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奥様コラボと同じマンションのドラゴン
第138話 本格的に始まるスタンピード
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近場のラーメン屋まで、マシロと社長とシノの四人で行った。
待ち時間の間に、最近のダンジョン事情について社長が思うことを話してくれる。
「我は巣の中にいても世界の在りようを見ることができる故な。スタンピードとは、異界より送り出されたモンスターの量が飽和することであろう。貴様らのようにちょくちょくダンジョンを退治していればそのようなことは起こらぬ。では、どうして昨今スタンピードが小規模に起こるのか?」
「おっ、社長、なんかそのあたりの秘密を知ってるんですか」
「うむ、我がこの世界に来た時に殴り飛ばした魔将がおろう。あれは宇宙を渡る大魔将の眷属よ。すなわち、この頻発するスタンピードは大魔将によって作為的に引き起こされていると言える」
「なるほど、ここに来てのスタンピードの頻発、あまりにも作為的だなーと思っていたんで、それは納得できる……」
「ちょっと、ちょっと待ってくださいよ」
慌てたのがシノだ。
今回は社会人モード。
「今世の中を悩ませている事態の、クリティカルな原因じゃないですか!?」
「そうなるな。あのとんでもない娘が、水と風の大魔将を倒したのだろう。その次は、地の大魔将が仕掛けてきている。だが……案ずるには及ばぬと思うぞ。おっ、きたきた」
「案ずるには及ばないとは、一体……? ああ、美味しそうだ」
「いただきますッス!」
四人でズルズルとラーメンを食べた。
俺は味噌。
マシロは醤油。
社長はチャーシュー麺で、シノはタンメンだ。
「うむ! 小さな体になったのは正解であった! 少量だが美味い、この世界の食物で満足できる故な! 星渡りをする時までは、この小さき姿のままでよかろう」
真っ先にチャーシューを半分パクパク食べてから、ラーメンをズルズルやる社長だ。
既に箸の使い方と、麺の啜り方をマスターしている。
ドラゴンの学習能力、恐るべし。
コーラル社長はスープまで飲みきった後、デザートにコーラを注文した。
到着する瓶コーラ。
「……少なくないか?」
「こういう店ではそういうもんなんですよ」
「ふむ……多ければ多いほどいいのだがなあ」
それでも、氷を入れたグラスにコーラを満たすと、実に美味そうにそれを飲むのだった。
横でハフハフしながらタンメンを食べきったシノ。
スープは呑まない主義らしく、レンゲで沈んでいる野菜を掬いながらさっきの会話の続きを始めた。
「コーラル社長、案ずるには及ばないということは……これだけ今、世の中を騒がせていることだと言うのに大事には至らないと?」
「そうなろうな。地の大魔将めも実に間が悪い。悪すぎる」
コーラを飲みきったあと、ふんっと鼻で笑う社長なのだった。
彼女は空中に、指先で東京湾の形を描く。
「海寄りの地に、力が集まりつつある。イカルガエンターテイメントだったな? あれのイベントが行われるだろう。大きな祭りよ。これが解決の手となる」
そんな話をしていたら、隣で焼き飯を食べていた兄ちゃんが、
「あっ、お姉さんイカルガ好きなんですか? 俺もなんすよ! イカルガ大感謝祭、めっちゃ楽しみでー!! あれ、インターネットとテレビでも全国中継されるんで、行けなくても楽しめますからね!」
「そういうことだな」
にやりとするコーラルなのだった。
つまり……きら星はづきという、この世界の救世主が、全国中継で特別なイベントを垂れ流すその日。
よりにもよって、地の大魔将は特大のスタンピードをぶつけようとしているということだった。
「あれは、光の当たる場所で世界を救い続ける定めを負った女だろう。誰よりも重い宿命を持ちながらも、全くそれを気にせぬために、我がこれまで見てきたどの救世主よりも気楽だ。あれに任せておけばよい」
「それじゃあ先輩はしばらく気楽ッスねー」
「それが一番だよ、楽にやっていこう。戦いは何も生まないからね……!」
「何を言っておる。貴様は魔女どもとの戦いが待っているであろう。海路と空路が完全に人の手に取り戻されたのだぞ。いつでも奴らがやってこれるようになっておるのだ」
「さっきから思ってたんですけど、社長やたらとこっちの事情に詳しくないですか? めちゃくちゃ的確な情報が出てきてるんで驚くんですが」
「我は巣の中から世界を見渡せると言っておろう。貴様らの言うインターネットというものを覗き見ておるのだ」
なーるほど。
その後、話しかけてきた兄ちゃんと軽くイカルガ大感謝祭について話などをした。
彼はイベントのチケットをゲットしており、当日は会場入りしているのだそうだ。
楽しんで欲しい。
マンションまで戻り、地下一階から五階までをぶち抜きになっている、社長の巣へ。
コーラルが指パッチンをすると、空間の真ん中に光り輝く玉が出現した。
これで、この空間の隅々までを見通せるようになる。
社長はここがダンジョン化しないよう、細心の注意を払って運用しているらしい。
空間の中には、中空に浮かぶソファやテーブル、あるいは本棚などが散在している。
空を飛んであそこまで行くんだろうか?
