モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
165 / 173
最終幕:エルフェンバイン王国の冒険

第156話 実家に向かって その3

しおりを挟む
 大型の荷車を買った。
 これをブランにくくりつけて……。
 そして俺達全員が乗り込む。

「よし、ブラン、出発!」

『わおーん!』

 ブランが元気に返事をすると、トットコと程よい速度で走り出す。
 いつものダッシュではない。

「あわわわわ、犬が荷車を引っ張ってますねー!!」

 カレンが車の縁にしがみついている。
 犬車慣れしていないな。
 普通慣れてないよな。

 初めて乗るくせに平然としているアルディがおかしい。

 犬車は大変揺れるし、尻も痛くなる。
 ということで、クッション用に藁を買って敷き詰めてある。

 これに乗ってしばらく行けば、俺の実家に到着するわけだ。

「のどかなところですー」

 最前列で風に揺られながら、ブランの尻に手を伸ばすクルミ。
 ペチンと尻尾ではたかれて、きゃっと言って手を引っ込めた。

「走ってるブランに触るのは危ないぞ。エルフェンバインは、そうだなあ。柄は悪いけど、まあまあ平和な国ではあるよね。少なくとも、アドポリスよりはモンスターは少ない。その代わり、盗賊がちょこちょこ出る。金品を差し出せば命までは取らないようなのばかりだけどね」

「こっちも平和ボケしてるんだな」

 アルディが笑う。

「この平和な時代に、臨戦態勢でいる方がおかしいと思いますわよ? 神都ラグナスでは、その戦争を起こそうとする輩のせいで大変な目に遭いましたけど」

「そうだったのか。俺もその場に居合わせたかったなあ……。ま、リーダーと旅をするようになってから、ちょこちょこ楽しいことが起こって充実してるけどな」

「アルディは本当に、どうして辺境伯の家に生まれてしまったんだろうなあ」

「全くだ」

 ドッと沸く荷馬車の中。

「なんというか、みんなとんでもない人達ですね?」

 カレンだけが訝しげな顔をしている。
 彼女はついこの間、ドレに話しかけられて飛び上がるほど驚いていた。

 その後、フランメに話しかけられて腰を抜かしかけていた。

 彼らが聞かせようと思わないと、彼らの言葉は聞こえてこない。
 ただの鳴き声だとしか思わないものな。

「しかも、言葉を話す動物が二匹もいるなんて……」

『動物ではないにゃ。クァールにゃ』

『一匹ではないチュン。一羽だチュン』

 カレンの言葉を訂正するモフモフ達。
 その様子を見て、アリサが相好を崩す。
 にまにましながら、ドレやフランメをブラッシングし始めた。

 鳥はブラッシングしていいのか?
 まあ、フランメはフェニックスだし、いいのか。

 エルフェンバイン旅行初日。
 夕方になった頃に、牧場のある町に到着した。

 この辺りには町を囲む塀なんてものはない。
 町を襲うモンスターなどいないし、町の住人はみんな、賊と戦うための武器を持っているからだ。

 ボウガンが軒先にぶら下がった家に挨拶する。

「こんにちは! 旅人なんだが、馬小屋が空いてたら使わせてもらえないだろうか」

 すると、恰幅のいいおじさんが出てきた。

「おう、いいぞ……って、うわあ、でけえ犬だなあ!! 確かに馬小屋でもなきゃ泊められねえよなあ。ま、うちの馬小屋で良ければ使ってくれ。壊さないでくれよ」

「ああ! ありがとう!」

 本日の宿をゲット。
 ここら一帯は、まるごと牧場みたいなものだ。
 馬や牛、羊が飼われている。

 エルフェンバインは森と平野の国。
 森がないところは、ほぼほぼ牧場か畑だ。

 この国で取れた作物が、加工されて全世界に輸出されている。
 だから、エルフェンバインから外の世界に出ていくことは簡単だ。
 戻ってくることも、同じ。

「なんで馬小屋に泊まるんですねー!? 宿とかないんですね!?」

「牧場主と牧場の労働者だけの町だからなあ、ここ。宿泊施設はないと思うね。ま、馬小屋も悪いところじゃないよ。大自然のにおいを感じながら眠りにつけるし、なんなら窓から星空だって見える」

 ぶうぶう言うカレンをなだめつつ、藁を整えてベッドの用意。
 もうすぐ日も暮れる。
 明日のための準備だってしなくてはならない。

 外では、アリサが食事の用意を始めた。

 珍しい客人が来たと、牧場の人々が顔を出してくる。
 そしてみんな、ブランを見て「うおお」「でかい」「もっふもふだ」と歓声をあげるのだ。
 同時に、クルミとアリサとカレンを見て、「都会の女子だ」「かわいい」「もっふもふだ」と歓声をあげる。

「クルミはなんか、ブランとおんなじ扱いをされてる気がするですよ?」

「クルミは確かに尻尾がモフモフだからねえ」

「うん! クルミはセンセエだけに好かれてればそれでいいですよー!」

 むぎゅっとくっついてきた。
 その様子を見て、牧童達がおおーっとどよめく。
 ちょっと羨ましそうだ。

 さて、ここからはお祭りみたいになった。
 俺が最初に声を掛けた男の人は牧場主だったようで、彼がでかい羊の肉の塊を持ってきたのだ。

 ワイワイとみんなでこれをバラし、アリサが用意した焚き火にくべて、バーベキューとなった。
 熱いミルクティやブランデーが回されてくる。

 みんな、歌ったり踊ったり、楽器を奏でたりして大騒ぎである。
 畜舎の方にもこの騒ぎが聞こえていて、牛や羊の鳴き声が唱和するように響き渡った。

 牧場主が俺の隣に腰掛けて、ブランデーを呷る。

「あんた、外の国から来たんだろ。いや、土地勘はあるみてえだから、帰ってきたんだな」

「まあ、そんなところだよ」

「外はどうだった?」

「大変だ。事件には巻き込まれるし、モンスターは多いし。だけど、たくさんの出会いがある」

「そうかあ……。俺もなあ、若い頃は外の世界に憧れたもんだ。だけどな。ちょっと別の国に行った途端、モンスターに襲われてなあ。命からがらこの国に逃げ帰ってきた」

 そう言って、牧場主はわっはっは、と笑った。

「だが、お陰で親父から牧場を受け継ぎ、こうしてでかくできた。俺はあれだ。外の世界が向いてなかったんだな。だが、あんたは違うみたいだ。外向きの面構えをしてる」

「そいつはどうも」

「またすぐに発つんだろ? この国に腰を据えるってタイプにゃ見えないぜ」

「そうだなあ……。とりあえず満足するまでは、世界を巡りたいかな」

 口に出してみて、俺は自分の思いを再確認できた。
 そうだな。俺はまだまだ旅をしたいんだ。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...