“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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第34話 降り注ぐ破片……いや、降り注がせねえよ!

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「破片を降り注がせないようになんて、ディアボラはいいやつなんだな!」

「なにを言うておるのじゃ! 魔王様は人間を愛しておったのじゃ! じゃからわしはその遺志を尊重しておるだけじゃ! 第一、こんなでかい星が降ってきたら人間なんていなくなってしまうじゃろうが!」

「そりゃそうか」

「マイティ、来ますー!!」

「おう、分かってる」

 既に、魔王星とは接触寸前。
 さっきから猛烈な風や、よく分からない引き寄せてくるパワーみたいなのが感じられているのだが、俺がガードしているから仲間たちに影響がないだけなのだ。

「みんな、俺にしがみつけ!」

「はい!」

「おう!」

「分かったのじゃー!!」

 後ろに三人がくっついたのを確認しつつ、俺は身構えた。
 そしてやってくる、凄まじい衝撃。
 盾がビリビリと震える。

 轟音が響き渡っているのだが、これも盾である程度カバーしている。
 なので、ちょっとは会話ができるのだ。

「お前の盾、何でできとるんじゃ!? なんで防げるんじゃ!」

「防げと言ったのはディアボラだろう。おっと、破片が逃げるぞ! ここだ! こっちに降ってこい!!」

 破片のひとつひとつが、ガーゴイルに化ける。
 だがそうなればモンスターだから、俺が引き寄せられるようになるのだ。

 ガーゴイルたちは俺の盾目掛けて殺到し、砕け散っていく魔王星に巻き込まれて消滅する。
 これは地上から見たら、どんな光景なんだろうな。

「尋常ではない強度じゃぞ! どこで手に入れた?」

「これか? こいつはな、家の蔵にあった。爺さんの爺さんのそのまた爺さんの頃からあったそうだ。だが誰も持ち上げられなかったんだ」

「なんじゃと……!? ……おっと、足場も崩れてきたのじゃ!! 脱出するぞ!! エクセレンとジュウザはわしに掴まれー!」

「忙しいですー!」

「うむ!」

「よーし! 脱出じゃ!! ほいっ!!」

 俺たちの足元が輝き出した。
 ディアボラが用意していた、転移の魔法陣が発動したのだろう。
 輝きが強くなり、何も見えなくなった……と思ったら、次の瞬間には地上にいた。

