TSして魔法少女になった俺は、ダンジョンをカワイく攻略配信する~ダンジョン配信は今、カワイイの時代へ~

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
35 / 146
クリスマス魔女バトル

第35話 吹っ飛べ宇宙の彼方まで

しおりを挟む
 炎の魔女が魔法を使おうとする時、一瞬のタメがある。
 ほんの一呼吸ほどだが、格ゲーにすると30フレームはあるわけで、つまりは1/2秒。
 十分過ぎる隙だった。

 俺は既に、詠唱を配信画面に打ち込んである。

「アクセル・スパイラル・フロート!!」

 難燃性プラスチック板が高速回転しながら、猛烈な勢いで上昇した。
 それが炎の魔法を放とうとした魔女の腹に叩き込まれる。

「ウグワーッ!?」

 プラスチック板は魔女を乗せたまま、どんどん加速・上昇していく。
 ダストシュートは細く長く伸びた構造だ。
 本来は落とすためのものなのだが……ここがダストシュートの最底辺。

 そこから上に向かって炎の魔女を打ち上げる!
 プラスチック板で空に向かってふっとばされれば、フレイヤも流石に状況を理解する。
 炎の力がプラスチック板に集中した。

「こっ、こんなものであたしがぁ!!」

「リピートアフターミー! 呪文を唱えてペッパーども! お肉ども!!」

『皆さん元気よく呪文を詠唱しましょー! コピペでいいですよーっ!! コメント欄にテキストを載せておきますね! アクセル・スパイラル・フロート!』

 ナイスフォロー、フロータ!

※『分かったぜ!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』『アクセル・スパイラル・フロート!』……!

 集まる同接の力!
 俺の魔法はさらに強力になり、魔女の魔法を跳ね除けた。

 超回転となったプラスチック板が、魔女を物凄い勢いでかちあげる!
 ダストシュートを遡り、最上階まで突き抜けていく。

 こういう天井が高いような構造の施設は、ダンジョン化すると天蓋が抜け、異世界に通じる法則があるようなのだ。
 今回も完全にそのパターン。

「ウグワーッ!! あ、あたしがこんなことで! こんなものでやられるはずが……!!」

 ダストシュートの縁を炎で焼きながら、変形させて己の支えにしようとする炎の魔女。
 だが、そこに我らのアポカリプス系配信者が駆けつけた!
 バイクでビル内の最上階まで到達したチャラウェイがクロスボウを構えたのだ。

 これをスマホで同時視聴できるから、本当にいい時代になったなあ。
 あっ、矢の先端にキンキンに冷やした保冷剤が!?

※『うおおおお行け保冷剤!』『炎なんか冷やしちまえ!』『文明の力だーっ!!』

「ヒャッハー!! 汚え炎は鎮火だーっ!!」

 勢いよく放たれたクロスボウの吸盤付きアロー
 先端にクリップでくっつけられた保冷剤が、魔女の放つ炎を打ち消していく!

 熱で変形した縁が、急速に冷やされて劣化。
 ついに砕け散った!

「馬鹿な!! そんな……そんな馬鹿なーっ!!」

 叫びながら、魔女は空へ空へとグルグル回されながら吹っ飛んでいく。
 しばらく炎がごうごうと吹き出す様子が見えたが、遠ざかりすぎて全然分からなくなった。

「ちょっと様子を見ようねー」

※『はーい』『スパイスちゃんの手持ちの札をすべて使った、とんちバトルだった』『チャラウェイいい仕事するなあ』『科学の力と魔法が組み合わさると最強に見える』『チャラウェイは半分気合による成果だった気がする』

「そだねー。チャラちゃんさすがだなー。あっ、ダストシュートをバイクで下ってきた!」

「ウェイウェイ! やってやったぜ!! ……やったか!?」

「それフラグだよチャラちゃーん!!」

 コメント欄がドッと沸く。
 で、ここまでまったりしても、炎の魔女が戻って来る様子はなかった。
 これはどうやら……。

「よっしゃー! 宇宙へ放りだしてやった!! 大勝利、ぶいっ!」

 その証拠に、空からふらふらと真っ赤な魔導書が降りてくるではないか。
 炎の魔導書だ。

『あひゃひゃー! あいつ、主をぶっ飛ばされて意気消沈してますよ! 契約していた魔導書が魔女から離れるのは、その魔女が倒された証拠ですねー。主様大勝利ー!
 いやー、ジャイアントキリングでしたねー』

「本当に勝てるとはねー。まあ、全然勝つ気だったけど。えーとですね、スパイスの宿敵その一をやっつけました! みんなのお陰だよー! ありがとうねー!」

 画面に向け手を伸ばし、手のひらを広げてぶんぶん振る。
 スパイスからの感謝を受け取るがいいー!

