上 下
66 / 107

第66話 さらば盗賊団!

しおりを挟む
 早速行動を開始した、我らラッキークラウン。
 盗賊団がアジトを作りそうな場所は、大体見当がついている。

「こっちだ。こちらに丘が連なる場所があり、洞窟も多い。盗賊やならず者が根城にするには持ってこいの場所だよ」

「迷いなく進んでいく」

「詳しいねえ……」

「獣道まで熟知しているのか」

 いかにも。
 俺はあっという間に丘の密集する地帯に入り込み、その隙間を縫って目的地に到着した。

 そこは丘を覆うように木々が生い茂り、それらが積み重なって周囲の見通しが利かない。
 丘の中腹に洞窟があった。
 そして、洞窟に繋がるように大きな小屋がある。

「本当にあったよ。道化師、あんた一直線にここに来たよね? 迷う仕草も無かったじゃないかい。一体どういうことだい?」

 ギスカが驚きを越えて呆れている。

「簡単なことだよ。いいかね? さっき我々が通ってきた獣道だが……あんなものは無かったのだ」

「は?」

「は?」

「はい?」

「なるほどな」

 ジェダが顎をさする。

「なんや! 何か察してるんかジェダ!」

「つまり、あの獣道は本来存在しないものだったが、オーギュストが王国を去ってから生まれたものだと言うことだろう。それにこの抜け目ない男のことだ。人間の足跡があることを確認して追ってきたな?」

「俺が説明するまでも無かったな。ジェダのいう通りだ。そういうことで、こうして簡単に盗賊のアジトに到着したわけだ。ちなみにここにアジトがあると確信したのは、明らかに何本かの木が切り倒された跡があったからだな。何かの建造に使ったのだろう」

「なんともまあ……。だが、お陰ですぐに盗賊が見つかった。さすがだなオーギュスト」

「いやあ、イングリドがぼーっと見つめていた先が偶然この丘でね……」

「そうなのか!」

 今回も、彼女の幸運スキルの力を借りた形になる。
 これに、俺は追跡スキル、記憶スキル、植物学スキルなどを駆使して盗賊団の跡を追った。
 俺と彼女が組むと、こういう探索の必要がある仕事はあっという間に決着がつくな。

「!?」

 盗賊の見張りがやっとこちらに気付いたようなので、大声を出す前にナイフを投げておいた。
 サクッと彼の喉に突き刺さり、盗賊は物も言わずに倒れる。

「躊躇なくやりよったな、今?」

「彼らは放置しておけば人を殺すし物を盗む。こうして将来の被害を減らしておくことは大切だよ。さあ、観客もいないんだ。サクサクと終わらせよう」

「あかん。オーギュストがやる気がない。この仕事はすぐに終わるわ。っていうかあのドラゴンゾンビの時のやる気はなんだったん?」

「あれは観客が多かったからなあ。オーギュストも張り切っていたんだ」

 イングリドが生暖かい目を俺に向けながら、剣と槍を抜いた。
 かくして、盗賊団のアジトに突入することになる。

 俺は先を歩き、最速で罠を発見、解除しながら突き進む。
 侵入者感知の鳴子も、飛び出してくる毒矢も発動しない。

 そして発見した盗賊を、片っ端から無力化していく。

 イングリドは槍を振り回して盗賊を殴り飛ばし、昏倒させる。
 ギスカの鉱石魔法が、盗賊を眠らせる。
 フリッカの呼び出した闇の妖精シェイドは、盗賊の精神にショックを与えて気絶させる力を持っていた。
 ジェダは壁や天井を蹴って盗賊に肉薄し、一瞬で絞め落とす。

 ワイバーンの群れを全滅させるようなパーティだ。
 たかが盗賊など、相手にならない。
 ましてや、不意打ちともなればなおさらである。

「何人仕留めた?」

 ジェダの質問に、俺は「二十五人」と答えた。

「それなりの規模の盗賊団なら、これでほぼ全員だろう」

「へ? これで終わりかい!?」

 フリッカが唖然とした。

「もっとほら、こう、盗賊団のボスとか! 強い用心棒とか!」

「物語の敵役ではないからねえ。さっきジェダが絞め落としたのがボスじゃないかな?」

「本当か……。歯ごたえが無いにも程があるぞ……」

 ジェダが呆然とする。
 うむ。
 何の盛り上がりもなく、さらっと盗賊団を殲滅してしまったな。

「で、どうするんや、オーギュスト? こんだけいると、生き残りを引っ張っていくにも難しいで」

「ああ。みんな殺して耳を切り取って行こう」

「うげ。さらっと言う……」

「魔族に復讐しようとしている君が何を言うのか。魔族は人間ではないが、人型の知的生物を相手にして殺し合いをするというのは、こういうものだよ」

「いやいや、こんな一方的や無いやん!」

「うん、言うなれば現状、フリッカの側が一方的にやられる」

「なんやて!?」

「ほら、手を動かしたまえ。つまらない仕事はさっさと終えるぞ。耳は塩漬けにしておいて、王都に寄ってからその帰りに男爵領に提出する」

「これだけ頭数がいると、少々骨が折れるな……。ああ、ジェダ! 引きちぎったらだめだ」

「なんだと!? 耳の形をしてればいいだろうが。適当でいいだろう適当で。ああ、張り合いのない相手だった」

 ジェダがぶつぶつ言っている。
 俺は彼らの仕事を見回しながら、意識は外に集中している。

 これで盗賊団相手は終わりだと思うが……。
 万一ということもあるかも知れないからだ。

 何せ、我々には幸運の女神がついている。
 想定通りに仕事が終わらないことなどざらで、幸運スキルはとんでもないものを引き寄せてくれたりするものなのだ。

「むっ、見張りが倒されている……? 馬鹿な。こいつら、襲撃されたのか」

 ほら、外から声がする。

「ああ、やはり盗賊風情だった。私は不幸だ……。雇い主が毎回ダメダメだ……」

 聞き覚えのある声だ……。
 まさか……まさかな。

「こっ、この声はぁっ! 忘れもせんで! シェイド!!」

 闇の妖精が、アジトの入り口めがけて飛んでいく。

「なんだこれは? 妖精がいるとは。ふんっ」

 何かを潰す音がして、フリッカが吠える。

「ああ、くそ、シェイドがやられた! マジかあいつ!?」

「どういうことだ、オーギュスト?」

 俺はイングリドに説明を行うことにする。
 端的にだ。

「ネレウスだ。よりにもよって、盗賊団に雇われていたらしい」

「なんだと!? 早速目標達成ではないか! ああ、いや、だが彼は悪人なのか……? フリッカの話を聞くと悪人だが……」

「そんなことァどうでもいい! 俺は戦いに行くぜ!!」

 ジェダが吠える。
 その姿が、翼の生えた獣のものになった。
 フリッカの指示が得られないので、でたらめな姿になるのだろう。

 さあ、盗賊団から魔族ネレウスとのリターンマッチに移行するぞ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...