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プラチナブロンド組合事件
第36話 これは詐欺かな?
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「ワトサップ辺境伯令嬢ジャネット様! お会いできて光栄です!」
指示されたゼラチナス氏の館……らしきところで、手紙の差出人と会う。
彼は白髪で、まあプラチナブロンドと言えばそうなのかな? という感じ。
これは髪を脱色してるなー。
「突然のことで驚いたわ。これはどういうことなの?」
「はい。ゼラチナス氏は生前から、自分の遺産は同じ髪を持ち、高潔な志を持つ者に継承すると仰っていたのです。なかなか該当する者が現れない中、我々ゼラチナス財団はプラチナブロンド組合を結成した後、ジャネット様の噂を耳にしまして、この方しかいない! と」
「そういうわけね」
無論、ゼラチナス財団なんか知らない。
彼の遺産がどうなったのかは、王国の主計大臣に聞けば明らかになるとは思うけれど。
「それで、私にどうしてほしいの? 私、できることと言ったら戦場の指揮や作戦立案くらいだけれど」
ゼラチナス財団と名乗る人は、ピキッと表情を引きつらせた。
とても反応に困っている顔だ。
「す、素晴らしいです! それでいいのです。ゼラチナス財団の理事が一人辞めまして、その後任をお願いしたいのです。なに、こちらにやってきて、書類に目を通してサインをしていただくだけでいいです。それだけでこれくらいの報酬を」
提示された額は大したものだ。
お金が欲しくないと言ったら嘘になる。
戦費というのは幾らあってもいい。
「分かったわ。引き受けます」
「本当ですか!! ありがたい」
あからさまに、相手はホッとしたようだった。
「それで、念の為に護衛の方も連れてきていただけると」
「ナイツを? 何か危険があるの?」
「ほら、ゼラチナス財団はゼラチナス氏の遺産を管理していますから……」
遺産を管理しているからなんだ。
これはあれだな。
私の家から、露骨に危険なものを排除しようとしているな?
疑いの姿勢で挑んでいるから、どんどんおかしなところが見つかるぞ。
シャーロットが大喜びしそうな話だなあ。
かくして私は、ゼラチナス財団はプラチナブロンド組合理事の役職を得た。
アカデミーから帰ってきたら、ちょっとの間ここで仕事をすることになるわけだ。
建物の中には、ほとんど職員はいなかった。
もう、私と護衛のナイツだけなんじゃない? と思うくらいだ。
書類はそれなりにたくさんあったが、どれもこれも、何かの事業をするわけではなくて、新聞をそのまま書き写したようなものばかり。
これに隅々まで目を通してサインをしてくれ、と言う話だった。
なんだこの仕事。
そして私は速読が得意である。
あっという間に作業は終わってしまった。
暇になる。
「お嬢、何を生産性のない仕事をしているんで?」
「多分ね、これって私をはめようとしているんだと思うんだよね。私がいない間に、家に入り込んで何かをしてるのかも」
「へえ、そりゃ一大事じゃないですかい」
特に焦った様子もないナイツ。
彼も分かっているらしい。
これは茶番だ。
「何が起きてるのかは、シャーロットが推理してるとこ。下町遊撃隊の子たちがね、うちを見張ってるの」
「あのちびっこどもが。はあはあ。しかし、ストリートチルドレンなんざ、貴族の地区じゃ目立つでしょうに」
「上から木箱を被ったり、茂みに隠れたりするみたいよ?」
「レンジャーみたいな連中だな」
「シャーロットがお金払って雇ってるから、彼女の私兵みたいな子たちよ。結構頼りになるんだよね。あー、こんなに暇ならお茶を淹れるセットを持ってくるんだった」
与えられた仕事は、決まった時間までこの家の中にいることも含まれている。
サインをする作業をさっさと終えてしまえば、本当にやることがないのだ。
それに、建物の中には何も娯楽設備みたいなものがない。
「まるで、このために借りた建物みたい。最低限のテーブルと椅子しか用意してないし」
怪しいにも程がある。
だが、ナイツとしりとりをしたりしてどうにか時間を潰したら、財団の人間が戻ってきた。
そして規定の日当を私に支払ってくれる。
「本当にお金がもらえてしまった」
「良かったですなあ」
「このお金、出どころどこなんだろうね……」
「さあねえ。綺麗な金じゃないでしょうなあ」
私もそう思う。
金だけ受け取って帰ると、家の前にシャーロットがいた。
「ちょうど帰ってくる頃だと思っていましたわ」
にんまりと微笑む彼女。
「タイミングを見計らってやって来たの?」
「ええ。ワトサップ邸周辺で怪しい動きをしていた方々が撤収しましたから」
彼女の頭の中では、その怪しい連中と私の動きがタイムテーブルで管理されているらしい。
そして、そのテーブル通りに私たちは動いているということだ。
「案外緻密な計画なのかな? 私の家の周りで変なことをしてたって、それはなんだろう?」
「偵察ですわね。ちなみに下町遊撃隊からの情報では、ジャネット様がアカデミーに向かわれた時点から作業は始まっていたようですわよ」
「なんだなんだ、一体何をしようとしてるんだ」
私はちょっと不安になる。
これはデストレードを呼んで捕まえさせた方がいいのでは?
だが、まだ彼らは犯罪を犯していない。
シャーロットは決定的なタイミングまで、彼らを泳がせておくつもりのようだ。
「大丈夫なの、シャーロット?」
「無論ですわ。恐らくこの計画、あと3日のうちには決着がつくでしょうね。ジャネット様、しばしのご辛抱ですわよ」
私は一体、何に付き合わされているんだろう……!
指示されたゼラチナス氏の館……らしきところで、手紙の差出人と会う。
彼は白髪で、まあプラチナブロンドと言えばそうなのかな? という感じ。
これは髪を脱色してるなー。
「突然のことで驚いたわ。これはどういうことなの?」
「はい。ゼラチナス氏は生前から、自分の遺産は同じ髪を持ち、高潔な志を持つ者に継承すると仰っていたのです。なかなか該当する者が現れない中、我々ゼラチナス財団はプラチナブロンド組合を結成した後、ジャネット様の噂を耳にしまして、この方しかいない! と」
「そういうわけね」
無論、ゼラチナス財団なんか知らない。
彼の遺産がどうなったのかは、王国の主計大臣に聞けば明らかになるとは思うけれど。
「それで、私にどうしてほしいの? 私、できることと言ったら戦場の指揮や作戦立案くらいだけれど」
ゼラチナス財団と名乗る人は、ピキッと表情を引きつらせた。
とても反応に困っている顔だ。
「す、素晴らしいです! それでいいのです。ゼラチナス財団の理事が一人辞めまして、その後任をお願いしたいのです。なに、こちらにやってきて、書類に目を通してサインをしていただくだけでいいです。それだけでこれくらいの報酬を」
提示された額は大したものだ。
お金が欲しくないと言ったら嘘になる。
戦費というのは幾らあってもいい。
「分かったわ。引き受けます」
「本当ですか!! ありがたい」
あからさまに、相手はホッとしたようだった。
「それで、念の為に護衛の方も連れてきていただけると」
「ナイツを? 何か危険があるの?」
「ほら、ゼラチナス財団はゼラチナス氏の遺産を管理していますから……」
遺産を管理しているからなんだ。
これはあれだな。
私の家から、露骨に危険なものを排除しようとしているな?
疑いの姿勢で挑んでいるから、どんどんおかしなところが見つかるぞ。
シャーロットが大喜びしそうな話だなあ。
かくして私は、ゼラチナス財団はプラチナブロンド組合理事の役職を得た。
アカデミーから帰ってきたら、ちょっとの間ここで仕事をすることになるわけだ。
建物の中には、ほとんど職員はいなかった。
もう、私と護衛のナイツだけなんじゃない? と思うくらいだ。
書類はそれなりにたくさんあったが、どれもこれも、何かの事業をするわけではなくて、新聞をそのまま書き写したようなものばかり。
これに隅々まで目を通してサインをしてくれ、と言う話だった。
なんだこの仕事。
そして私は速読が得意である。
あっという間に作業は終わってしまった。
暇になる。
「お嬢、何を生産性のない仕事をしているんで?」
「多分ね、これって私をはめようとしているんだと思うんだよね。私がいない間に、家に入り込んで何かをしてるのかも」
「へえ、そりゃ一大事じゃないですかい」
特に焦った様子もないナイツ。
彼も分かっているらしい。
これは茶番だ。
「何が起きてるのかは、シャーロットが推理してるとこ。下町遊撃隊の子たちがね、うちを見張ってるの」
「あのちびっこどもが。はあはあ。しかし、ストリートチルドレンなんざ、貴族の地区じゃ目立つでしょうに」
「上から木箱を被ったり、茂みに隠れたりするみたいよ?」
「レンジャーみたいな連中だな」
「シャーロットがお金払って雇ってるから、彼女の私兵みたいな子たちよ。結構頼りになるんだよね。あー、こんなに暇ならお茶を淹れるセットを持ってくるんだった」
与えられた仕事は、決まった時間までこの家の中にいることも含まれている。
サインをする作業をさっさと終えてしまえば、本当にやることがないのだ。
それに、建物の中には何も娯楽設備みたいなものがない。
「まるで、このために借りた建物みたい。最低限のテーブルと椅子しか用意してないし」
怪しいにも程がある。
だが、ナイツとしりとりをしたりしてどうにか時間を潰したら、財団の人間が戻ってきた。
そして規定の日当を私に支払ってくれる。
「本当にお金がもらえてしまった」
「良かったですなあ」
「このお金、出どころどこなんだろうね……」
「さあねえ。綺麗な金じゃないでしょうなあ」
私もそう思う。
金だけ受け取って帰ると、家の前にシャーロットがいた。
「ちょうど帰ってくる頃だと思っていましたわ」
にんまりと微笑む彼女。
「タイミングを見計らってやって来たの?」
「ええ。ワトサップ邸周辺で怪しい動きをしていた方々が撤収しましたから」
彼女の頭の中では、その怪しい連中と私の動きがタイムテーブルで管理されているらしい。
そして、そのテーブル通りに私たちは動いているということだ。
「案外緻密な計画なのかな? 私の家の周りで変なことをしてたって、それはなんだろう?」
「偵察ですわね。ちなみに下町遊撃隊からの情報では、ジャネット様がアカデミーに向かわれた時点から作業は始まっていたようですわよ」
「なんだなんだ、一体何をしようとしてるんだ」
私はちょっと不安になる。
これはデストレードを呼んで捕まえさせた方がいいのでは?
だが、まだ彼らは犯罪を犯していない。
シャーロットは決定的なタイミングまで、彼らを泳がせておくつもりのようだ。
「大丈夫なの、シャーロット?」
「無論ですわ。恐らくこの計画、あと3日のうちには決着がつくでしょうね。ジャネット様、しばしのご辛抱ですわよ」
私は一体、何に付き合わされているんだろう……!
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