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第一部:都市国家アドポリスの冒険 3
第13話 新パーティ結成 その3
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バジリスク粉っていうのは、そのままじゃ商品にならない。
これを調合して、薬にして初めて石化に効果を発揮するんだ。
「ついでだから、ここで粉を調合するよ。どうせショーナウンに使うんだろ? 俺くらいの腕でもできる難しくない薬だし」
俺はナップザックから乳鉢を取り出すと、バジリスク粉と魔石の粉を入れ、すりこぎでゴリゴリと調合し始めた。
ゴリゴリゴリゴリやっていると、段々粘り気が出てくる。
俺が薬を作っているのが珍しいらしく、クルミがじっとこの光景を見ていた。
彼女だけじゃない。
ギルドの冒険者達も、なぜだか固唾を呑んで見守っている。
「ねえ、オースって薬師だったの?」
「いや、あいつのメインクラスはテイマーだよ。薬師じゃないはずだけど……」
何か言い合ってるな。
そこに、ギルドの受付嬢が加わった。
「適性があるクラスと、後から鍛錬して身につける技術としてのクラスはまた違っているんですよ。オースさんの場合、シーフ、レンジャー、バッファー(補助魔法使い)、セージ(賢者のこと)の4つをBランク冒険者相当でやりこなすことができるんです。これは後天的に取得したクラスなので、ご本人の鍛錬のたまものですね」
「へえー。でも、あの人って一応Sランク冒険者なんでしょ? なのに実力はBランクって……」
若い冒険者の声がした。
「むむっ、センセエを悪く言うなです!」
クルミが怒る。
これには、その冒険者もちょっと慌てたようで、だが言葉を撤回する気はないらしい。
「いやさ、だってよ。4つのクラスをBランクでやれるからってSランクにはならねえだろ? ショーナウン達についていけなくなったんじゃねえの?」
「ちょい待ち。冒険者が一人前だって言われるのはどのランクだか知ってるか、お前?」
ちょっとベテランの冒険者が出てきて、若い冒険者に尋ねた。
「そりゃあ、Eランクから始まって、Bまでいけば立派に一人前……あっ」
若い冒険者は気づいたらしい。
「そうだよ。その、一人前の冒険者四人分の仕事を一人でできるんだ、あいつは。それも、メインクラスのテイマーじゃない仕事だぞ」
まあそうだけど。
器用貧乏ってやつだな。
「あいつは万能に近いんだよ。全部がハイレベルなんだ。だからこそ、突出したものがなくてもSランクなんだ」
あれえ。
そういう解釈の仕方もあるのか……?
物思っているうちに、薬は完成していた。
紫色の、ドロリとした液体になっている。
このまま使ってもいいんだが、これを布であらごしすると効果が高い薬になるんだ。
「く、くちゃいですセンセエ!」
「ゼロ族の鼻は敏感だっけ? ブランがここにいなくてよかったなあ」
いわゆる、猛烈に薬臭いにおいがする。
これをナップザックから取り出した、目の荒い布であらごしする。
すると、澄んだ紫色のスライムみたいなものが残った。
「はいはい、じゃあ薬を塗りますよっと」
元パーティの仲間だった奴らが、すごい目で俺を睨んでくる。
「心配するなよ。お前らからは大金をもらったんだ。これはサービスってやつさ」
薬をたっぷりと、石化したショーナウンに塗りたくる。
すると、触れた部分から薬が光りだした。
凄い勢いで、石化の魔力を中和しているのだ。
髪の毛が柔らかさを取り戻し、肌に温かみが戻ってくる。
いやあ、よくぞどこも破損しないままで維持しててくれたもんだ。
石化が解除されても、回復魔法を使う必要もないかも知れない。
「よし、いい仕事をした」
俺は汗を拭って笑った。
「ああ、それから受付嬢さん! 後でクルミの適性を見てくれないか? ここにはパーティを組みに来たんだったよ!」
「あ、は、はい!」
ギルドの受付嬢が、テキパキと仕事を始める。
俺の作業にずっと見惚れていたみたいだ。
ごく一般的な薬師の仕事を真似してみただけなのだが。
そうか、みんな普段は、調合から服用までを一貫して見ることがないものな。
珍しいのだろう。
さて、そろそろショーナウンの石化は完璧に解けたようだ。
