モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
130 / 173
第四部:オケアノス海の冒険 1

第121話 流れ着くのは炎の島 その3

しおりを挟む
「島を砕こうとしてるって?」

 不思議な香りのするお茶をのみながら、エレーナの話を聞くことにする。

 彼女は炎の巫女と言って、炎の精霊王アータルに仕える存在だ。
 しかも役割としても巫女ではなく、魔力が繋がっているらしく、炎の魔法であれば無尽蔵に使用できるのだそうだ。
 その代わり、体質も炎に近いものになる。

 エレーナの体温は常に40度前後あり、その気になれば触れたものを焼いたり、水を沸騰させたりできる。
 炎は彼女に一切のダメージを与えない。
 反面、水や冷たいものが弱点になり、全身が水に浸かると命が危ない。

 そんな、炎と極めて近い存在となった彼女だからこそ分かるのだ。

「アータル様はね、飽きたの」

「飽きた!?」

「そう。ずーっと昔に、アータル様は人間と戦って、魔王に倒されてるのよ。それで、魔王は炎の巫女と契り、代々の巫女は魔王の血を受け継ぐことになった。それはそうとして、倒されたアータル様は復活して、また癇癪を起こして人間と喧嘩した。今度はかなり腹が立ってたみたいで、自分の山を大きな島から切り離した。溶岩が山を島に変えて、やがてアータル様を信じる者が住み着いた。だけど、島って変化が乏しいじゃない? あたしもほんとは都会に出ていきたいんだけどー」

 エレーナ、都会に憧れていたか。

「分かった。精霊王と言えど、退屈には耐えられないってわけだな」

「そういうことね。あたし達の暮らしは、千年前から何も変わってないの。時々、水の精霊王オケアノス様が旅人を送り込んでくれるから、新しい血を取り込むことができる。そうやってアータル様を崇めながら細々暮らしてきた」

「ふむ、俺達がここに来る前、とんでもない嵐に巻き込まれたんだ。そして嵐の切れ間にこの島が見えたんだが」

「オケアノス様の常套手段よ。アータル様が島を割ったら、海に溶岩が流れ出すでしょ。あの方、それを嫌がったんだわ」

「精霊王同士の人間関係と言うか、なんというか。つまり、俺達はその折衝役で送り込まれたと」

「そうだと思うわねえ」

 エレーナが笑った。

「お茶、フシギな味がしますねえー」

 クルミはお茶を気に入ったようでごくごく飲んでいる。
 温度は俺達に気を使ってか、ややぬるめ。

「島にはお茶っ葉を育てる余裕なんてないもの。穀物の葉を煎じたものよ」

「ほえー。ちょっと香ばしいかんじでクルミはすきですねえ」

「お茶菓子もなかなかですわねえ。甘みが足りませんけど」

「甘味もあまり多くないのよね。島の甘いものというと、果物とはちみつくらいだわ」

 仲間達がエレーナと言葉を交わす。
 黙っていたアルディも口を開いた。

「ふむ、つまりお前は、俺と先祖が一緒ということか」

「そうなりますわね、土の巫女の血筋の人」

「ほう」

 アルディとエレーナを交互に見る。
 この二人は繋がりがあるわけだな。

 アドポリスで魔王復活案件に関わってから、ちょこちょこと魔王の話が出てくるようになった。
 関係者が未だに生きているということは、魔王は実際に存在したんだろう。
 今は国同士の大きな戦争も無く、大きな目で見れば平和な時代だ。

 魔王がいたなんて想像もできないな。

「それで……」

 俺が切り出す。
 周囲が揺れ始めてきている。
 見上げると、島の中央に位置する山から、大きな手が覗いていた。

 全身が炎でできた巨人が、ゆっくりと体を起こしつつある。

「あれをどうやって鎮めるか、だよなあ」

 炎の精霊王アータルが、空に向かって咆哮するのだった。



『わふわふ』

『ブランの言う通りにゃ。物理的に殴って止めるのは己達のパワー的に難しいにゃ』

「やっぱり君達でも難しいか」

『あれは自然現象そのものにゃ。規模が大きすぎるにゃ』

『わふ』

 ブランいわく、だが人の形になってまとまっているから、攻撃自体は可能だろうと。
 アータルの一番濃い・・部分を探り出して、そこをどうにかできれば。

「濃い部分か」

「弱点を探しますのね? 弱点の性質が分かれば、神聖魔法でそれに近いものを調べられますけれど」

「万能だなあ、ラグナの神聖魔法」

「物理的なことなら、自然現象の再現以外は大体できますわね。反面、物理的なことに限られますわ」

 精神的なところはザクサーンが担当してるらしい。

「でも、闇雲に、どういうものなのか分からないものを探すことはできませんの。どうにかしてアータルの中の、濃い部分? そういうものが判別できればいいのですけれど」

 ふーむ。
 俺は腕組みをしながら、炎の巨人を眺める。
 巨人は今のところ、信者である島民達には危害を加えたりしないようだ。

 だが、俺達は違う。
 どうやら俺達は、精霊王オケアノスに送り込まれたアータル対策チームみたいなものらしい。

 巨人の顔に、目のようなものが2つ並んでいる。
 それが俺達をギロリと睨んだ。

『ごおおおおおおおおおっ』

 アータルが吠える。
 すると、彼の目の前に小さな炎の塊が幾つも生まれた。

 ああ、いや、小さくは見えるが、アータルと比較して、だ。
 あれの一つ一つは、家ほどもあるぞ。

 それに手足が生え、トカゲのような姿になって山を駆け下りてくる。

「あれは俺も知ってる。サラマンダーだな。でも、あんなでかいサラマンダー初めて見た」

「よしよし、荒事だな? 待ってたぜ!」

 アルディが生き生きとしてくる。

「まあ待ってくれ。どうせ戦うなら、効果的な戦い方をした方がいいだろ?」

「ほう。リーダー、サラマンダーとやりあったことがあるのか」

「もちろん。しかも今回はおあつらえ向きに、海が近い」

 俺は仲間たちに指示を飛ばす。

「さあみんな、サラマンダーを撃退するぞ。まずはあいつらを浜辺に誘い込もうじゃないか」


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...