“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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第30話 魔将ってなんだ? ディアボラの腕試し

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「魔将!?」

 ディアボラの自己紹介を聞いて、我らエクセレントマイティは騒然と……はならなかった。

「魔将ってなんですかね?」

「なんだろうな」

「お主ら、以前に拙者が話したであろう。魔王に付き従う最高位のモンスターのことだ」

「おお、それか!」

 俺はぽんと手を打つ。
 我がパーティーにおいて、ジュウザは知恵袋でもあるな!

 これを、ディアボラは大変心配そうな顔で見つめていた。

「お前らなあ、大丈夫なのか……? わし、すっごく心配になって来たんじゃが。よく今まで生き残ってこれたのう……?」

「それはもちろん、マイティが凄いからですよ!」

 えっへん、と胸を張るエクセレン。
 図らずも、エクセレンとディアボラで胸を張り対決みたいになった。

「ところでお前ら、わしの角を見ても驚かないようじゃが」

「角がある人もいるんだろ? 人に害を及ぼすのがモンスターで、及ぼさないのは人だぞ」

「ほえー、先進的な考え方をしとるんじゃなあ」

 ディアボラが俺の言葉に感心した。

「おう。俺はなるべく相手のいいところを探すようにしている。最初から敵対して現れた奴以外には寛容だぞ。それはそうとしてだな」

 本題に移る。

「ディアボラは一人だと活動しづらいんだろ? その儀式魔法というのが時間が掛かるとか」

「うむ、最大にして唯一の弱点じゃな。どこでも発動できるが、とにかく時間が掛かる。わしは独力であれば自衛は可能じゃが、身を守ると儀式が中断されて魔法が失敗するのじゃ」

「難しい問題ですねー」

「うむ。つまりマイティの影で魔法を使えばよかろう。なあマイティ」

「そうなるな」

「なんと! それはつまりこのわしに……」

「エクセレントマイティに加わればいいということだ。その前に、お前さんの実力を見せてもらうがな」

 するとディアボラは、さも楽しげに笑った。

「魔将として勇者を苦しめたわしが、何の因果か勇者の仲間か! じゃがそれも良かろう。この勇者の娘は気持ちのいい性格じゃし、何よりお主は魔王様に似てるし」

「俺が魔王に似てるの?」

「顔とか雰囲気がな。千年前の本物の魔王様じゃぞ! 空から降ってきた光と一つになった、とある国の王じゃ! 地上から全ての争いを無くすために、世界に対して戦争を吹っかけられたのじゃ」

「凄い矛盾だ」

 俺は唸った。
 だが、ジュウザは別の感想を抱いたようである。

「千年前の魔王は空から降りてきたと聞いたが。まさかこの世界に住む人間だったのか!」

「空から降りてきたものは意識が曖昧だったのじゃ。それを魔王様が取り込み、己のものとした! かくして魔王様の力を受けて魔将が生まれたわけじゃ。そう、わしじゃな!」

 ディアボラが胸をたたいて、強くたたき過ぎたのかむせた。
 エクセレンが背中を撫でてあげている。

「ま、まあ、わしがお前らのパーティーに加わることは問題ないぞ! 飯の恩義どころか、こんなに優しくされたのは千年ぶりじゃからの! なに、わしの儀式魔法が見たいとな? いいじゃろういいじゃろう、見せてやる! どれ、どこかに魔法を使う機会は……と」

 店の中をキョロキョロしていたディアボラ。
 すると都合よく、彼女の鼻先で客同志が喧嘩を始めた。

 どっかんどっかん殴り合っている。
 こういう状況に慣れた周囲の客は、自分たちのテーブルを持って喧嘩の場所から距離を取った。
 そして、喧嘩を肴にして酒を飲むのだ。

 ついに片方が勝ち、負けた方の男は鼻血を流してぶっ倒れてしまった。
 こりゃいかん。
 目を開いたまま失神してる。

「気付けをしてやらんとな」

「待て待て」

 ディアボラが前に出てきた。

「わしの魔法を見たいと言ったろう。では見せてやる。これはごく簡易なものなのじゃが……」

 倒れた男の腹に、羽ペンのようなもので何かをさらさら書いている。
 周囲の客も興味津々でこれを眺めている状況だ。

「よし、書けた。これに、血か肉か、何か触媒になるものを一滴……おお、エクセレン、そのシチューを貸せ。匙一杯分でいいぞ」

「シチューを? はいー」

 匙に盛られたシチュー。
 これを受け取ったディアボラは、説明を始めた。

「命か、命を作り出すものを触媒とする必要がある! 対象となるものが命とする触媒じゃな。それが今使う儀式魔法の仕組みじゃ。こうしてな……シチューをたらりと」

 垂らされたシチューが、男の腹に描かれた模様の上に落ちる。
 すると、驚くべきことが起こった。

 男の腹の模様が輝き出したのだ。
 ぶっ倒れた男の手足がバタバタと動き始め、頭がガクガク震えた。

「うわあ」

「これヤバいんじゃないか」

 わあわあ周囲が騒ぐ中、ディアボラは得意げである。

「騒ぐな! 見ておれ! ほら、効果が表れたぞ!」

 彼女が宣言すると同時に、倒れていた男が瞬きをした。
 そしてきょとんとしながら起き上がる。

「あれえ……? なんだか頭がスッキリしているぞ。なんだこりゃ。俺はさっき、喧嘩をして……」

 どうやら酔いまで抜けてしまっている。

「発動まで手順が必要じゃがな。こうしてあらゆる傷と内傷と毒を治癒する。癒やしの儀式魔法、ヒーリングサークルじゃ! こうしている間も、常時回復効果が続いておるぞ!」

 男の腹に盛られたシチューが、どんどん減っていっている。
 腹の模様がシチューを触媒にしているわけか。

 こりゃあ面白い魔法を使う御仁だ。

「よし、実力は分かった! 俺たちの仲間になるといい。俺たちは魔王を倒す一行だから、結果的に空の星が落ちてくるならそれを防ぐ必要もあるからな。目的の一致というやつだ」

「おう、確かにそうじゃ!! わはは! 飯まで奢ってもらった上に理解者まで得てしまうとは、わしは運がいいのう! よろしく頼むぞ!」

 こうして俺たちは四人パーティーになった。
 なんとSランクまで到達できる人数だぞ。

 ついにここまで来たんだな!

パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:B
構成員:四名

名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:24
HP:248
MP:161
技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ
エンタングルブロウ
魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(下級) ライト(下級)
覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬 シャイニングアロー
武器:鋼のショートソード 鋼のトマホーク 鋼の棍棒(覚醒) ハルバード
 ガイストサーベル 帝国の弓矢
防具:チェインメイルアーマー(上質)


名前:マイティ
職業:タンク
Lv:86
HP:1200
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)
魔法:なし
覚醒:フェイタルガード
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド


名前:ジュウザ・オーンガワラ
職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)
Lv:83
HP:655
MP:520
技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)
   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)
魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)
覚醒:クリティカルヒット(極)
武器:投擲用ダガー
防具:なし


名前:ディアボラ
職業:アークメイジ
Lv:154
HP:490
MP:2600
技 :テレポート
魔法:(一部のみ記載)ヒーリングサークル ウォーブレス ステイシスサークル
 メテオフォール ライジングメテオ ボルカニックゲイザー 
 ツイスター メイルシュトローム
覚醒:魔法儀式行使
武器:儀式用ダガー
防具:魔将のローブ(サイズSS)
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