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帰ってきた勇者パーティー編
第88話 雪が降ってきたあたりで目星がついた
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「空からぱらぱら降ってきますよ。あれなんでしょう。雪!? あれが! へえー。どうりで寒くなって、最近サウナが楽しくなってきたはずです!」
エクセレンが空を見上げて、村の子どもたちとはしゃいでいる。
そうかそうか、雪が降る季節か。
随分長いこと、湖の周りに滞在していることになる。
ディアボラの、古の教会を探すために作られる魔法陣。
それの完成を待って旅立とうと思っていたが、思いの外時間がかかっているのだ。
考えてみたら、魔王星を撃退する魔法陣には千年掛かっているのだ。
儀式魔法というものがひたすら時間がかかるものだと、俺はすっかり失念していたのだなあ。
「マイティ! これは積もりますかね! たっくさん降ってきますよー」
「おう。積もるといいなあ」
エクセレンと二人、まったり空を見上げるのである。
湖周辺に残っているのは、俺とエクセレン、そしてディアボラの三人。
ジュウザとウインドとカッサンドラは、連絡用の携帯魔法陣を持って周辺を旅して回っている。
魔王軍と戦うためだな。
俺たちによって、さんざん魔将を倒された魔王軍。
どうやらこちらがノウザーム大陸にいることを完全に把握したようだ。
この前のナラティブとタクサスの戦い以降、魔将をこちらの大陸に送り込んで来なくなった。
ちょこちょこと魔王軍の尖兵がやって来るのだが、これをジュウザたちが発見して撃破して回っている。
そのついでに、橋の王国でサウザーム大陸の状況を聞くのだ。
徐々に戦乱の兆しが強まっており、ナンポー帝国周辺にあった小国は、連携を取り合って魔王軍と戦っているとか。
幾つか国が陥落したが、住民や王族は逃げ延びているそうだ。
そして彼らをまとめ上げているのが、ライトダーク王国である。
かの国は勇者が再来したと宣言し、各国が力を合わせて魔王と戦うべきであるとの檄文を伝令にて飛ばした。
ナンポー帝国こそ魔王軍であり、かの国の侵攻を許せば、即ち人類の敗北であると。
最初は鼻で笑っていた各国も、ナンポー帝国による進軍が開始され、世界がどんどん侵略されていく途中で目覚めたらしい。
ライトダーク連合みたいなものが結成され、サウザームの国々は一丸となってナンポー帝国と戦っているのだ。
俺たちがやって来た王国は別な。
あそこ、なんとよりにもよってナンポー帝国についたらしい。
アホだなあ……。
「よおおおおおおし!! 完成なのじゃあああああああ!! エクセレーン! エクセレーン!! サウナに行くのじゃー!!」
「おっ、ディアボラの雄叫びが聞こえてきたぞ。ついに出来上がったか」
「コツコツやってましたもんね! ほんとなら、サウザーム大陸に行って加勢したかったんですけど」
「おう。だけどそれだと、トゲが揃ってないからな。今回の魔王は遊ぶ癖があるから、泳がせておけばいいって言ってたディアボラの言葉を信じるしかないよな」
二人で迎えに行くと、そこには小さな小屋がある。
小屋の中には地下に続く穴がある。
つまりこの小屋は、穴を守るための屋根と壁なのだ。
穴から出てきたディアボラが、大の字になって転がっている。
これはもう、今日は意地でも動かない体勢だ。
「じゃあボク、ディアボラとサウナ行ってきます!」
「おうおう、行ってらっしゃい」
この土地は水を使った風呂もあるのだが、体を温めるならサウナを使うのが一般的だ。
冬は湖が凍りつくし、寒いから水浴びもできないしな。
二人が温まっている間に、魔法陣を確認してやろう。
穴に掛けられた梯子を下っていく。
地下には、ぼんやりと輝く巨大な魔法陣が存在していた。
こいつが、最後の教会の在り処を探るためのものか。
あるいは、これを使えばひとっ飛びで最後の教会に行けるのかもしれないな。
『マイティ。世界を守る盾、マイティよ』
そこで俺に呼びかける者がいる。
誰だろうと思ったが、聞き覚えがあるぞ。
これは神様だな。
「神様じゃないか。久しぶりだな」
『サウザーム大陸を守るために全力を使っているため、他に祝福を回す余裕がない。どうだ、そろそろ最後のトゲは見つかりそうか。いい加減こちらは限界だ』
神様が弱気だぞ。
「ああ。見つけるための魔法陣がついに完成してな。数日中に魔王軍との決戦に向かう」
『そうか。この地より現れた魔王の血を継ぐ者よ。お前が虚空から降り来る魔王と戦うのは宿命であったのかも知れない。期待している……なるべく早くしてね』
「ちょっと待て。今凄く聞き捨てならない事を言わなかったか? なんだ魔王の血を継ぐって。おい神様! おーい! ああ、消えた」
言いたいことだけ言って、声は聞こえなくなってしまった。
本当に余裕が無いんだろうな。
勇者パーティなしでもサウザーム大陸が魔王軍と渡り合っているのは、どうやら神が全力で介入しているせいだったらしい。
それでもちょいちょい押されてるらしいから、やっぱり魔王は強いな。
魔法陣を一通り眺め、供物としてさっき釣った魚などを魔法陣に放り込むなどした。
おお、輝きが強まった。
発動したりしてる?