彼はギルドの床に膝を付いて、呆然としている。
状況が理解できてないな。
書物によると、石化された人間の感じる時間は、止まってしまうそうだ。
だから、あいつはバジリスクにやられた瞬間から、気がつくとギルドに戻ってきていたように思えるんだ。
「お……俺はどうしてここに……!? バジリスクは……」
「俺が倒した」
俺の声を聞いて、ショーナウンが慌てて起き上がる。
そして、俺を睨みつけた。
「オース!! て、てめえどうしてここに……!!」
「無事で、まあ良かったよショーナウン。あんた、石にされてたんだぜ? バジリスクは正しい手順で退治しなくちゃな」
「お前が、あのモンスターを倒したってのかよ!? 俺が手こずった相手だってのに」
ギルドの誰かが、「石化されてたんだから負けてんじゃん」と野次を飛ばした。
どっと盛り上がるギルドの中。
「うるせえ!!」
ショーナウンが叫んだ。
随分余裕の無い顔をしている。
「石になった俺が戻ったってのは……まさか、お前……! これもオースの仕業かよ!」
「そうだ。いつも俺がバジリスクやら、厄介なモンスターの対処担当だっただろ。今回もいつもどおりだよ」
「てめえ……!!」
ショーナウンが俺に掴みかかろうとした辺りで、Sランクな仲間達が彼を止めた。
「やべえよ、ショーナウン! ここで暴れたら俺達のメンツが本格的に丸つぶれだ!」
「ね、ここは出とこうよ! もう、居づらいったらないんだから!」
「金は払ったからね! これでオース、あんたとは貸し借り無しだから!」
三人は、ショーナウンを引っ張って外に出ていってしまった。
なんだありゃあ。
俺が肩をすくめると、他の冒険者達が爆笑した。
「だせえ捨て台詞!」
「しかし、薬まで作っちまうとは! やるなあオース!」
「あんたこそ、真のSランク冒険者だ!」
「オースに乾杯!」
わあっと盛り上がる。
みんな酒が入りすぎだろ。
クルミもよく分からないなりに、冒険者達が俺を褒めていることだけは察したのだろう。
ニコニコ顔で言ったのである。
「かんぱいなのです!」
これを調合して、薬にして初めて石化に効果を発揮するんだ。
「ついでだから、ここで粉を調合するよ。どうせショーナウンに使うんだろ? 俺くらいの腕でもできる難しくない薬だし」
俺はナップザックから乳鉢を取り出すと、バジリスク粉と魔石の粉を入れ、すりこぎでゴリゴリと調合し始めた。
ゴリゴリゴリゴリやっていると、段々粘り気が出てくる。
俺が薬を作っているのが珍しいらしく、クルミがじっとこの光景を見ていた。
彼女だけじゃない。
ギルドの冒険者達も、なぜだか固唾を呑んで見守っている。
「ねえ、オースって薬師だったの?」
「いや、あいつのメインクラスはテイマーだよ。薬師じゃないはずだけど……」
何か言い合ってるな。
そこに、ギルドの受付嬢が加わった。
「適性があるクラスと、後から鍛錬して身につける技術としてのクラスはまた違っているんですよ。オースさんの場合、シーフ、レンジャー、バッファー(補助魔法使い)、セージ(賢者のこと)の4つをBランク冒険者相当でやりこなすことができるんです。これは後天的に取得したクラスなので、ご本人の鍛錬のたまものですね」
「へえー。でも、あの人って一応Sランク冒険者なんでしょ? なのに実力はBランクって……」
若い冒険者の声がした。
「むむっ、センセエを悪く言うなです!」
クルミが怒る。
これには、その冒険者もちょっと慌てたようで、だが言葉を撤回する気はないらしい。
「いやさ、だってよ。4つのクラスをBランクでやれるからってSランクにはならねえだろ? ショーナウン達についていけなくなったんじゃねえの?」
「ちょい待ち。冒険者が一人前だって言われるのはどのランクだか知ってるか、お前?」
ちょっとベテランの冒険者が出てきて、若い冒険者に尋ねた。
「そりゃあ、Eランクから始まって、Bまでいけば立派に一人前……あっ」
若い冒険者は気づいたらしい。
「そうだよ。その、一人前の冒険者四人分の仕事を一人でできるんだ、あいつは。それも、メインクラスのテイマーじゃない仕事だぞ」
まあそうだけど。
器用貧乏ってやつだな。
「あいつは万能に近いんだよ。全部がハイレベルなんだ。だからこそ、突出したものがなくてもSランクなんだ」
あれえ。
そういう解釈の仕方もあるのか……?
