84 / 108
ノウザーム大陸戦乱編
第84話 共和国軍を正面突破すると、そこは魔将がいた
しおりを挟む
馬を借りた。
小柄だが、太い。
これは長い間走ってくれそうだ。
「俺が乗っても大丈夫かな?」
フル武装の俺を乗せるのは辛くないだろうか。
そんな心配をしたら、俺用に二頭の馬が牽く荷馬車みたいなものを用意してくれた。
いや、こりゃあ戦車だな。
「マイティかっこいい!」
「そうか? はっはっは、二頭に牽かれるとなんだかゴージャスな気分がするな!」
そして二頭だと馬力も違う。
俺の戦車が一番早かった。
俺を先頭にエクセレントマイティが共和国へ向かって突き進む。
すぐに、向こうさんの第二陣らしき軍隊と遭遇した。
あちらは普段やる気がないはずなのに、今日は妙に目を血走らせているな。
「つ、突っ込めー! うおおおおー!!」
叫んで走ってくる。
後ろからはぴしぴしと矢が飛んでくるのだが、放物線状に頭上からやって来るこれは、数が揃うとたちが悪い。
「よし、ガードだ。みんな、俺の後ろに続け!」
仲間たちを守りながら、俺は突き進む。
図体がでかいというのはこう言うときに便利だ。
的になりやすいし、体の影に仲間たちを隠すことができる。
「つ、突っ込んでくる!」
「矢が通じない!」
俺は基本的に、相手の攻撃は全部受け止めながら速度を緩めず進むタイプだ。
今は戦車に乗って速度が上がっているから、相手にはさぞや恐ろしく見えていることだろう。
勢いのままに共和国軍に突入し、真っ向から兵士たちをふっ飛ばしていく。
「ウグワーッ!」
次々に兵士たちが転げていった。
うちの馬二頭、遮るものを俺が全部吹っ飛ばすから、快調に走れてとても楽しいようだ。
上機嫌で鼻をひくひくさせつつ、速度を上げていく。
「こう言うときはマイティの恐ろしさがよく分かるな」
「彼はガード専門だと思っていたが」
背後でジュウザとウインドがお喋りをしている。
手持ち無沙汰なのかも知れない。
「うむ。決して破られぬ不壊の盾だ。故に、不壊の盾が高速で迫ってくるとすればどうする。誰にもそれを止める手段などない。数の力で止めようにも、相手は落下してくる星を受け止め、地すべりを受け止める力を持っている。軍隊程度の数では、幾らいようと烏合の衆であろう」
「確かに……。盾を構えて突っ込んでこられたら、止める術が存在しないというのは恐ろしいことだ。我がパーティーのリーダーは実に頼れるな」
褒められているようだ。
背中がむずむずする。
エクセレンがちょっとだけ並走してきて、左手のカノンナックルを見せる。
「必要なら言って下さいね! いつでも撃てますから!」
「おう! だけどそれをぶっ放すと兵士がたくさん死ぬからな! その辺は最小限に抑えておこう」
「はい!」
エクセレンは大変聞き分けがいい。
後ろに下がっていった。
魔将用、魔王用に特化した彼女の破壊力は、今やぶっ放すだけで必殺の攻撃となる。
絶対に人が死ぬので、人間に向かって撃たせてはいけないな。
ちなみにカッサンドラは終始ポカーンとしているようだ。
「おいカッサンドラ。わしを落とすななのじゃー。ボーッとしてたら危ないのじゃー」
ディアボラは小さくて一人で馬に乗せると危ないということで、この中では体重が軽いカッサンドラが一緒に乗っているのだ。
エクセレンはフル装備で結構な重さになるからな。
「だ、だってこの光景! 戦場で軍勢が真っ二つに分かれていく光景なんか、ありえないでしょ、こういうの……! なんなんだい、これ……!!」
「よくあることなのじゃ。早く慣れるのじゃ」
「慣れられないってー!!」
彼女の叫びが響くが、それも兵士たちのどよめきにかき消されてしまう。
それくらい、周囲は共和国の兵士で埋め尽くされているのだ。
俺たちがそれを真っ向から突っ切っているだけである。
それにしてもこの数は凄い。
共和国中の兵士を集めたんじゃないだろうか。
それだけ、向こうは本気ということだろう。
この数なら、洗脳された輩をカッサンドラで浄化して回るなんてとてもできそうにない。
ただ、兵士たちは人間だから疲れるし、そうなれば動けなくもなる。
