モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
69 / 173
第二部:神都ラグナスの冒険 2

第60話 ラグナス観光 その5

しおりを挟む
 港湾を巡った後、ラグナスのバザールを冷やかす。
 周辺地域一帯の名産品が集まってくるというから、何か欲しい物があったらここに来るのが良さそうだ。

「おや、そこ行くお二人さん! 二人の仲をとっても良くしてくれるアクセサリーが入ったんだよ!」

「ほんとですか!!」

 あっ、クルミが飛びついてしまった。
 バザールは、無数の屋台が立ち並ぶ。
 そのうちの、宝飾店でのことだ。

 それは、どうみても大きな動物の牙を加工した首飾りだった。

「セントロー王国はビブリオス男爵領でね、地竜の牙を加工したペンダントなのさ! 地の底に住むという地竜……上の世界と、地下の世界をつなぎとめる……つまり、二人の仲をつなぎとめるとびきりのラッキーアイテムってわけさ!」

「す、すごいこじつけだ……!!」

 俺は驚愕した。
 普段ならこういうのはスルーするんだが。

「センセエ! センセエ! クルミ、こういうのがほしいです!」

 クルミが完全に食いついちゃってるもんなあ。

「じゃあ、二つください」

「まいどあり!」

 そういうことになってしまった。

「わっはっは! オースさんもクルミの前じゃ方無しっすな!」

「英雄色を好むとは言いますが、一人の女性を一途に愛する英雄もまた良いものですな」

「やめてくれ二人とも!?」

「センセエ、大好きですー!」

 クルミもクルミで、腕に抱きついてくる。
 身動きが取れない……!
 これは困ったなあ。

 大いに俺達が盛り上がっているので、宝飾品屋の前で立ち止まる人々がちらほら。

「うちのアクセサリーで、目の前のカップルがめちゃくちゃ仲良しになったよ! 効果抜群! 縁結び! 仲を深める! 夫婦円満! セントロー王国直送のアクセサリーだよー!」

 こ、こいつ……!
 俺達をだしに!

「ははは、やるものですなあ。これは一本取られましたなオース殿」

「うん。恐るべし、ラグナスの商人だ」

 人が多く集まるところだけあって、商売っ気も旺盛だ。
 口が回るし頭も回る。

 だけど、これ以上だしにされるのはまっぴらだ。
 俺はクルミを引っ張りながら、その場をそそくさと離れた。

 バザールには東西南北に4つの入り口があり、それぞれの入口付近はゆっくりと休める食事処などが用意されている。
 その一角で、俺達は休憩。

 すると、荷運びをしていたらしき子どもたちが、わあっと歓声を上げた。

「でっっっかい犬!!」

「白い! もふもふだ!」

「あ、こら、お前達!!」

 荷物を持ったまま、子ども達がわあーっと走ってくる。

『わふん?』

 ブランが、私のことかね、小さき者達よ、みたいなこと言いながらそちらに歩いていった。
 あっという間に、子ども達がブランに抱きつく。
 おうおう、モフモフされている。

『わふ』

 なに、欲望に満ちたアリサのモフモフよりは、こういう子どものモフモフの方がいいって?

「お前はきをつけろよなー」

「そうそう! なんか、ペットの犬をさらうやつがでてるってな!」

「犬をげすいにつれてくやつがいたって」

 何やら子ども達が、気になる話をしている。

「ちょっといいかな。その話、詳しく……」

「ああー!! 済みません済みません! うちのガキどもが! こーら、お前ら! 俺は金を出してお前らを雇ってんだからな! 今日の給金ゼロにするぞ!」

 子ども達の雇い主らしい男が、俺にペコペコして、すぐに子どもへ声を荒げた。
 ひゃーっと飛び上がる子ども達。
 慌てて荷物を拾い上げて、走り出した。

「子どもも仕事をしてるんですねえ。大変だ」

「ああ。あいつら、スラムにいたガキどもなんですがね。盗みをやらかしたんで、労役の罰で働くことになったんですわ。そしたら、ここの方が働いた分だけ金も飯も出るってんで居着きましてねえ。まあ、ご覧の通り、あちこち寄り道する奴らですけど元気だし、飯を食わせておけば働くしで重宝してますわ」

 がっはっは、と笑う男は、それじゃ、と俺に手を上げて去っていった。
 通りの曲がり角から、子ども達が名残惜しそうにブランを見ていた。
 ブランがそれに尻尾を振って答えると、子ども達がわーっと盛り上がった。

「こらー! ガキどもー!! 仕事だ仕事ーっ!!」

「ひゃー! ごめんなさーい!!」

 うーん、賑やかだ。

「オースさん、今、犬がさらわれる事件みたいな話があったっすね。もしかして引き受けるつもりっすか?」

「おっ、鋭いねカイル」

「明らかに俺らのレベルでやる仕事じゃなくないっすか?」

 まあそうとも言える。
 俺はSランクだし、カイルはAランクの戦士。
 クルミはもうすぐCランクのレンジャーになるだろうし、ファルクスもランクだけならAランクの吟遊詩人らしい。

「でも、これは俺の趣味なんだ」

「趣味じゃ仕方ありませんな! 英雄とは常に大きな事件を解決していればいいものではありません。だが! 事件の方が英雄を放ってはおかないものです」

 べんべんっとリュートをかき鳴らすファルクス。
 すると、食堂の目が彼に向いた。

「おっ! ファルクスじゃないか!!」

「一夜語りのファルクス!? 戻ってきてたんだ!」

「ファルクス、また新しい話を聞かせてくれよ!」

 おおっ、人が集まってきた!
 我がパーティの吟遊詩人は俺にウィンクをすると、リュートを奏でだした。

「では新たな戯曲を語りましょうぞ! 新作!」

 うわーっと歓声が上がった。

「英雄オースが、空飛ぶ殺人魚の群れを見事に退治してのけた、その顛末を!」

「俺の話かあー!」

 これは何と言うか、恥ずかしくてこの場にいられない。
 そうだ、冒険者ギルドに顔出しして、ここでも仕事を受けられるようにしておかないといけないんだった!

「よ、よしファルクス、冒険者ギルドで合流な。俺は行くから!」

「あっ、センセエまってー!」

「オースさん、マジで人から誉められるの得意じゃないっすよね」

『わふふん』

 もう、俺は必死にその場を遠ざかったのだった。
 なので、気づかなかった。

 ドレがひょいっとブランから降りて、子ども達が消えていった方に向かっていった事に。

 俺がドレがいないことに気付いた頃、彼は子ども達と一緒に、ちょっとした冒険を繰り広げていたのだった。
 
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...