TSして魔法少女になった俺は、ダンジョンをカワイく攻略配信する~ダンジョン配信は今、カワイイの時代へ~

あけちともあき

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フォーガイズ結成編

第99話 その名はスレイヤーV

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 先日行われた、きら星はづきのアバター作成配信で、俺はスパイスちゃんとして凸して発言をしたのだった。

「うおーかっこいー!! はづきさんってキャラデザまでできちゃうんですね!!」

 まだあちこちマスキングがされていて、全貌ははっきりしない。
 だが、イケメンの気配が濃厚だ。

『そうなんですよー。でも、あくまでアマチュアに毛が生えてくらいで……』

 この速度でアバターを作り上げられる人がアマチュアに毛が生えたレベル……!?

「そうなんだー! スパイスもですね、実は自力で受肉した配信者なんでー」

 だが、スパイスも大人だ。
 ここはお話に乗っておくことにする……。

『えーそうなんですか! すごーい、私と一緒だ!』

 そうか、この人、今のアバターも自作だ!!
 超人か?
 だが、ここでツテを作っておくことは重要だろう。

「あの、今度コラボしませんか? お互いセルフ受肉同士でどこかのダンジョンを攻めません?」

『いいですよー、ぜひぜひ! ザッコのフレンド申請は後で送りますね』

 フレンド登録は前にしてなかったかな? と思ったら、今回のはタイマンで相談するルームへのお招きだった。
 これで大きな繋がりができた。
 噂のトップ配信者、どれほどのものか間近で拝むのだ。

 そうこうしていたら、大京元長官のデビュー日が決まったらしい。
 明後日だ。

「早い。いくらなんでも早すぎる。そんな速度でアバターは用意できるものなのか……?」

 俺が知っている業界の常識だと、一ヶ月や二ヶ月は普通に掛かるはずだが……。
 ここで解説を始めるフロータ!

『これはですねー。私が最近見てる配信だと、現代魔法を使って作ったアバターがちょこちょこあるんですよ。アバターってイラストレーターが外見をデザインして、技術者が動きをつけていくじゃないですか。あの英雄のは、イラストレーターと技術者が同一人物で、描きながら実体化させて、しかも現代魔法で補助を掛けてると思いますね。そりゃあ早い』

「あの超有名配信者のきら星はづきだぞ? ほぼ毎日配信やってる裏で、学校にも行ってそんな作業までしてるのか!? 化け物だろ」

 そんな馬鹿なと思うのだが、実際に元長官のアバター姿はシルエットとなって、告知ツブヤキに表示されていた。
 ツブヤキックスではちょっとした話題だ。

 なお、元長官はピンスタグラムやPickPockにも手を出しているようで、そこでの広告も大いに受けているらしい。
 こっちは多分、奥さんや娘さんに手伝ってもらってるんだろう。

 つまり、大京一家総掛かりの広報戦術と、そこに当代随一の配信者であるきら星はづきのバックアップがあることになる。
 これはとんでもないぞ。

 そしてすぐに、大京元長官を揶揄したり批判するクソリプがつく。
 そしてクソリプが消えた。

 ……消えた!?

『あっあっ、今呪詛返しの魔法が使われた形跡がありますね……。一般人にこんな恐ろしい物を使うとは……!! あの英雄はそんな陰湿な魔法使わなかったですよね? ということは……あの恐ろしい娘の仕業!?』

 そう言えば、アンチや敵対者を文字通り燃料にして活動している配信者がいると聞いたことはある。
 まさか、まさか……。
 確かに、彼女の圧倒的知名度に比べて、批判する声がほとんどないのは不思議だったのだが。

 俺とフロータがPCの前で盛り上がりつつ、それはそれとして自分の配信もせねばならない。
 とりあえず、オンラインゲームアーカイブサービス、エレクトリックでインディーズゲームを落として遊ぶ配信をした。

 世界をつなぐインターネット環境が近頃整ってきており、こうして海外のゲームを遊ぶこともできるようになっているのだ。
 これも、あのきら星はづきがアメリカを救い、国家間の関係や通信整備が良くなったおかげと言える。
 俺たちの生活に深く根付いている配信者でもあるな。インフラだ。

「どーも! こんばわー! 今夜はねー、フリスビー型になったおじさんを投げて飛距離を稼ぐゲームを遊んでいこうと思います! ダンジョン関連はもうちょっと落ち着いたらやってくからねー」