この一回の戦闘行動で、共和国は戦闘不能になるんじゃないか。
つまり、裏でこいつらを操っている魔将は、人間を使い捨てる気満々だと思えるのだ。
「そりゃあ許せんな。さっさとこの馬鹿げた戦いを止めなければな」
俺は呟くと、盾のガードをより前方へと傾けた。
明らかに馬の後ろで盾を構えているのだが、攻撃はみんなこの盾に飛んでくるのだ。
すると、兵士たちの頭上を抜けて、巨大な手投げ槍が飛来してきた。
盾に当たって猛烈な音を立てる。
兵士たちがたまらず耳をふさいで、ウグワーッと転がる。
見晴らしが一気に良くなった。
どうやら共和国軍を今まさに抜ける所だったらしい。
彼らの後ろに、六本の腕を持った巨漢が構えている。
そいつは兜の下から、三つある目をぎょろぎょろと動かし、ニヤリと笑ってみせた。
『驚いたぞ!! まさかこれだけの軍隊を真正面から突破してくるとは!! ハーミットめも全く想像していなかった戦い方だ! 伏兵が完全に無駄になったな』
「伏兵がいたのか。そーいっ!」
人波を飛び出した勢いのまま、巨漢に突進を掛ける。
相手はこれを、六本の腕を広げて受け止めた。
『なんのっ!! わはははは!! 本当に人間か貴様! 呆れた馬鹿力だな! ティターン並みだぞ!? この俺様が押されている!』
「おおっ、俺の突進を受け止めるとは呆れた怪力だな」
このままでは馬に負担が掛かるので、俺は巨漢を盾で押しながら戦車から降りる。
『勇者パーティーのタンク、名を名乗れ。俺様は勇士の名は忘れんのだ』
「マイティだ。お前さんは誰だ?」
『俺様の名はアスラ! 勇者パーティー、どれほどのものかと思っていたら、実に面白いやつがいたものよ!!』
こうして、魔将戦がスタートしてしまうのである!
小柄だが、太い。
これは長い間走ってくれそうだ。
「俺が乗っても大丈夫かな?」
フル武装の俺を乗せるのは辛くないだろうか。
そんな心配をしたら、俺用に二頭の馬が牽く荷馬車みたいなものを用意してくれた。
いや、こりゃあ戦車だな。
「マイティかっこいい!」
「そうか? はっはっは、二頭に牽かれるとなんだかゴージャスな気分がするな!」
そして二頭だと馬力も違う。
俺の戦車が一番早かった。
俺を先頭にエクセレントマイティが共和国へ向かって突き進む。
すぐに、向こうさんの第二陣らしき軍隊と遭遇した。
あちらは普段やる気がないはずなのに、今日は妙に目を血走らせているな。
「つ、突っ込めー! うおおおおー!!」
叫んで走ってくる。
後ろからはぴしぴしと矢が飛んでくるのだが、放物線状に頭上からやって来るこれは、数が揃うとたちが悪い。
「よし、ガードだ。みんな、俺の後ろに続け!」
仲間たちを守りながら、俺は突き進む。
図体がでかいというのはこう言うときに便利だ。
的になりやすいし、体の影に仲間たちを隠すことができる。
「つ、突っ込んでくる!」
「矢が通じない!」
俺は基本的に、相手の攻撃は全部受け止めながら速度を緩めず進むタイプだ。
今は戦車に乗って速度が上がっているから、相手にはさぞや恐ろしく見えていることだろう。
勢いのままに共和国軍に突入し、真っ向から兵士たちをふっ飛ばしていく。
「ウグワーッ!」
次々に兵士たちが転げていった。
うちの馬二頭、遮るものを俺が全部吹っ飛ばすから、快調に走れてとても楽しいようだ。
上機嫌で鼻をひくひくさせつつ、速度を上げていく。
「こう言うときはマイティの恐ろしさがよく分かるな」
「彼はガード専門だと思っていたが」
背後でジュウザとウインドがお喋りをしている。
手持ち無沙汰なのかも知れない。
「うむ。決して破られぬ不壊の盾だ。故に、不壊の盾が高速で迫ってくるとすればどうする。誰にもそれを止める手段などない。数の力で止めようにも、相手は落下してくる星を受け止め、地すべりを受け止める力を持っている。軍隊程度の数では、幾らいようと烏合の衆であろう」
「確かに……。盾を構えて突っ込んでこられたら、止める術が存在しないというのは恐ろしいことだ。我がパーティーのリーダーは実に頼れるな」
褒められているようだ。
背中がむずむずする。
エクセレンがちょっとだけ並走してきて、左手のカノンナックルを見せる。
