“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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帰ってきた勇者パーティー編

第91話 試練連続突破だ

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『ウグワーッ!! 惑いの試練は合格だ!』

『ウグワーッ!! 裏切りの試練は合格だ!』

「まるで俺たちの能力に合わせたような試練の内容だ」

 惑いの試練を、こんなこともあろうかと用意してあった様々な粉でくぐり抜けたウインド。
 裏切りの試練を鞭による浄化で突破したカッサンドラ。

 確かに、ウインドが訝しげに呟く通りだ。
 こちらの戦力を分かっててそれを試しているんじゃないだろうな。

「いや、偶然なのじゃ! 神は多分深いこと何も考えてないのじゃー」

「失敬じゃないかい!?」

 ディアボラが言下に否定したので、カッサンドラがちょっとカチンと来たらしい。
 聖職者だもんなー。

「そうなのか、ディアボラ」

「そうなのじゃ。だってこの三人とわしで、この世界出身の魔将は全員なのじゃ。後は宇宙から来た腐ったやつばかりじゃから神が再就職させんじゃろ」

「なるほど、説得力がある」

 それにしても、惑いの試練のミストシーカーは本当に実体が無くて、エクセレンのカノンナックルすら通用しなかったし、裏切りの試練のブレインイーターはまたエクセレンが操られかけたからな。

「あーうー。二つの試練ではボクは全然役に立ちませんでしたあ」

「事前に対策を立てられて良かったじゃないか。ブレインイーターは占星術師よりもさらにヤバイ洗脳使いだっただろ」

「はい! まっすぐ相手の目を見たらいけないんですよね!」

「だな。エクセレンはもう、一直線に相手を見るからなあ」

『そうだなあ。わしみたいな洗脳するタイプは、目とか動作とか、あるいはニオイで洗脳するんだよ。お嬢ちゃんはそういう搦め手に真っ向から飛び込むだろ? そりゃあいかん。勇者は強いが、単体では色々足らんのだよ』

 気さくにブレインイーターからのアドバイスである。

「ありがとうございます! 参考になります!」

『おうおう、頑張ってくれや。わしらにはこういうことしかできんからよ』

『うむー。我らは神の下僕ゆえなー。実体のない相手を攻撃する手段はお嬢ちゃんにはなかろ。あの優男とイケイケな僧侶に任せておけー』

「ありがとうございます! 参考になります!」

 ミストシーカーも親切だなあ。

「お主ら変わっておらんのじゃー! いやあ、良かった良かったのじゃー」

『ディアボラ、本気で魔法陣書き続けていたとはな! その力で魔王星をも落としたと聞く! 大したものだ!!』

「うむうむ。だが、こやつらのお陰でもあるのじゃー! どうじゃどうじゃ、こやつらの腕はなかなかのものじゃろ!」

『合格点だなあ』

『魔王様の子孫以外は一人ひとりならまあ合格点だがー、全員合わさると、参ったー。穴がないー』

 俺以外はってなんだ、俺以外はって。

 ディアボラとインセクターとミストシーカーとブレインイーターが、四人で肩を組んでわはははと笑っている。

 なお、ディアボラは角の生えたちびっ子な娘で、インセクターは昆虫に似たヘルメットを被ったボディスーツ姿の男だ。
 そしてミストシーカーは纏ったローブから出る体が、全て霧状に揺らいでいる。
 ブレインイーターは、巨大な脳みそみたいな頭から蚊の口吻を突き出した異形である。

 凄い光景だなあ。

『これで試験はしまいだ。先に行ってトゲを手に入れるがいい!』

 インセクターが先を指差す。

「えっ!? 他に神様直属のすごい人とかいて、最後の試練とかやってこないんですか!?」

『神の眷属というものは大して強くはないのだ。だから神は自らの手で魔王を誅する事ができん! 勇者の誕生はそのための仕組みなのだな! 我々という戦力も、神が作り上げたこの舞台だからこそ活動できる! 魔王を倒せるのは、結局の所お前たちしかいないというわけだ!』

 インセクターが朗々と語る。
 なるほどなあ。

 開かれた道の先に、神のシンボルがあった。
 神々しく、この巨大な教会の壁面に飾られている。

「なんて神々しい……」

 カッサンドラが感激して涙を流している。
 俺はだが、これを見てスーンという感じだった。

 二回会ってるし、神はかなりフランクだったしな……。
 神自身がいるであろう教会に来るよりも先に、自分から地上にやって来たし。

 ありがたいという気分にはなあ……。

 だがまあ、ちゃんとご利益みたいなものはあったようだ。
 エクセレンの棍棒がピカピカ光り始める。
 残った最後の面に、モリモリと輝くトゲが盛り上がったのである。

 よりによって黒く輝くトゲだ。

『これは全てなるトゲである』

 いきなりシンボルから神がニュッと半身を出してきて説明し始めた。
 俺たちはそりゃあびっくりする。

「うわーっ」

 と叫んで、カッサンドラは腰を抜かし、ディアボラがポテンと倒れ、ジュウザが身構えウインドが粉を撒き、俺が盾を構えてエクセレンが殴りつけた。

『ウグワーッ粉で目がっ! 打撃で頭がーっ!』

 神が殴られて地面に転がった。

「か、神様ーっ!!」

 カッサンドラの悲痛な声が響く。
 いや、だってなあ。
 いきなり出てきたらこうなるよなあ。

『よい。神は回復力が高い』

 そんな事を言いながらヒョコッと起き上がる神。

『良いか。全ての色を混ぜ合わせれば黒となる。黒は全てのトゲなり。何、悪いっぽい色だと? この地に降り立った魔王を見よ。あやつのカラーはネイビーバイオレットであろう』

「神が専門的なことをいい出したぞ」

 どよめく俺たち。

『トゲは行使できる力に過ぎぬ。振るう者が強くなければ意味をなさぬ。一人であれば力も意味を持たぬ。補い合え。全を以て向かえば、棍棒は魔王の頭を殴りつけられるであろう……』

 神が起き上がりながら説明をした。
 それからすぐに、『ウーン』と唸って倒れた。
 こりゃいかん。

 棍棒の当たりどころが悪かったらしい。
 神のしもべたちも集まってきて、みんなで神を介抱するのだった。
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