※『どういたしましてだよー!』『かわいい』『かわいいものを守ることができた』『良きクリスマスだった』『今年も一人のクリスマスだと思ったら、思わぬ収穫があったな』

 なお、スパイスの背後でチャラウェイがダンジョンボスのデーモンをサクッとやっつけている。
 ずっと状況に置いていかれてドン引きしていたデーモンは、『そんなー』とか言いながら消えていった。

 ダンジョンが消えて……ただのゴミ捨て場になったよ!
 異世界とのリンクも途絶えた。
 急に狭くなったなあ。

「ヒャッハー! これバイクが外に出られないんじゃね?」

「が、がんばれチャラちゃん!!」

 ということで、二人でひいひい言いながらバイクを外に出したよ。
 扉を外したり、入口近くに放置されていた金属の籠を外に運び出したり……。
 魔女戦と同じくらい疲れた。

「えー、ということで汗だくになってしまったんだけどー」

※『はすはす』『いい香りしそう』『帰ったらお風呂入って』

「はーい! ニオイ嗅いでるお肉どもはそのうちしばくからねー! そんなわけで、今日の配信は終わり! またねみんなー! 年末まではちょこちょこ配信しまーす! ありがとねー! メリークリスマース!」

 ワーッと沸くコメント欄に手を振って、本日の配信は終了したのだった。
 いやあ、疲れた……!!
 命がけだと本当に疲れるなあ。

 チャラウェイも「フヒーッ」とため息を吐いたあと、ハイエースに設置してある携帯用冷蔵庫からビールを持ってきた。

「ウェイ!」

「あっ、さんきゅー!」

 二人でプシュッと缶を開けて、グーッと飲む。
 うひー!
 普段は飲まないビールなのに、うめー!

 二人で「かーっ」とか言って仕事の疲れを癒やしていると……。
 物々しい一団が到着したのだった。
 黒いバイクを先頭に、装甲車みたいなのが何台も。
 ヘリも!?

 バイクの上には、でかい人が乗っている。

「君たちがあの魔女を撃破してくれたのか。感謝する」

「あっ、いえいえ、どーもー」

 俺は軽く会釈しておいた。
 良く分からないなりに話を合わせておこう。

 チャラウェイは向こうが誰なのか分かっているようで、

「あっ、迷宮省の? 状況は解決ですよ。そいつが持ってた魔導書っていうの? それもスパイスの手に渡りましたし」

「ほう」

 バイクに乗っていた男の人がヘルメットを外した。
 かなり精悍な感じの男性だ。
 テレビで見たことあるな?

「近く、我々からの協力要請があるだろう。手を貸して欲しい。無論、報酬も出る。優秀な配信者とは常に繋がりを持っておきたいからな。これは私の名刺だ。何かあれば連絡するように。では」

 バイクに乗った人は去っていった。
 ふんふん。
 迷宮省長官、大京嗣也……?

 とんでもない大物じゃないか!
 現役の国会議員がバイクに乗って、魔女を追いかけてきたのか!?

 その後、装甲車から降りてきた黒いスーツの人達が色々俺達に事情聴取をしてきた。

 聞かれてもなあ……。
 祖母の仇の魔女が攻めてきたので返り討ちにしましたくらいしか言うことがないからなあ。

 彼らの名刺を受け取り、ここは解散。
 去り際に「未成年が飲酒はどうかと……。ほら、君の今後の成長とかね? そういうのに関わるから」とか言ってきたのでまあ、多分いい人たちなんだろうな……!

 ちなみに俺はおじさんですからね。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき
ファンタジー
「あたしの能力は運命の女。関わった者に世界を変えられる運命と宿命を授けるの」 能力者養成孤児院から、両替スキルはダメだと追い出され、スラム暮らしをする少年ウーサー。 冴えない彼の元に、異世界召喚された少女ミスティが現れる。 彼女は追っ手に追われており、彼女を助けたウーサーはミスティと行動をともにすることになる。 ミスティを巡って巻き起こる騒動、事件、戦争。 彼女は深く関わった人間に、世界の運命を変えるほどの力を与えると言われている能力者だったのだ。 それはそれとして、ウーサーとミスティの楽しい日常。 近づく心の距離と、スラムでは知れなかった世の中の姿と仕組み。 楽しい毎日の中、ミスティの助けを受けて成長を始めるウーサーの両替スキル。 やがて超絶強くなるが、今はミスティを守りながら、日々を楽しく過ごすことが最も大事なのだ。 いつか、運命も宿命もぶっ飛ばせるようになる。 そういう前向きな物語。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

処理中です...