「必要なら言って下さいね! いつでも撃てますから!」
「おう! だけどそれをぶっ放すと兵士がたくさん死ぬからな! その辺は最小限に抑えておこう」
「はい!」
エクセレンは大変聞き分けがいい。
後ろに下がっていった。
魔将用、魔王用に特化した彼女の破壊力は、今やぶっ放すだけで必殺の攻撃となる。
絶対に人が死ぬので、人間に向かって撃たせてはいけないな。
ちなみにカッサンドラは終始ポカーンとしているようだ。
「おいカッサンドラ。わしを落とすななのじゃー。ボーッとしてたら危ないのじゃー」
ディアボラは小さくて一人で馬に乗せると危ないということで、この中では体重が軽いカッサンドラが一緒に乗っているのだ。
エクセレンはフル装備で結構な重さになるからな。
「だ、だってこの光景! 戦場で軍勢が真っ二つに分かれていく光景なんか、ありえないでしょ、こういうの……! なんなんだい、これ……!!」
「よくあることなのじゃ。早く慣れるのじゃ」
「慣れられないってー!!」
彼女の叫びが響くが、それも兵士たちのどよめきにかき消されてしまう。
それくらい、周囲は共和国の兵士で埋め尽くされているのだ。
俺たちがそれを真っ向から突っ切っているだけである。
それにしてもこの数は凄い。
共和国中の兵士を集めたんじゃないだろうか。
それだけ、向こうは本気ということだろう。
この数なら、洗脳された輩をカッサンドラで浄化して回るなんてとてもできそうにない。
ただ、兵士たちは人間だから疲れるし、そうなれば動けなくもなる。
この一回の戦闘行動で、共和国は戦闘不能になるんじゃないか。
つまり、裏でこいつらを操っている魔将は、人間を使い捨てる気満々だと思えるのだ。
「そりゃあ許せんな。さっさとこの馬鹿げた戦いを止めなければな」
俺は呟くと、盾のガードをより前方へと傾けた。
明らかに馬の後ろで盾を構えているのだが、攻撃はみんなこの盾に飛んでくるのだ。
すると、兵士たちの頭上を抜けて、巨大な手投げ槍が飛来してきた。
盾に当たって猛烈な音を立てる。
兵士たちがたまらず耳をふさいで、ウグワーッと転がる。
見晴らしが一気に良くなった。
どうやら共和国軍を今まさに抜ける所だったらしい。
彼らの後ろに、六本の腕を持った巨漢が構えている。
そいつは兜の下から、三つある目をぎょろぎょろと動かし、ニヤリと笑ってみせた。
『驚いたぞ!! まさかこれだけの軍隊を真正面から突破してくるとは!! ハーミットめも全く想像していなかった戦い方だ! 伏兵が完全に無駄になったな』
「伏兵がいたのか。そーいっ!」
人波を飛び出した勢いのまま、巨漢に突進を掛ける。
相手はこれを、六本の腕を広げて受け止めた。
『なんのっ!! わはははは!! 本当に人間か貴様! 呆れた馬鹿力だな! ティターン並みだぞ!? この俺様が押されている!』
「おおっ、俺の突進を受け止めるとは呆れた怪力だな」
このままでは馬に負担が掛かるので、俺は巨漢を盾で押しながら戦車から降りる。
『勇者パーティーのタンク、名を名乗れ。俺様は勇士の名は忘れんのだ』
「マイティだ。お前さんは誰だ?」
『俺様の名はアスラ! 勇者パーティー、どれほどのものかと思っていたら、実に面白いやつがいたものよ!!』
こうして、魔将戦がスタートしてしまうのである!
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜
メロのん
ファンタジー
最愛の母が死んだ。悲しみに明け暮れるウカノは、もう1度母に会いたいと奇跡を可能にする魔法を発動する。しかし魔法が発動したそこにいたのは母ではなく不思議な生き物であった。
幼少期より家の中で立場の悪かったウカノはこれをきっかけに、今まで国が何度も探索に失敗した未知の森へと進む。
そこは圧倒的強者たちによる弱肉強食が繰り広げられる魔境であった。そんな場所でなんとか生きていくウカノたち。
森の中で成長していき、そしてどのように生きていくのか。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる