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第24話 訓練をしてたら外国から侵攻が始まったんだが
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昨夜は大いに飲んで食べて、その後、宿に戻って泥のように眠った。
朝はスッキリである。
向かいにある部屋から、寝ぼけまなこのエクセレンが出てくる。
ジュウザは既に起きて、宿に隣接する食堂で茶を飲んでいるようだ。
「おふぁようございまふ。今日はなにをするんでふか?」
「エクセレン、まずは顔を洗おうじゃないか。それから朝食をしっかり食べて、ジュウザと手合わせだな。お前さんは強くなったが、まだまだ魔王と戦う勇者になるには足りないだろう」
すると、彼女の顔がしゃきっとした。
勇者としての自覚があるのだ。
「そうですね! ボク、もっと強くならなくちゃです! 神様と約束しましたから!」
「その意気だ! 朝からガッツリ食おうじゃないか!」
顔を洗い、寝癖を直し、ジュウザと同じ店で朝食を摂った。
固いパンをカリカリに焼き、ハムとチーズを乗せたやつだ。
これをミルクで流し込む。
俺は体が大きいので、エクセレンが一枚食うところを三枚食う。
「惚れ惚れする食べっぷりだな」
ジュウザが笑っていた。
そして食事が終わった後、俺たちは国が運営している訓練所へ向かう。
金を払えば、それなりに広い空間を貸し切りにして、訓練を行うことができるのだ。
こいつは冒険者ランクが高いほど、貸し切りにできるスペースが増える。
「広い!」
「おう。戦場を想定してる。ジュウザの攻撃範囲が広いからな。ここにこうやって棒をたくさん立てて、どこまでクリティカルヒットが届くかだな」
「うむ。マイティ、後ろで盾を持っていてくれ。万一にもエクセレンや他の人間に、拙者の攻撃が届いては敵わん」
「おうおう。問題ないぜ! さあ、やってくれ!」
「よし! キエエエエエッ!」
気合とともに放たれたクリティカルヒットが、並べられた棒の先端を一度に切り落とした。
空間の端まで攻撃は届いているな。
当然、俺の盾にクリティカルヒットがぶち当たる感触もあった。
「制御できないのか?」
「うむ……。拙者はこの技を使うことを避けていた。故にまだまだ未熟」
「効果範囲を限定する訓練をしないとな」
「そうしよう。そしてこれは、あの強大なモンスターには通用しなかった。クリティカルヒット以外の戦い方も使っていかねばな」
ジュウザが見せるのは、ナイフ投げである。
目にも留まらぬ早さでナイフが飛ぶ。
そして棒を切断する。
「カトン!!」
ジュウザが指先で印を結ぶと、彼の眼前から回転する炎の車輪が出現した。
これが地面をえぐりながら突き進み、ある程度のところで爆発する。
「色々やれるんだな!」
「うむ。クリティカルヒットに開眼する以前は、このような戦闘手段を用いていたゆえ。だが、今は錆びついておる。クリティカルヒットのみに頼り、驕った拙者は、あのままならば誰かに討たれて死んでおっただろうな」
「謙虚だなあ」
「お主ほどではない。さて、エクセレン、相手をいたそう。参れ!」
「はい!」
エクセレンが棍棒を持って出てきた。
ジュウザが奇妙な顔をする。
「……お主、剣は使わぬのか?」
「棍棒の方が使いやすいので!」
「そうか……。確かに、どこが当たっても効果的な、分かりやすい武器ではある。単純ゆえに使いやすく、強力だ。しかし勇者としてのイメージがな……」
「サーベルはいざとなったら、また投げつけたり蹴ったりします!」
「そ、そうか」
俺はこのやり取りを楽しく見ている。
すぐに二人は訓練を開始した。
エクセレンの攻撃を、ジュウザがいなす。
ジュウザの反撃を、エクセレンが躱す。
「いつもマイティがいるとは限らぬ。拙者の攻撃をいなせるくらいになっておけ!」
「ひえええ! それはハードルが高いんですけどおー!」
うむ、Sランク冒険者の攻撃をいなせるってことは、それはもうSランクなのだ。
本気のジュウザなら、すぐにエクセレンに勝ってしまうところだろう。
だが今回は訓練。
上手に手加減をして、いい勝負を繰り広げている。
あれはジュウザが手加減をするイメージトレーニングの一環でもあるのだな。
彼のクリティカルヒットは、手加減ができなければまともに使えない技なのだ。
「どれ、次は俺もやろう。二人まとめてかかってこい! ガードの練習になるからな!」
ということで、わいわい、どたばたと楽しく訓練を行った。
ただ、不思議と訓練を行うと技の馴染みが良くはなるのだが、根本的な強さにはつながらない気がする。
厳しい実戦をくぐり抜けると、明らかに自分がパワーアップしているのが分かったものだ。
なんなんだろうな?
訓練で身につく技量とは全く別の、強さのもとになるものがあるんだろうか。
エクセレンを見ているとそう思う。
だが、誰もそれが存在するということを証明できないし、なんとなくそれっぽいものが冒険者ギルドの認定する冒険者ランクなのだ。
うーむ。
……まあ、いいか!
昼過ぎまで訓練をしたので、昼飯を食べに俺たちは町に出るのである。
汗を流すために、後で水浴びにいくのもいいな。
するとどうも町が騒がしい。
どうしたのだろうか。
「大変だ! 大変だ! 南方のナンポー帝国が攻めて来るぞ!!」
誰かが叫んでいる。
道行く人々もざわめいているな。
「おや? ナンポー帝国って確か……」
「うむ。黒騎士とやらに滅ぼされたはずだな」
ジュウザが唸る。
「黒騎士とやらが、拙者らが戦ったあのモンスター女と同じような怪物ならば……。これは魔王による攻撃では無いのか?」
「なるほど! 確かにそうですね!」
エクセレンがうんうんと頷いた。
それにしたって、スケールの大きな話だ。
まるで戦争じゃないか。
朝はスッキリである。
向かいにある部屋から、寝ぼけまなこのエクセレンが出てくる。
ジュウザは既に起きて、宿に隣接する食堂で茶を飲んでいるようだ。
「おふぁようございまふ。今日はなにをするんでふか?」
「エクセレン、まずは顔を洗おうじゃないか。それから朝食をしっかり食べて、ジュウザと手合わせだな。お前さんは強くなったが、まだまだ魔王と戦う勇者になるには足りないだろう」
すると、彼女の顔がしゃきっとした。
勇者としての自覚があるのだ。
「そうですね! ボク、もっと強くならなくちゃです! 神様と約束しましたから!」
「その意気だ! 朝からガッツリ食おうじゃないか!」
顔を洗い、寝癖を直し、ジュウザと同じ店で朝食を摂った。
固いパンをカリカリに焼き、ハムとチーズを乗せたやつだ。
これをミルクで流し込む。
俺は体が大きいので、エクセレンが一枚食うところを三枚食う。
「惚れ惚れする食べっぷりだな」
ジュウザが笑っていた。
そして食事が終わった後、俺たちは国が運営している訓練所へ向かう。
金を払えば、それなりに広い空間を貸し切りにして、訓練を行うことができるのだ。
こいつは冒険者ランクが高いほど、貸し切りにできるスペースが増える。
「広い!」
「おう。戦場を想定してる。ジュウザの攻撃範囲が広いからな。ここにこうやって棒をたくさん立てて、どこまでクリティカルヒットが届くかだな」
「うむ。マイティ、後ろで盾を持っていてくれ。万一にもエクセレンや他の人間に、拙者の攻撃が届いては敵わん」
「おうおう。問題ないぜ! さあ、やってくれ!」
「よし! キエエエエエッ!」
気合とともに放たれたクリティカルヒットが、並べられた棒の先端を一度に切り落とした。
空間の端まで攻撃は届いているな。
当然、俺の盾にクリティカルヒットがぶち当たる感触もあった。
「制御できないのか?」
「うむ……。拙者はこの技を使うことを避けていた。故にまだまだ未熟」
「効果範囲を限定する訓練をしないとな」
「そうしよう。そしてこれは、あの強大なモンスターには通用しなかった。クリティカルヒット以外の戦い方も使っていかねばな」
ジュウザが見せるのは、ナイフ投げである。
目にも留まらぬ早さでナイフが飛ぶ。
そして棒を切断する。
「カトン!!」
ジュウザが指先で印を結ぶと、彼の眼前から回転する炎の車輪が出現した。
これが地面をえぐりながら突き進み、ある程度のところで爆発する。
「色々やれるんだな!」
「うむ。クリティカルヒットに開眼する以前は、このような戦闘手段を用いていたゆえ。だが、今は錆びついておる。クリティカルヒットのみに頼り、驕った拙者は、あのままならば誰かに討たれて死んでおっただろうな」
「謙虚だなあ」
「お主ほどではない。さて、エクセレン、相手をいたそう。参れ!」
「はい!」
エクセレンが棍棒を持って出てきた。
ジュウザが奇妙な顔をする。
「……お主、剣は使わぬのか?」
「棍棒の方が使いやすいので!」
「そうか……。確かに、どこが当たっても効果的な、分かりやすい武器ではある。単純ゆえに使いやすく、強力だ。しかし勇者としてのイメージがな……」
「サーベルはいざとなったら、また投げつけたり蹴ったりします!」
「そ、そうか」
俺はこのやり取りを楽しく見ている。
すぐに二人は訓練を開始した。
エクセレンの攻撃を、ジュウザがいなす。
ジュウザの反撃を、エクセレンが躱す。
「いつもマイティがいるとは限らぬ。拙者の攻撃をいなせるくらいになっておけ!」
「ひえええ! それはハードルが高いんですけどおー!」
うむ、Sランク冒険者の攻撃をいなせるってことは、それはもうSランクなのだ。
本気のジュウザなら、すぐにエクセレンに勝ってしまうところだろう。
だが今回は訓練。
上手に手加減をして、いい勝負を繰り広げている。
あれはジュウザが手加減をするイメージトレーニングの一環でもあるのだな。
彼のクリティカルヒットは、手加減ができなければまともに使えない技なのだ。
「どれ、次は俺もやろう。二人まとめてかかってこい! ガードの練習になるからな!」
ということで、わいわい、どたばたと楽しく訓練を行った。
ただ、不思議と訓練を行うと技の馴染みが良くはなるのだが、根本的な強さにはつながらない気がする。
厳しい実戦をくぐり抜けると、明らかに自分がパワーアップしているのが分かったものだ。
なんなんだろうな?
訓練で身につく技量とは全く別の、強さのもとになるものがあるんだろうか。
エクセレンを見ているとそう思う。
だが、誰もそれが存在するということを証明できないし、なんとなくそれっぽいものが冒険者ギルドの認定する冒険者ランクなのだ。
うーむ。
……まあ、いいか!
昼過ぎまで訓練をしたので、昼飯を食べに俺たちは町に出るのである。
汗を流すために、後で水浴びにいくのもいいな。
するとどうも町が騒がしい。
どうしたのだろうか。
「大変だ! 大変だ! 南方のナンポー帝国が攻めて来るぞ!!」
誰かが叫んでいる。
道行く人々もざわめいているな。
「おや? ナンポー帝国って確か……」
「うむ。黒騎士とやらに滅ぼされたはずだな」
ジュウザが唸る。
「黒騎士とやらが、拙者らが戦ったあのモンスター女と同じような怪物ならば……。これは魔王による攻撃では無いのか?」
「なるほど! 確かにそうですね!」
エクセレンがうんうんと頷いた。
それにしたって、スケールの大きな話だ。
まるで戦争じゃないか。
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