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帰ってきた勇者パーティー編
第90話 その声は我が友ディアボラではないか、だと!?
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「試練ってのは、お前さんたちを倒せばいいのか?」
『我々はこう見えて、お前たちが試練をちゃんとやっているかチェックする役割なので暴力は反対である』
知的な役割の連中だった。
『試練まで案内しよう。こちらだ』
騎士に案内された先にあったのは、教会に続く道である。
『ゆく先々に、かつて魔王に従った強大なモンスターを再現した試練が用意してある。これを倒すことができねば、新たな魔王と戦うことはできまい』
「なんと! あやつらの再現なのじゃ? 懐かしいのじゃー」
そうか、ディアボラは当事者だもんな。
騎士たちはちょっと戸惑ったようである。
『あれっ、星砕きの魔女ディアボラ? 勇者パーティーの宿敵の一人がどうしてここに』
「ディアボラ、勇者パーティーの宿敵だったのですかー」
「そうじゃぞ。わしは儀式魔法で幾つもの町や軍隊を炎の中に沈めてきたからの! とっても恐れられたものじゃー。じゃが、星の外から来た魔将どもが儀式魔法は時間効率が悪いと抜かして、わしを戦線から外したのじゃ! お陰で魔王軍はそこから勇者パーティーにコテンパンじゃ!」
「人に歴史ありであるな」
「前々から半信半疑だったけど、やっぱりこのちびっこって魔将なんだねえ……」
騎士二名は協議に入ったようだ。
『想定外じゃない?』
『神はいいからやっちゃえって言ってた』
『神の決定なら仕方ないよな』
『だな、もう知らん知らん』
くるりと振り向く騎士たち。
『では試練に挑むがいい』
「今、後ろ向きな理由で意思決定をしたな」
ウインドが思わず笑うのだった。
さて、第一の試練。
そこはトンネルのようになっていた。
試練会場は全体的に、天井のない広場みたいな感じなのだ。
空は雲に覆われており、時折青空が見える程度。
だが、ここは明確に天井があった。
その理由は簡単である。
通路全てを埋め尽くす、虫型モンスター。
ギチギチ、キチキチと大顎を鳴らす音がする。
カミキリムシみたいなモンスターだな。
「ディアボラ、知り合いですか?」
「うむ! 蟲使いのインセクターじゃな! 懐かしいのう! わしとは茶飲み友達であったわい」
『その声は我が友ディアボラではないか』
虫の群れから、ニュッと人間型カミキリムシみたいなのが顔を出した。
体は体型にフィットしたレザーのスーツみたいになっており、派手なカミキリムシを意匠にしたベルトに、レザー手袋とレザーのロングブーツを身に着けている。
なんだこいつ。
『我ら魔将は勇者との戦いに敗れた。その後、魂を神が拾い上げ、こうして次なる魔王への備えとして再就職させてくれたのだ』
「そうだったのか。神はなかなかやり手だな」
俺はとても感心した。
『ではかかってくるが良い。新たな時代の勇者パーティーよ! ……あれっ? 先頭にいるのは魔王様ではないか』
「似とるじゃろ。子孫らしいのじゃ」
『おおー!! それは嬉しい知らせ。魔王様の命脈は絶たれてはいなかった! そして魔王様の子孫が勇者と共闘して新しい魔王と戦う……。素晴らしいではないか。よしよし、全力でお相手致す。行け、我が眷属よ!!』
ハイテンションになったインセクターが、虫の群れを放った。
これを迎え撃つのは、ジュウザとウインドである。
ウインドが謎の粉を撒くと、虫がポトポト落ちた。
「サッチュウギクという草の粉末でな。虫の神経をしびれさせる効果がある」
「クリティカルヒットをすれば話は早いのだが、こやつらはあの男の眷属であろう? どうも悪い奴では無いように思えて、クリティカルするのがはばかられる。ということで、拙者はこれだ。本邦初公開……フウトン!」
飛び上がったジュウザが回転すると、彼の周囲に猛烈な風が生まれた。
それがカミキリムシたちを直撃し、一気に散り散りにしてしまう。
『見事! だが蟲使いは虫が強いのではない。虫の王である蟲使い本人が強いのだ! 我が攻撃を受け止められるか!』
風を切り裂きながら、インセクターがぶっ飛んできた。
「ぬうっ! フェイタルヒット!」
『インセクトキーック!!』
ジュウザとインセクターが空中でぶつかり合う。
おお、インセクター強いな!