ひとまず小屋の外で、ディアボラがサウナから戻ってくるのを待とうではないか。
俺は穴から出て、ひらひらと降ってくる雪を眺めながらまったりするのだった。
決戦の前の、のんびりとしたひと時なのである。
だが、世の中は俺に休息を許してはくれない。
「マイティさん! また頼みます!」
「今日こそはマイティさんのガードを破ってみせますよ!」
村の若い衆がやって来た。
「いいぞいいぞ。今日は木の盾で相手をしてやる。俺のガードを抜くことができたら、まあ普通のモンスター程度ならぶっ倒せるぞ」
雄叫びとともにぶつかってくる若者たち。
彼らをぼいーんと跳ね除ける俺。
「ウグワー!」「つえー!」「まだ届かねえー!!」
こういうやり取りは、ひたすら待つだけだった俺の気晴らしになっているのだった。
そして戻ってくるディアボラ。
若者たちを見て、わっはっはと笑った。
「ずっとマイティに鍛えられておったから、この若造どもが30レベルまで上がっているのじゃ! 近隣最強じゃろうなあ」
レベルってなんだ。
エクセレンが空を見上げて、村の子どもたちとはしゃいでいる。
そうかそうか、雪が降る季節か。
随分長いこと、湖の周りに滞在していることになる。
ディアボラの、古の教会を探すために作られる魔法陣。
それの完成を待って旅立とうと思っていたが、思いの外時間がかかっているのだ。
考えてみたら、魔王星を撃退する魔法陣には千年掛かっているのだ。
儀式魔法というものがひたすら時間がかかるものだと、俺はすっかり失念していたのだなあ。
「マイティ! これは積もりますかね! たっくさん降ってきますよー」
「おう。積もるといいなあ」
エクセレンと二人、まったり空を見上げるのである。
湖周辺に残っているのは、俺とエクセレン、そしてディアボラの三人。
ジュウザとウインドとカッサンドラは、連絡用の携帯魔法陣を持って周辺を旅して回っている。
魔王軍と戦うためだな。
俺たちによって、さんざん魔将を倒された魔王軍。
どうやらこちらがノウザーム大陸にいることを完全に把握したようだ。
この前のナラティブとタクサスの戦い以降、魔将をこちらの大陸に送り込んで来なくなった。
ちょこちょこと魔王軍の尖兵がやって来るのだが、これをジュウザたちが発見して撃破して回っている。
そのついでに、橋の王国でサウザーム大陸の状況を聞くのだ。
徐々に戦乱の兆しが強まっており、ナンポー帝国周辺にあった小国は、連携を取り合って魔王軍と戦っているとか。
幾つか国が陥落したが、住民や王族は逃げ延びているそうだ。
そして彼らをまとめ上げているのが、ライトダーク王国である。
かの国は勇者が再来したと宣言し、各国が力を合わせて魔王と戦うべきであるとの檄文を伝令にて飛ばした。
ナンポー帝国こそ魔王軍であり、かの国の侵攻を許せば、即ち人類の敗北であると。
最初は鼻で笑っていた各国も、ナンポー帝国による進軍が開始され、世界がどんどん侵略されていく途中で目覚めたらしい。
ライトダーク連合みたいなものが結成され、サウザームの国々は一丸となってナンポー帝国と戦っているのだ。
俺たちがやって来た王国は別な。
あそこ、なんとよりにもよってナンポー帝国についたらしい。
アホだなあ……。
「よおおおおおおし!! 完成なのじゃあああああああ!! エクセレーン! エクセレーン!! サウナに行くのじゃー!!」
「おっ、ディアボラの雄叫びが聞こえてきたぞ。ついに出来上がったか」
「コツコツやってましたもんね! ほんとなら、サウザーム大陸に行って加勢したかったんですけど」
