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空き地の冒険?~シャーロットの帰還~
第124話 ニセ騎士ザンバー
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「では、実際に賭け事をなさっていた皆様を訪問しましょう」
シャーロットの提案で、そういうことになった。
「でもシャーロット、誰が参加していたか分かるの?」
「ええ、もちろん。社交界の交友関係については把握していますわ。若い殿方でよくつるんでいらっしゃり、お父上への反感を持っておられた方が四名」
彼女が指折り告げる名前に、私もカゲリナとグチエルも、納得するばかりだった。
全員が男爵家の子息で、イッコム、ニコーマ、サンコウ、ヨンコスの四名である。
イッコムの家に行ってみると、なるほど、兵士で門を固めている。
平時だというのに、異常にものものしい。
「余計な詮索をされるのを恐れているのと、子息が何者かに狙われているのでは、と疑心暗鬼になっていますのね。誰も入れないつもりですわ」
「なるほど」
私は納得した。
イッコム邸の前で馬車を停めると、兵士たちが駆け寄ってきた。
「こらこら。男爵様は今、何者も近寄るなと仰られていて……げえ、ワトサップ辺境伯令嬢様!!」
私の顔を見た瞬間、兵士たちがハハーッとひれ伏した。
なぜだ。
「ジャネット様は便利ですわねえ」
シャーロットが笑った。
ちなみに馬車の御者をしているのは、当然のようにナイツ。
彼も、貴族街で戦える者たちからは、英雄のように崇められている。
何者も私たちの行動を阻むことはできないのだ。
ということで、イッコムの家に簡単に入ることが出来た。
イッコムは姿を見せず、父の男爵が現れた。
「こ、これはこれは、辺境伯代理……!」
王都における私の地位って、父の名代なのだ。
だから、辺境伯として扱われる。
この国の辺境伯は特別に地位が高くて、公爵と同等。
男爵がへこへこするのも分かる。
というか、私みたいな小娘相手に頭を下げられる辺り、世渡りが上手い人かも知れない。
「イッコムさんが空き地で行われた賭け事に参加してたと聞いたのだけれど」
男爵の顔がひきつった。
大当たりだ。
「そ、そんな、そんなことは決して」
「大丈夫よ。私たち、憲兵とは今回関わりが無いから。ただ、その場にいた貴族ではないもうひとりについて聞きたかったの」
「そうだったんですか……!」
男爵があからさまにホッとした顔になる。
そして、イッコムを呼びに行かせたようだ。
しばらくして、不貞腐れた顔の男がやって来た。
イッコムだ。
ズラリ並んだ、私とシャーロットとカゲリナとグチエルに、目を見開いて硬直する。
そりゃあ驚くよね。
「イッコムさん、あなた方の賭け事、下町の者とあなた方を結んだ人間がいますわね? それが今回の殺人の犯人だとわたくしは見ているのですけれども」
いきなり切り出すシャーロット。
「あなたがたは事件に巻き込まれ、弱みを握られそうになった被害者。なにも悪くありませんものね。これで犯人が捕まれば、今後を心配すること無く過ごせるようになりますわよ」
「お、おお」
イッコムがかくかく頷いた。
もうシャーロットに呑まれている。
というかシャーロット、食い気味に話してるけど、久しぶりの事件でテンション上がってない?
結局、シャーロットの話術ですっかりやられたイッコムが、詳しい事情を話してくれた。
「俺たちは見ての通り、貴族の息子の不良でつるんでたんだが、下町行くには怖いし、だけど悪いことは何も知らないし、空き地に集まって茶葉に火をつけて煙を吸うくらいしかしてなかったんだ」
なんて健全な不良。
「その時にそいつが現れてさ。ライザンバーというやつで、どこかの貴族のお抱え騎士をやってるとかで……」
「ライザンバー!?」
覚えがある。
魔道士の杖事件の時、グチエルの当時の彼氏だったビクトルを騙した、偽騎士の名前だ。
正式な名前はザンバーと行って、ジャクリーンの手下だったはず。
まだ王都をちょろちょろしてたんだ。
「それで、本場下町の賭博師を呼んできてもらって、まずは簡単なカード賭博から始めたんだ」
「お、お前、なんということを!」
男爵が嘆いている。
初耳だったの?
「何を賭けてたの?」
私の質問には、イッコムはニヤリと笑って、
「茶葉」
とか言ったのでもう平和そのもの。
よく考えたら、貴族の子息である彼らが、家の財産を好き勝手にどうこうはできないのだ。
家のお金を動かせるのは、当主と彼に仕える筆頭の家令のみ。
実はうちだと、ナイツが筆頭家令に当たる。
結局、茶葉をやりとりしながらカード賭博のマネごとみたいなのをしていたイッコムたち。
どうやらこれを見ていたライザンバーが、呆れを通り越して怒り出したらしい。
「あいつがどうして怒ったのか分からないんだ。だけど、あんな体格のいいヤツが怒るのは怖くて! それで解散っていうことになったんだけど、賭博師がライザンバーに、『まあまあ。こんな可愛い賭博もあっていいじゃありやせんか。あっしは上等な茶葉をもらえてホクホクですよ』って言ったんだ」
「ああ、高級茶葉って下町だといいお値段で売れるもんねえ」
実質、賭博師にとっては真っ当な報酬みたいなものだったわけだ。
だが、ザンバーは何かが気に入らなかった。
「そこでザンバーが、賭博師を殺したわけですわね。あらかじめ口封じをするつもりで、あの暗殺用の吹き矢を持っていたのでしょうけれど……。イッコムさんたちの目の前でやる意味がありませんものね」
シャーロットが場を見渡す。
「読めましたわよ。ザンバーの狙いが」
事件が解決に向けて転がりだす!
