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ノウザーム大陸戦乱編
第78話 エクソシストはいい男がお好き
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村に別れを告げ、エクソシストのカッサンドラに案内をしてもらう。
共和国を抜け、荒野に差し掛かる。
俺たちがノウザーム大陸に来た時、戦場になっていた場所だ。
「ここは常に戦場になるね。必ず誰かが見張ってるから、真ん中を通るのはよすんだよ。あんたらが原因で、また戦争が起こるから」
「厄介な所なんだな」
「なるほど。確かに監視をしている者があちこちにいる」
ジュウザには分かるらしい。
監視の目に止まらないよう、荒野を迂回して行くことになった。
お陰で日数が余計に掛かるそうなのだが、戦争が起こるよりは遥かにマシだろう。
俺たちの先頭を行くカッサンドラ。
彼女は、性質だけ見ればウインドに近いタイプのようだった。
野外活動に親しんでおり、ノウザーム大陸の地勢に詳しい。
そして神の加護を得ており、大陸有数のエクソシストなのだそうだ。
「もっとも、ここ最近になるまであたいの出番は無かったんだけどね。エクソシストは人に降り掛かった呪いを祓うのさ。だけど、呪いを使うような相手がそもそもいなかったんだ。よくぞこんな技術を今まで伝えてきたもんだよ」
「カッサンドラはなんでエクソシストになろうと思ったんだ?」
「そりゃああんた! エクソシストになっておけば、飯は食わせてくれるし住まいも与えてくれるからさ! 意味は無くても、新築の家や職場をお祓いする仕事もあるしね」
そういうものらしい。
今では、エクソシストは儀礼的な仕事になっていたようだ。
だが、その中で唯一、本当に呪いを祓う力を持っていたのがカッサンドラだったそうなのである。
「他にもいるけどね。あたいが一番才能があった。それがまさか、勇者パーティーと出会うとはねえ……。神のお導きってやつじゃないかい」
「でしょうね! 運命の出会いです!」
「普段のあたいなら、クサイこと言うねえって思うけど……まさしくそいつだね」
エクセレンの屈託ない返事に、カッサンドラが笑った。
こうしてみると、姉御肌で頼れる感じで、なかなかいい仲間になりそうじゃないかというカッサンドラ。
だが彼女のキャラクターはそれだけじゃなかった。
野営の時である。
共和国軍がやってこないというので、海に面して森を背にした小高い丘にキャンプを張る。
「万一高潮がやって来ても、ここまでなら安心さね」
「ああ、確かに。丘の周辺だけ植生が違う。丘より下れば、塩害に強い植物が多く生えている。よく潮が満ちたり、高潮がそこまでやってくるのだろうな」
ウインドが頷いた。
するとカッサンドラが目をキラキラ輝かせる。
「さすがだねえ! その通りだよ! イケメンな上に頭までいいなんて……! ねえ、あたいの旦那におなりよ!」
「なん……だと……!?」
ウインドがたじたじとなって、サッとカッサンドラから離れていった。
「おや、奥手な方かい」
「男女の仲はもっと段階を踏んで深めていくべきだ」
「堅物だねえ」
彼女はウインドが気に入ったようだ。
俺はそう思っていた。
そして夕食時。
「えっ!? 誰も酒を飲まないのかい!? 人生の大半を損してるよあんたら!!」
水の他に酒用の水袋を持ってきていたカッサンドラ。
俺たちの大半が酒を飲まないと聞いて、素っ頓狂な声をあげた。
これに応えてウインド。
「マイティなら飲む」
「俺に押し付けたな? だが、確かに。俺は酒を飲むぞ」
するとカッサンドラが相好を崩した。
「そうかいそうかい。じゃあ、ナラティブの酒をご馳走してやるよ。こいつはとうもろこしで作った酒でね……」
「ほほー! こいつはいい香りだ。それに……なかなか強いな!」
