追放された微妙スキルの最弱前衛、最強の代理決闘士となる。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
8 / 11

ね、簡単でしょう? ゴーレム退治

しおりを挟む
「では、第一の試練最後の試合。リード・リージョン、前へ!」

「へいへい」

 ぶらぶらと壇上に立つ俺。
 対するのはアイアンゴーレム。
 でかさは、背丈なら俺の倍近く。腕ばかりが肥大化した歪なシルエットで、顔面は表情が刻まれていないので、無機質で気味が悪い。

「んじゃ、行こうか」

 後ろで、リュミナリアとカオルラーナが固唾をのんで見守っている。
 まあまあ。
 心配するほどでもない。

 俺のスキルが発動する。
 これは、起こりか。
 ゴーレムのキョドウが読める。
 振り下ろされてきた鋼の拳を、余裕で見切って髪一本程度の距離で回避する。
 その腕に、俺はひょいっと足をかけた。
 うん、肘のあたりに上がるとちょうどいい距離にあるな。
 ゴーレムの胸部と、よくよく見ればカバー的なものでカモフラージュされている赤い石。
 コアだ。

オオン……!

 ゴーレムが唸りながら、俺を振り落とそうとする。
 その動きは既に読んでいる。
 目端のスキルで、視界に入らないゴーレムの全挙動は手に取るように分かるのだ。
 俺はホルダーからダガーを抜き出すと、コアをカバーするパーツに差し込んだ。
 それから、ゴーレムの懐に入り込むような按配で、飛び降りる。

「今回は、目くらまししてサボってる訳にはいかねえからなあ。サクサク片すかぁ。せえのっ!」

 剣を鞘ごと抜くと、それをダガーの柄に叩きつけた。
 ダガーがより深く、ゴーレムのコアに食い込む。

グゴゴゴゴ!?

 ゴーレムが唸った。
 だが、まだまだコアは健在だ。
 そりゃそうだ。
 この程度で軽く取れてしまうようなら、ゴーレムなんざEランクパーティにすら狩れるだろう。
 弱点に至るまで、バカみたいに頑丈に出来ているからゴーレムなのだ。

「おりゃっ、おりゃっ、おりゃっ!」

 俺はペチペチと、鞘でダガーの柄を殴る。

ゴオオアアッ!

 おー、ゴーレムも怒ったような反応をするんだな。
 奴は俺を捉えようと、腕を歪に曲げながら懐を殴ろうとする。
 ギリギリまで引き付けて……。

「あ、ひょいっと」

 俺はしゃがみこんだ。
 俺の頭を掠めて、鋼の拳が飛ぶ。
 そいつは狙い通り、てめえの胸を殴り飛ばしていた。
 スコーンと、小気味いい音がする。
 ゴーレムなんざ、所詮意思がない操り人形だな。
 リスクってものを考えない。
 だから、こうして突き刺さったダガーを、自らぶっ叩いてテコの原理を作用させてしまう。

 コアが、すっぽ抜けた。
 俺は悠々とコアの後をついていき、落下してくるところをキャッチする。
 背後で、ゴーレムが崩れ落ちた。

「ほい、終わり。あー、しんど」

「お……おお」

 決闘立会人は、呆然としているようだ。
 モルドにアダム、果てはノリンと、とんでもない連中の戦いを見ていただろうに。
 何を呆けてるんだ?