シャーロットの提案で、そういうことになった。
「でもシャーロット、誰が参加していたか分かるの?」
「ええ、もちろん。社交界の交友関係については把握していますわ。若い殿方でよくつるんでいらっしゃり、お父上への反感を持っておられた方が四名」
彼女が指折り告げる名前に、私もカゲリナとグチエルも、納得するばかりだった。
全員が男爵家の子息で、イッコム、ニコーマ、サンコウ、ヨンコスの四名である。
イッコムの家に行ってみると、なるほど、兵士で門を固めている。
平時だというのに、異常にものものしい。
「余計な詮索をされるのを恐れているのと、子息が何者かに狙われているのでは、と疑心暗鬼になっていますのね。誰も入れないつもりですわ」
「なるほど」
私は納得した。
イッコム邸の前で馬車を停めると、兵士たちが駆け寄ってきた。
「こらこら。男爵様は今、何者も近寄るなと仰られていて……げえ、ワトサップ辺境伯令嬢様!!」
私の顔を見た瞬間、兵士たちがハハーッとひれ伏した。
なぜだ。
「ジャネット様は便利ですわねえ」
シャーロットが笑った。
ちなみに馬車の御者をしているのは、当然のようにナイツ。
彼も、貴族街で戦える者たちからは、英雄のように崇められている。
何者も私たちの行動を阻むことはできないのだ。
ということで、イッコムの家に簡単に入ることが出来た。
イッコムは姿を見せず、父の男爵が現れた。
「こ、これはこれは、辺境伯代理……!」
王都における私の地位って、父の名代なのだ。
だから、辺境伯として扱われる。
この国の辺境伯は特別に地位が高くて、公爵と同等。
男爵がへこへこするのも分かる。
というか、私みたいな小娘相手に頭を下げられる辺り、世渡りが上手い人かも知れない。
「イッコムさんが空き地で行われた賭け事に参加してたと聞いたのだけれど」
男爵の顔がひきつった。
大当たりだ。
「そ、そんな、そんなことは決して」
「大丈夫よ。私たち、憲兵とは今回関わりが無いから。ただ、その場にいた貴族ではないもうひとりについて聞きたかったの」
「そうだったんですか……!」
男爵があからさまにホッとした顔になる。
そして、イッコムを呼びに行かせたようだ。
しばらくして、不貞腐れた顔の男がやって来た。
イッコムだ。
ズラリ並んだ、私とシャーロットとカゲリナとグチエルに、目を見開いて硬直する。
そりゃあ驚くよね。
「イッコムさん、あなた方の賭け事、下町の者とあなた方を結んだ人間がいますわね? それが今回の殺人の犯人だとわたくしは見ているのですけれども」
いきなり切り出すシャーロット。
「あなたがたは事件に巻き込まれ、弱みを握られそうになった被害者。なにも悪くありませんものね。これで犯人が捕まれば、今後を心配すること無く過ごせるようになりますわよ」
「お、おお」
イッコムがかくかく頷いた。
もうシャーロットに呑まれている。
というかシャーロット、食い気味に話してるけど、久しぶりの事件でテンション上がってない?
結局、シャーロットの話術ですっかりやられたイッコムが、詳しい事情を話してくれた。
「俺たちは見ての通り、貴族の息子の不良でつるんでたんだが、下町行くには怖いし、だけど悪いことは何も知らないし、空き地に集まって茶葉に火をつけて煙を吸うくらいしかしてなかったんだ」
なんて健全な不良。
「その時にそいつが現れてさ。ライザンバーというやつで、どこかの貴族のお抱え騎士をやってるとかで……」
「ライザンバー!?」
覚えがある。
魔道士の杖事件の時、グチエルの当時の彼氏だったビクトルを騙した、偽騎士の名前だ。
正式な名前はザンバーと行って、ジャクリーンの手下だったはず。
まだ王都をちょろちょろしてたんだ。
「それで、本場下町の賭博師を呼んできてもらって、まずは簡単なカード賭博から始めたんだ」
「お、お前、なんということを!」
男爵が嘆いている。
初耳だったの?
「何を賭けてたの?」
私の質問には、イッコムはニヤリと笑って、
「茶葉」
とか言ったのでもう平和そのもの。
よく考えたら、貴族の子息である彼らが、家の財産を好き勝手にどうこうはできないのだ。
家のお金を動かせるのは、当主と彼に仕える筆頭の家令のみ。
実はうちだと、ナイツが筆頭家令に当たる。
結局、茶葉をやりとりしながらカード賭博のマネごとみたいなのをしていたイッコムたち。
どうやらこれを見ていたライザンバーが、呆れを通り越して怒り出したらしい。
「あいつがどうして怒ったのか分からないんだ。だけど、あんな体格のいいヤツが怒るのは怖くて! それで解散っていうことになったんだけど、賭博師がライザンバーに、『まあまあ。こんな可愛い賭博もあっていいじゃありやせんか。あっしは上等な茶葉をもらえてホクホクですよ』って言ったんだ」
「ああ、高級茶葉って下町だといいお値段で売れるもんねえ」
実質、賭博師にとっては真っ当な報酬みたいなものだったわけだ。
だが、ザンバーは何かが気に入らなかった。
「そこでザンバーが、賭博師を殺したわけですわね。あらかじめ口封じをするつもりで、あの暗殺用の吹き矢を持っていたのでしょうけれど……。イッコムさんたちの目の前でやる意味がありませんものね」
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