肉弾戦でジュウザを押してるぞ。
「あやつは真の魔王様の部下の中でもトップクラスの武闘派だったのじゃ! 虫を使えるのに虫を使うよりも本人が戦ったほうが強いという反則みたいな奴なのじゃー」
「なるほど。今の魔王軍にいたらヤバかったな」
俺は前にのしのし歩み出て、盾を構えた。
「だったら勇者パーティーは総合力で相手をするぜ! 俺が相手だあ!」
『うおーっ! 意識が引き寄せられる!! それがお前の力かーっ! インセトダイナミーック!!』
空中で反転したインセクターが、俺目掛けて飛び蹴りを放ってきた。
インパクトの強烈なこと。
こいつのキック一発が、ライトダーク王国で受け止めた地すべりに匹敵する。
「だが、こいつを受け流して……ダメージはゼロだ!」
俺の背中を、駆け上がる者がいた。
エクセレンだ。
手には棍棒を握りしめている。
トゲが発動しないあたり、インセクターは既に神の眷属になっているのだな。
普通の棍棒になったそれが、俺の盾で食い止められているインセクターに振り下ろされた。
「ちょあーっ!!」
『ウグワーッ!?』
ぶん殴られたインセクター。
地面に叩きつけられて、バウンドしてからゴロゴロ転がっていった。
『ま、参った! 勇者パーティー、お前たちの実力はよく分かった! 群体の試練は突破だ!』
群体の試練……?
インセクターが単騎特攻してきた気がするのだが。
『我々はこう見えて、お前たちが試練をちゃんとやっているかチェックする役割なので暴力は反対である』
知的な役割の連中だった。
『試練まで案内しよう。こちらだ』
騎士に案内された先にあったのは、教会に続く道である。
『ゆく先々に、かつて魔王に従った強大なモンスターを再現した試練が用意してある。これを倒すことができねば、新たな魔王と戦うことはできまい』
「なんと! あやつらの再現なのじゃ? 懐かしいのじゃー」
そうか、ディアボラは当事者だもんな。
騎士たちはちょっと戸惑ったようである。
『あれっ、星砕きの魔女ディアボラ? 勇者パーティーの宿敵の一人がどうしてここに』
「ディアボラ、勇者パーティーの宿敵だったのですかー」
「そうじゃぞ。わしは儀式魔法で幾つもの町や軍隊を炎の中に沈めてきたからの! とっても恐れられたものじゃー。じゃが、星の外から来た魔将どもが儀式魔法は時間効率が悪いと抜かして、わしを戦線から外したのじゃ! お陰で魔王軍はそこから勇者パーティーにコテンパンじゃ!」
「人に歴史ありであるな」
「前々から半信半疑だったけど、やっぱりこのちびっこって魔将なんだねえ……」
騎士二名は協議に入ったようだ。
『想定外じゃない?』
『神はいいからやっちゃえって言ってた』
『神の決定なら仕方ないよな』
『だな、もう知らん知らん』
くるりと振り向く騎士たち。
『では試練に挑むがいい』
「今、後ろ向きな理由で意思決定をしたな」
ウインドが思わず笑うのだった。
さて、第一の試練。
そこはトンネルのようになっていた。
試練会場は全体的に、天井のない広場みたいな感じなのだ。
空は雲に覆われており、時折青空が見える程度。
だが、ここは明確に天井があった。
その理由は簡単である。
通路全てを埋め尽くす、虫型モンスター。
ギチギチ、キチキチと大顎を鳴らす音がする。
カミキリムシみたいなモンスターだな。
「ディアボラ、知り合いですか?」
「うむ! 蟲使いのインセクターじゃな! 懐かしいのう! わしとは茶飲み友達であったわい」