「き、君、今、何の魔力も使っていなかったように思うが……」

「おう。俺のスキルは感覚を鋭くするだけだからな。後はてめえの技量次第だ。きちんと腕があるなら、アイアンゴーレムはダガー一本で倒せるんだぜ?」

「何という……!」

「ウォッチャー様! ご裁断を!」

 リュミナリアが、なおも呆然とする立会人に激を飛ばした。
 慌て、ウォッチャーと言う名らしき立会人は、俺の勝利を告げた。
 なんとか、第一の試練をクリアである。

「第二の試練は明日! 二人ずつに分かれ、チームでの戦闘を行う。ダミアン王子とリュース王子の側、モルド・アダムチーム。ゼノビア王女とリュミナリア王女、カオルラーナ王女の側、ノリン・リードチーム」

「お前と一緒かあ」

「ハハハ、よろしく頼むよ、リード君」

 イケメンなノリンが、俺の肩を笑いながら叩いた。

「よろしくお願いしますわね、お姉さま?」

「お願いしますね」

「むむむむ……」

 ゼノビア王女が難しい顔をした。

「それじゃあ、これに勝ち抜けば、リードさんとノリンさんの決闘になるわけですけれど……。まずは親睦を深めるために」

 リュミナリア王女が、くるりと俺たちを見回した。

「一緒にダンジョンに潜ってみるのはどうかしら?」

「ええ!? わ、わたくしも!?」

 ゼノビア王女は目を白黒させるのだが、

「いいじゃないか、姫。貴女は優れた魔法の使い手だと聞いている。頼りにしているよ」

「もう……。ノリンが言うのなら……」

 おや? おやおや?

「あっ、リードさんが嫌らしい目で見ています!!」

「うるさいぞカオルラーナ姫。こういうのを詮索するのは俺の趣味なのだ」

「全然褒められた趣味じゃありませんわね」

「ねえ、リュミナリア。カオルラーナ。幾ら腕が立つからって、代理決闘士の人格はきちんと見ておきなさいな? 貴女方二人の品性を問われるのよ?」

 おっ、俺をネタにして、三姉妹がきゃいきゃい話し合っているぞ。
 こりゃあ、なんとも姦しいじゃないか。
 俺は彼女たちの様子を、目を細めて眺めるのであった。
 ノリンがこれを見て、「おっさんくさいよ君」と爽やかに言った。


△▲△


 と、言うわけで。
 今はダンジョンにいる。
 前衛は俺、カオルラーナ、ノリン。
 後衛は、リュミナリアとゼノビア。
 カオルラーナはいつもの褐色の少女剣士になっているし、リュミナリアもウサミミの僧侶だ。
 意外だったのはゼノビアで、化粧を落とすとかなり可愛らしい顔立ちになる。
 赤毛をポニーテールにした、ちょっと露出度の高い魔法使いだ。

「ああ、もう……。ダンジョンってかび臭くて嫌なのよね」

 ゼノビアが顔をしかめた。
 そんな表情も可愛い。
 結構俺の好み。

「リード君、手出しをしたらここで決闘だぞ? いいかい?」

「へいへい」

 ノリンが微笑みながら、洒落にならない殺気をぶつけてくる。

「分かったなら、役割を果たしてほしいな。君のスキルは、どう考えても盗賊向きだろう」

 そう。
 俺は前衛ではあったが、戦士ではない。
 盗賊という役割を期待されることになっていたのだ。
 おかしいなあ……。
 絶対このスキル、戦士だと思うんだけどなあ。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう
ファンタジー
書籍1~8巻好評発売中!  コミカライズ連載中! コミックス1~3巻発売決定! ビッグバロッグ王国・大貴族エストレイヤ家次男の少年アシュト。 魔法適正『植物』という微妙でハズレな魔法属性で将軍一家に相応しくないとされ、両親から見放されてしまう。 そして、優秀な将軍の兄、将来を期待された魔法師の妹と比較され、将来を誓い合った幼馴染は兄の婚約者になってしまい……アシュトはもう家にいることができず、十八歳で未開の大地オーベルシュタインの領主になる。 一人、森で暮らそうとするアシュトの元に、希少な種族たちが次々と集まり、やがて大きな村となり……ハズレ属性と思われた『植物』魔法は、未開の地での生活には欠かせない魔法だった! これは、植物魔法師アシュトが、未開の地オーベルシュタインで仲間たちと共に過ごすスローライフ物語。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...