「飛べぬ貴様らには不便であろう。階段を作ってやる」
コーラルがそう言うやいなや、真っ白な階段が出現した。
安全性確保のためか、手すりまでついている。
「ほえー。もうなんも意味がわかんないッス」
「そうだなあ。マシロは完璧に巻き込まれただけの一般人だもんなあ」
「ほんとッスよー」
ソファまで階段を登っていき、そこに腰掛けた。
社長が翼を広げて飛び上がってくると、彼女の腰の下に螺旋状の椅子が出現する。
「巣の中には、不定形のまま魔力を漂わせておる。これを操作すればこのようなこと、造作もない。さて……」
腕組みした社長は、俺をじっと見た。
「どうにかなると言っても、何も対策をせぬわけにはいくまい。任せた。この地を平穏に保って見せよ」
「えーっ、俺に丸投げですか」
「そもそも我はドラゴンぞ? 人間の争いに手出しする理由がない! 下手に大魔将との争いになれば、この辺り一帯が毒の沼地と化すわ」
あー、力が強すぎて何もできないというやつだ。
これは確かに、俺がどうにかするしかないよなあ。
待ち時間の間に、最近のダンジョン事情について社長が思うことを話してくれる。
「我は巣の中にいても世界の在りようを見ることができる故な。スタンピードとは、異界より送り出されたモンスターの量が飽和することであろう。貴様らのようにちょくちょくダンジョンを退治していればそのようなことは起こらぬ。では、どうして昨今スタンピードが小規模に起こるのか?」
「おっ、社長、なんかそのあたりの秘密を知ってるんですか」
「うむ、我がこの世界に来た時に殴り飛ばした魔将がおろう。あれは宇宙を渡る大魔将の眷属よ。すなわち、この頻発するスタンピードは大魔将によって作為的に引き起こされていると言える」
「なるほど、ここに来てのスタンピードの頻発、あまりにも作為的だなーと思っていたんで、それは納得できる……」
「ちょっと、ちょっと待ってくださいよ」
慌てたのがシノだ。
今回は社会人モード。
「今世の中を悩ませている事態の、クリティカルな原因じゃないですか!?」
「そうなるな。あのとんでもない娘が、水と風の大魔将を倒したのだろう。その次は、地の大魔将が仕掛けてきている。だが……案ずるには及ばぬと思うぞ。おっ、きたきた」
「案ずるには及ばないとは、一体……? ああ、美味しそうだ」
「いただきますッス!」
四人でズルズルとラーメンを食べた。
俺は味噌。
マシロは醤油。
社長はチャーシュー麺で、シノはタンメンだ。
「うむ! 小さな体になったのは正解であった! 少量だが美味い、この世界の食物で満足できる故な! 星渡りをする時までは、この小さき姿のままでよかろう」
真っ先にチャーシューを半分パクパク食べてから、ラーメンをズルズルやる社長だ。
既に箸の使い方と、麺の啜り方をマスターしている。
ドラゴンの学習能力、恐るべし。
コーラル社長はスープまで飲みきった後、デザートにコーラを注文した。
到着する瓶コーラ。
「……少なくないか?」
「こういう店ではそういうもんなんですよ」
「ふむ……多ければ多いほどいいのだがなあ」
それでも、氷を入れたグラスにコーラを満たすと、実に美味そうにそれを飲むのだった。
横でハフハフしながらタンメンを食べきったシノ。
スープは呑まない主義らしく、レンゲで沈んでいる野菜を掬いながらさっきの会話の続きを始めた。
「コーラル社長、案ずるには及ばないということは……これだけ今、世の中を騒がせていることだと言うのに大事には至らないと?」
「そうなろうな。地の大魔将めも実に間が悪い。悪すぎる」
