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第20話 孤独なニンジャと、遠慮なくぶっ放せ
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翼が生み出す揚力で降りてくるデモネア。
驚き、自分を見上げる人間たちに、彼女は艷やかに笑んだ。
『わたくしを閉じ込めた愚かな行いを、冥府で悔いなさいな。魔王様のお力を賜り、わたくしは生まれ変わりましたの。古い世界は滅ぼし、わたくしのための新たな世界を作る……! さあおいでなさい! わたくしの可愛いしもべたち!』
デモネアが手を打つと、彼女の周囲に無数の黒い球体が出現した。
それらから翼が生え、くるりと展開する。
「ひ、ひえっ! 人の顔をしたコウモリ!」
『インプたち! 手始めにリューダー家の人間を殺しなさいな。わたくし以外にリューダーはいりませんわ! それから、この場にいる者を全部殺しなさい。次は、王国にいる人間全てを殺しなさい! わたくしとあの方を理解しなかった愚かな民など、いりませんもの! おほほほほ! おほほほほほほほほ!!』
召喚された無数の小悪魔……インプたちが、舞踏会に集まった人々に牙を剥く……!
デモネアの眼下で、盾を持った男が動いた。
「守り切ることはできるが……! この数、仕留めるのは骨だな」
「マイティ! 多すぎてきついです!」
「エクセレンはモンスターのボス特化みたいなところがあるからなあ」
何を言っているのだ。
デモネアは、この場で緊張感がない二人に注目する。
見よ。
盾と鎧姿の男の背後で、頭巾で顔を隠した小男など何も出来ずに立ち尽くしているではないか。
拳を握りしめ、空を見上げている。
動き出そうとして、何かを考えて、立ち止まる。
何も出来ない。
「拙者が動けば……またみんなを殺してしまう……!」
ジュウザ・オーンガワラは、代々ニンジャの家系であった。
遥か西方より流れ着いたオーンガワラ一族は、千年前に猛威を奮った魔将、ヴォーパルバニーからその技を盗み取った。
人智を超える、必殺の技……クリティカルヒット。
オーンガワラはこれを磨き続け、現代まで伝えてきた。
ニンジャとはオーンガワラ一族が始まりであり、ニンジャとはすなわちクリティカルヒットの使い手である。
ジュウザもまた、クリティカルヒットを極めんがため、修練の日々であった。
ジュウザは天才と呼ばれた。
誰よりも確実にクリティカルヒットを決め、どんな強大なモンスターも一撃で屠ってきた。
故国においてSランク冒険者として任じられ、多くの人々の尊敬を集める立場となった。
だがジュウザは謙虚であった。
「拙者はまだ修行中の身ゆえ」
それを、いけすかない謙遜だと取るものもいた。
だがそれは、紛うことなきジュウザの本心であったのだ。
ジュウザはSランク冒険者となった後も技を磨き続けた。
千年の歴史の間、受け継がれ、磨き上げ続けられてきたクリティカルヒットの技。
それはついに、魔将ヴォーパルバニーの域に到達した。
スタンピードである。
故国に存在する遺跡が壊れ、そこから無数のモンスターが溢れ出した。
彼らは凄まじい勢いで侵攻を開始し、進路にあった村や町を飲み込み、滅ぼしていった。
史上最大のスタンピード。
ジュウザはこれに対するべく、多くの冒険者たちをともに戦いを挑んだ。
永遠に続くかと思われるほどの戦い。
無限に湧き出してくるようなモンスターたち。
ジュウザは連続してクリティカルヒットを決め、モンスターたちの首を飛ばした。
