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帰ってきた勇者パーティー編
第94話 天蓋の魔将とか言うのをとりあえず撃破する
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荷馬車を借りて、パカパカと走らせる。
快速である。
屋根は無いので、雨が降ったら上から布を被ることになっている。
幸い、快晴だった。
「快晴なのは良いが、向こうを見よ。空に妙なものが張り付いている」
ジュウザが指差したのは、張り付いているとしか言いようがないものだった。
国一つを覆うくらいの範囲に、白黒まだらの巨大な布みたいなものが……。
「ありゃ魔将じゃな! ああやって国を覆い尽くして支配してしまう分かりやすいやつじゃ! たまげたのう。あんなでかいのおるんじゃー」
ディアボラは感心した後、早速魔法陣を書き始めた。
「ライジングメテオのちっちゃいのを作るのじゃ。お前らを打ち上げるからあれをやっつけるのじゃ」
「よし、そうするか」
「ちょい待って! 一瞬で納得してるけど、空を覆う敵ってそんなのある? 目の前にいるけどあたいはとても信じられない……」
「カッサンドラは地上に残って、ディアボラとともに魔将の支配下にある人や建造物を解放して回るのがいいのではないだろうか」
ウインドからナイスな提案だ。
疑義を呈していたカッサンドラも、これには納得した。
「そうだね。そっちは理解できる……! あたいは自分が理解できる範囲で頑張るよ。あんたのためにもね!」
「別に俺のために頑張らなくてもいい」
ぐいぐい押されてたじたじなウインドなのだった。
「ほい、完成なのじゃ! ほれマイティ! エクセレン! ジュウザ! ウインド! 集まれー! あ、カッサンドラは手綱握ってるのじゃ」
「うわ! 手綱を投げつけるんじゃないよ! もう……って、まさか荷台で魔法を使うつもりかい!?」
「その通りじゃ! 行くぞー! ライジングコメットーッ!!」
荷台の中空に魔法陣が浮かび上がる。
そこからゆっくりと、ばかでかい岩石が浮かび上がってくる。
俺はこの上に、エクセレンとウインドを放り投げた。
ジュウザは自ら飛び上がり着地する。
俺は岩石を掴むと、体を引き上げる。
「いいぞ! やってくれ!」
「よっしゃー! 発射なのじゃーっ!!」
爆音が上がる。
ライジングメテオと比べると、恐らく百分の一くらいのサイズじゃないか?
だが俺たち全員をギリギリ乗せられる程度の岩石が生み出されていく。
そして、射出。
さらに轟音。
馬車が一瞬、衝撃で跳ね上がった。
馬がびっくりするが、カッサンドラが鞭を振るったら落ち着いたようだ。
ははあ、浄化にはそんな力があるんだなあ。
ということでだ。
地上を二人に任せて、俺たちは国を覆う天井に突撃する。
ついでにウインガーで加速させるぞ。
「これ、止まらない感じです? どんどん加速してますけど」
「俺の防御力頼りだろう。加速し続けて魔将にぶつかるんだろうな」
「俺は何も考えないぞ。頼むぞマイティ」
「ははは、ディアボラらしいな!」
「ですねー! あっはっは」
わいわいと騒ぐ俺たち。
それに対して、近づいてくる真っ白な天蓋がカッと巨大な目を開いた。
『しょ、正気か貴様らーっ!! 魔法ごと突撃してくるなど!! ……いや! 迎撃してしまえばいい! 行けい、我がしもべたちよ!!』
魔将から放たれる、無数のなんか白い布みたいなもの。
これは、ひらひらした体の中心に円形の口が付いたモンスターなんだな。
「さっさと処分するがよかろうな。キエエエエエイッ!!」
気合一閃、モンスターの群れがその数を一瞬で減じさせる。
同時に、謎の粉を撒いているウインド。
粉を吸い込んだ白いモンスターたちがむせた。
むせて動きが止まったモンスターに他のモンスターが絡まり、じたばたしながら浮力を失って落ちていく。
それでも止めきれない分は、俺が止めるだけだ。
モンスターの群れを引き寄せて、防いで弾き飛ばす。
気がつけば、魔将が間近だ。
『と、止まらない止まらないーっ!! やめろーっ!?』
衝突するライジングコメット。
『ウグワーッ!!』
天蓋が揺らいだ。
その衝撃は余さず俺が受け止めている。
そして、とどめはエクセレンだ。
「シャイニングーっ! 斬……&カノンナックール!!」
投擲された輝くトマホーク。
そしてカノンナックル。
ぶっ飛んだ二発の攻撃が、魔将を切断し、粉砕した。
トマホークを握りしめて戻ってくるナックル。
回転しながら、エクセレンの左腕に収まった。
『完全に我を使いこなしているな。良き良き。だが、我が力は勇者の創意工夫によってさらに広がる……。精進せよ』
何やら含蓄のありそうなことを言っている。
「ところであの魔将は何だったんだろうなあ」
「名前も知らないうちにやっつけてしまいましたね!」
「ああやってどっしり構えているなど、的にしてくれと言っているようなものだ」
「いやあ愉快愉快。これで空に輝く魔将星は、ひの、ふの、みの……六体を片付けたか。あと二体であるな」
コメットはすっかり粉々になり、俺たちは自由落下中だ。
仲間たちがみんな俺に掴まっているから問題はない。
落下の衝撃を俺がガードすればいい。
かくして、国の広場を目掛けて俺は落下と言うか、着弾した。
衝撃を盾で防ぎきる。
「空だ! 空が見えた!」
「やった! 空を塞いでいたやつが消えた!」
「あんたたちがやってくれたのか!?」
国の人々が喜んでいるではないか。
「いかにも。俺たちがやった。そしてこれが勇者だ」