コーラを飲みきったあと、ふんっと鼻で笑う社長なのだった。
彼女は空中に、指先で東京湾の形を描く。
「海寄りの地に、力が集まりつつある。イカルガエンターテイメントだったな? あれのイベントが行われるだろう。大きな祭りよ。これが解決の手となる」
そんな話をしていたら、隣で焼き飯を食べていた兄ちゃんが、
「あっ、お姉さんイカルガ好きなんですか? 俺もなんすよ! イカルガ大感謝祭、めっちゃ楽しみでー!! あれ、インターネットとテレビでも全国中継されるんで、行けなくても楽しめますからね!」
「そういうことだな」
にやりとするコーラルなのだった。
つまり……きら星はづきという、この世界の救世主が、全国中継で特別なイベントを垂れ流すその日。
よりにもよって、地の大魔将は特大のスタンピードをぶつけようとしているということだった。
「あれは、光の当たる場所で世界を救い続ける定めを負った女だろう。誰よりも重い宿命を持ちながらも、全くそれを気にせぬために、我がこれまで見てきたどの救世主よりも気楽だ。あれに任せておけばよい」
「それじゃあ先輩はしばらく気楽ッスねー」
「それが一番だよ、楽にやっていこう。戦いは何も生まないからね……!」
「何を言っておる。貴様は魔女どもとの戦いが待っているであろう。海路と空路が完全に人の手に取り戻されたのだぞ。いつでも奴らがやってこれるようになっておるのだ」
「さっきから思ってたんですけど、社長やたらとこっちの事情に詳しくないですか? めちゃくちゃ的確な情報が出てきてるんで驚くんですが」
「我は巣の中から世界を見渡せると言っておろう。貴様らの言うインターネットというものを覗き見ておるのだ」
なーるほど。
その後、話しかけてきた兄ちゃんと軽くイカルガ大感謝祭について話などをした。
彼はイベントのチケットをゲットしており、当日は会場入りしているのだそうだ。
楽しんで欲しい。
マンションまで戻り、地下一階から五階までをぶち抜きになっている、社長の巣へ。
コーラルが指パッチンをすると、空間の真ん中に光り輝く玉が出現した。
これで、この空間の隅々までを見通せるようになる。
社長はここがダンジョン化しないよう、細心の注意を払って運用しているらしい。
空間の中には、中空に浮かぶソファやテーブル、あるいは本棚などが散在している。
空を飛んであそこまで行くんだろうか?
「飛べぬ貴様らには不便であろう。階段を作ってやる」
コーラルがそう言うやいなや、真っ白な階段が出現した。
安全性確保のためか、手すりまでついている。
「ほえー。もうなんも意味がわかんないッス」
「そうだなあ。マシロは完璧に巻き込まれただけの一般人だもんなあ」
「ほんとッスよー」
ソファまで階段を登っていき、そこに腰掛けた。
社長が翼を広げて飛び上がってくると、彼女の腰の下に螺旋状の椅子が出現する。
「巣の中には、不定形のまま魔力を漂わせておる。これを操作すればこのようなこと、造作もない。さて……」
腕組みした社長は、俺をじっと見た。
「どうにかなると言っても、何も対策をせぬわけにはいくまい。任せた。この地を平穏に保って見せよ」
「えーっ、俺に丸投げですか」
「そもそも我はドラゴンぞ? 人間の争いに手出しする理由がない! 下手に大魔将との争いになれば、この辺り一帯が毒の沼地と化すわ」
あー、力が強すぎて何もできないというやつだ。
これは確かに、俺がどうにかするしかないよなあ。
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