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第33話 王都上空で魔王星を迎え撃つぞ
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俺たちの接近を察して、魔王星に動きがあった。
「来るぞ! 迎撃を頼むのじゃー!!」
「ディアボラは何かしないんですか?」
「儀式魔法の準備は時間がかかるのじゃ。一度の戦いで一つか二つしか使えぬから、わしは脱出の魔法を書くので手一杯じゃなあ」
「なるほど、お主の言う通り本来であれば実戦では使えぬ魔法よな。だが、この場は任せておけ。ガーゴイルが湧いて来ているが、あれならば幾らいようと物の数ではない」
ジュウザは既に臨戦態勢だな。
クリティカルヒットを連発でぶっ放すつもりだろう。
「おっ、来たな。ではジュウザ、やってくれ!」
「おう! キエエエエエエッ!!」
飛翔したジュウザが、ライジングメテオへ殺到したガーゴイルに攻撃を放つ。
一撃のクリティカルヒットで、ガーゴイルの半分が首を飛ばされた。
返すもう一撃が、残るガーゴイルを殲滅する。
「おわーっ! す、凄まじいもんじゃのう!! 既にヴォーパルバニーの域に達しておるではないか!」
「ほう!! 我らオーンガワラは、ついにオリジナルと同じ力を手にしたか!」
頭巾に隠れてよく分からないが、ジュウザが嬉しそうなことは分かる。
「ならば、後は凌駕するだけよな」
「おう、いい心意気だ。あとはコントロールだな」
「そうであった」
ちょっとしょぼんとした。
力というのは、強ければいいものではないからな。
自分の手足のように、完璧に扱えて初めて、自分のものにしたと言える。
そういう意味では、俺はガードを自分のものにしている。
ただ、まだまだ俺にも未知の部分があるのが、ガードの奥深いところだ。
色々イメトレとかで頑張ってはいるので、何かのタイミングで未知の部分がマスターできればと思っているのだが。
「おっと!!」
また湧き上がってきたガーゴイルが、ジュウザによって薙ぎ払われた。
もちろん、こちらごと薙ぎ払ってくるクリティカルヒットだ。
俺がきちんとガードしておく必要がある。
「ボクの出番は来ますかねー」
「魔王星って言うんだから魔王がいるんだろ。じゃあ出番はあるに決まってるじゃないか」
「なるほど!」
エクセレンは棍棒を構えて、出番はまだかとうずうずしている。
焦るな焦るな。
魔王星側も、ガーゴイルでは幾らいても相手にならないとそろそろ判断する頃合いではないか。
『参った! 実に参った……』
魔王星から声が響き渡った。
気づけば、二つの星は接触寸前。
今にもぶつかり合いそうな距離なのだが……。
ギリギリのところで時が止まってしまったようになっている。
つまり、二つの星が静止しているのだ。
「魔王の結界じゃ! 仕掛けてくるぞ!」
『おや、そちらには古き魔将がいるようだ。前の魔王は部下思いだったようだね。私とは大きな違いだ』
不意にガーゴイルの湧出が止まり、真っ赤な魔王星の上に一人の男が立っていた。
その姿を見て、俺は拍子抜けする。
魔王と言うから、仰々しい姿を想像していたのだが……。
そこにいたのは、ラフな感じの白いシャツを纏い、青い布のパンツを履いたぼさぼさ頭の男だった。
メガネを掛けているから、富裕層だろうか。
「魔王ですね!」
『その通り! この外見に騙されないで、一瞬で看破するとは素晴らしい。私をらしくないと侮れば、その侮りが固定されて、私相手に本気を出せなくなるんだ』
「なんだって!? おっそろしいやつだな!」
俺は仰天した。
危ない危ない。
術中にはまるところだった。
ここはエクセレンに助けられたようなもんだな。
『魔王星は私が作り上げた最大の武器だ。これを防がれると、私がこの星を手に入れるための第一手が失敗してしまうことになる。困るなあ』
「なるほど、死ね!」
ジュウザが仕掛けた。
通用しないだろうと踏みながらクリティカルヒット。
これは、魔王の目の前に現れた見えない壁によって防がれる。
ああ、いや。
「ジュウザ、そいつは見た目通りの姿じゃないぞ。お前のクリティカルが止まったところが、魔王の本当の外側だ」