「勇者エクセレンです! 魔王を退治しますよー!!」
解放された国が、歓声で包まれるのだった。
快速である。
屋根は無いので、雨が降ったら上から布を被ることになっている。
幸い、快晴だった。
「快晴なのは良いが、向こうを見よ。空に妙なものが張り付いている」
ジュウザが指差したのは、張り付いているとしか言いようがないものだった。
国一つを覆うくらいの範囲に、白黒まだらの巨大な布みたいなものが……。
「ありゃ魔将じゃな! ああやって国を覆い尽くして支配してしまう分かりやすいやつじゃ! たまげたのう。あんなでかいのおるんじゃー」
ディアボラは感心した後、早速魔法陣を書き始めた。
「ライジングメテオのちっちゃいのを作るのじゃ。お前らを打ち上げるからあれをやっつけるのじゃ」
「よし、そうするか」
「ちょい待って! 一瞬で納得してるけど、空を覆う敵ってそんなのある? 目の前にいるけどあたいはとても信じられない……」
「カッサンドラは地上に残って、ディアボラとともに魔将の支配下にある人や建造物を解放して回るのがいいのではないだろうか」
ウインドからナイスな提案だ。
疑義を呈していたカッサンドラも、これには納得した。
「そうだね。そっちは理解できる……! あたいは自分が理解できる範囲で頑張るよ。あんたのためにもね!」
「別に俺のために頑張らなくてもいい」
ぐいぐい押されてたじたじなウインドなのだった。
「ほい、完成なのじゃ! ほれマイティ! エクセレン! ジュウザ! ウインド! 集まれー! あ、カッサンドラは手綱握ってるのじゃ」
「うわ! 手綱を投げつけるんじゃないよ! もう……って、まさか荷台で魔法を使うつもりかい!?」
「その通りじゃ! 行くぞー! ライジングコメットーッ!!」
荷台の中空に魔法陣が浮かび上がる。
そこからゆっくりと、ばかでかい岩石が浮かび上がってくる。
俺はこの上に、エクセレンとウインドを放り投げた。
ジュウザは自ら飛び上がり着地する。
俺は岩石を掴むと、体を引き上げる。
「いいぞ! やってくれ!」
「よっしゃー! 発射なのじゃーっ!!」
爆音が上がる。
ライジングメテオと比べると、恐らく百分の一くらいのサイズじゃないか?
だが俺たち全員をギリギリ乗せられる程度の岩石が生み出されていく。
そして、射出。
さらに轟音。
馬車が一瞬、衝撃で跳ね上がった。
馬がびっくりするが、カッサンドラが鞭を振るったら落ち着いたようだ。
ははあ、浄化にはそんな力があるんだなあ。
ということでだ。
地上を二人に任せて、俺たちは国を覆う天井に突撃する。
ついでにウインガーで加速させるぞ。
「これ、止まらない感じです? どんどん加速してますけど」
「俺の防御力頼りだろう。加速し続けて魔将にぶつかるんだろうな」
「俺は何も考えないぞ。頼むぞマイティ」
「ははは、ディアボラらしいな!」
「ですねー! あっはっは」
わいわいと騒ぐ俺たち。
それに対して、近づいてくる真っ白な天蓋がカッと巨大な目を開いた。
『しょ、正気か貴様らーっ!! 魔法ごと突撃してくるなど!! ……いや! 迎撃してしまえばいい! 行けい、我がしもべたちよ!!』
魔将から放たれる、無数のなんか白い布みたいなもの。
これは、ひらひらした体の中心に円形の口が付いたモンスターなんだな。
「さっさと処分するがよかろうな。キエエエエエイッ!!」
気合一閃、モンスターの群れがその数を一瞬で減じさせる。
同時に、謎の粉を撒いているウインド。
粉を吸い込んだ白いモンスターたちがむせた。
むせて動きが止まったモンスターに他のモンスターが絡まり、じたばたしながら浮力を失って落ちていく。
それでも止めきれない分は、俺が止めるだけだ。
モンスターの群れを引き寄せて、防いで弾き飛ばす。
気がつけば、魔将が間近だ。
『と、止まらない止まらないーっ!! やめろーっ!?』
衝突するライジングコメット。
『ウグワーッ!!』
天蓋が揺らいだ。
その衝撃は余さず俺が受け止めている。
そして、とどめはエクセレンだ。
「シャイニングーっ! 斬……&カノンナックール!!」
投擲された輝くトマホーク。
そしてカノンナックル。
ぶっ飛んだ二発の攻撃が、魔将を切断し、粉砕した。
トマホークを握りしめて戻ってくるナックル。
回転しながら、エクセレンの左腕に収まった。
『完全に我を使いこなしているな。良き良き。だが、我が力は勇者の創意工夫によってさらに広がる……。精進せよ』
何やら含蓄のありそうなことを言っている。
「ところであの魔将は何だったんだろうなあ」
「名前も知らないうちにやっつけてしまいましたね!」
「ああやってどっしり構えているなど、的にしてくれと言っているようなものだ」
「いやあ愉快愉快。これで空に輝く魔将星は、ひの、ふの、みの……六体を片付けたか。あと二体であるな」
コメットはすっかり粉々になり、俺たちは自由落下中だ。
仲間たちがみんな俺に掴まっているから問題はない。
落下の衝撃を俺がガードすればいい。
かくして、国の広場を目掛けて俺は落下と言うか、着弾した。
衝撃を盾で防ぎきる。
「空だ! 空が見えた!」
「やった! 空を塞いでいたやつが消えた!」
「あんたたちがやってくれたのか!?」
国の人々が喜んでいるではないか。
「いかにも。俺たちがやった。そしてこれが勇者だ」
「勇者エクセレンです! 魔王を退治しますよー!!」
解放された国が、歓声で包まれるのだった。
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