首とは、物理的な首のみを指し示すのではない。
スライムにはスライムの、ゴーストにはゴーストの首と目される核がある。
首とは、対象の生命を象徴する概念に他ならない。
つまり、首を飛ばすとは、相手を殺すことである。
例外はない。
首を飛ばし続け、ジュウザの意識は、思考は、無心無想の境地に達しつつあった。
果たして、クリティカルヒットを放つ己がジュウザなのか、それともクリティカルヒットがジュウザなのか。
その域に至ったジュウザは、ついに掴み取ったのである。
これこそ、ニンジャの極意。
しかし、もう戻ることはできぬ魔境の域。
「キエエエエエエッ!!」
ジュウザの咆哮が轟いた。
手が、足が、常日頃とは比べ物にならぬほどスムーズに動いた。
まるでそうすることがあらかじめ定められていたかのように……クリティカルヒットは放たれた。
次の瞬間、その場にいた全ての対象の首が飛んだ。
叢雲の如きモンスターも、それに抗っていた冒険者も、皆等しく。
スタンピードは収まった。
全てのモンスターの首を、ジュウザが刈ったからだ。
だが、故国はスタンピードと戦った勇士たちも失った。
多くの冒険者たちの首を、ジュウザが刈ったからだ。
「ジュウザ・オーンガワラは危険である。永久謹慎の処置とする」
「化け物だ」
「モンスターどころか、人間の首まで刈っちまったんだろ」
「近寄るな、首を飛ばされるぞ」
英雄から一転。
ジュウザは誰も近寄らない、恐ろしい魔物として扱われることになった。
何よりショックを受けていたのはジュウザである。
彼が無心となれば、触れたもの全ての首が飛んだ。
獣を触れれば首を飛ばし、酒瓶を握れば首を飛ばし。
「恐ろしい……。拙者は……拙者はクリティカルヒットそのものになってしまった」
ジュウザは絶望した。
こんな、このような、人間には扱えぬほどの力を、オーンガワラ一族は求めていたというのか。
そして手に入れた末に待っていたのは、誰にも触れることの出来ぬ孤独である。
ジュウザは故国から逃げ出した。
最早あの国に、彼の居場所は無かったから。
そして今、隣国の舞踏会にいる。
ジュウザの目の前では、スタンピードに似た……。
だが、もっと邪悪な光景が繰り広げられている。
人が変じたモンスターか?
侯爵令嬢デモネアを名乗った女が、背中から生えた巨大なコウモリの翼で浮かび、人間たちを見下ろしている。
肌の色は紫に変わり、頭の両脇からは捻じくれた山羊のような角が生えている。
ドレスを突き破って飛び出し、うごめくのは槍のような尾である。
「人が魔境に至る……。拙者も似たようなものかも知れぬな」
自嘲気味にジュウザは呟いた。
この状況をどうにかすることはできる。
だが、それはこの場にいる人々全員の命を奪うことと同じである。
クリティカルヒットを恐れたジュウザは、これのコントロールをまだ身につけられてはいなかったのだ。
今のジュウザが放てば、この場にいる全ての者の首が飛ぶ。
「使うことはできぬ。ならばむしろ、拙者はここで死ぬべきなのかも知れぬな。クリティカルヒットならば、あのモンスターどもを一網打尽にできる。しかしそれは放ってはならぬ……」
「やれるのか!!」
突然ジュウザの横から大声が響いた。
「!? お主!?」
それは、舞踏会の会場において、ただ一人、実践的な鎧と盾を身に着けた大男である。
先程会話したが、裏表のない気持ちの良い男だと感じた。
それが今……盾に無数のモンスター、インプを纏わりつかせつつ、ジュウザの近くまで来ている。
男の影に、侯爵令嬢アンジェラと、彼女と親しく話していた金髪の娘が覗いていた。
金髪の娘は、時折フォークをインプに投げつけては、ダメージを与えている。
「うひー! きりがないですよー! デモネア一人なら戦えるのにー!」
「お姉さまがモンスターに……! なんてこと、なんてことなの……! エクセレンがお話してくれた魔王って、本当にいるのね……!」
ジュウザはじっと、大きな盾の男を見据える。
「拙者の技ならば、やれる。だが、問題があるのだ」
「問題があるのか」
「問題がある」
何だこのやり取りは、とジュウザは思った。
だが不思議と不快ではない。
この男の言葉に、他意は感じられないからだ。
「拙者の技は尖すぎる。この場にいる全ての人間も巻き込むことになろう。拙者はそのために、故国にいられなくなった」
何があっても技は使えぬ。
無辜の人々を巻き込むくらいならば、このまま座して死のう。
それが、己が人間である証だ。
ジュウザはそう思った。
だが、大男はきょとんとした後、豪快に笑った。
「わっはっはっはっは! なら問題ない!」
「なにっ!? 人が死ぬのだぞ!? 問題ないわけがあるか!」
「問題ないぞ!! 人は死なない!!」
「何故だ!!」
「俺がガードするからだ!! 俺はタンクだからな!」
「正気か……!」
「常に正気でなけりゃ、タンクは務まらんぞ。ニンジャ、やれ。やってくれ。お前さんの力が今、必要だ」
「お主……!!」
「マイティだ。お前さんの技が危険だと言うなら、俺に任せておけ。お前さんの技から、みんなを守る。お前さんは」
「……拙者の名は、ジュウザだ」
「おう、ジュウザ。全力で行け!!」
「信じるぞ、マイティ!!」
ジュウザの全身に覇気が漲る。
スタンピードの日より、力を失っていた四肢が、震える。
振るっても良いのか。
あの技を。
人生全てを掛けて、一族の血脈全てを掛けて編み出した、究極のクリティカルヒットを。
全力で。
放ってもいいのか。
「いいぞ!!」
マイティが吠えた。
その声に引き寄せられるように、インプの群れが集まる。
『なんですの!? そこ、何をしていますの!?』
デモネアが叫んだ。
「ジュウザ・オーンガワラ。参る」
ジュウザはジャケットを脱ぎ捨てた。
ネクタイを緩め、襟のボタンを外す。
次の瞬間。
ジュウザは跳躍していた。
喉からほとばしる、甲高い叫びは怪鳥音。
「キエエエエエエエエエエエエッ!!」
ジュウザの手が、足が、必殺の凶器となる。
飛んだ。
その場にいたインプ全ての首が、飛んだ……!!
そして背後で、盾が攻撃を受け止める感触がする。
「マイティ……!!」
振り返り、確認するまでもない。
力強い声が応じてきた。
「安心しろ。俺も、みんなも、ダメージはゼロだ!!」
驚き、自分を見上げる人間たちに、彼女は艷やかに笑んだ。
『わたくしを閉じ込めた愚かな行いを、冥府で悔いなさいな。魔王様のお力を賜り、わたくしは生まれ変わりましたの。古い世界は滅ぼし、わたくしのための新たな世界を作る……! さあおいでなさい! わたくしの可愛いしもべたち!』
デモネアが手を打つと、彼女の周囲に無数の黒い球体が出現した。
それらから翼が生え、くるりと展開する。
「ひ、ひえっ! 人の顔をしたコウモリ!」
『インプたち! 手始めにリューダー家の人間を殺しなさいな。わたくし以外にリューダーはいりませんわ! それから、この場にいる者を全部殺しなさい。次は、王国にいる人間全てを殺しなさい! わたくしとあの方を理解しなかった愚かな民など、いりませんもの! おほほほほ! おほほほほほほほほ!!』
召喚された無数の小悪魔……インプたちが、舞踏会に集まった人々に牙を剥く……!
デモネアの眼下で、盾を持った男が動いた。
「守り切ることはできるが……! この数、仕留めるのは骨だな」
「マイティ! 多すぎてきついです!」
「エクセレンはモンスターのボス特化みたいなところがあるからなあ」
何を言っているのだ。
デモネアは、この場で緊張感がない二人に注目する。
見よ。
盾と鎧姿の男の背後で、頭巾で顔を隠した小男など何も出来ずに立ち尽くしているではないか。
拳を握りしめ、空を見上げている。
動き出そうとして、何かを考えて、立ち止まる。
何も出来ない。
「拙者が動けば……またみんなを殺してしまう……!」
ジュウザ・オーンガワラは、代々ニンジャの家系であった。
遥か西方より流れ着いたオーンガワラ一族は、千年前に猛威を奮った魔将、ヴォーパルバニーからその技を盗み取った。
人智を超える、必殺の技……クリティカルヒット。
オーンガワラはこれを磨き続け、現代まで伝えてきた。
ニンジャとはオーンガワラ一族が始まりであり、ニンジャとはすなわちクリティカルヒットの使い手である。
ジュウザもまた、クリティカルヒットを極めんがため、修練の日々であった。
ジュウザは天才と呼ばれた。
誰よりも確実にクリティカルヒットを決め、どんな強大なモンスターも一撃で屠ってきた。
故国においてSランク冒険者として任じられ、多くの人々の尊敬を集める立場となった。
だがジュウザは謙虚であった。
「拙者はまだ修行中の身ゆえ」
それを、いけすかない謙遜だと取るものもいた。
だがそれは、紛うことなきジュウザの本心であったのだ。
ジュウザはSランク冒険者となった後も技を磨き続けた。
千年の歴史の間、受け継がれ、磨き上げ続けられてきたクリティカルヒットの技。
それはついに、魔将ヴォーパルバニーの域に到達した。
スタンピードである。
故国に存在する遺跡が壊れ、そこから無数のモンスターが溢れ出した。
彼らは凄まじい勢いで侵攻を開始し、進路にあった村や町を飲み込み、滅ぼしていった。
史上最大のスタンピード。
ジュウザはこれに対するべく、多くの冒険者たちをともに戦いを挑んだ。
永遠に続くかと思われるほどの戦い。
無限に湧き出してくるようなモンスターたち。
ジュウザは連続してクリティカルヒットを決め、モンスターたちの首を飛ばした。
首とは、物理的な首のみを指し示すのではない。
スライムにはスライムの、ゴーストにはゴーストの首と目される核がある。
首とは、対象の生命を象徴する概念に他ならない。
つまり、首を飛ばすとは、相手を殺すことである。
例外はない。
首を飛ばし続け、ジュウザの意識は、思考は、無心無想の境地に達しつつあった。
果たして、クリティカルヒットを放つ己がジュウザなのか、それともクリティカルヒットがジュウザなのか。
その域に至ったジュウザは、ついに掴み取ったのである。
これこそ、ニンジャの極意。
しかし、もう戻ることはできぬ魔境の域。
「キエエエエエエッ!!」
ジュウザの咆哮が轟いた。
手が、足が、常日頃とは比べ物にならぬほどスムーズに動いた。
まるでそうすることがあらかじめ定められていたかのように……クリティカルヒットは放たれた。
次の瞬間、その場にいた全ての対象の首が飛んだ。
叢雲の如きモンスターも、それに抗っていた冒険者も、皆等しく。
スタンピードは収まった。
全てのモンスターの首を、ジュウザが刈ったからだ。
だが、故国はスタンピードと戦った勇士たちも失った。
多くの冒険者たちの首を、ジュウザが刈ったからだ。
「ジュウザ・オーンガワラは危険である。永久謹慎の処置とする」
「化け物だ」
「モンスターどころか、人間の首まで刈っちまったんだろ」
「近寄るな、首を飛ばされるぞ」
英雄から一転。
ジュウザは誰も近寄らない、恐ろしい魔物として扱われることになった。
何よりショックを受けていたのはジュウザである。
彼が無心となれば、触れたもの全ての首が飛んだ。
獣を触れれば首を飛ばし、酒瓶を握れば首を飛ばし。
「恐ろしい……。拙者は……拙者はクリティカルヒットそのものになってしまった」
ジュウザは絶望した。
こんな、このような、人間には扱えぬほどの力を、オーンガワラ一族は求めていたというのか。
そして手に入れた末に待っていたのは、誰にも触れることの出来ぬ孤独である。
ジュウザは故国から逃げ出した。
最早あの国に、彼の居場所は無かったから。
そして今、隣国の舞踏会にいる。
ジュウザの目の前では、スタンピードに似た……。
だが、もっと邪悪な光景が繰り広げられている。
人が変じたモンスターか?
侯爵令嬢デモネアを名乗った女が、背中から生えた巨大なコウモリの翼で浮かび、人間たちを見下ろしている。
肌の色は紫に変わり、頭の両脇からは捻じくれた山羊のような角が生えている。
ドレスを突き破って飛び出し、うごめくのは槍のような尾である。
「人が魔境に至る……。拙者も似たようなものかも知れぬな」
自嘲気味にジュウザは呟いた。
この状況をどうにかすることはできる。
だが、それはこの場にいる人々全員の命を奪うことと同じである。
クリティカルヒットを恐れたジュウザは、これのコントロールをまだ身につけられてはいなかったのだ。
今のジュウザが放てば、この場にいる全ての者の首が飛ぶ。
「使うことはできぬ。ならばむしろ、拙者はここで死ぬべきなのかも知れぬな。クリティカルヒットならば、あのモンスターどもを一網打尽にできる。しかしそれは放ってはならぬ……」
「やれるのか!!」
突然ジュウザの横から大声が響いた。
「!? お主!?」
それは、舞踏会の会場において、ただ一人、実践的な鎧と盾を身に着けた大男である。
先程会話したが、裏表のない気持ちの良い男だと感じた。
それが今……盾に無数のモンスター、インプを纏わりつかせつつ、ジュウザの近くまで来ている。
男の影に、侯爵令嬢アンジェラと、彼女と親しく話していた金髪の娘が覗いていた。
金髪の娘は、時折フォークをインプに投げつけては、ダメージを与えている。
「うひー! きりがないですよー! デモネア一人なら戦えるのにー!」
「お姉さまがモンスターに……! なんてこと、なんてことなの……! エクセレンがお話してくれた魔王って、本当にいるのね……!」
ジュウザはじっと、大きな盾の男を見据える。
「拙者の技ならば、やれる。だが、問題があるのだ」
「問題があるのか」
「問題がある」
何だこのやり取りは、とジュウザは思った。
だが不思議と不快ではない。
この男の言葉に、他意は感じられないからだ。
「拙者の技は尖すぎる。この場にいる全ての人間も巻き込むことになろう。拙者はそのために、故国にいられなくなった」
何があっても技は使えぬ。
無辜の人々を巻き込むくらいならば、このまま座して死のう。
それが、己が人間である証だ。
ジュウザはそう思った。
だが、大男はきょとんとした後、豪快に笑った。
「わっはっはっはっは! なら問題ない!」
「なにっ!? 人が死ぬのだぞ!? 問題ないわけがあるか!」
「問題ないぞ!! 人は死なない!!」
「何故だ!!」
「俺がガードするからだ!! 俺はタンクだからな!」
「正気か……!」
「常に正気でなけりゃ、タンクは務まらんぞ。ニンジャ、やれ。やってくれ。お前さんの力が今、必要だ」
「お主……!!」
「マイティだ。お前さんの技が危険だと言うなら、俺に任せておけ。お前さんの技から、みんなを守る。お前さんは」
「……拙者の名は、ジュウザだ」
「おう、ジュウザ。全力で行け!!」
「信じるぞ、マイティ!!」
ジュウザの全身に覇気が漲る。
スタンピードの日より、力を失っていた四肢が、震える。
振るっても良いのか。
あの技を。
人生全てを掛けて、一族の血脈全てを掛けて編み出した、究極のクリティカルヒットを。
全力で。
放ってもいいのか。
「いいぞ!!」
マイティが吠えた。
その声に引き寄せられるように、インプの群れが集まる。
『なんですの!? そこ、何をしていますの!?』
デモネアが叫んだ。
「ジュウザ・オーンガワラ。参る」
ジュウザはジャケットを脱ぎ捨てた。
ネクタイを緩め、襟のボタンを外す。
次の瞬間。
ジュウザは跳躍していた。
喉からほとばしる、甲高い叫びは怪鳥音。
「キエエエエエエエエエエエエッ!!」
ジュウザの手が、足が、必殺の凶器となる。
飛んだ。
その場にいたインプ全ての首が、飛んだ……!!
そして背後で、盾が攻撃を受け止める感触がする。
「マイティ……!!」
振り返り、確認するまでもない。
力強い声が応じてきた。
「安心しろ。俺も、みんなも、ダメージはゼロだ!!」
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