をいただいています!」
私とおじさんで、ペコペコ頭を下げあった。
そんな事をしていたらお料理が運ばれてきて……。
「中華だ……!!」
「お前、まだ気付いてなかったのか。コース料理なんか食っても緊張で味わからなくなるだろ。馴染んだところでの商談にしてもらったんだ」
兄……!
気遣いができる人め!!
なんでこれだけデキる男が、トップ冒険配信者を引退して私にAフォンをくれたのか。
さっぱり分からない。
だけどお陰で、私はこうして着実に陰キャ脱出の道を歩いて行けている……ような気がする。
なんか、陰キャ系配信者としてキャラが出来上がってしまっている気もするけど。
「いやあ、美味いですなあ」
モスキラーのおじさんたちは、すっかりビールで気分が良くなってしまっている。
兄は紹興酒とか白酒とかいうのをぐいぐい飲んでいて、全く表情が変わっていない。
酒が強いんじゃない。顔に出ないんだ。
……この人、車で来たよね?
多分、運転代行に任せて、今日はうちに来て泊まってくつもりだ。
兄、もしかしてこの状況を楽しんでる?
表情が余り変わらない人だけど、付き合いが長い私には、彼が本当に楽しそうなのが分かる。
なんで楽しいんだ?
「じゃあ、こちらで受注したダンジョンがありますので、次回はそちらで……」
「はい。配信は明後日行います」
話はトントン拍子で進んでいく。
明後日かあ……。
私がやる準備は、事前告知くらいかなあ。
私は私なりに、やれることをやろう!
初めての企業案件、頑張るぞ!
おお……。
どんどんトモダチが増えていく……!
感動しちゃうなあ。
だけど、それはAフォンの中だけでのこと。
学校で開くわけにはいかない。
寝たふりをしながら、ニヤニヤしつつ一日を過ごした。
そして放課後……。
「外にイケメンがいる!」「誰だろう?」「誰か待ってるのかな!」「誰かの彼氏?」
……兄です。
やっべえ。
なんで目立つのあの人。
「V-MAX2000じゃん!」「かっけー……」「あの顔にして金もあるのかよ。世の中不公平だぜ……」
……兄です。
あの男……!
妹が陰キャとして息を潜めて生活しているというのに……!
私はこっそりと学校の裏口から出て、兄にDMを送った。
『目立つな。裏で待つ』
『なぜだ』
『目立ちたくないの! わかって! わかれ!』
考え込むアイコンが送られてきた。
くっそー!
ナチュラルボーンで人の中心に立つべく生まれてきた男めえ……!!
青いスポーツカーが走ってきた。
兄の車だ。
ちなみに兄はこの間合宿で免許を取った。スポーツカーにでかでかと若葉マークが貼られている。
「乗れ。行くぞ」
「お、おう」
キョロキョロして、ひと目が無いことを確認して、私は助手席に乗り込んだ。
兄からサングラスを借りて、変装をする。
「無駄だぞ」
「気持ちだけでも目立たない自分でいたい……!」
兄の車は、それはもう目立つ!
免許を取得した後、テンションが上ってカッとなって購入したらしい高級スポーツカーなのだ。
自然と注目を集めてしまうことになる。
到着したのは、明らかにお高そうなホテル!
そして案内される、最上階のレストラン!
「あわわわわ」
「別にお前が望めばいつでも連れてきてやるのに、ずっと断り続けていたからこういう時に慣れていなくて困るんだろうが」
「ううう、うっさい。落ち着かないし、絶対高級な物の味とか分からないし……」
高級レストランの個室では、スーツ姿のおじさんが二人待っていた。
兄と私を見て、二人とも立ち上がって頭を下げる。
こちらも会釈だ。
「そちらがきら星はづきさん……! 新進気鋭の冒険配信者と聞いています。まさか、本当に学生さんだったとは……。あ、わたくし、モスキラーの案件担当でございます」
「きら星はづきのマネージャーをしております」
兄が名刺交換している。
いつの間にそんなことに……?
そう言えば今気付いたけど、兄はどういう伝手で企業案件を持ってきて、それでここまで話を纏めたんだ……!?
緊張と混乱で、頭の中がぐるぐるだ。
兄とモスキラーの人たちが商談するのを、水をごくごく飲みながら聞くばかり。
何を話しているのか、全く頭に入ってこない!
「先日の殺虫剤を使った配信で、やはり当社が声を掛けたのは間違っていなかったと確信を!」
「アンドロコックローチを気後れ無く粉砕するあの姿!」
あ、頭に入ってきた!!
覚えがありすぎる!
ってことは、モスキラーって……。
記憶を探ってみる。
モスキラーの社名がついた製品はうちにもあった。
ゴキジェノサイX。
強力殺虫剤だ。
モスジュデッカ。
超低温スプレーで不快害虫を凍殺するアイデア商品。
他、数々の虫を殺すことに特化した商品を生み出すメーカーだ。
「弊社の製品を持ち込んでいただき、実際に使用してもらえると」
「商品名をこう、読み上げていただき」
「ふむ、ふむ」
商談が進んでいく!
でもこれ、いけるな。
私、やれるぞ。
「が、がんばります」
私がどうにか言葉を絞り出したら、モスキラーのおじさんたちの目がキラキラ輝いた。
「ほ……本当にはづきっちの声だ……!」
あっ、おじさんの片割れ、私のリスナーだ……!!
「な、な、なんかすみません、陰キャで……」
「いえいえ! イメージ通りで! 本当にありがとうございます! いつも仕事を頑張る元気をいただいています!」
私とおじさんで、ペコペコ頭を下げあった。
そんな事をしていたらお料理が運ばれてきて……。
「中華だ……!!」
「お前、まだ気付いてなかったのか。コース料理なんか食っても緊張で味わからなくなるだろ。馴染んだところでの商談にしてもらったんだ」
兄……!
気遣いができる人め!!
なんでこれだけデキる男が、トップ冒険配信者を引退して私にAフォンをくれたのか。
さっぱり分からない。
だけどお陰で、私はこうして着実に陰キャ脱出の道を歩いて行けている……ような気がする。
なんか、陰キャ系配信者としてキャラが出来上がってしまっている気もするけど。
「いやあ、美味いですなあ」
モスキラーのおじさんたちは、すっかりビールで気分が良くなってしまっている。
兄は紹興酒とか白酒とかいうのをぐいぐい飲んでいて、全く表情が変わっていない。
酒が強いんじゃない。顔に出ないんだ。
……この人、車で来たよね?
多分、運転代行に任せて、今日はうちに来て泊まってくつもりだ。
兄、もしかしてこの状況を楽しんでる?
表情が余り変わらない人だけど、付き合いが長い私には、彼が本当に楽しそうなのが分かる。
なんで楽しいんだ?
「じゃあ、こちらで受注したダンジョンがありますので、次回はそちらで……」
「はい。配信は明後日行います」
話はトントン拍子で進んでいく。
明後日かあ……。
私がやる準備は、事前告知くらいかなあ。
私は私なりに、やれることをやろう!
初めての企業案件、頑張るぞ!
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