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第三部:セントロー王国の冒険 2
第98話 地底を抜けてその先へ その5
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ドワーフの通り道にきらめく、星空のような輝き。
鉱物の中に含まれる貴金属などが、自ら光を放っているようにも見える。
恐らく魔力に反応しているのだろう。
うーん、ブランに運んでもらっているから、考察が捗るな。これはこれでいい。
「センセエ、なんだか楽しそうですね?」
「うん、自分の足で歩かなくていいって、これはこれでいいものだなあって思ってさ」
「そうなのです? クルミだったら寝ちゃうですねえ」
「そうだねえ。でもね、このドワーフの通り道、眠っている暇が無いくらい色々なものが流れてくるんだ。一つ一つを目に焼き付けて、あれはなんだろう、これはなんだろうって考えるだけで忙しいよ」
「ほえー」
クルミが感心した。
「それでこそセンセエですね! クルミもうれしいです!」
?
どうして嬉しいのだろう。
だが、彼女が喜んでいるならそれでいいか。
通り道はしばらく続く。
恐らく、煮立った湯が水になる程度の時間は過ぎたのではないだろうか。
ある時、突然この地中の星空は終わった。
やって来たのは、風の感触と土のにおい、木々の葉が触れ合う音がして、強い光。
「あ、地上か」
少ししてから気付いた。
地底の星空が見えなくなってしまった。
ちょっと惜しいな。
「じゃあ、降りるとするか」
俺はグルグル巻きの中で、ウエストポーチに仕込んでいた小型ナイフを取り出し、ロープを切断した。
ぱらりと解けるグルグル巻き。
「オースさん今自力で脱出しましたわね!?」
「一瞬でロープを抜けたぜ……。あえて縛られてたんすか」
「そりゃあもちろん。何も道具がなくても、関節を外して脱出するくらいはできる」
「なんて器用な人なんだ……」
アリサとカイルが呆れ半分、尊敬半分の目を向けてくる。
何があっても対応できるように、一通りの盗賊の技は身につけているんだ。
縄抜けくらいはお手の物だ。
これで手首も縛られていたらちょっと大変だったが、その場合は靴の踵に仕込んだ刃物を使うことになっていたかな。
ブランの背中から、地面に降り立つ。
おお、地下世界とは地面の感触が違うな。
なんというか、柔らかい。
土の感触だ。
俺が足元を、ポンポン踏んで確かめていると、出迎えが現れたようだ。
「客人連れか」
突然気配が出現し、声を発した。
振り返ると、エルフがいる。
細身だがしなやかな体つきで、鋭い目をしたエルフだ。
「こいつはどうも、トーガさん! この人らは、イリアノスから来た人間達でして」
ドワーフが挨拶している。
ドワーフとエルフはあまり仲が良くなかったはずだが……。
「そうか。お前らが連れてきたということは、危険の無い人間だと判断したのだろう。おかしなことをしたら俺が殺すがな」
「なんだとぉ!」
カイルがカッとなった。
見た目は小柄で細身のエルフに、大口を叩かれたら、肉体自慢の戦士としてはそりゃあムカッとなるよな。
「やるか?」
「やらない。抑えてくれカイル。恐らく彼は、ビブリオス男爵領の重鎮だ。それに、見た目通りの年齢じゃない。俺達が知るエルフは、せいぜい人間の倍くらいしか生きないが……本物がいて、人間の二十倍くらい長く生きるんだそうだ。トーガさんと言ったかな。あなたは本物のエルフだろ?」
「我らは試練の民。森と命をともにする者。ジーンはワイルドエルフと呼ぶがな」
「ワイルドエルフ!! 本物だ!」
「センセエの鼻息が荒くなったです!!」
「オースさん、ワイルドエルフってなんなんすか?」
「うん、不満げなカイルに説明してあげよう。彼らは、俺が話した通りのエルフだよ。長ければ千年の寿命を持つ、精霊に近い種族だ。俺達が町でよく見るエルフは、彼らから精霊力が抜け、より普通の生き物に近づいた存在だ。トーガ氏は、それとは全く次元の異なる存在ということだね。恐らく、見た目では強さは判断できないよ」