『ご明察だよ。タンクくん、君は実に冷静で賢い。最初の一瞬で君に固定観念を植え付けられなかったことは、私にとって大きな損失だ。では姿をお見せしよう』
ジュウザは会話の間にも、投げナイフやカトン、スイトンなどで攻撃を仕掛けている。
このどれもが、魔王の表面で弾ける。
『テクスチャーを破棄する。ご覧あれ、我が姿を。四つの星を滅ぼし、その全てを魔王工場へと変えた、至高の魔王の姿を』
魔王の外周が、まるで何もない空間が剥げ落ちるように、ボロボロと崩れ落ちていった。
その下から現れるのが、青い甲冑姿だ。
表面はヌメリとしていて、時折あちこちから、三角形がつなぎ合わされたようなビジョンが浮かび上がる。
『私が司るのは、計画と予定、そして手順。世界をあるべき型に嵌め、それに見合った姿へと作り変える。はじめまして諸君! 私が魔王ミルグレーブだ!』
魔王が両手を広げた。
俺は直感的に思う。
こりゃやばい。
「ジュウザ、後ろに移動しろ!」
「おう!!」
ジュウザの反応が速い。
すぐさま俺の背後まで跳躍した。
すると、俺の盾に思い衝撃が加えられる。
『惜しい。世界そのものに新しいテクスチャーを貼ろうとしたのだが……。君が邪魔して塗りつぶすことができなかった』
周辺世界が、真っ青な空間に変わっている。
「危なかったな。ガードが間に合わなければ、ジュウザはこの青い空間に塗りつぶされてたってことだな」
『ご明察だよ』
「だが残念だったな。俺がガードしたのでダメージはゼロだ」
『ほう……。私が言うのも何だが……。君は理不尽だな……』
「どの口が言ってるんだ」
ところで、さっきまでずっと大人しくしていたのがいなくなっている。
それは魔王の攻撃を俺がガードした直後に、まるでちょっとそこまでお使いに行く、みたいなノリでトテトテと走っていったのだ。
「えいっ!」
エクセレンは既に魔王の真横まで来ていて、棍棒で魔王を殴る。
『ウグワーッ!? や、野蛮!!』
「あっ、効きましたよマイティ!」
「そりゃあな。お前さん、魔王とかボスモンスターの天敵みたいなやつだからな。あと、どんなに守りが強固でも絶対ダメージを与えるから、こういう強いやつに対するほど脅威になるだろ」
「そうでしょうか? でもそうかもですね! えいえいえい! 効いてます?」
『ウグワーッ!? こ、これは予定にないな! 私が勧誘した魔将からの報告が上がってこないはずだ! 君か! 君が片っ端から、その野蛮な力で魔将を滅ぼしていっていたのか!』
「そうです! 棍棒はどこが当たっても痛いのでいい武器なんです! あとこれは剣です!」
ガイストサーベルを抜いて、突き立ててくるエクセレン。
逆手持ちで、そのまま体重をかけて刺す構えである。
「なんという誇りも情緒もない構え!」
「ああ。だからこそエクセレンの攻撃は効くんだな。純粋な破壊の意志しかそこにはない」
魔王が慌ててエクセレンから距離を取った。
よし、いい時間稼ぎになったのではないか?
「十分じゃ! ほれ、なんかよく分からん結界を吹き飛ばすぞ! わしが幾つか魔法陣を持ってきてよかったのじゃ!」
ディアボラが儀式魔法を発動する。
すると、そこから巨大な竜巻が発生した。
それはこの真っ青な世界に激突すると、世界を巻き込んでぐるぐると回転する。
『むっ、世界が巻き取られる! 参ったな。君たちはなんだ。そのでたらめな構成のメンバーは。一芸特化が四人! こんなピーキーな連中が相手だなんて報告をもらってない! いや、報告する部下は全員滅ぼされているのだったな。ということはティターンはまだ接触していないのか? 役に立たない男だな!』
魔王はぶつぶつ文句を言うと、またさっきの、白いシャツの男に戻った。
『癪にさわるが、諸君。今回は君たちの勝ちだ。魔王星を存分に砕くがいい。だが、君たちが守れるのはこの王国まで。世界の半分は、既に私の手中にあるよ。では! SeeYou』
魔王が小さく手を振る。
すると、やつの姿が消えた。
止まっていた時間が動き出す。
今まさに、魔王星とライジングメテオ激突の瞬間だ。
「飛び散る破片をできるだけガードして、地上に落ちないようにするのじゃ! そしたらギリギリで転移するのじゃー!!」
