“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
50 / 108
ライトダーク王国編

第50話 お前は地に落とすが星はずっと空にある

しおりを挟む
「うがー!!」

 エクセレンがサーベルやナイフを振り回して攻撃してくる。
 盾で受け止めるのは容易だが、彼女の攻撃は完全に食い止めることができないというのが特徴だ。
 おう、久々にダメージを受けている感覚がある。

「しかし成長したな! 一撃一撃に必殺の信念が籠もっている! なるほど、今のエクセレンなら、一端の冒険者としてやっていけるだろう!」

「そんな事を言っている余裕はないぞ、マイティ! 占星術師がいるのだ!」

「あ、そう言えばいたな」

 エクセレンの後ろで、俺たちを憎々しげに睨みつける占星術師の姿。

「し……師匠……! その姿は……!」

 星のローブの下から、覗く顔が、輝く球体になっている。
 球体の表面に一対の目が浮かんでおり、これが俺たちを睨んでいるのだ。

 ついに星っぽいものになってしまったか。

『この国を守るために……国を平和に維持するためには、地の些事に関わる者たちを排除せねばならないのだ……。全ては星の導きのままに……』

「お前さん、この国に属する村を地すべりに飲み込ませようとしたのはどういう了見だ?」

『地の事は全て些事……! 地すべりなど大したことではあるまい!』

「おかしくなってやがるな」

「こりゃあ、あれじゃの。星とか空とか、地っていうキーワードに反応してる感じじゃな。とっくに理性はなくなってたんじゃろうよ」

「気をつけよ! あれに近寄ると、星のことしか考えられなくなるぞ! エクセレンはそれでやられた!」

「ははあ、そういう原理か。俺たちは星見の塔にやって来た侵入者だから、エクセレンはそれを排除しようとしていると」

「うがー!!」

「いてて! 流石はエクセレン、素晴らしい体力だな。絶えず攻撃を繰り出してくるぞ。ふーむ、なんかこう、いい言い回しは無いもんか」

 俺がエクセレンを防ぎつつ考えている横で、スターズが必死に占星術師を説得しようとしている。
 だが、彼の言葉は全く通じていないようだ。
 魔将になってしまうことで、思考の形は人間とは違うものになってしまうのだろう。

