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ナゾマー大森林編
第58話 砕ける結界。やっぱりな!
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ナゾマーの集落にしばらく滞在し、エクセレンの実力アップ訓練をすることにする。
とは言っても、実戦形式で俺とジュウザがエクセレンの相手をするだけだ。
エクセレンは、早いうちから俺がタンクとしてガードに回ったせいで、防御という感覚が薄い。
とにかく、何もかもを捨てて突撃して一撃浴びせるスタイルなのだ。
今までの魔将ならそれでもいいのだが、この間のスプリガンみたいなのが相手だとそれは通用しない。
いや、魔王関係なら大丈夫だとは思うんだけどな?
それ以外のが来るかもしれないし。
「棍棒に頼り過ぎだな。どこが当たっても効果的な優れた武器だが、だがそれだけに振りが大雑把になる。とにかく当てようという意図が見え見え故な」
エクセレンが手にしているのは、模擬戦用の棍棒。
これをジュウザがひらりひらりと回避する。
全く当たらんな。
「ふわあー! ジュウザ早すぎですよう! ボクもへなちょこかもですけど、ジュウザが凄いんですって!」
「拙者は確かに強いが、その程度の相手に当てられなくてどうする。本気になった魔王はもっとたちが悪かろう」
「だな」
俺はうんうん頷いた。
魔王星では通用してしまったが、あれは魔王がこちらの情報を全く持っていなかったからだろう。
あっちは既に、俺たちという敵がいることを理解している。対策してくるはずだ。
もっともっと強くなるか、魔王の意表を突く力を身に着けねばな。
「俺が訓練相手だと、エクセレンは攻めの一辺倒になる。ジュウザとやりあって駆け引きというものを学ぶんだ」
「ひえー」
悲鳴を上げながらも、エクセレンが必死に食らいついていく。
ジュウザは遥かに格上だからな。
学び取ることも多いだろう。
ジュウザとしては、棍棒はしばらく禁止にしたいらしい。
強過ぎる武器に頼ると成長できないとかなんとか。
「よーし、じゃあ、星のショートソードとガイストサーベルで!」
「二刀流か! いいぞいいぞ! 何気に防御にも秀でたバランスのいい型だ」
ジュウザが嬉しそうだな。
エクセレンの事は任せておいていいだろう。
俺は背後で何やら作業をしている、後衛二人組の元にやって来た。
ウインドが錬金術のための材料を精製しているのだが、これをディアボラがじーっと見ては真似をしている。
「何をしているんだ」
「スプリガンの表皮をもらってきたんだ。これの成分を確認している。そして分かったんだが、少量でも地面や樹木に変質を起こす効果を持っているようだ。このようにな」
指先に乗る程の量の粉末。
これがスプリガンの皮か。
ウインドがこれを地面に落とすと、触れた地面がぐにゃりと歪んだ。
「なんだこれ」
「一時的に泥沼に変わる。土の結びつきを一瞬だけ壊すんだな。これを効果的に散布できれば凄いぞ。ちなみに木に使うと」
粉を吹きかけた樹木が、メキメキ音を立てて巨大化した。
そして根っこの部分から、ぐりぐりと動き出す。
「上手くやれば、地形を変更できる。これも短時間しか持たないが、木は一度変性すると戻らないな。二度使うと枯れる」
「ほう……。凄いもんだ。やっぱりお前さんを仲間にして間違いはなかったな」
「持ち上げるな。俺は多少、人よりも物を知っているだけの普通の男だ」
「知識だけでモンスターと戦えるというのはなかなか凄いのじゃ! わしも魔法陣に応用できないかと思って、ずーっと見てるのじゃ」
ディアボラも研究熱心だな。
俺たちエクセレントマイティはまだまだ、どんどん強くなるだろう。
「そういうマイティは何もしないのじゃ?」
「筋力を維持する基礎訓練をしてる」
「ははあ、あの馬鹿げた防御力の源は練り上げられた筋肉じゃったか」
「それもあるな」
力が無ければガードなどできないからな。
そして技が無ければタンクをやっていけない。
知恵が無ければみんなを守れない。
全て大事だ。
数日のうちに、エクセレンは幾つかの型みたいなものをジュウザから学び、ウインドは謎の小袋の数を増やした。
ディアボラはウインドの真似事をする傍ら、魔法陣をちょいちょい拡張していたようだ。
そして、その日はやって来た。
まるで俺たちの仕上がりを試すように、森を包んでいた結界が音を立てて割れたのである。
本当にパリーンっと音がした。
空に亀裂が走り、割れ砕ける。
今まで見ていた青い空の向こうには、曇り空があった。
そして雲の一部に大きな穴が空き、そこに紫色に光る何者かが浮かんでいる。
『ようやく砕けたか、忌々しい結界め! こんな星の結界一つ砕くのに時間をかけるとは、俺様の腕も鈍っているな!』
紫の鱗を持ち、巨大な翼を生やし、一見すると直立するオオトカゲみたいな外見のそいつ。
角と長い尻尾があるな。
『そこにいるのがこの星の勇者パーティーか! ふん、こんな連中に何を手間取っているのか。魔王様も遊びすぎだ。この魔将ドラゴニアンがここで決着を付けてくれよう!』
俺たちを舐めきった態度のまま、そいつは地上に降りてくる。
「ディアボラ、あれは?」
「魔将星から出てきた魔将じゃろうなあ。これまでずっと、結界を破ろうとして苦心してたんじゃろう。それで結界が壊れたからテンション上がってるんじゃ」
「ははあ、その勢いで俺たちに攻撃を? そりゃあちょうどいい」
こちらは、エクセレンとウインドがそれなりに仕上がったところなのだ。
腕試しをさせてもらおうか。
とは言っても、実戦形式で俺とジュウザがエクセレンの相手をするだけだ。
エクセレンは、早いうちから俺がタンクとしてガードに回ったせいで、防御という感覚が薄い。
とにかく、何もかもを捨てて突撃して一撃浴びせるスタイルなのだ。
今までの魔将ならそれでもいいのだが、この間のスプリガンみたいなのが相手だとそれは通用しない。
いや、魔王関係なら大丈夫だとは思うんだけどな?
