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第三部:セントロー王国の冒険 1
第93話 ここは地下世界レイアス その5
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朝になり、空が明るくなるとあちこちの家から住民達が顔を出した。
皆、白いドワーフかリザードマンである。
ドワーフの家とリザードマンの家は別々になっているようだ。
昨日会ったドワーフがいたので、挨拶をする。
「おう、よく眠れたかい」
「ああ。おかげさまで。明け方頃に君達が、暴れる牙と呼んでいるであろう亜竜を見たよ。村のにおいを嗅いでから遠くに行ってしまった」
「そうだろうそうだろう。しばらく村にいるとな、村のにおいがつくからあいつらにも食われないようになるんだ。村から離れてるとにおいは薄れちまうけどな」
がっはっは、と笑うドワーフ。
次いで、昨日のリザードマンもやって来た。
リザードマンの区別はあまりつかないかと思っていたのだが、案外みんな見た目が違う。
昨日の彼はひょろりとしていて、目が大きい。
他人の目を見て物を言うタイプだ。
「やア。暴れる牙を見たらしいネ。だがそれはいつものことだヨ。あれが村に入ってこないようにするたメ、我々は苔をいつも育てているんダ」
「育ててるって、もしかして床に敷き詰めてる乾いたようなのは」
「人の体温で苔が育つんダ。乾いたものの下にいるゾ」
なるほど、家で暮らしていれば自然と苔が育つのか。
「それト、今はまだ暖かい季節だからいいガ、寒くなって来るとリザードマンとドワーフは一緒に住むようになル。リザードマンは寒さに弱いからネ」
「地下にも季節があるのかい」
「あるんダよ。ここはただの地面の中じゃなイ」
「精霊女王レイア様がお作りになった、聖なる大地だからな!」
ドワーフが得意げに言った。
そして、俺達は朝食会へと招かれる。
村の住民が一斉に集まって、わいわいと喋りながら食事をする場所だった。
「ほえー! いっぱいいるです!」
クルミが目を丸くした。
井戸水で顔を洗わせてもらい、スッキリしたところだ。
地下世界では、地下水を使えるので水は潤沢にあるようだ。
それらを使ってスープを作り、苔や肉を具材にして塩で味付けしている。
塩はもちろん岩塩。
何の成分が混じっているかで、味わいが変わるらしい。
「なんだか玄妙な味わいがしますわね、このスープ」
「とろっとしてて食いでがあるなあ」
不思議な顔をしてスープを口にするアリサ。
カイルはあっという間に平らげて、お代わりを貰いに行った。
俺達は、村に泊めてもらう代わりに保存食などを提供している。
そのため、お代わりは自由という破格の立場を得ていた。
「だけどこれは何杯も食べなくていいかな……!」
本日のスープは酸味が強くて、なかなか癖が強かった。
『ミルクーミルクー』
ドレが悲しげに鳴く。
残念だが地下世界でミルクは手に入らないなあ。
『わふわふ』
『ちゅちゅ?』
ブランは何でも食べるなあ。
ローズはスープに興味津々。
あっ、そんなに身を乗り出したら落ちる……。
『ちゅーっ』
あー、ブランのお皿にぽちゃんとローズが落っこちてしまった。
「きゃーっ、ローズちゃん!」
慌ててつまみ上げるアリサ。
ローズはしんなりして、いつものもこもこ毛皮がしっとり濡れてるからまるで別の生き物のようになって……。
なって……?
いや、このハムスター、案外もっちりしててそんなに印象が変わらないな。
ブランがぶら下げられたローズをべろべろ舐めている。
『ご主人、ご主人』
「なんだい、ドレ」
『こんな地下はいやにゃ。早く地上に出るにゃ。己はそもそも宇宙に帰ろうとしていたのに、どうして更に遠ざかって地の底にいるにゃ。ミルクもチーズもないようなところにいては、己は干からびてしまうにゃ』
切々と訴えかけてくるなあ。
贅沢を知ってしまったドレなのだ。
「ドレー。このスープもおいしいですよー」
『いやにゃー! すっぱしょっぱいスープはいやにゃー! もっとまろやかなミルクを所望するにゃー!』
にゃーにゃー言っているドレに興味が湧いたのか、村の子ども達が集まってくる。
リザードマンとドワーフの子どもだ。
村の人口が全部で百人ほどで、そのうち十人ほどが子どものようだ。
「それなあに」
「にゃあにゃあゆってる」
ドレを指さす子ども達。
彼らに向けて、クルミがニッコリ笑ってドレを抱き上げてみせた。
「ねこですよー」
「ねこ!」
「ねこ?」
『うーわー、なんだかみんなからモフモフされる予感しかしないにゃー。やーめーるーにゃー』
うにゃああああ、と言うドレの叫びを聞きながら、俺は今後の予定を決めることにする。
村の代表であるリザードマンと相談だ。
「地下世界を抜けて、地上へ行きたいんだ。ビブリオス男爵領までは遠いのかい?」
「そうだナ。ここからだと歩いて七日掛かるナ」