「難しい注文が来たな! だがやるしかないな!」
ということで、魔王を追っ払ったあとも一仕事なのである。
「来るぞ! 迎撃を頼むのじゃー!!」
「ディアボラは何かしないんですか?」
「儀式魔法の準備は時間がかかるのじゃ。一度の戦いで一つか二つしか使えぬから、わしは脱出の魔法を書くので手一杯じゃなあ」
「なるほど、お主の言う通り本来であれば実戦では使えぬ魔法よな。だが、この場は任せておけ。ガーゴイルが湧いて来ているが、あれならば幾らいようと物の数ではない」
ジュウザは既に臨戦態勢だな。
クリティカルヒットを連発でぶっ放すつもりだろう。
「おっ、来たな。ではジュウザ、やってくれ!」
「おう! キエエエエエエッ!!」
飛翔したジュウザが、ライジングメテオへ殺到したガーゴイルに攻撃を放つ。
一撃のクリティカルヒットで、ガーゴイルの半分が首を飛ばされた。
返すもう一撃が、残るガーゴイルを殲滅する。
「おわーっ! す、凄まじいもんじゃのう!! 既にヴォーパルバニーの域に達しておるではないか!」
「ほう!! 我らオーンガワラは、ついにオリジナルと同じ力を手にしたか!」
頭巾に隠れてよく分からないが、ジュウザが嬉しそうなことは分かる。
「ならば、後は凌駕するだけよな」
「おう、いい心意気だ。あとはコントロールだな」
「そうであった」
ちょっとしょぼんとした。
力というのは、強ければいいものではないからな。
自分の手足のように、完璧に扱えて初めて、自分のものにしたと言える。
そういう意味では、俺はガードを自分のものにしている。
ただ、まだまだ俺にも未知の部分があるのが、ガードの奥深いところだ。
色々イメトレとかで頑張ってはいるので、何かのタイミングで未知の部分がマスターできればと思っているのだが。
「おっと!!」
また湧き上がってきたガーゴイルが、ジュウザによって薙ぎ払われた。
もちろん、こちらごと薙ぎ払ってくるクリティカルヒットだ。
俺がきちんとガードしておく必要がある。
「ボクの出番は来ますかねー」
「魔王星って言うんだから魔王がいるんだろ。じゃあ出番はあるに決まってるじゃないか」
「なるほど!」
エクセレンは棍棒を構えて、出番はまだかとうずうずしている。
焦るな焦るな。
魔王星側も、ガーゴイルでは幾らいても相手にならないとそろそろ判断する頃合いではないか。
『参った! 実に参った……』
魔王星から声が響き渡った。
気づけば、二つの星は接触寸前。
今にもぶつかり合いそうな距離なのだが……。
ギリギリのところで時が止まってしまったようになっている。
つまり、二つの星が静止しているのだ。
「魔王の結界じゃ! 仕掛けてくるぞ!」
『おや、そちらには古き魔将がいるようだ。前の魔王は部下思いだったようだね。私とは大きな違いだ』
不意にガーゴイルの湧出が止まり、真っ赤な魔王星の上に一人の男が立っていた。
その姿を見て、俺は拍子抜けする。
魔王と言うから、仰々しい姿を想像していたのだが……。
そこにいたのは、ラフな感じの白いシャツを纏い、青い布のパンツを履いたぼさぼさ頭の男だった。
メガネを掛けているから、富裕層だろうか。
「魔王ですね!」
『その通り! この外見に騙されないで、一瞬で看破するとは素晴らしい。私をらしくないと侮れば、その侮りが固定されて、私相手に本気を出せなくなるんだ』
「なんだって!? おっそろしいやつだな!」
俺は仰天した。
危ない危ない。
術中にはまるところだった。
ここはエクセレンに助けられたようなもんだな。
『魔王星は私が作り上げた最大の武器だ。これを防がれると、私がこの星を手に入れるための第一手が失敗してしまうことになる。困るなあ』
「なるほど、死ね!」
ジュウザが仕掛けた。
通用しないだろうと踏みながらクリティカルヒット。
これは、魔王の目の前に現れた見えない壁によって防がれる。
ああ、いや。
「ジュウザ、そいつは見た目通りの姿じゃないぞ。お前のクリティカルが止まったところが、魔王の本当の外側だ」
『ご明察だよ。タンクくん、君は実に冷静で賢い。最初の一瞬で君に固定観念を植え付けられなかったことは、私にとって大きな損失だ。では姿をお見せしよう』
