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フットボーラー失踪事件
第167話 丸く収まった(ボールだけに)
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マイコニドは私たちを認識すると、その目を輝かせた。
「敵対反応ですわ! 下がって!」
シャーロットに後ろへ押しやられながら、私は考えていた。
つまり、ダンサズはマイコニドを愛しい彼女だと思っていた……?
だけど、フットボールチームの仲間たちは、ダンサズを彼女が応援に来たと言っていたはず。
「みんな帰ってくれ! 彼女が怯える! 俺たちは静かに暮らしたいだけなんだ……!」
ダンサズが必死に訴える背後で、マイコニドがキノコの傘部分を膨れ上がらせていく。
「いけませんわね……!」
「なに、問題ない」
ナイツが前に出て、腰に佩いた剣を抜く。
そして、止めようとしてくるダンサズを一蹴りで吹っ飛ばすと、部屋の中へと飛び込んだ。
マイコニドが胞子を放つ。
これをナイツが剣風で散らし、あっという間に近接距離へ。
虹色の剣閃が何度か振るわれると、マイコニドはバラバラになって転がっていた。
「状況は終わりね。仕留めた?」
「ええ。こいつはキノコと違って、幾分か人間に近いモンスターですからね。バラバラにしたら死にます」
剣を拭って、鞘に収めるナイツ。
彼の横で壁にもたれたまま、ダンサズは目を見開いていた。
「な、なんてことを!! メリーヌになんてこと……なんて……なん……なんだ、これは」
あ、我に返った。
「俺は今まで、何をしていたんだ……?」
茫然自失状態。
これは話を聞け無さそうかな?
「マイコニドの胞子にやられていますわね。幸い、日にちが浅いですし、しばらく安静にしていたら治ると思いますわよ」
シャーロットはそう告げた後、馬車へ戻っていくのだった。
王都に戻ったところで、下町遊撃隊の子どもたちが走ってくる。
「シャーロットさん! ジャネットさん! やっぱ、メリーヌって人は死んでたよ!」
「病気だってさ」
「やはりそうでしたわね」
シャーロットはうんうん、と頷いた。
「どういうこと? 気付いてたの?」
「ええ。応援を見に来なくなったのは病気が重くなったから。そして彼女は亡くなり、悲しんだダンサズさんの心に付け込んだのがマイコニドだったのでしょう」
詳しくはマカブル男爵邸で、と彼女は口にした。
大々的に推理を披露するつもりだ!
その後、マカブル邸にはデストレードや、どこで話を聞きつけたのか、王都新聞デイリーエルフェンバインの記者までやって来た。
この王都新聞というのが、オーシレイが招き入れたエルド教の協力を得て発足した、エルフェンバイン初の日刊情報誌なのだ。
「どうもどうも! お二人の記事は大変人気でして! この度も見事に事件を解決されたそうですね!」
眼鏡を掛けた小柄な女の子が記者だった。
「ターナと申します! またネタを期待してます!」
「ネタって言われてもねえ」
私は困ってしまった。
何ていうか、尻尾を振ってくる子犬みたいな人だな……!
そして、シャーロットが事件のあらましを説明する。
まず、ダンサズと恋仲だった女性、メリーヌは、町の花屋で働く女性だった。
フットボールの開催を祝う花束を届けに来た時、ダンサズと出会い、二人は恋に落ちたのだそうだ。
その後、二人は関係を深め、ついにマカブル家へと結婚を認めてもらうべくやって来る。
だが、男爵はそれを認めなかった。
メリーヌには持病があり、それは徐々に悪化していった。
ダンサズの試合を常に観戦に来ていたのだが、彼女は病が重くなり、先日の試合には来れなかった。
ダンサズは、憧れの人であるナイツがやって来たことで舞い上がり、それに気付いていなかったらしい。
後にメリーヌの元を訪ね、彼女の病状を知り、そして彼女を看取った。
精神のバランスを崩したダンサズは別荘に引きこもり、そこでマイコニドに魅入られた。
「なんという事件でしょう!! 悲劇のフットボーラーを襲ったモンスターによる事件! これを見事に解決したシャーロット嬢とジャネット嬢! うおおー! これはまた売れますよー!!」
私たちの噂が凄く広がってると思ったら、彼女の仕業だったのか!!
ターナは眼鏡を光らせると、ニヤニヤしながら猛烈な勢いで、メモ帳を書き込んでいく。
明日のデイリーエルフェンバインには、きっとこの事が載るのだろう。
マカブル男爵としても、これでダンサズはフリーになり、しかも話題の中心になったということで対外的に家をアピールできると乗り気だった。
大変計算高い。
「これ以上の事件性は無いようですね。お二人ともお疲れさまです。彼女の動きがあったと聞いて駆けつけたのですが」
デストレードは去り際にそんなことを言った。
「彼女?」
「どうして別荘地帯にマイコニドなんていう、物騒なモンスターがいたかですよ。しかも、傷心の次期男爵のもとに都合よく現れた。どうやら別荘地帯で、彼女の姿を見た人がいるらしいんですよ」
「それってまさか……」
「ええ。ジャクリーン・モリアータ。どうやらまだ死んでいなかったようです」
シャーロットと戦って、滝壺に落ちたはずの彼女。
世界的犯罪コンサルタント、ジャクリーン。
まさかこの事件、彼女の帰還を知らせるものだったり……?
シャーロットはターナから取材を受けていたが、私が目をやるとこちらに気付いたようだ。
彼女が頷く。
あえて、ジャクリーンが関係する可能性は口にしなかったということか。
どうやら、あの犯罪コンサルタントとの対決がまた始まりそうなのである。
「敵対反応ですわ! 下がって!」
シャーロットに後ろへ押しやられながら、私は考えていた。
つまり、ダンサズはマイコニドを愛しい彼女だと思っていた……?
だけど、フットボールチームの仲間たちは、ダンサズを彼女が応援に来たと言っていたはず。
「みんな帰ってくれ! 彼女が怯える! 俺たちは静かに暮らしたいだけなんだ……!」
ダンサズが必死に訴える背後で、マイコニドがキノコの傘部分を膨れ上がらせていく。
「いけませんわね……!」
「なに、問題ない」
ナイツが前に出て、腰に佩いた剣を抜く。
そして、止めようとしてくるダンサズを一蹴りで吹っ飛ばすと、部屋の中へと飛び込んだ。
マイコニドが胞子を放つ。
これをナイツが剣風で散らし、あっという間に近接距離へ。
虹色の剣閃が何度か振るわれると、マイコニドはバラバラになって転がっていた。
「状況は終わりね。仕留めた?」
「ええ。こいつはキノコと違って、幾分か人間に近いモンスターですからね。バラバラにしたら死にます」
剣を拭って、鞘に収めるナイツ。
彼の横で壁にもたれたまま、ダンサズは目を見開いていた。
「な、なんてことを!! メリーヌになんてこと……なんて……なん……なんだ、これは」
あ、我に返った。
「俺は今まで、何をしていたんだ……?」
茫然自失状態。
これは話を聞け無さそうかな?
「マイコニドの胞子にやられていますわね。幸い、日にちが浅いですし、しばらく安静にしていたら治ると思いますわよ」
シャーロットはそう告げた後、馬車へ戻っていくのだった。
王都に戻ったところで、下町遊撃隊の子どもたちが走ってくる。
「シャーロットさん! ジャネットさん! やっぱ、メリーヌって人は死んでたよ!」
「病気だってさ」
「やはりそうでしたわね」
シャーロットはうんうん、と頷いた。
「どういうこと? 気付いてたの?」
「ええ。応援を見に来なくなったのは病気が重くなったから。そして彼女は亡くなり、悲しんだダンサズさんの心に付け込んだのがマイコニドだったのでしょう」
詳しくはマカブル男爵邸で、と彼女は口にした。
大々的に推理を披露するつもりだ!
その後、マカブル邸にはデストレードや、どこで話を聞きつけたのか、王都新聞デイリーエルフェンバインの記者までやって来た。
この王都新聞というのが、オーシレイが招き入れたエルド教の協力を得て発足した、エルフェンバイン初の日刊情報誌なのだ。
「どうもどうも! お二人の記事は大変人気でして! この度も見事に事件を解決されたそうですね!」
眼鏡を掛けた小柄な女の子が記者だった。
「ターナと申します! またネタを期待してます!」
「ネタって言われてもねえ」
私は困ってしまった。
何ていうか、尻尾を振ってくる子犬みたいな人だな……!
そして、シャーロットが事件のあらましを説明する。
まず、ダンサズと恋仲だった女性、メリーヌは、町の花屋で働く女性だった。
フットボールの開催を祝う花束を届けに来た時、ダンサズと出会い、二人は恋に落ちたのだそうだ。
その後、二人は関係を深め、ついにマカブル家へと結婚を認めてもらうべくやって来る。
だが、男爵はそれを認めなかった。
メリーヌには持病があり、それは徐々に悪化していった。
ダンサズの試合を常に観戦に来ていたのだが、彼女は病が重くなり、先日の試合には来れなかった。
ダンサズは、憧れの人であるナイツがやって来たことで舞い上がり、それに気付いていなかったらしい。
後にメリーヌの元を訪ね、彼女の病状を知り、そして彼女を看取った。
精神のバランスを崩したダンサズは別荘に引きこもり、そこでマイコニドに魅入られた。
「なんという事件でしょう!! 悲劇のフットボーラーを襲ったモンスターによる事件! これを見事に解決したシャーロット嬢とジャネット嬢! うおおー! これはまた売れますよー!!」
私たちの噂が凄く広がってると思ったら、彼女の仕業だったのか!!
ターナは眼鏡を光らせると、ニヤニヤしながら猛烈な勢いで、メモ帳を書き込んでいく。
明日のデイリーエルフェンバインには、きっとこの事が載るのだろう。
マカブル男爵としても、これでダンサズはフリーになり、しかも話題の中心になったということで対外的に家をアピールできると乗り気だった。
大変計算高い。
「これ以上の事件性は無いようですね。お二人ともお疲れさまです。彼女の動きがあったと聞いて駆けつけたのですが」
デストレードは去り際にそんなことを言った。
「彼女?」
「どうして別荘地帯にマイコニドなんていう、物騒なモンスターがいたかですよ。しかも、傷心の次期男爵のもとに都合よく現れた。どうやら別荘地帯で、彼女の姿を見た人がいるらしいんですよ」
「それってまさか……」
「ええ。ジャクリーン・モリアータ。どうやらまだ死んでいなかったようです」
シャーロットと戦って、滝壺に落ちたはずの彼女。
世界的犯罪コンサルタント、ジャクリーン。
まさかこの事件、彼女の帰還を知らせるものだったり……?
シャーロットはターナから取材を受けていたが、私が目をやるとこちらに気付いたようだ。
彼女が頷く。
あえて、ジャクリーンが関係する可能性は口にしなかったということか。
どうやら、あの犯罪コンサルタントとの対決がまた始まりそうなのである。
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