「あんたいける口だねえ! 飲みっぷりもいいし、それに昼間見た共和国の兵士共をたった一人で食い止める馬力! 男は腕っぷしだねえ……。どうだい? あたいの旦那にならないかい?」
「いけませーん!!」
カッサンドラが俺に密着して迫ってきた時、間にむぎゅーっと挟まるようにしてエクセレンが飛び込んできた。
カッサンドラが勢いにふっ飛ばされ、「ウグワーッ!?」と転がっていく。
「ふう、危ないところでした。思わず体が動いてしまいました」
体を起こすエクセレン。
当たり前のような顔をして、俺とカッサンドラの間に収まるのである。
「マイティはパーティーの大黒柱で、ボクを導いてくれる人なんです。なのでダメです」
「ははーん」
カッサンドラがニヤニヤ笑った。
「なんですかニヤニヤして!」
「ははーん、ふふーん、ほほーん、なるほどねえ……。神が定めた絆を裂かんとする者は、馬に蹴られて死ぬ……こういうことさね」
「新しいことわざが出てきたな」
「ナラティブことわざですね!」
俺とエクセレンが盛り上がった。
「つまりはそういうことなんだろう?」
カッサンドラが振り向き、ひたすら夕食を食べていたディアボラに確認した。
小さな大魔女は口の中のものをもぐもぐもぐっと噛んで飲み込むと、「うむ!! そやつらは既に一晩をベッドでともにした仲じゃ!! 容易には裂けんぞ!」と応じたのである。
「ボクがマイティのベッドで寝てたことですかね」
「それだな。妙な勘違いをされている……」
だが、俺とエクセレンを除く四人は、そういうことだと納得してしまっているようなのだった。
とりあえず分かったのは、カッサンドラは恋愛ごとに対して大変前向きだということだろう。
これはこれで今までいなかった個性だな。
そして夜明け。
海からくる波と潮を受け止める木々の連なり。
これを抜けるとナラティブ自治連合だ。
連なる、簡素なログハウスが見える。
ナゾマー大森林と比べると人工的ではあるが、それでも自然と調和した暮らしが伺える。
「ここで教会を見つけたら、五個目ですね!」
「ああ。決戦の時が迫っているな」
決意を新たにする俺たちなのだった。
共和国を抜け、荒野に差し掛かる。
俺たちがノウザーム大陸に来た時、戦場になっていた場所だ。
「ここは常に戦場になるね。必ず誰かが見張ってるから、真ん中を通るのはよすんだよ。あんたらが原因で、また戦争が起こるから」
「厄介な所なんだな」
「なるほど。確かに監視をしている者があちこちにいる」
ジュウザには分かるらしい。
監視の目に止まらないよう、荒野を迂回して行くことになった。
お陰で日数が余計に掛かるそうなのだが、戦争が起こるよりは遥かにマシだろう。
俺たちの先頭を行くカッサンドラ。
彼女は、性質だけ見ればウインドに近いタイプのようだった。
野外活動に親しんでおり、ノウザーム大陸の地勢に詳しい。
そして神の加護を得ており、大陸有数のエクソシストなのだそうだ。
「もっとも、ここ最近になるまであたいの出番は無かったんだけどね。エクソシストは人に降り掛かった呪いを祓うのさ。だけど、呪いを使うような相手がそもそもいなかったんだ。よくぞこんな技術を今まで伝えてきたもんだよ」
「カッサンドラはなんでエクソシストになろうと思ったんだ?」
「そりゃああんた! エクソシストになっておけば、飯は食わせてくれるし住まいも与えてくれるからさ! 意味は無くても、新築の家や職場をお祓いする仕事もあるしね」
そういうものらしい。
今では、エクソシストは儀礼的な仕事になっていたようだ。
だが、その中で唯一、本当に呪いを祓う力を持っていたのがカッサンドラだったそうなのである。
「他にもいるけどね。あたいが一番才能があった。それがまさか、勇者パーティーと出会うとはねえ……。神のお導きってやつじゃないかい」
「でしょうね! 運命の出会いです!」