 爆発音が響き渡る。
 頭上で、魔王星とライジングメテオがぶつかり合い、衝撃波を撒き散らしていた。

「破片はもうほとんど降らんじゃろ。衝撃波は横に広がるから、地上はそうでもない」

 ディアボラが得意げにそう言っていたら、猛烈な風みたいなのが吹いてきてあちこちの家の屋根とか掘っ立て小屋が吹っ飛んでいった。

「横に広がるのが衝撃波じゃないのか」

「些細な被害じゃろ? 家の形は残っとる」

 そう言われると確かにそうだが。
 魔王星はこうして消滅し、一瞬だけ、王都の上空は二つ目の太陽が生まれたような明るさになった。

 王都の人々の死者はあまりいなかったようで、俺たちも頑張った甲斐があったというものだ。

「拙者らが星の上で、落ちてくる星と戦ったなど、誰も信じてはくれぬだろうな」

「そうですねー。しかも落ちてくる星には魔王がいましたもんね! 逃げちゃいましたけど」

「うむ。エクセレンの攻撃が通じてたな。ありゃびっくりだ。本当に勇者だったんだなあ」

「だから勇者なんです!」

「わしも驚いた。本物だったんじゃなあ」

 とりあえず俺たちは、魔王星騒ぎの中で酒場もやっていないので、道端に座り込んでだべっていたのである。
 徐々に騒ぎは落ち着いてきた。

 夕方頃には、たくましい王都住民のこと。
 あちこちの店が開き始め、普段どおりの町並みに戻っている。

 壊れた家は、近隣の住民が集まってわいわいと瓦礫除去を行っているようだ。
 俺もちょっと手伝ってきた。

「ありゃあなんだったんだろうな……」

「あたしゃ世界が終わるのかと思っちまったよ」

 住民たちの世間話など聞く。
 そうだな。
 危うく王国が終わってしまうところだった。

 これはエクセレントマイティのメンバー、誰が欠けても、魔王星落下は食い止められなかったことだろう。

「何事も無かったし、良かったじゃないか」

 俺の言葉に、住民たちは頷いた。
 しばらくは魔王星の話でもちきりになるだろうな。

 作業を終えて戻ると、三人の前に王国の騎士らしき者たちがいた。
 何か話し込んでいるな。

「どうしたんだー」

「あ、マイティ!」

 エクセレンが手を振る。

「おーう」

 俺も手を振り返した。
 騎士たちは俺に気付くと、そのうちの何人かが近寄ってくる。

「話を聴きたい。エクセレントマイティのリーダー、マイティだな? 空で爆発がある前に、お前たちが往来で突然姿を消したと聞いている。そして爆発が起こった頃に、突然姿を現したとも。あれは、お前たちが関係していたのか?」

 おや?
 ちょっと険のある物言いだな。

「あれ自体には関係してないな。だが被害が広がらないように頑張ったことは確かだ」

「つまり爆発に関係していたということだな!? 陛下が睨んだ通りだ! おい、こいつらを捕らえろ! 城まで連れていくぞ!」

 なんだなんだ。
 騎士たちが動き出した。

 これは、あれだな。
 今の王の判断なんだろう。
 関係者を探し出して、起きた事件に一応の説明をつけようとしている。

 ナンポー帝国侵略を利用して侵略し返そうとしたり、魔王星爆発に短絡的な理由を見つけようとしたりとか、もしかして今の王はあまり良くないのではないか?
 俺がそこまで考えていたら、「ウグワー!!」と声がした。

 あっ、エクセレンが棍棒で騎士を殴り倒している!
 行動が早い。
 だが、もう騎士を殴り倒せるほどに成長したのだな。

「こ、こいつら抵抗するのか!」

「ふむ。拙者らはむしろ感謝される立場。それをいらぬ疑惑で人身御供にでも仕立てようとする有様は感心できぬな。スイトン!」

 喋りながら高速で印を結んだジュウザ。
 彼の前から、突然高波が出現する。
 これが騎士たちを押し流した。

「ウグワー!?」

「人間は愚かじゃなあ! これ救う価値なかった気がしてきたのじゃ!!」

「なに、こいつらは上の命令を聞いてるだけだ。上がダメなんだと思うぞ。そういうことで……エクセレントマイティ、今後の行動を考えたぞ!」

「はい!」

「うむ」

「なんじゃなんじゃ」

「国外に出よう。噂だと、ナンポー帝国みたいに魔王の手先みたいなのにやられてる国が多いらしい。俺たちが旅して回って、そこを助けていこうじゃないか」

「賛成です!」

「なるほど、面白そうだ!」

「わしは一向に構わんのじゃー」

 方針は決まった。
 エクセレントマイティは王国から旅立つ。
 さらば王国、なのである。

パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:B
構成員:四名

名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:24→30
HP:248→300
MP:161→222
技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ
エンタングルブロウ
魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(中級) ライト(中級)
覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬 シャイニングアロー
武器:鋼のショートソード 鋼のトマホーク 鋼の棍棒(覚醒) ハルバード
 ガイストサーベル 帝国の弓矢 魔王星の欠片
防具:チェインメイルアーマー(上質)


名前:マイティ
職業:タンク
Lv:86(レベルアップ間近)
HP:1200
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(中級)
魔法:なし
覚醒:フェイタルガード ディザスターガード
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、??のビッグシールド


名前:ジュウザ・オーンガワラ
職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)
Lv:83(レベルアップ間近)
HP:655
MP:520
技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)
   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)
魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)
覚醒:クリティカルヒット(極)
武器:投擲用ダガー
防具:なし


名前:ディアボラ
職業:アークメイジ
Lv:154
HP:490
MP:2600
技 :テレポート
魔法:(一部のみ記載)ヒーリングサークル ウォーブレス ステイシスサークル
 メテオフォール ライジングメテオ ボルカニックゲイザー 
 ツイスター メイルシュトローム
覚醒:魔法儀式行使
武器:儀式用ダガー
防具:魔将のローブ(サイズSS)

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