物思っているうちに、薬は完成していた。
紫色の、ドロリとした液体になっている。
このまま使ってもいいんだが、これを布であらごしすると効果が高い薬になるんだ。
「く、くちゃいですセンセエ!」
「ゼロ族の鼻は敏感だっけ? ブランがここにいなくてよかったなあ」
いわゆる、猛烈に薬臭いにおいがする。
これをナップザックから取り出した、目の荒い布であらごしする。
すると、澄んだ紫色のスライムみたいなものが残った。
「はいはい、じゃあ薬を塗りますよっと」
元パーティの仲間だった奴らが、すごい目で俺を睨んでくる。
「心配するなよ。お前らからは大金をもらったんだ。これはサービスってやつさ」
薬をたっぷりと、石化したショーナウンに塗りたくる。
すると、触れた部分から薬が光りだした。
凄い勢いで、石化の魔力を中和しているのだ。
髪の毛が柔らかさを取り戻し、肌に温かみが戻ってくる。
いやあ、よくぞどこも破損しないままで維持しててくれたもんだ。
石化が解除されても、回復魔法を使う必要もないかも知れない。
「よし、いい仕事をした」
俺は汗を拭って笑った。
「ああ、それから受付嬢さん! 後でクルミの適性を見てくれないか? ここにはパーティを組みに来たんだったよ!」
「あ、は、はい!」
ギルドの受付嬢が、テキパキと仕事を始める。
俺の作業にずっと見惚れていたみたいだ。
ごく一般的な薬師の仕事を真似してみただけなのだが。
そうか、みんな普段は、調合から服用までを一貫して見ることがないものな。
珍しいのだろう。
さて、そろそろショーナウンの石化は完璧に解けたようだ。
彼はギルドの床に膝を付いて、呆然としている。
状況が理解できてないな。
書物によると、石化された人間の感じる時間は、止まってしまうそうだ。
だから、あいつはバジリスクにやられた瞬間から、気がつくとギルドに戻ってきていたように思えるんだ。
「お……俺はどうしてここに……!? バジリスクは……」
「俺が倒した」
俺の声を聞いて、ショーナウンが慌てて起き上がる。
そして、俺を睨みつけた。
「オース!! て、てめえどうしてここに……!!」
「無事で、まあ良かったよショーナウン。あんた、石にされてたんだぜ? バジリスクは正しい手順で退治しなくちゃな」
「お前が、あのモンスターを倒したってのかよ!? 俺が手こずった相手だってのに」
ギルドの誰かが、「石化されてたんだから負けてんじゃん」と野次を飛ばした。
どっと盛り上がるギルドの中。
「うるせえ!!」
ショーナウンが叫んだ。
随分余裕の無い顔をしている。
「石になった俺が戻ったってのは……まさか、お前……! これもオースの仕業かよ!」
「そうだ。いつも俺がバジリスクやら、厄介なモンスターの対処担当だっただろ。今回もいつもどおりだよ」
「てめえ……!!」
ショーナウンが俺に掴みかかろうとした辺りで、Sランクな仲間達が彼を止めた。
「やべえよ、ショーナウン! ここで暴れたら俺達のメンツが本格的に丸つぶれだ!」
「ね、ここは出とこうよ! もう、居づらいったらないんだから!」
「金は払ったからね! これでオース、あんたとは貸し借り無しだから!」
三人は、ショーナウンを引っ張って外に出ていってしまった。
なんだありゃあ。
俺が肩をすくめると、他の冒険者達が爆笑した。
「だせえ捨て台詞!」
「しかし、薬まで作っちまうとは! やるなあオース!」
「あんたこそ、真のSランク冒険者だ!」
「オースに乾杯!」
わあっと盛り上がる。
みんな酒が入りすぎだろ。
クルミもよく分からないなりに、冒険者達が俺を褒めていることだけは察したのだろう。
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「かんぱいなのです!」
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