「結構かかるなあ。その間も、亜竜の襲撃がありそうだし。あの亜竜、暴れる牙の特徴などを教えてくれないか? こちらなりに撃退してみようと思うんだが」
「自力であれを倒すのカ! それはいイ! あれは嗅覚が発達してル。そこを突けばいイ。あとは、腹の辺りは皮が薄イ」
「なるほど、なるほど……」
亜竜の特徴についてメモしていく。
地下世界を旅する以上、あれとの戦いは避けて通れないだろう。
暴れる牙攻略は最も重要な課題だ。
村の滞在期間中にこれを練り上げて、早く旅立たねばなのだ。
皆、白いドワーフかリザードマンである。
ドワーフの家とリザードマンの家は別々になっているようだ。
昨日会ったドワーフがいたので、挨拶をする。
「おう、よく眠れたかい」
「ああ。おかげさまで。明け方頃に君達が、暴れる牙と呼んでいるであろう亜竜を見たよ。村のにおいを嗅いでから遠くに行ってしまった」
「そうだろうそうだろう。しばらく村にいるとな、村のにおいがつくからあいつらにも食われないようになるんだ。村から離れてるとにおいは薄れちまうけどな」
がっはっは、と笑うドワーフ。
次いで、昨日のリザードマンもやって来た。
リザードマンの区別はあまりつかないかと思っていたのだが、案外みんな見た目が違う。
昨日の彼はひょろりとしていて、目が大きい。
他人の目を見て物を言うタイプだ。
「やア。暴れる牙を見たらしいネ。だがそれはいつものことだヨ。あれが村に入ってこないようにするたメ、我々は苔をいつも育てているんダ」
「育ててるって、もしかして床に敷き詰めてる乾いたようなのは」
「人の体温で苔が育つんダ。乾いたものの下にいるゾ」
なるほど、家で暮らしていれば自然と苔が育つのか。
「それト、今はまだ暖かい季節だからいいガ、寒くなって来るとリザードマンとドワーフは一緒に住むようになル。リザードマンは寒さに弱いからネ」
「地下にも季節があるのかい」
「あるんダよ。ここはただの地面の中じゃなイ」
「精霊女王レイア様がお作りになった、聖なる大地だからな!」
ドワーフが得意げに言った。
そして、俺達は朝食会へと招かれる。
村の住民が一斉に集まって、わいわいと喋りながら食事をする場所だった。
「ほえー! いっぱいいるです!」
クルミが目を丸くした。
井戸水で顔を洗わせてもらい、スッキリしたところだ。
地下世界では、地下水を使えるので水は潤沢にあるようだ。
それらを使ってスープを作り、苔や肉を具材にして塩で味付けしている。
塩はもちろん岩塩。
何の成分が混じっているかで、味わいが変わるらしい。
「なんだか玄妙な味わいがしますわね、このスープ」
「とろっとしてて食いでがあるなあ」
不思議な顔をしてスープを口にするアリサ。
カイルはあっという間に平らげて、お代わりを貰いに行った。
俺達は、村に泊めてもらう代わりに保存食などを提供している。
そのため、お代わりは自由という破格の立場を得ていた。
「だけどこれは何杯も食べなくていいかな……!」
本日のスープは酸味が強くて、なかなか癖が強かった。
『ミルクーミルクー』
ドレが悲しげに鳴く。
残念だが地下世界でミルクは手に入らないなあ。
『わふわふ』
『ちゅちゅ?』
ブランは何でも食べるなあ。
ローズはスープに興味津々。
あっ、そんなに身を乗り出したら落ちる……。
『ちゅーっ』
あー、ブランのお皿にぽちゃんとローズが落っこちてしまった。
「きゃーっ、ローズちゃん!」
慌ててつまみ上げるアリサ。
ローズはしんなりして、いつものもこもこ毛皮がしっとり濡れてるからまるで別の生き物のようになって……。
なって……?
いや、このハムスター、案外もっちりしててそんなに印象が変わらないな。
ブランがぶら下げられたローズをべろべろ舐めている。
『ご主人、ご主人』
「なんだい、ドレ」
『こんな地下はいやにゃ。早く地上に出るにゃ。己はそもそも宇宙に帰ろうとしていたのに、どうして更に遠ざかって地の底にいるにゃ。ミルクもチーズもないようなところにいては、己は干からびてしまうにゃ』
切々と訴えかけてくるなあ。
贅沢を知ってしまったドレなのだ。
「ドレー。このスープもおいしいですよー」
『いやにゃー! すっぱしょっぱいスープはいやにゃー! もっとまろやかなミルクを所望するにゃー!』
にゃーにゃー言っているドレに興味が湧いたのか、村の子ども達が集まってくる。
リザードマンとドワーフの子どもだ。
村の人口が全部で百人ほどで、そのうち十人ほどが子どものようだ。
「それなあに」
「にゃあにゃあゆってる」
ドレを指さす子ども達。
彼らに向けて、クルミがニッコリ笑ってドレを抱き上げてみせた。
「ねこですよー」
「ねこ!」
「ねこ?」
『うーわー、なんだかみんなからモフモフされる予感しかしないにゃー。やーめーるーにゃー』
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