モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第四部:オケアノス海の冒険 1

第121話 流れ着くのは炎の島 その3

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「島を砕こうとしてるって?」

 不思議な香りのするお茶をのみながら、エレーナの話を聞くことにする。

 彼女は炎の巫女と言って、炎の精霊王アータルに仕える存在だ。
 しかも役割としても巫女ではなく、魔力が繋がっているらしく、炎の魔法であれば無尽蔵に使用できるのだそうだ。
 その代わり、体質も炎に近いものになる。

 エレーナの体温は常に40度前後あり、その気になれば触れたものを焼いたり、水を沸騰させたりできる。
 炎は彼女に一切のダメージを与えない。
 反面、水や冷たいものが弱点になり、全身が水に浸かると命が危ない。

 そんな、炎と極めて近い存在となった彼女だからこそ分かるのだ。

「アータル様はね、飽きたの」

「飽きた!?」

「そう。ずーっと昔に、アータル様は人間と戦って、魔王に倒されてるのよ。それで、魔王は炎の巫女と契り、代々の巫女は魔王の血を受け継ぐことになった。それはそうとして、倒されたアータル様は復活して、また癇癪を起こして人間と喧嘩した。今度はかなり腹が立ってたみたいで、自分の山を大きな島から切り離した。溶岩が山を島に変えて、やがてアータル様を信じる者が住み着いた。だけど、島って変化が乏しいじゃない? あたしもほんとは都会に出ていきたいんだけどー」

 エレーナ、都会に憧れていたか。

「分かった。精霊王と言えど、退屈には耐えられないってわけだな」

「そういうことね。あたし達の暮らしは、千年前から何も変わってないの。時々、水の精霊王オケアノス様が旅人を送り込んでくれるから、新しい血を取り込むことができる。そうやってアータル様を崇めながら細々暮らしてきた」

「ふむ、俺達がここに来る前、とんでもない嵐に巻き込まれたんだ。そして嵐の切れ間にこの島が見えたんだが」

「オケアノス様の常套手段よ。アータル様が島を割ったら、海に溶岩が流れ出すでしょ。あの方、それを嫌がったんだわ」

「精霊王同士の人間関係と言うか、なんというか。つまり、俺達はその折衝役で送り込まれたと」

「そうだと思うわねえ」

 エレーナが笑った。

「お茶、フシギな味がしますねえー」

 クルミはお茶を気に入ったようでごくごく飲んでいる。
 温度は俺達に気を使ってか、ややぬるめ。

「島にはお茶っ葉を育てる余裕なんてないもの。穀物の葉を煎じたものよ」

「ほえー。ちょっと香ばしいかんじでクルミはすきですねえ」

「お茶菓子もなかなかですわねえ。甘みが足りませんけど」

「甘味もあまり多くないのよね。島の甘いものというと、果物とはちみつくらいだわ」

 仲間達がエレーナと言葉を交わす。
 黙っていたアルディも口を開いた。

「ふむ、つまりお前は、俺と先祖が一緒ということか」

「そうなりますわね、土の巫女の血筋の人」

「ほう」

 アルディとエレーナを交互に見る。
 この二人は繋がりがあるわけだな。

 アドポリスで魔王復活案件に関わってから、ちょこちょこと魔王の話が出てくるようになった。
 関係者が未だに生きているということは、魔王は実際に存在したんだろう。
 今は国同士の大きな戦争も無く、大きな目で見れば平和な時代だ。

 魔王がいたなんて想像もできないな。

「それで……」

 俺が切り出す。
 周囲が揺れ始めてきている。
 見上げると、島の中央に位置する山から、大きな手が覗いていた。

 全身が炎でできた巨人が、ゆっくりと体を起こしつつある。

「あれをどうやって鎮めるか、だよなあ」

 炎の精霊王アータルが、空に向かって咆哮するのだった。



『わふわふ』

『ブランの言う通りにゃ。物理的に殴って止めるのは己達のパワー的に難しいにゃ』

「やっぱり君達でも難しいか」

『あれは自然現象そのものにゃ。規模が大きすぎるにゃ』

『わふ』

 ブランいわく、だが人の形になってまとまっているから、攻撃自体は可能だろうと。
 アータルの一番濃い・・部分を探り出して、そこをどうにかできれば。

「濃い部分か」

「弱点を探しますのね? 弱点の性質が分かれば、神聖魔法でそれに近いものを調べられますけれど」

「万能だなあ、ラグナの神聖魔法」

「物理的なことなら、自然現象の再現以外は大体できますわね。反面、物理的なことに限られますわ」

 精神的なところはザクサーンが担当してるらしい。

「でも、闇雲に、どういうものなのか分からないものを探すことはできませんの。どうにかしてアータルの中の、濃い部分? そういうものが判別できればいいのですけれど」

 ふーむ。
 俺は腕組みをしながら、炎の巨人を眺める。
 巨人は今のところ、信者である島民達には危害を加えたりしないようだ。

 だが、俺達は違う。
 どうやら俺達は、精霊王オケアノスに送り込まれたアータル対策チームみたいなものらしい。

 巨人の顔に、目のようなものが2つ並んでいる。
 それが俺達をギロリと睨んだ。

『ごおおおおおおおおおっ』

 アータルが吠える。
 すると、彼の目の前に小さな炎の塊が幾つも生まれた。

 ああ、いや、小さくは見えるが、アータルと比較して、だ。
 あれの一つ一つは、家ほどもあるぞ。

 それに手足が生え、トカゲのような姿になって山を駆け下りてくる。

「あれは俺も知ってる。サラマンダーだな。でも、あんなでかいサラマンダー初めて見た」

「よしよし、荒事だな? 待ってたぜ!」

 アルディが生き生きとしてくる。

「まあ待ってくれ。どうせ戦うなら、効果的な戦い方をした方がいいだろ?」

「ほう。リーダー、サラマンダーとやりあったことがあるのか」

「もちろん。しかも今回はおあつらえ向きに、海が近い」

 俺は仲間たちに指示を飛ばす。

「さあみんな、サラマンダーを撃退するぞ。まずはあいつらを浜辺に誘い込もうじゃないか」


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