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美少女デビュー編
第13話 同接パワー!!
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踏み込んだダンジョンは、汚れたタイルづくりの三和土を超えると、ありふれたフローリングが広がっていた。
1K一人暮らし民としては、ここに土足で踏み入るのは気が引けるんだよな……。
「あー、家主さんごめんなさい!!」
俺はぎゅっと目をつぶって、フローリングに上がった。
※『ちゃんと家主さんに配慮できてて偉い』『優れた人格の幼女』『推せる』『常識がある!』
「当たり前のことでは!? ペッパーども、普段推してる配信者、そんな社不(社会不適合うんちゃら)……いやいや、個性的な人たちなの?」
語尾でどうにかスパイスとしての人格を保つことができた。
いかんいかん、気を抜くと中身がまろび出てしまう。
※『今の一言でスパイスちゃんがちゃんとした育ちだって分かるくらいだぜ!』『ちゃんとしてる人だなあー』『賃貸で一人暮らしなんだね……』
リスナーの観察力、恐るべし!
行間をバリバリ読んでくる。
だが、こういうやり取りは配信の醍醐味だ。
やってる俺も楽しいし、リスナーのコメントもだんだん乗って来ているように感じる。
「じゃあ行っちゃおーう! えーとね、スパイスの能力を開示するよ。スパイスはねー、魔女なの。魔法少女。なので魔法を使います」
※『ほほー』『フォークリフトで空から突っ込んできたのは魔法だったのか!』『スパイスちゃんの細腕ではフォークリフトを上空にかちあげられないもんな』『ロリで超パワーも燃える』
「残念ながら魔法でーす! えーと、こういうの。浮かび上がれ、フロート!」
玄関に脱ぎ散らかされていた、行方不明になったという上司の靴に触れる。
靴はふわっと浮かび上がった。
※『おおー! 魔法!!』『現代魔法とちょっと違うくない?』『現代魔法はほら、科学と魔法の融合だから』『スパイスちゃんの魔法、使用画面とか出てこなかったよな?』『スルッと魔法を使ってた』
『いやあ、時代は変わるもんですねえ。魔法の手の内を知られたら、魔女戦では不利になるから秘匿するのが常識だったのに! 今は手の内を明かすんですねー』
「そうなの!? い、いや、でも配信者としてはあんまサプライズし過ぎるのもよくないし」
※『誰かと会話してる!』『横に浮かんでる本と?』『本が喋るの!?』
ペッパーどもがフロータに気付いた!
魔導書の方でもそれに気付いて、ふわふわ揺れながら『こんにちはー! スパイス様と契約した魔導書、フロータでーす! よろしくお願いしまーす!』とか声を出して挨拶する。
もちろん、コメントは大いに盛り上がった。
※『マスコットキャラか!』『魔導書の姿をしてるんだなあ』『声かわいい!』『声優みたい』
『あっあっ、主様、私、魔導書として生まれて五百年、初めて声を褒められました……。なんでしょう、背表紙のあたりがゾクゾクしてきます』
「目覚めちまったなあー。えーっと、話が進まない! ってことで行くねー。基本、スパイスは浮かべたり浮いたりします! それだけです! あと、浮かせたものを早く飛ばす!」
※『能力は三つか』『限られた手札で戦うんだな!』『少年漫画の能力バトルだ』
そんな感じだね。
「世の中のダンジョンにはたくさん、この魔導書の断片である断章が眠ってて、これを集めるとスパイスはパワーアップします! 魔女しか使えないからねー。見つけたらスパイスにご一報くださーい!」
※『コレクション要素まである!』『はーい!』『俺らでスパイスちゃんを強くしよう!』『リスナー参加型要素まであるなんて、今日がデビューとは思えんな』
盛り上がってる盛り上がってる。
何一つ、嘘を言っていないのに。
俺の存在自体がエンタメなのではなかろうか。
そうこうしていたら、しびれを切らしたかダンジョン奥からお迎えがやってきた。
『ウウアー!』
どたどた走ってくる足音。
それは……スーツを着込んだゾンビだ!
犠牲になった上司が取り込まれたやつかな……?