俺が説明していると、当のトーガ氏はなんとも言えぬ表情をした。
「どうしたんだい?」
「いやな。お前、俺の友人によく似てると思ってな」
「友人と言うと……ビブリオス男爵か」
「そうだ。奴とお前を会わせると大変ややこしい話になりそうだ。だがあいつはそれを望むだろう。ついてこい。案内してやる」
トーガが踵を返した。
「強いエルフさんといいましたけど……ブランちゃんやドレちゃんには反応しませんでしたわね」
「より次元が高い相手だと、よく分からなかったりするからね」
『崇めるにゃ』
『わふん』
『ちゅう』
ドレがブランの頭の上に登り、ドレの頭の上にローズが降り立った。
モフモフ三段重ねだ。
「あるいは……ここにも、彼らに匹敵する何かがいるのかも」
ワイルドエルフに案内され、森の中を抜けていく。
ここはスピーシ大森林と呼ばれており、セントロー王国の西方に広がる広大な森なのだそうだ。
トーガ氏の説明では、あくまで森が世界の中心というニュアンスになってはいたが、それを人間側の解釈で噛み砕くとそうなる。
「それにしても」
俺は視線をブラン達に向けた。
モフモフ三段重ね。
イリアノスではロッキーを加えて四段だったが、何度見てもいいものだ。
ローズの背中に触って、そこからドレ、ブランとすすすっと指をおろしていく。
おお、何という感触。
それぞれ毛並みが違っていて楽しい。
俺は思わず、モフモフを触ることに夢中になってしまった。
そのため、気づかなかったのである。
森を出てすぐのところに畑があり、そこにしゃがみこんで何かをいじっていた男がいたことに。
褐色の肌に銀髪の彼もまた、俺に気づかずに何かを触っていた。
そのため。
俺と彼は激突したのだ。
「ぐわーっ」
畑の中に落っこちる男。
「あっ、ごめん!!」
俺も慌てた。
「ひゃーっ、せんぱーい!!」
畑に落ちた男を追って、ピンク色の髪をした娘が走っていった。
「あー。まさかここにいたとは」
トーガ氏が半笑いになった。
「ここ、とは?」
俺は、畑に落ちた男を助けるべく、そこへ降りていく最中だ。
「お前が突き落とした形になったそいつが、ビブリオス男爵。俺はジーンと呼んでいる」
これが、俺とビブリオス男爵ジーンとの出会いだった。
鉱物の中に含まれる貴金属などが、自ら光を放っているようにも見える。
恐らく魔力に反応しているのだろう。
うーん、ブランに運んでもらっているから、考察が捗るな。これはこれでいい。
「センセエ、なんだか楽しそうですね?」
「うん、自分の足で歩かなくていいって、これはこれでいいものだなあって思ってさ」
「そうなのです? クルミだったら寝ちゃうですねえ」
「そうだねえ。でもね、このドワーフの通り道、眠っている暇が無いくらい色々なものが流れてくるんだ。一つ一つを目に焼き付けて、あれはなんだろう、これはなんだろうって考えるだけで忙しいよ」
「ほえー」
クルミが感心した。
「それでこそセンセエですね! クルミもうれしいです!」
?
どうして嬉しいのだろう。
だが、彼女が喜んでいるならそれでいいか。
通り道はしばらく続く。
恐らく、煮立った湯が水になる程度の時間は過ぎたのではないだろうか。
ある時、突然この地中の星空は終わった。
やって来たのは、風の感触と土のにおい、木々の葉が触れ合う音がして、強い光。
「あ、地上か」
少ししてから気付いた。
地底の星空が見えなくなってしまった。
ちょっと惜しいな。
「じゃあ、降りるとするか」
俺はグルグル巻きの中で、ウエストポーチに仕込んでいた小型ナイフを取り出し、ロープを切断した。
ぱらりと解けるグルグル巻き。
「オースさん今自力で脱出しましたわね!?」
「一瞬でロープを抜けたぜ……。あえて縛られてたんすか」
「そりゃあもちろん。何も道具がなくても、関節を外して脱出するくらいはできる」
「なんて器用な人なんだ……」
アリサとカイルが呆れ半分、尊敬半分の目を向けてくる。
何があっても対応できるように、一通りの盗賊の技は身につけているんだ。
縄抜けくらいはお手の物だ。
これで手首も縛られていたらちょっと大変だったが、その場合は靴の踵に仕込んだ刃物を使うことになっていたかな。
