“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
61 / 108
ブリッジスタン攻防戦編

第61話 橋の王国へようこそ!と出迎えられる

しおりを挟む
「橋の王国ブリッジスタンへようこそ! さあ通行税を下さい!!」

「いきなり大歓迎かと思ったらお金を無心されてしまった」

 驚くばかりの俺である。

「これだから、我々ナゾマーの民は橋の王国に入ることもできない。外から眺めて中身を想像するばかりだった。遠目に見る鳥の翼は美しいというやつだ」

「ウインドのナゾマーことわざが出たな」

 ジュウザが楽しげである。
 ナゾマーの民であったウインドは、言い回しがちょいちょい独特で、価値観も俺たちは違う。
 そこが話していて楽しい。

 彼もその違いを興味深く思っているようだった。

「ウインド、ここは金を払えばいいんだ。こっちとうちの王国で、通貨が違うとは思うんだが……金貨と銀貨だから大丈夫だろう。商人がここ通っているって話だしな。いくら?」

 ブリッジスタン入り口に立つ人に聞いてみる。
 兵士なのかと思ったら、入国管理官という仕事なのだそうだ。

「金ならこの重さ、銀ならこの重さですね。ああ、食料や革製品、他の金属でもお受けしています。ただ、宝石では税になりませんね」

「重さで量るのか。わかりやすいなあ」

 銀貨を秤に掛けてもらい、
 よしが出た。

「ブリッジスタンへようこそ! 国内では色々お金を必要としますから、路銀が足りなくなったらアルバイトをおすすめしますよ!」

「面白い国だなあ」

「変わった国ですねー! 入り口であんなにフレンドリーだったの初めてですよー」

 エクセレンもうんうんと頷いている。
 入国税さえ払えばなんでもいいということなのだろう。

「大陸の間に掛かる大きな橋が領土なんじゃろ? 作物を生み出したりは苦手なんじゃろ。じゃから再利用できるものを税金としてもらっておるのじゃ!」

「なるほど」

 ディアボラの説明に、納得する俺たちである。
 さて、エクセレントマイティ一行はブリッジスタンへ入った。

 ここは見渡す限り、石畳が広がる国だ。
 足元全てが巨大な橋そのものなのだから当然といえば当然。

 家々は木造だったり、やはり石造りだったり。

「暑さはナゾマーと変わらない感じですけど、風が吹くから気持ちいいですね!」

「おう。橋の向こうはすぐに海だからな」

 橋の幅は、ライトダーク王都の半分くらい。
 橋の長さは、ライトダーク王都の二倍くらい。

 王国として考えると小さな国なんだが、とにかく存在している場所と言い、存在している形といい物凄く独特だ。

「よし、では宿を決めたらめいめい散策に出かけよう! それから、路銀もそろそろ少なくなってきたから仕事を探さないとな。散策しながら、いい感じの仕事も探してくれ」

「はーい!」

「おう!」

「分かった」

「任せるのじゃ!」

 宿は外見石造り、中身は木造のオーシャンビュー。
 つまり海が見えるってことだ。
 まあ、この国の宿屋は全部海沿いで、部屋は全て海側に大きな窓がある。

「このような作りで、守りが薄いのではないか」

「海面から高さがある。船で攻撃をしようとしても、届かないだろう」

 ジュウザとウインドが、わいわいと防備について話し合っている。
 こういうところは似た者同士だな。

 隣が女子部屋で、ベランダから身を乗り出したエクセレンが手を振ってきた。

「マイティー! こっちの部屋は可愛くて素敵ですよー!」

「部屋の作りが違うのか!」

「こっちに来ます?」

「行ってみるか」

 隣室に顔を出すと、ディアボラが早速、床に大きな紙を広げて魔法陣を書いている。

「なんじゃ、女子部屋に遠慮なく入ってくるのう!」

「エクセレンに招かれたんでな。ほうほう、絨毯があるんだなここは。こりゃあ凄いな」

 ばかでかい絨毯に、いろいろな柄が織り込まれている。
 男子部屋など、木製の床に太い藁で編まれた敷物が広がっているだけだぞ。
 殺風景だ。

「そりゃあ、女子部屋の宿代は倍くらいしたからなのじゃ!」

「そうだったっけ」

「こっちの方が安全な作りなんですって」

 宿の主人が気を利かせて、女子の部屋はいい部屋にしてくれたということだろう。
 ウェルカムフルーツまであるな。

「これは、さっさと路銀を稼がないとお金が底をつくぞ」

「わしら、ライトダーク王国であまり報酬を受け取らなかったからなのじゃー」

「それどころじゃなかったですもんねー」

 俺たちはしばらく宿でまったりした後、宿のフロントに鍵を預けて外へ出るのだ。
 橋の王国とやらを散策してやろう。

「わしは一人でぶらぶらするのじゃ! なに、身を守るのは得意じゃ! 魔将じゃからな!」

 ディアボラはそう告げると、人混みに消えていった。

「では、拙者はウインドとともにこの国を調べよう」

「変わった素材が手に入るかもしれない。楽しみだ」

「だがウインド、先立つものが無ければ手に入れられぬぞ」

「お金というものか? 外の世界はなんとも不便だな……」

 ジュウザとウインドも去っていった。
 ということは。

「俺と」

「ボクが一緒ですね! 二人きりは久しぶりですねえ」

「ああ。エクセレントマイティも随分賑やかになったからなあ。俺としては、あと一人女子組が増えそうな予感がしている」

「なんですかそれ。マイティは予知ができるとか!」

「そういう能力は無いと思うんだけどなー」

 俺たち二人のやることは、観光半分、仕事探し半分。
 橋の王国の先にある、ノウザーム大陸の情報は、ジュウザとウインドが手に入れてくれることだろう。

 俺は地に足がついたことをしないとな。
 一応、パーティーのリーダーでもあることだし。

「見て下さいマイティ! 何か美味しそうなものを焼いてます! えっ!? そこの海で獲れた大きな虫みたいなものを!? エビ? なんですかそれ!?」

 早速エクセレンが面白そうなものを見つけてしまった。
 散財はほどほどにして、金を稼ぐ手段を見つけないとなあ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...