それ以外のが来るかもしれないし。
「棍棒に頼り過ぎだな。どこが当たっても効果的な優れた武器だが、だがそれだけに振りが大雑把になる。とにかく当てようという意図が見え見え故な」
エクセレンが手にしているのは、模擬戦用の棍棒。
これをジュウザがひらりひらりと回避する。
全く当たらんな。
「ふわあー! ジュウザ早すぎですよう! ボクもへなちょこかもですけど、ジュウザが凄いんですって!」
「拙者は確かに強いが、その程度の相手に当てられなくてどうする。本気になった魔王はもっとたちが悪かろう」
「だな」
俺はうんうん頷いた。
魔王星では通用してしまったが、あれは魔王がこちらの情報を全く持っていなかったからだろう。
あっちは既に、俺たちという敵がいることを理解している。対策してくるはずだ。
もっともっと強くなるか、魔王の意表を突く力を身に着けねばな。
「俺が訓練相手だと、エクセレンは攻めの一辺倒になる。ジュウザとやりあって駆け引きというものを学ぶんだ」
「ひえー」
悲鳴を上げながらも、エクセレンが必死に食らいついていく。
ジュウザは遥かに格上だからな。
学び取ることも多いだろう。
ジュウザとしては、棍棒はしばらく禁止にしたいらしい。
強過ぎる武器に頼ると成長できないとかなんとか。
「よーし、じゃあ、星のショートソードとガイストサーベルで!」
「二刀流か! いいぞいいぞ! 何気に防御にも秀でたバランスのいい型だ」
ジュウザが嬉しそうだな。
エクセレンの事は任せておいていいだろう。
俺は背後で何やら作業をしている、後衛二人組の元にやって来た。
ウインドが錬金術のための材料を精製しているのだが、これをディアボラがじーっと見ては真似をしている。
「何をしているんだ」
「スプリガンの表皮をもらってきたんだ。これの成分を確認している。そして分かったんだが、少量でも地面や樹木に変質を起こす効果を持っているようだ。このようにな」
指先に乗る程の量の粉末。
これがスプリガンの皮か。
ウインドがこれを地面に落とすと、触れた地面がぐにゃりと歪んだ。
「なんだこれ」
「一時的に泥沼に変わる。土の結びつきを一瞬だけ壊すんだな。これを効果的に散布できれば凄いぞ。ちなみに木に使うと」
粉を吹きかけた樹木が、メキメキ音を立てて巨大化した。
そして根っこの部分から、ぐりぐりと動き出す。
「上手くやれば、地形を変更できる。これも短時間しか持たないが、木は一度変性すると戻らないな。二度使うと枯れる」
「ほう……。凄いもんだ。やっぱりお前さんを仲間にして間違いはなかったな」
「持ち上げるな。俺は多少、人よりも物を知っているだけの普通の男だ」
「知識だけでモンスターと戦えるというのはなかなか凄いのじゃ! わしも魔法陣に応用できないかと思って、ずーっと見てるのじゃ」
ディアボラも研究熱心だな。
俺たちエクセレントマイティはまだまだ、どんどん強くなるだろう。
「そういうマイティは何もしないのじゃ?」
「筋力を維持する基礎訓練をしてる」
「ははあ、あの馬鹿げた防御力の源は練り上げられた筋肉じゃったか」
「それもあるな」
力が無ければガードなどできないからな。
そして技が無ければタンクをやっていけない。
知恵が無ければみんなを守れない。
全て大事だ。
数日のうちに、エクセレンは幾つかの型みたいなものをジュウザから学び、ウインドは謎の小袋の数を増やした。
ディアボラはウインドの真似事をする傍ら、魔法陣をちょいちょい拡張していたようだ。
そして、その日はやって来た。
まるで俺たちの仕上がりを試すように、森を包んでいた結界が音を立てて割れたのである。
本当にパリーンっと音がした。
空に亀裂が走り、割れ砕ける。
今まで見ていた青い空の向こうには、曇り空があった。
そして雲の一部に大きな穴が空き、そこに紫色に光る何者かが浮かんでいる。
『ようやく砕けたか、忌々しい結界め! こんな星の結界一つ砕くのに時間をかけるとは、俺様の腕も鈍っているな!』
紫の鱗を持ち、巨大な翼を生やし、一見すると直立するオオトカゲみたいな外見のそいつ。
角と長い尻尾があるな。
『そこにいるのがこの星の勇者パーティーか! ふん、こんな連中に何を手間取っているのか。魔王様も遊びすぎだ。この魔将ドラゴニアンがここで決着を付けてくれよう!』
俺たちを舐めきった態度のまま、そいつは地上に降りてくる。
「ディアボラ、あれは?」
「魔将星から出てきた魔将じゃろうなあ。これまでずっと、結界を破ろうとして苦心してたんじゃろう。それで結界が壊れたからテンション上がってるんじゃ」
「ははあ、その勢いで俺たちに攻撃を? そりゃあちょうどいい」
こちらは、エクセレンとウインドがそれなりに仕上がったところなのだ。
腕試しをさせてもらおうか。
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