※『こんばわー!』『こんスパ!』『変なゲーム発掘してきたなあ!』

 インディーズゲームは、長さもほどほど。
 遊びやすいし、配信にもちょうどいいのだ。
 ダンジョンだけだとリスナーも飽きてしまうし、こちらも体力的にきつい。

 こうやってゲームをしながら、ちょこちょこ雑談するような配信を挟むと、味変になっていいのだ。
 おじさんを投げると『ウグワーッ!!』と叫びながら飛んでいく。
 この声の伸びで大体の距離が分かる……。

 そんな感じで、おじさんフリスビーゲームを遊んでいると……。

『主様! あの英雄が配信者ネームを発表しました!』

「なんだってー!」

 衝撃的な情報を伝えられたスパイスの手元が狂って、フリスビーおじさんは空の彼方へ飛んでいった。
『ウグワワ~』という情けない叫びが聞こえる。

 すぐさま、配信を大京元長官の動向をウォッチするものに切り替える。

「みんなー! あの前世が超有名人の配信者が、ついに名前を公表だって!」

※ランプ『誰もが知っているあの配信者がついに……!』『初配信前のネームバリューではないもんな』『有名人が配信者に転生するにしても度を過ぎていると話題の!』

 そう、その元迷宮省長官!
 ただでさえ、迷宮省は炎上しているからね。

 そこを抜けた元長官が何をするのか。
 世の中は注目していたのだ。

 ツブヤキックスに貼られた広報動画を再生してみる。
 そこから流れてきたのは……爽やかな感じの声だった。

 おや……?
 大京さんはもっとおじさんだったような……。
 それにシルエットもシュッとしてて、なんというか若い。

『その名は……スレイヤーV! 近日デビュー配信!!』

「スレイヤーV!! ヒロイックな名前で来たなあ! しかもシルエットが若返って……いやいや、期待の新人さんだねー。どんな人なんだろうねー」

※『ソウデスヨネー』『楽しみだなー』

 お肉どもがすぐに察してくれた。
 若い子たちはむしろ、元長官への馴染がそこまで無いから純粋に超大型新人配信者だと言うことで期待してるみたいだ。

 つまり、我々おじさんおばさんの固定観念を捨て、前世? 知らない子ですね? くらいにしていかねばならないということだ。
 こうして、スレイヤーVの初配信の日はあっという間にやって来て……。

 スパイスはこれをリスナーと同時視聴することにしたのだった。
 二窓してね!

 本格始動した彼のチャンネルの名は、スレイヤーちゃんねる。
 この緩さ……。
 とても、あの質実剛健っぽく見える大京さんとは思えない。

 ざわつくコメント欄。
 いや、やはり若い子たちは期待の声が多いな。
 我々おじさん、おばさんは固定観念が……以下略。

『みんな、見に来てくれてありがとう。色々あったが、こうやって配信を始めることができた。まずは全面協力してくれたイカルガエンターテイメントと、このアバターをデザイン、作成してくれたきら星はづきさんに感謝を』

 挨拶の言葉とともに、画面の中には爽やかな青年が現れた。
 こ、こ、このイケてる若者が大京さん!?
 いわゆる探検服みたいな格好をし、胸元のモスグリーンのシャツからは鍛えられた大胸筋がちらりと覗く。
 日焼けした肌に、笑顔から見える真っ白な歯が眩しい。

「うわーっ、わ、わ、若返ったーっ! 具体的には二十年くらい若返った!! あ、でも骨格的には近いから、若くてシュッとしてるとこんな感じか……」

※特上ロース『スパイスちゃんのスレイヤーさんを見る目が恋する乙女のそれ』

「違うちがーう! おじさん同士だからね? おじさん同士! そんじゃあ、長官……じゃない、スレイヤーさんの配信見ていこう!」

『はい、脳天かち割り』

『ウグワーッ!? 馬鹿な……!! 魔将である我がこうも容易く……!! 貴様、一体何者だ……!!』

 いきなり魔将を名乗る、上級のデーモンを蹴散らしてるんだが!?
 明らかに生身のときよりも動きが鋭くなってないか?

『本日から本格始動した冒険配信者、スレイヤーVだ! みんな、グッドボタンとチャンネル登録をよろしくな!』

 キュピーン! とかっこいいポーズを取ってウインクするスレイヤーV。
 大京嗣也の積み重ねてきた経験と、きら星はづきによるアバター技術によるエイジング効果、そこで得た全盛期の肉体のパワーに同接まで乗ってるわけだもんなあ。
 とんでもないモンスターが世に解き放たれてしまったかも知れない。

「みんなー! スレイヤーVの配信のあと、フォーガイズで集まってゲームしまーす! スーパーオクノパーティやるぞー!」

 
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