「よし、ではエクセレン。真正面から突っ込むだけではダメだというレクチャーをしてやる。今回も正面から行って操られただろう」

「うがー!!」

「マイティ、エクセレンに言葉は届かぬ! 言っても忘れてしまうであろう!」

「いや、彼女の場合は野生の勘みたいなので覚えるから大丈夫だ。行くぞエクセレン。お前さんの攻撃を受け流す!」

「うが!」

 一撃を、俺は盾の表面を滑らせながら流した。
 すると、エクセレンは勢い余って占星術師に襲いかかる。

『な、なんだとウグワーッ!?』

 エクセレンのガイストサーベルを深々と突き刺される占星術師。
 目を見開いてわなわな震えている。

 あいつ自身の戦闘力はそうでもないのか。

「星を降らせたりとかできないのか?」

『できる! だが、そんなことは星空に対する冒涜だ……。それに星が降れば、国のすべてが無くなってしまう』

「星空と国への愛が深すぎて何もできないタイプだぞこいつは」

「うがー!!」

 またエクセレンがこっちに向かってきた。
 さて、なかなかこれは厄介だぞ。

 俺のガードがなければ占星術師には近づけないし、かと言って俺はエクセレンにつきっきりで……。

「よし、魔法陣に魔力がほどほど満ちた頃合いなのじゃ! よくぞ時間を稼いでくれたのじゃ!」

 俺の尻の後ろに隠れていたディアボラが、元気な声を出した。

「何か使うのか!」

「うむ! こやつの能力は分かったのじゃから、対策をしたのじゃ! 行くぞ! 多重ランドスライダー!」

 ディアボラが叫ぶと、床が、階段が動き出した。
 今度は、さっきまでとは逆方向に動き出す。
 つまり、階段が上にせり上がってくるのだ。

「どういうことだ?」

「このランドスライダーは城の外まで続いておるのじゃ! つまり、城の外の土をここまで運んでくるのじゃー!」

「なるほど!」

 少し経ってから、猛烈な勢いで土砂が運び込まれてきた。

『うおわーっ!! な、なんだそれはーっ!! 星見の塔に土を! 土などを!!』

 吹き出してきた土砂で、エクセレンが埋もれた。

「うーわー! あっ、ボクは今まで何を」

「正気に戻った!」

「地面そのものである土に埋もれたから、洗脳が解けたんだな。それから、塔が土で埋まり始めたから……」

 ぐらり、と足場が傾いだ。

『お、お前ら、何をしたのだ!! この星見の塔に何をしたのだーっ!!』

「星見の塔はお前さんの力の源だったんだろうし、なんか呪縛のもとだろう? そいつが今、土の重みでへし折れるところだ」

『なんだとーっ!?』

 地面がみしみしと音を立て始めた。

『やめろ! やめろーっ! この塔にどれだけの歴史があると思っている!』

「長い歴史があるという話は聞いてるし、リスペクトもする。だがまあ、あれだ。歴史の器である塔は、一度ぶっ壊れてしまってもよくないか?」

 星見の塔は、長い歴史の中で老朽化していたのだろう。
 許容量を越えた土の重みで、崩れていく。

『ああ、塔が! 塔が!』

「俺たちと一緒に地上に行こうぜ。お前さんは地に落ちる。地面に足を付けて、頭を冷やすこった」

 ということで、ライトダーク王国が誇る星見の塔は、その日ポッキリとへし折れたのである。
 大量の土砂が降り注ぎ、塔であった瓦礫が砂山に埋もれていく。

『おおおお……塔が……。星見の塔が……。これでは星を見ることができぬ……』

 占星術師は砂山の前で嘆いた。

「何言ってるんだお前さん」

 仲間たちをガードしながら、砂山に着地した俺。
 占星術師の真横まで滑り降りる。

 周囲はすっかり夜になっていた。
 空には、星が瞬き始めている。

「地上からだってほら、星は見えるじゃないか。それに俺たちがこの国に来る時、山の上からもきれいに星が見えたぜ」

『おおお……』

 占星術師は空を見上げる。

『星だ……。大地の上からでも、星は見えるのだな……』

「そりゃあそうだ。俺らが何をしてようと、星ってのはずーっとそこで輝いてるもんだろ。知らなかったのか」

『知らなかった。いや、忘れていた』

 占星術師が俺を見る。
 憑き物が落ちたような目だ。

 そして彼はスターズを見た。

『私は空しか見えなくなっていた。お前は地も見よ』

「師匠……!」

『さらばだ』

 そう告げると、占星術師の体が光った。
 そして次の瞬間。
 そこには何も無かった。

「逃げたのか?」

「死んだんじゃろうな。地に降りたら死ぬ魔将だったんじゃろう。地のことは些事とか言ってたからな。自分に呪いを掛けてたんじゃろうな」

「うーむ! 拙者、今回は身動きができなかった。不甲斐ない」

「ボクなんか操られちゃいました! 正面突破だけだとダメですねえ……」

「今回はみんな、反省することしきりだな」

 反省会は後にしよう。
 城の門から、国王と臣下のみんなが出てきたからだ。

 だが一つ言えるのは、ライトダーク王国に伸ばされていた魔王の魔手は、断ち切られたということである。




パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:A
構成員:四名

名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:30→33
HP:300→351
MP:222→260
技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ
エンタングルブロウ
魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(中級) ライト(中級)
覚醒:シャイニング棍棒 グランド棍棒インパクト1 シャイニング斬 シャイニングアロー
武器:聖なる棍棒(第一段階) 鋼のショートソード 鋼のトマホーク ハルバード
 ガイストサーベル 帝国の弓矢 魔王星の欠片
防具:チェインメイルアーマー(上質)


名前:マイティ
職業:タンク
Lv:87
HP:1250
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(中級)
   ベクトルガード(初級)
魔法:なし
覚醒:フェイタルガード ディザスターガード2
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、??のビッグシールド


名前:ジュウザ・オーンガワラ
職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)
Lv:84
HP:680
MP:535
技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)
   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)
魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)
覚醒:クリティカルヒット(極)
武器:投擲用ダガー
防具:なし


名前:ディアボラ
職業:アークメイジ
Lv:154
HP:490
MP:2600
技 :テレポート
魔法:(一部のみ記載)ヒーリングサークル ウォーブレス ステイシスサークル
 メテオフォール ライジングメテオ ボルカニックゲイザー 
 ツイスター メイルシュトローム ランドスライダー
覚醒:魔法儀式行使
武器:儀式用ダガー
防具:魔将のローブ(サイズSS)

 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

すべてをなくした、その先で。 ~嫌われ者の俺に優しくしてくれるのがヤベー奴らしかいないってどういうこと!?~

F.ニコラス
ファンタジー
なぜか人という人に嫌われまくる16歳の少年・フウツ。 親に捨てられ村では虐げられ無いものだらけの彼だったが、ついに長年の憧れであった冒険者になる。しかしパーティーの仲間は、なんとヤンデレ令嬢のみ!? 旅の途中で出会う新たな仲間も、病的なまでの人嫌い、戦闘狂の竜人娘、毒物大好き少年に、ナチュラル物騒な芸術家、極めつけは天災エセ少女や人間を愛玩する厄介精霊! 問題児たちに振り回されたりトラブルに巻き込まれたりしながらも、フウツはそんな日常をどこか楽しみながら過ごしていく。しかし―― 時おり脳裏に現れる謎の光景、知らない記憶。垣間見えるフウツの”異常性”。1000年の歳月を経て魔王が再び動き出すとき、数奇な運命もまた加速し事態はとんでもない方向に転がっていくのだが……まだ彼らは知る由も無い。 というわけで、ヤベー奴らにばかり好かれるフウツのめちゃくちゃな冒険が始まるのであった。 * * * ――すべてをなくした、その先で。少年はエゴと対峙する。 * * *

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...