「おう。だけどそれだと、トゲが揃ってないからな。今回の魔王は遊ぶ癖があるから、泳がせておけばいいって言ってたディアボラの言葉を信じるしかないよな」
二人で迎えに行くと、そこには小さな小屋がある。
小屋の中には地下に続く穴がある。
つまりこの小屋は、穴を守るための屋根と壁なのだ。
穴から出てきたディアボラが、大の字になって転がっている。
これはもう、今日は意地でも動かない体勢だ。
「じゃあボク、ディアボラとサウナ行ってきます!」
「おうおう、行ってらっしゃい」
この土地は水を使った風呂もあるのだが、体を温めるならサウナを使うのが一般的だ。
冬は湖が凍りつくし、寒いから水浴びもできないしな。
二人が温まっている間に、魔法陣を確認してやろう。
穴に掛けられた梯子を下っていく。
地下には、ぼんやりと輝く巨大な魔法陣が存在していた。
こいつが、最後の教会の在り処を探るためのものか。
あるいは、これを使えばひとっ飛びで最後の教会に行けるのかもしれないな。
『マイティ。世界を守る盾、マイティよ』
そこで俺に呼びかける者がいる。
誰だろうと思ったが、聞き覚えがあるぞ。
これは神様だな。
「神様じゃないか。久しぶりだな」
『サウザーム大陸を守るために全力を使っているため、他に祝福を回す余裕がない。どうだ、そろそろ最後のトゲは見つかりそうか。いい加減こちらは限界だ』
神様が弱気だぞ。
「ああ。見つけるための魔法陣がついに完成してな。数日中に魔王軍との決戦に向かう」
『そうか。この地より現れた魔王の血を継ぐ者よ。お前が虚空から降り来る魔王と戦うのは宿命であったのかも知れない。期待している……なるべく早くしてね』
「ちょっと待て。今凄く聞き捨てならない事を言わなかったか? なんだ魔王の血を継ぐって。おい神様! おーい! ああ、消えた」
言いたいことだけ言って、声は聞こえなくなってしまった。
本当に余裕が無いんだろうな。
勇者パーティなしでもサウザーム大陸が魔王軍と渡り合っているのは、どうやら神が全力で介入しているせいだったらしい。
それでもちょいちょい押されてるらしいから、やっぱり魔王は強いな。
魔法陣を一通り眺め、供物としてさっき釣った魚などを魔法陣に放り込むなどした。
おお、輝きが強まった。
発動したりしてる?
ひとまず小屋の外で、ディアボラがサウナから戻ってくるのを待とうではないか。
俺は穴から出て、ひらひらと降ってくる雪を眺めながらまったりするのだった。
決戦の前の、のんびりとしたひと時なのである。
だが、世の中は俺に休息を許してはくれない。
「マイティさん! また頼みます!」
「今日こそはマイティさんのガードを破ってみせますよ!」
村の若い衆がやって来た。
「いいぞいいぞ。今日は木の盾で相手をしてやる。俺のガードを抜くことができたら、まあ普通のモンスター程度ならぶっ倒せるぞ」
雄叫びとともにぶつかってくる若者たち。
彼らをぼいーんと跳ね除ける俺。
「ウグワー!」「つえー!」「まだ届かねえー!!」
こういうやり取りは、ひたすら待つだけだった俺の気晴らしになっているのだった。
そして戻ってくるディアボラ。
若者たちを見て、わっはっはと笑った。
「ずっとマイティに鍛えられておったから、この若造どもが30レベルまで上がっているのじゃ! 近隣最強じゃろうなあ」
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