ブランの背中から、地面に降り立つ。
おお、地下世界とは地面の感触が違うな。
なんというか、柔らかい。
土の感触だ。
俺が足元を、ポンポン踏んで確かめていると、出迎えが現れたようだ。
「客人連れか」
突然気配が出現し、声を発した。
振り返ると、エルフがいる。
細身だがしなやかな体つきで、鋭い目をしたエルフだ。
「こいつはどうも、トーガさん! この人らは、イリアノスから来た人間達でして」
ドワーフが挨拶している。
ドワーフとエルフはあまり仲が良くなかったはずだが……。
「そうか。お前らが連れてきたということは、危険の無い人間だと判断したのだろう。おかしなことをしたら俺が殺すがな」
「なんだとぉ!」
カイルがカッとなった。
見た目は小柄で細身のエルフに、大口を叩かれたら、肉体自慢の戦士としてはそりゃあムカッとなるよな。
「やるか?」
「やらない。抑えてくれカイル。恐らく彼は、ビブリオス男爵領の重鎮だ。それに、見た目通りの年齢じゃない。俺達が知るエルフは、せいぜい人間の倍くらいしか生きないが……本物がいて、人間の二十倍くらい長く生きるんだそうだ。トーガさんと言ったかな。あなたは本物のエルフだろ?」
「我らは試練の民。森と命をともにする者。ジーンはワイルドエルフと呼ぶがな」
「ワイルドエルフ!! 本物だ!」
「センセエの鼻息が荒くなったです!!」
「オースさん、ワイルドエルフってなんなんすか?」
「うん、不満げなカイルに説明してあげよう。彼らは、俺が話した通りのエルフだよ。長ければ千年の寿命を持つ、精霊に近い種族だ。俺達が町でよく見るエルフは、彼らから精霊力が抜け、より普通の生き物に近づいた存在だ。トーガ氏は、それとは全く次元の異なる存在ということだね。恐らく、見た目では強さは判断できないよ」
俺が説明していると、当のトーガ氏はなんとも言えぬ表情をした。
「どうしたんだい?」
「いやな。お前、俺の友人によく似てると思ってな」
「友人と言うと……ビブリオス男爵か」
「そうだ。奴とお前を会わせると大変ややこしい話になりそうだ。だがあいつはそれを望むだろう。ついてこい。案内してやる」
トーガが踵を返した。
「強いエルフさんといいましたけど……ブランちゃんやドレちゃんには反応しませんでしたわね」
「より次元が高い相手だと、よく分からなかったりするからね」
『崇めるにゃ』
『わふん』
『ちゅう』
ドレがブランの頭の上に登り、ドレの頭の上にローズが降り立った。
モフモフ三段重ねだ。
「あるいは……ここにも、彼らに匹敵する何かがいるのかも」
ワイルドエルフに案内され、森の中を抜けていく。
ここはスピーシ大森林と呼ばれており、セントロー王国の西方に広がる広大な森なのだそうだ。
トーガ氏の説明では、あくまで森が世界の中心というニュアンスになってはいたが、それを人間側の解釈で噛み砕くとそうなる。
「それにしても」
俺は視線をブラン達に向けた。
モフモフ三段重ね。
イリアノスではロッキーを加えて四段だったが、何度見てもいいものだ。
ローズの背中に触って、そこからドレ、ブランとすすすっと指をおろしていく。
おお、何という感触。
それぞれ毛並みが違っていて楽しい。
俺は思わず、モフモフを触ることに夢中になってしまった。
そのため、気づかなかったのである。
森を出てすぐのところに畑があり、そこにしゃがみこんで何かをいじっていた男がいたことに。
褐色の肌に銀髪の彼もまた、俺に気づかずに何かを触っていた。
そのため。
俺と彼は激突したのだ。
「ぐわーっ」
畑の中に落っこちる男。
「あっ、ごめん!!」
俺も慌てた。
「ひゃーっ、せんぱーい!!」
畑に落ちた男を追って、ピンク色の髪をした娘が走っていった。
「あー。まさかここにいたとは」
トーガ氏が半笑いになった。
「ここ、とは?」
俺は、畑に落ちた男を助けるべく、そこへ降りていく最中だ。
「お前が突き落とした形になったそいつが、ビブリオス男爵。俺はジーンと呼んでいる」
これが、俺とビブリオス男爵ジーンとの出会いだった。
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