『リビングデッドですね! やっちゃいましょう主様!』
「オッケー! グロいから触りたくないので、行け、靴ー!! 加速せよ、アクセル!!」
俺は浮かせた上司の靴を、指先で弾いた。
フロートが掛かった靴は、ゆっくりと前進するはずだが……。
アクセルの力で急加速。
ちょっとスピードが出た自転車くらいの勢いで、上司ゾンビに炸裂した。
『ウグワーッ!?』
上司ゾンビが吹っ飛んだ!
ええーっ!? 靴でしょ!? 質量的に、革靴ぶつけられて人間が弾け飛ぶなんてあり得る!?
ここで俺は気付いた。
全身に、パワーが漲ってる。
イコール魔力だ。
そして俺の配信画面は、同接数1500人。
これが1500人同接パワー!?
吹っ飛んだ上司ゾンビのシルエットが、ちょっと向こうでバラバラになった。
革靴はバズーカ砲くらいの威力を発揮したらしい。
「同接数、やべー……」
※『つええええええ』『魔法すごい』『スパイスちゃんは本当に魔女だったんだなあ』
「いやー、スパイスもびっくりだよー。これ、押し出したものの重量ぶんくらいしか力が無いはずなんだけどー」
つまり、これを俺自身の力だと考えないほうがいいということだ。
配信の同接が多いほど力が高まる。
それは裏を返せば、同接が集まらなくなるほど力が出なくなるということだ。
配信者企業のイベントと、配信を被らせない方がいいな。
思った以上に戦略的にやっていかねばならないようだ。
今回は俺のデビュー配信だし、話題になっていたからこれくらい集まってくれたが……。
ある程度話題になり続けるように努力せねば、これは仕事としてやっていけないぞ。
「よーし、それじゃあダンジョンを攻略しちゃうぞー! ブラック労働の結果闇落ちしちゃった部屋の主、他人事とは思えないなあー。せめてスパイスがカワイく攻略して、成仏させてあげましょう。なーむー」
配信画面をチェックできるから、自分のカワイイ姿がよく分かる。
手を合わせて祈ってる俺、カワイイ!
※『ちらっと片目開けててカワイイ!』『デビューしたばかりの個人勢なのにアバターの作りが精密過ぎる……!』『本物みたい!』
本物だよ!
コメントにも、手を合わせる絵文字がダーッと流れてきた。
リスナーがあったまってるところで、一気に攻略をしていくとしよう。
1K一人暮らし民としては、ここに土足で踏み入るのは気が引けるんだよな……。
「あー、家主さんごめんなさい!!」
俺はぎゅっと目をつぶって、フローリングに上がった。
※『ちゃんと家主さんに配慮できてて偉い』『優れた人格の幼女』『推せる』『常識がある!』
「当たり前のことでは!? ペッパーども、普段推してる配信者、そんな社不(社会不適合うんちゃら)……いやいや、個性的な人たちなの?」
語尾でどうにかスパイスとしての人格を保つことができた。
いかんいかん、気を抜くと中身がまろび出てしまう。
※『今の一言でスパイスちゃんがちゃんとした育ちだって分かるくらいだぜ!』『ちゃんとしてる人だなあー』『賃貸で一人暮らしなんだね……』
リスナーの観察力、恐るべし!
行間をバリバリ読んでくる。
だが、こういうやり取りは配信の醍醐味だ。
やってる俺も楽しいし、リスナーのコメントもだんだん乗って来ているように感じる。
「じゃあ行っちゃおーう! えーとね、スパイスの能力を開示するよ。スパイスはねー、魔女なの。魔法少女。なので魔法を使います」
※『ほほー』『フォークリフトで空から突っ込んできたのは魔法だったのか!』『スパイスちゃんの細腕ではフォークリフトを上空にかちあげられないもんな』『ロリで超パワーも燃える』
「残念ながら魔法でーす! えーと、こういうの。浮かび上がれ、フロート!」
玄関に脱ぎ散らかされていた、行方不明になったという上司の靴に触れる。
靴はふわっと浮かび上がった。
※『おおー! 魔法!!』『現代魔法とちょっと違うくない?』『現代魔法はほら、科学と魔法の融合だから』『スパイスちゃんの魔法、使用画面とか出てこなかったよな?』『スルッと魔法を使ってた』
『いやあ、時代は変わるもんですねえ。魔法の手の内を知られたら、魔女戦では不利になるから秘匿するのが常識だったのに! 今は手の内を明かすんですねー』
「そうなの!? い、いや、でも配信者としてはあんまサプライズし過ぎるのもよくないし」
※『誰かと会話してる!』『横に浮かんでる本と?』『本が喋るの!?』
ペッパーどもがフロータに気付いた!