『その声は我が友ディアボラではないか』
虫の群れから、ニュッと人間型カミキリムシみたいなのが顔を出した。
体は体型にフィットしたレザーのスーツみたいになっており、派手なカミキリムシを意匠にしたベルトに、レザー手袋とレザーのロングブーツを身に着けている。
なんだこいつ。
『我ら魔将は勇者との戦いに敗れた。その後、魂を神が拾い上げ、こうして次なる魔王への備えとして再就職させてくれたのだ』
「そうだったのか。神はなかなかやり手だな」
俺はとても感心した。
『ではかかってくるが良い。新たな時代の勇者パーティーよ! ……あれっ? 先頭にいるのは魔王様ではないか』
「似とるじゃろ。子孫らしいのじゃ」
『おおー!! それは嬉しい知らせ。魔王様の命脈は絶たれてはいなかった! そして魔王様の子孫が勇者と共闘して新しい魔王と戦う……。素晴らしいではないか。よしよし、全力でお相手致す。行け、我が眷属よ!!』
ハイテンションになったインセクターが、虫の群れを放った。
これを迎え撃つのは、ジュウザとウインドである。
ウインドが謎の粉を撒くと、虫がポトポト落ちた。
「サッチュウギクという草の粉末でな。虫の神経をしびれさせる効果がある」
「クリティカルヒットをすれば話は早いのだが、こやつらはあの男の眷属であろう? どうも悪い奴では無いように思えて、クリティカルするのがはばかられる。ということで、拙者はこれだ。本邦初公開……フウトン!」
飛び上がったジュウザが回転すると、彼の周囲に猛烈な風が生まれた。
それがカミキリムシたちを直撃し、一気に散り散りにしてしまう。
『見事! だが蟲使いは虫が強いのではない。虫の王である蟲使い本人が強いのだ! 我が攻撃を受け止められるか!』
風を切り裂きながら、インセクターがぶっ飛んできた。
「ぬうっ! フェイタルヒット!」
『インセクトキーック!!』
ジュウザとインセクターが空中でぶつかり合う。
おお、インセクター強いな!
肉弾戦でジュウザを押してるぞ。
「あやつは真の魔王様の部下の中でもトップクラスの武闘派だったのじゃ! 虫を使えるのに虫を使うよりも本人が戦ったほうが強いという反則みたいな奴なのじゃー」
「なるほど。今の魔王軍にいたらヤバかったな」
俺は前にのしのし歩み出て、盾を構えた。
「だったら勇者パーティーは総合力で相手をするぜ! 俺が相手だあ!」
『うおーっ! 意識が引き寄せられる!! それがお前の力かーっ! インセトダイナミーック!!』
空中で反転したインセクターが、俺目掛けて飛び蹴りを放ってきた。
インパクトの強烈なこと。
こいつのキック一発が、ライトダーク王国で受け止めた地すべりに匹敵する。
「だが、こいつを受け流して……ダメージはゼロだ!」
俺の背中を、駆け上がる者がいた。
エクセレンだ。
手には棍棒を握りしめている。
トゲが発動しないあたり、インセクターは既に神の眷属になっているのだな。
普通の棍棒になったそれが、俺の盾で食い止められているインセクターに振り下ろされた。
「ちょあーっ!!」
『ウグワーッ!?』
ぶん殴られたインセクター。
地面に叩きつけられて、バウンドしてからゴロゴロ転がっていった。
『ま、参った! 勇者パーティー、お前たちの実力はよく分かった! 群体の試練は突破だ!』
群体の試練……?
インセクターが単騎特攻してきた気がするのだが。
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