「普段のあたいなら、クサイこと言うねえって思うけど……まさしくそいつだね」
エクセレンの屈託ない返事に、カッサンドラが笑った。
こうしてみると、姉御肌で頼れる感じで、なかなかいい仲間になりそうじゃないかというカッサンドラ。
だが彼女のキャラクターはそれだけじゃなかった。
野営の時である。
共和国軍がやってこないというので、海に面して森を背にした小高い丘にキャンプを張る。
「万一高潮がやって来ても、ここまでなら安心さね」
「ああ、確かに。丘の周辺だけ植生が違う。丘より下れば、塩害に強い植物が多く生えている。よく潮が満ちたり、高潮がそこまでやってくるのだろうな」
ウインドが頷いた。
するとカッサンドラが目をキラキラ輝かせる。
「さすがだねえ! その通りだよ! イケメンな上に頭までいいなんて……! ねえ、あたいの旦那におなりよ!」
「なん……だと……!?」
ウインドがたじたじとなって、サッとカッサンドラから離れていった。
「おや、奥手な方かい」
「男女の仲はもっと段階を踏んで深めていくべきだ」
「堅物だねえ」
彼女はウインドが気に入ったようだ。
俺はそう思っていた。
そして夕食時。
「えっ!? 誰も酒を飲まないのかい!? 人生の大半を損してるよあんたら!!」
水の他に酒用の水袋を持ってきていたカッサンドラ。
俺たちの大半が酒を飲まないと聞いて、素っ頓狂な声をあげた。
これに応えてウインド。
「マイティなら飲む」
「俺に押し付けたな? だが、確かに。俺は酒を飲むぞ」
するとカッサンドラが相好を崩した。
「そうかいそうかい。じゃあ、ナラティブの酒をご馳走してやるよ。こいつはとうもろこしで作った酒でね……」
「ほほー! こいつはいい香りだ。それに……なかなか強いな!」
「あんたいける口だねえ! 飲みっぷりもいいし、それに昼間見た共和国の兵士共をたった一人で食い止める馬力! 男は腕っぷしだねえ……。どうだい? あたいの旦那にならないかい?」
「いけませーん!!」
カッサンドラが俺に密着して迫ってきた時、間にむぎゅーっと挟まるようにしてエクセレンが飛び込んできた。
カッサンドラが勢いにふっ飛ばされ、「ウグワーッ!?」と転がっていく。
「ふう、危ないところでした。思わず体が動いてしまいました」
体を起こすエクセレン。
当たり前のような顔をして、俺とカッサンドラの間に収まるのである。
「マイティはパーティーの大黒柱で、ボクを導いてくれる人なんです。なのでダメです」
「ははーん」
カッサンドラがニヤニヤ笑った。
「なんですかニヤニヤして!」
「ははーん、ふふーん、ほほーん、なるほどねえ……。神が定めた絆を裂かんとする者は、馬に蹴られて死ぬ……こういうことさね」
「新しいことわざが出てきたな」
「ナラティブことわざですね!」
俺とエクセレンが盛り上がった。
「つまりはそういうことなんだろう?」
カッサンドラが振り向き、ひたすら夕食を食べていたディアボラに確認した。
小さな大魔女は口の中のものをもぐもぐもぐっと噛んで飲み込むと、「うむ!! そやつらは既に一晩をベッドでともにした仲じゃ!! 容易には裂けんぞ!」と応じたのである。
「ボクがマイティのベッドで寝てたことですかね」
「それだな。妙な勘違いをされている……」
だが、俺とエクセレンを除く四人は、そういうことだと納得してしまっているようなのだった。
とりあえず分かったのは、カッサンドラは恋愛ごとに対して大変前向きだということだろう。
これはこれで今までいなかった個性だな。
そして夜明け。
海からくる波と潮を受け止める木々の連なり。
これを抜けるとナラティブ自治連合だ。
連なる、簡素なログハウスが見える。
ナゾマー大森林と比べると人工的ではあるが、それでも自然と調和した暮らしが伺える。
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