魔導書の方でもそれに気付いて、ふわふわ揺れながら『こんにちはー! スパイス様と契約した魔導書、フロータでーす! よろしくお願いしまーす!』とか声を出して挨拶する。
もちろん、コメントは大いに盛り上がった。
※『マスコットキャラか!』『魔導書の姿をしてるんだなあ』『声かわいい!』『声優みたい』
『あっあっ、主様、私、魔導書として生まれて五百年、初めて声を褒められました……。なんでしょう、背表紙のあたりがゾクゾクしてきます』
「目覚めちまったなあー。えーっと、話が進まない! ってことで行くねー。基本、スパイスは浮かべたり浮いたりします! それだけです! あと、浮かせたものを早く飛ばす!」
※『能力は三つか』『限られた手札で戦うんだな!』『少年漫画の能力バトルだ』
そんな感じだね。
「世の中のダンジョンにはたくさん、この魔導書の断片である断章が眠ってて、これを集めるとスパイスはパワーアップします! 魔女しか使えないからねー。見つけたらスパイスにご一報くださーい!」
※『コレクション要素まである!』『はーい!』『俺らでスパイスちゃんを強くしよう!』『リスナー参加型要素まであるなんて、今日がデビューとは思えんな』
盛り上がってる盛り上がってる。
何一つ、嘘を言っていないのに。
俺の存在自体がエンタメなのではなかろうか。
そうこうしていたら、しびれを切らしたかダンジョン奥からお迎えがやってきた。
『ウウアー!』
どたどた走ってくる足音。
それは……スーツを着込んだゾンビだ!
犠牲になった上司が取り込まれたやつかな……?
『リビングデッドですね! やっちゃいましょう主様!』
「オッケー! グロいから触りたくないので、行け、靴ー!! 加速せよ、アクセル!!」
俺は浮かせた上司の靴を、指先で弾いた。
フロートが掛かった靴は、ゆっくりと前進するはずだが……。
アクセルの力で急加速。
ちょっとスピードが出た自転車くらいの勢いで、上司ゾンビに炸裂した。
『ウグワーッ!?』
上司ゾンビが吹っ飛んだ!
ええーっ!? 靴でしょ!? 質量的に、革靴ぶつけられて人間が弾け飛ぶなんてあり得る!?
ここで俺は気付いた。
全身に、パワーが漲ってる。
イコール魔力だ。
そして俺の配信画面は、同接数1500人。
これが1500人同接パワー!?
吹っ飛んだ上司ゾンビのシルエットが、ちょっと向こうでバラバラになった。
革靴はバズーカ砲くらいの威力を発揮したらしい。
「同接数、やべー……」
※『つええええええ』『魔法すごい』『スパイスちゃんは本当に魔女だったんだなあ』
「いやー、スパイスもびっくりだよー。これ、押し出したものの重量ぶんくらいしか力が無いはずなんだけどー」
つまり、これを俺自身の力だと考えないほうがいいということだ。
配信の同接が多いほど力が高まる。
それは裏を返せば、同接が集まらなくなるほど力が出なくなるということだ。
配信者企業のイベントと、配信を被らせない方がいいな。
思った以上に戦略的にやっていかねばならないようだ。
今回は俺のデビュー配信だし、話題になっていたからこれくらい集まってくれたが……。
ある程度話題になり続けるように努力せねば、これは仕事としてやっていけないぞ。
「よーし、それじゃあダンジョンを攻略しちゃうぞー! ブラック労働の結果闇落ちしちゃった部屋の主、他人事とは思えないなあー。せめてスパイスがカワイく攻略して、成仏させてあげましょう。なーむー」
配信画面をチェックできるから、自分のカワイイ姿がよく分かる。
手を合わせて祈ってる俺、カワイイ!
※『ちらっと片目開けててカワイイ!』『デビューしたばかりの個人勢なのにアバターの作りが精密過ぎる……!』『本物みたい!』
本物だよ!
コメントにも、手を合わせる絵文字がダーッと流れてきた。
リスナーがあったまってるところで、一気に攻略をしていくとしよう。
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