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第一部:都市国家アドポリスの冒険 10

第49話 アドポリスを救え! その4

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 魔法陣を破壊した俺達は、その足ですぐさま街の応援に駆けつけた。
 すると……。

『遅かったにゃ』

 樽に腰掛けたアリサの膝の上、喉を撫でられるドレを発見したのだった。
 僧侶や街に残った冒険者達が、快哉を上げている。

 周囲には散らばった破片。
 これはどうやら、勝ったらしいな。

「やあ、面目ない。間に合わなかったよ」

「いえいえ! 教会には敵の黒幕が来ていたのでしょう? それを倒したからこちらにいると判断するのですけれど」

 アリサが鋭い。
 指先は常にドレをモフモフなでなでしているので、これで精神が安定しているからかも知れない。

「がんばったですよ! クルミがやっつけました!」

「ええっ」

 近くにいたカイルが目を丸くした。

「クルミちゃんがやったのか?」

「そうですよー! 手としっぽでスリングを使って、うりゃーって!」

「うんうん。ダブルスリング、なかなかの威力だったね。これで十分な遠心力が加わってたら、サブマスターは死んでたな」

「サブマスター!?」

 カイルがいちいち驚いてくれるので、話しやすいというか何というか。

「ああ。サブマスターが全ての黒幕だった。彼は召喚士だったんだ。テイマーと並ぶ、激レアなクラスの一つだね。俺もホンモノを見るのは初めてだった」

「や、俺だってテイマーも見るの初めてだったっすけど」

「うん。俺的にはテイマーは召喚士の下位互換だなあって思ってたけど、テイマーはジャンルを絞ることで召喚できるモンスターを遥かに超える強いモンスターをテイムできるようでね? それで」

「オースさん! 話がそれていっていますわよ!」

「ああ、ごめんごめん」

 その後、手短に概況を説明した。

 この事件は全て繋がっていたこと。
 狙いはアドポリスを弱体化させることで、それによって教会に隠されていた魔法陣を手に入れようとしていたこと。
 魔法陣が呼び出す、恐らく魔王とやらはブラン以上の恐ろしい存在であること。

 魔法陣は破壊したから、もう魔王が召喚されることは無い。
 まさに、一件落着なのだ。

「ええと、それじゃあ皆さん!」

 俺は周囲に呼びかけた。
 みんなわいわいがやがやしていて、俺の声が届いていない。

 戦いに勝った高揚感から、めいめいに騒いでいるんだな。

 これを見て、ドレとブランが目配せしあった。
 すうっと、ブランが息を吸い込む。
 ドレが触手を伸ばして、ぶんぶん振り回した。

『主に強制的に注目させるにゃ。弱・マインドブラスト!』

『おおおおおおおおおんっ!』

 精神攻撃と強烈な咆哮をいっぺんに浴びて、この場にいた人々は全員飛び上がった。
 そして、俺に注目する。

 既にこの場は静かだ。

「皆さん、後片付けをしよう。そして、けが人を治療して……ああ、教会もひどい有様だから、僧侶の方々の多くはそっちに行った方がいいかも」

 俺のふわっとした指示で、みんなが動き出す。
 幸い、僧侶達が街をパトロールしていたお陰で、レブナントによる被害は最小限に食い止められたようだった。

 街に残った冒険者達も、自分達にできることを精一杯やってレブナントと戦っていた。
 もっと早く、アルコールのことを教えておくんだったな。

 今回の事件では、俺も反省することが色々だ。
 今後に活かしていこう。

 その日は、夜を徹して後片付け作業を行い……そして夜明けが来た。
 眠い目をこすりつつ、宿のベッドに潜り込んだ俺。
 寝ている間に、何かがごそごそと毛布の間に入り込んできた気がしたが、そんな事にかまっている余裕は無かった。
 
 そして目覚めると、もう日がすっかり高い。
 昼だ。

 そして腕の中に、柔らかいものとモフモフしたものを併せ持つ何者かがいた。

「ハッ……! く、クルミ!」

「むにゃむにゃ……もう食べられないです……」

 当たり前みたいな顔をして、クルミが俺のベッドに入り込んでいたのだ。
 よりによって、彼女を抱きマクラみたいにして寝てしまっていた。

 これはいけない……!

 そっと起き上がると、カイルもアリサもまだ寝ているところだった。
 ブランとドレが、俺達をじーっと見ている。

『わふん』

『飯かにゃ』

 そうだよな。
 君達は個体で完結しているレベルのモンスターだから、男女がどうこうとか関係ないよな。

 俺はクルミを起こさないようにして、そーっと彼女のベッドに横たえた。
 すると、クルミがパチっと目を開くではないか!

「おはようございますセンセエ! どうですか! クルミは抱き心地よかったですか!」

「うわーっ! な、なにを危険な言い回しをしてるんだ! いや、なんか熟睡できたけど! いいかいクルミ……。男女がみだりにベッドを一緒にしてはいけない……」

「そうなのです? ならセンセエがクルミのお婿さんになればいいですよ!」

「いや、いやいやいや、いや、嫌ってわけじゃないけどちょっとまってくれ」

「いやいやでは通らないですよ!」

 ううっ、クルミの押しが強い!!

『主ー』

「よ、よし! ドレもブランもお腹すいたよな! 顔を洗ってご飯にしよう! ほら、クルミも服を着て! 行くぞ!」

「あーん! センセエごまかしたですー!! クルミはごまかされないですよー!!」

「朝ごはん食べないの?」

「食べるですよ!!」

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