“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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帰ってきた勇者パーティー編

第97話 まさかのお前らが援軍とは

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 王国の兵士たちの大部分がモンスター化していた。
 なかなかショッキングな事実ではあるが、なってしまったものは仕方ない。

 ライトダーク連合軍が、わあわあと詰めかけ、モンスター化した王国軍と激しく戦っている。
 俺たちの仕事は、王城にいるであろう国王を引っ捕らえることなのだが……。

 ここで思わぬ再会があった。

「マイティか!?」

 モンスター兵を跳ね飛ばした俺の目の前で、やはりモンスター兵を切り倒した男がいる。
 その姿も声も、忘れるわけがない。
 長い間の付き合いがあった男のものだ。

「久しぶりだな。フェイクじゃないか」

 俺がかつて所属していたパーティー、フェイクブレイバーズのリーダーであり、俺の幼馴染フェイクだ。
 彼にパーティーを追い出されて、俺の勇者パーティーとしての冒険が始まったとも言える。

「あれっ、マイティ、お知り合いですか?」

「ああ。俺の幼馴染でな。腕のいい冒険者だぞ」

「それは頼りになりますね!」

 エクセレンがモンスター兵を棍棒で粉砕しながら駆け寄ってきた。
 これを見てフェイクがぎょっとする。

「な、なんだあの女は!? 見もしないでモンスターを倒したぞ! あれ程の腕を持つ女冒険者は見たことがない」

 これを聞いて、エクセレンがハッとして、すぐに満面のにやけ顔になった。

「いい人ですねー! 聞きましたマイティ? ボク、凄腕の冒険者ですって! やった! 村を出てから一年、そんなに褒められたのは初めてですよー!」

 とても嬉しそうなので、俺も嬉しくなった。

「ありがとうな」

「なんでお前が礼をするんだマイティ! ……というか、お前もまだ冒険者をやっていたのか」

「ああ、いや。冒険者は正確にはもうやってなくてな。こっちのエクセレンは勇者で、俺は勇者パーティーの一員なんだ」

「勇者パーティー!? 噂の、魔王と戦っているという一団か! だがここしばらく音沙汰がなく、やられてしまったのだろうという話だったが……。まさかお前がその一人だったとは……。おっと!」

「まだまだモンスター兵はいるようだな。だが任せろ。うちには集団戦のプロがいる」

 会話の途中で、王城から溢れ出してきたモンスター兵の集団。
 まるで奴らを無限に生み出す仕組みでもあるかのようだ。
 だが、そんなものが幾らいたところで物の数ではない。

 モンスター兵たちの前に立ちはだかるのはジュウザだ。

 近くには、フェイクブレイバーズのシーフ、ローグがいる。

「行くぞ! キエエエエエエッ!!」

 ジュウザが飛び上がり、吠えた。
 クリティカルヒット一閃。
 モンスター兵士の軍団はその全てが首を飛ばされ、倒れた。

「ほ……本当にニンジャだ」

「いかにも。マイティ、道は切り開いた。行くぞ。何があるか分からぬ。お主のガードが必要だ」

「おうよ。どうだ、フェイクブレイバーズのみんなもついてくるか? 頭数が多いとやれることも増えるからな」

「なっ……!?」

 ジュウザのやったことを見て目を剥いていたフェイク。
 俺の呼びかけに、目を白黒させた。
 何を悩んでいるんだ。

「お前は……既に……俺たちよりも上だ」

 絞り出すようにフェイクが言った。

「何を言ってるんだ」

「お前を追い出した俺は……バカだった。あの後、時代が代わり、お前の力がなければやっていけないようになった。お前は勇者とともに力を発揮してきたんだろう……。だが、俺はお前を追い出したやつだ。言うなれば仇みたいなものだ」

「違うぞ。気にするな。結果的に俺はいい方に回った。それでいいじゃないか」

 この辺りの話は追求したところで何の意味もない。
 過ぎた話だし、過去を振り返っても魔王が死ぬわけではない。

 ということで、仲間とともにずんずんと王城に踏み込んでいく俺たちなのだった。
 フェイクブレイバーズも、遅れて後をついてくる。

 後詰めは彼らに任せよう。

『侵入者め! 排除すウグワーッ』

 有無を言わさずエクセレンが殴り倒したな。

『ここから先は一歩もウグワーッ!』

 ウインドが投げた石ころみたいなものが、モンスターの頭にあたって爆発を起こした。

「あれはなんだ?」

「魔力に反応して発火する粉塵を固めたものだ。ああやって投げつけると外の殻が割れて中身の粉が溢れ出し、爆発する。ディアボラやエクセレンの近くで使うとすぐに爆発するからなかなか難しいのだ」

「色々な物を持ってるなあ」

 カッサンドラはたまに、おざなりに適当な兵士を叩いてもとに戻したりしている。
 ああ、そう言えば洗脳を解けるんだっけ!

「あー、ダメだねえ。完全にモンスター化してたから、戻っても死ぬね」

 カッサンドラがため息をついた。

「バカだねえ……。何を考えて魔王軍についたのか。いや、上がバカになったから下も断れないで道連れにされたのかね? ほんと、バカな指導者は救いようがないねえ」

「カッサンドラ、怒りを燃やしているな」

「そりゃあそうさ!」

 鼻息も荒い我らがエクソシスト殿。
 そんな彼女の業を見て、フェイクブレイバーズの僧侶プレイスが、なんだか震えている。

「そ、そんな……。モンスター化した人間をもとに戻すほどの祝福を身に受けた存在なんて……! この国の大司教でもできる人はいないのに……」

 みんな何かと衝撃を受けているなあ……。
 人は人、自分は自分である。
 
 勇者パーティーなんか、オンリーワンしかいないからな。
 

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