モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
161 / 173
第四部:オケアノス海の冒険 7

第152話 ソラフネ山遺跡 その4

しおりを挟む
 遺跡の頭脳とも言える、アレクシア。
 神話返りを起こしていた、ミュータントメイカーという魔法装置を停止してくれたはずだが、さて、どうなっていることやら。

 遺跡から外に出てみて、周囲を伺ってみても、当たり前だが実感がない。

「あ、出てきた!」

「どうだった?」

 集落の人々が、俺達に聞いてくる。

「恐らく、これで神話返りは止まるはずだ。あとは、遺跡の中ではあまり会話をしないこと。これを守ってくれれば神話返りは起こらないから」

「会話……?」

「そうだなあ……。つまり、遺跡の中には君達の言葉を間違った風に理解して、それを現実にしてしまう魔法の力が働いているってことだよ」

「ええっ、じゃあ、神話返りは俺らが起こしたってことか!?」

「やばい。そんなの外に言えない」

 集落の人々が震え上がった。
 これならば、大丈夫だろう。
 アレクシアの前で、迂闊なことは言わなくなるに違いない。

 それにしても、こんなとんでもないものが千年もの間、この島に存在していたんだな。
 むしろ、地表に落下してきたこのソラフネを中心として、島が出来上がったのかも知れない。

 いやあ、世の中は神秘に満ち満ちているなあ。
 今回の仕事は、ちょっと楽しかった。

 その後、集落の人々を連れて外に出てみた。
 山頂はモンスターが現れやすかったらしく、みんな怯えていたが、いつまで経ってもモンスターは姿を現さない。

「においもしないですねえ」

『わっふん』

『空から見回ったけど、怪しい生き物は全部いなくなってるチュン』

 クルミ、ブラン、フランメのお墨付きか。
 これは本格的に、あの偽モンスター達はいなくなったと考えて良さそうだ。

「念の為に何日か様子を見てくれ。全てのモンスターは死んだと思うけどね」

「ありがとうございます!」

 集落の人々が揃って、俺に頭を下げる。

「いやいや。事のついでさ。それに俺の知的好奇心みたいなのも満たされたし」

「ワタシの地位もこれで安泰ですねー」

 カレンがニヤニヤしている。
 一人だけ、直接的に利益が関わるのがいたな。

 集落から離れていく途中で、ドレがこっそり俺に教えてくれた。

『集落の人間達、船と同じにおいがしたにゃ』

「そりゃあ、遺跡に潜るのを生業にしてるんだから当たり前だろ」

『そうじゃないにゃ。あれは宇宙を渡る移民船の成れ果てにゃ。たくさんの人間を詰め込んでこの星にやって来たはずにゃ。だけど己達が潜ったら、中にそんな跡は全くなくなってたにゃ』

「あれが移民船……!? 別世界の人間を連れてきていたってことか」

『そうにゃ。移民はきっと成功したにゃ。ただ、連れてこられた人間の子孫は、もとの星の知識とか文化とか、全部なくして現地の住民と同化してしまったにゃあ。だから、集落に残ってる連中は比較的血が濃い奴らにゃ。遺跡も攻撃してこないはずにゃあ』

「俺たちの事を攻撃したのは」

『己やご主人がまんま異物だからにゃ。だけど、力で黙らせたので船が命乞いして来たにゃ』

「なるほどなあ」

 なかなかとんでもない種明かしだ。

 さて、下山していくと、モンスターが排除されているのだなということは実感として分かる。
 何しろ、登山の時はあれだけ頻繁に現れた偽モンスターが、一匹も出てこない。
 あまりにも何もなくて、すぐに山間の村に到着したくらいだ。

 ここで聞き込みをしてみる。

「いきなり静かになった」

「前までは、モンスターの吠える声で夜もうるさいくらいだったのに」

 間違いなく、偽モンスターはいなくなっていた。
 モフライダーズは、再び山間の村で一泊することにする。

 確かに、夜はとても静かだった。
 動物や鳥の鳴き声がかすかに聞こえる。

 モンスターによって追い払われていた彼らも、じきに戻ってくるのだろう。
 そして、きっとまた夜は賑やかになる。

 明け方ころに一度目覚めた。
 日の出ももうすぐという頃合いだろうか。

 隣でクルミが熟睡していたので、起こさないようにそっと起き上がった。

「なんだろう。外が明るい?」

 俺はかなり正確な体内時計があって、それがまだ、日が出る時間ではないと告げている。
 だが、外にはぼんやりとした光がある。

 宿の外に出てみて、それが何なのかを理解した。
 集落の辺りから、淡い光が放たれている。

 魔法的な明かりだが、俺にはそれがなんなのかすぐに分かった。
 遺跡が放つ光だ。

 遺跡の中で見た、アレクシアが放つ光とそっくりだった。
 さては、アレクシアが外に顔を出しているんだろうか?

「ドレの話では、集落の人達は別の世界から来た人間の子孫らしかったからなあ。この光も、案外彼らの中では日常なのかも知れない」

 ぼんやりをその輝きを見つめていたら、海の方から本当の太陽が上ってきた。
 日の出の時間だ。

 それに追いやられるようにして、集落から放たれていた淡い輝きが消えていく。

「あれはなんだったんだろうな」

 俺が呟くと、どこにいたのかブランが寄ってきた。

『わふ』

「え? 遺跡が別れの挨拶をしたって?」

『わふん』

「ええ……そんなに俺が遺跡に警戒されてたのかい? ブランとドレとローズとフランメを連れてるからかなあ……」

 実感が全く無い。
 つまりあの光は、遺跡が、危険なものが遠ざかっていく事の解放感を現したものだったらしい。
 解せぬ。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...