“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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ブリッジスタン攻防戦編

第62話 橋の王国のアルバイトとは

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 路銀稼ぎのために、しばらくここでのんびりすることになった。
 すぐに通過してもいいんだが、先立つものが無いと後々困りそうだ。

「冒険者ギルドが無いんですね」

「領土が橋だけだからなあ。冒険も何もないんだろう」

 どうやらコツコツ仕事をする必要があるようだ。
 道行く人に、仕事を探すにはどうしたらいいか聞いてみると……。

「ああ、外から来た人だね。仕事斡旋所があるんだよ。橋の真ん中近く、お城の横ね」

「城の横にあるのか」

 言われたところに二人で向かう。
 すると、今までの王国と比べると若干こじんまりした城があった。
 橋の上はスペースが限られるので、城も小さめに作るのかもしれない。

 そして城の横。
 屋根と柱だけで作られたような建物がある。
 これが仕事の斡旋所か。

 たくさんの掲示板があり、その横で暇そうな顔をした男がカウンターにもたれてボーッとしている。

「こんにちは! 仕事を探しに来ました!」

 エクセレンが元気に声を掛けたので、男はビクッとなって慌てて立ち上がった。

「あ、ああ! いらっしゃい。だがめぼしい仕事は朝のうちにみんな持っていかれているよ。新しい仕事が来るのは夕方からだ」

「仕事は夕方に持ち込まれるのか」

「ああ。それを並べて、掲示板に貼り付けて、そして朝になったらみんなでやりたい仕事を選ぶ。そうなってるんだ」

 どうやら仕事の斡旋所は、王国に住む定職を持たない者や旅人に利用されるところらしい。
 朝を狙うべきだったか。
 だが到着が昼過ぎだったしな。

「今からできそうなのはないか?」

「今からか……。キツい仕事だって言うんで残ってるのはあるんだ。ほら、これ。巨大ゴーレムの腕が再起動して、海を泳ぎ回ってるから、これを退治してくれっていうものとか」

「よし、それで行こう」

「決まりですね!」

「だよな。千年前の巨大ゴーレムなんて、危険すぎて誰も引き受けなくてさ、あんたらも……って、え!?」

「引き受けるぞ」

「はい!」

「ほ、本気か!? それにあんた、そんな重装備で海のゴーレムと?」

「重装備で海は慣れているからな」

「ですです! ボクたち、海賊退治みたいなこともやってるんで!」

「経験者かあ!」

 斡旋所の男性は明るい表情になった。

「だったら助かる! いつ橋に向かって突進してくるか分からなくてヒヤヒヤしてたんだ。いや、それくらいじゃびくともしない橋なんだがな。でも、迷惑なものは迷惑だ」

「橋は大丈夫なのか! 頑丈なんだなあ」

「マイティみたいですねー」

 俺たちが驚くので、斡旋所の男性は気を良くしたようだ。

「そりゃあ当然さ! ブリッジスタンは千年よりもずっと昔からある建造物なんだ。その上に王国を作っているのさ。かつて魔王が現れた時も、ブリッジスタンは猛攻を耐えきったと言われている。また魔王が現れるようなことがあっても平気に違いない!」

「そりゃあ頼もしいな」

 俺はうんうん頷いた。
 何せ、今まさに魔王が現れて、世界中で悪いことをし始めているところだからな。

「案外ここにも魔王が来るかもしれないですねえ」

「魔将を向かわせて来たりしてな」

 掲示板に貼られていた仕事の紙を受け取って、俺たちは現場へ向かうのだった。

 ブリッジスタンの外壁に階段があり、これを下っていくと船着き場になる。
 この巨大な橋は、全面がのっぺりした壁なのではない。
 通過できるようになった、アーチ型の穴が幾つも並んで空いているのだ。

 俺たちが戦ったキャプテンガイストの船だって、このアーチなら通過できそうだ。
 つまりとんでもなく大きい穴ということ。

「仕事を引き受けてくれるか! 全身鎧!? 正気か!? 死ぬぞ!?」

「大丈夫です! マイティはこの装備のままキャプテンガイスト退治をしたので!」

 依頼人らしき中年男性は、俺の姿に驚いた。
 だが、エクセレンが放った言葉に、さらに驚いたようだ。

「キャプテンガイストだと!? 化け物になって復活したが、冒険者によって倒されたと聞いてるぞ。あんたらか! そうかそうか、最悪の海賊をぶっ倒してくれた英雄が、今度の仕事を引き受けてくれるんだな!」

「もちろんだ。任せろ」

「こっちのお嬢ちゃんもやるのか? いや……すげえ装備だな……しかもどれも使い込まれてやがる。やるな、あんた」

「ふっふっふ! マイティが守ってボクが攻撃する、最強のコンビなんです!」

「ああ、久々のコンビ復活だ」

「そりゃあ頼もしい!」

 依頼人が顔をほころばせた。
 俺たちは、仕事に向かうための船に案内される。

 それなりの大きさの船だが、本来の使用目的は漁船だろう。

「ゴーレムの腕はな、とんでもなくでかい。そいつに体当たりなんかされたら、こんな船は一発で転覆だ。だから、こっちからはこれを使う」

 依頼人が掲げたのは、棒と紐が組み合わさったものだ。

「こいつは?」

「スタッフスリングだ。それで、この炸裂弾を投げつける」

「炸裂弾! なんだそれは」

「魔力を込めた石でな。もともと脆い構造なんだが、直接強い衝撃を加えると、砕けながらあちこちに魔力を撒き散らすんだ。なかなかの破壊力だぞ。気をつけて扱ってくれ」

 なるほど、これが攻撃手段というわけか。
 エクセレンがスタッフスリングを手に取り、ぶんぶん振り回す。

 すぐに使い方を把握したようだ。

「これは思わぬパワーアップですね!」

 船員たちが、エクセレンの堂に入ったスタッフスリング使いに驚いている。
 うちのパーティーの武器のエキスパートみたいになってきてるからなあ。

「よーし、それじゃあ行くとしようか。それから、船の転覆については安心してほしい。ゴーレムは俺が止めるからな」

「止める!? どうやってだ!?」

「この盾で止める。任せておいてくれ。まあ大体ダメージはゼロになるから」

 橋の王国の仕事に出発なのである。
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