ジュウザは会話の間にも、投げナイフやカトン、スイトンなどで攻撃を仕掛けている。
このどれもが、魔王の表面で弾ける。
『テクスチャーを破棄する。ご覧あれ、我が姿を。四つの星を滅ぼし、その全てを魔王工場へと変えた、至高の魔王の姿を』
魔王の外周が、まるで何もない空間が剥げ落ちるように、ボロボロと崩れ落ちていった。
その下から現れるのが、青い甲冑姿だ。
表面はヌメリとしていて、時折あちこちから、三角形がつなぎ合わされたようなビジョンが浮かび上がる。
『私が司るのは、計画と予定、そして手順。世界をあるべき型に嵌め、それに見合った姿へと作り変える。はじめまして諸君! 私が魔王ミルグレーブだ!』
魔王が両手を広げた。
俺は直感的に思う。
こりゃやばい。
「ジュウザ、後ろに移動しろ!」
「おう!!」
ジュウザの反応が速い。
すぐさま俺の背後まで跳躍した。
すると、俺の盾に思い衝撃が加えられる。
『惜しい。世界そのものに新しいテクスチャーを貼ろうとしたのだが……。君が邪魔して塗りつぶすことができなかった』
周辺世界が、真っ青な空間に変わっている。
「危なかったな。ガードが間に合わなければ、ジュウザはこの青い空間に塗りつぶされてたってことだな」
『ご明察だよ』
「だが残念だったな。俺がガードしたのでダメージはゼロだ」
『ほう……。私が言うのも何だが……。君は理不尽だな……』
「どの口が言ってるんだ」
ところで、さっきまでずっと大人しくしていたのがいなくなっている。
それは魔王の攻撃を俺がガードした直後に、まるでちょっとそこまでお使いに行く、みたいなノリでトテトテと走っていったのだ。
「えいっ!」
エクセレンは既に魔王の真横まで来ていて、棍棒で魔王を殴る。
『ウグワーッ!? や、野蛮!!』
「あっ、効きましたよマイティ!」
「そりゃあな。お前さん、魔王とかボスモンスターの天敵みたいなやつだからな。あと、どんなに守りが強固でも絶対ダメージを与えるから、こういう強いやつに対するほど脅威になるだろ」
「そうでしょうか? でもそうかもですね! えいえいえい! 効いてます?」
『ウグワーッ!? こ、これは予定にないな! 私が勧誘した魔将からの報告が上がってこないはずだ! 君か! 君が片っ端から、その野蛮な力で魔将を滅ぼしていっていたのか!』
「そうです! 棍棒はどこが当たっても痛いのでいい武器なんです! あとこれは剣です!」
ガイストサーベルを抜いて、突き立ててくるエクセレン。
逆手持ちで、そのまま体重をかけて刺す構えである。
「なんという誇りも情緒もない構え!」
「ああ。だからこそエクセレンの攻撃は効くんだな。純粋な破壊の意志しかそこにはない」
魔王が慌ててエクセレンから距離を取った。
よし、いい時間稼ぎになったのではないか?
「十分じゃ! ほれ、なんかよく分からん結界を吹き飛ばすぞ! わしが幾つか魔法陣を持ってきてよかったのじゃ!」
ディアボラが儀式魔法を発動する。
すると、そこから巨大な竜巻が発生した。
それはこの真っ青な世界に激突すると、世界を巻き込んでぐるぐると回転する。
『むっ、世界が巻き取られる! 参ったな。君たちはなんだ。そのでたらめな構成のメンバーは。一芸特化が四人! こんなピーキーな連中が相手だなんて報告をもらってない! いや、報告する部下は全員滅ぼされているのだったな。ということはティターンはまだ接触していないのか? 役に立たない男だな!』
魔王はぶつぶつ文句を言うと、またさっきの、白いシャツの男に戻った。
『癪にさわるが、諸君。今回は君たちの勝ちだ。魔王星を存分に砕くがいい。だが、君たちが守れるのはこの王国まで。世界の半分は、既に私の手中にあるよ。では! SeeYou』
魔王が小さく手を振る。
すると、やつの姿が消えた。
止まっていた時間が動き出す。
今まさに、魔王星とライジングメテオ激突の瞬間だ。
「飛び散る破片をできるだけガードして、地上に落ちないようにするのじゃ! そしたらギリギリで転移するのじゃー!!」
「難しい注文が来たな! だがやるしかないな!」
ということで、魔王を追っ払ったあとも一仕事なのである。
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