上 下
5 / 108

第5話 依頼についての世の中の反応、そしてざまぁ

しおりを挟む
 ゴブリン退治の報酬を受け取った。
 どうやらこの仕事を完遂できたのは俺たち、エクセレントマイティだけだったらしい。
 案外受注した冒険者が少なかったんだな。

「一仕事終えて、ご感想は?」

「なんっていうかですね。思ったよりもハードだったなーって。冒険者の皆さんって、あんな大変な仕事をやってるんですねえ。ボクも頑張らないと!」

 ぐっと拳を握りしめるエクセレンなのだった。

「俺もな、かつての仲間たちと離れてみて、こんだけ仕事って大変なんだなあと思い知ったぜ。だが、今回はゴブリンだったからまだまだ楽だったな。お前さんも強くなっただろ」

「はい! ランクがですね、GからFに上がったんです!」

「やったなエクセレン!」

「はい! やりました!」

 イエーイ、とハイタッチする俺たち。
 冒険者パーティランクも、D+まで上がっている。
 ただ、問題はパーティの人数が二人である限り、上限はBランクということだ。

 コツコツやっていくしかあるまい。

 だが、祝勝会くらいは開いてもいいだろう。
 俺はエールを、エクセレンはミルクをジョッキで頼み、さらに骨付き肉などを焼いてもらって大いに盛り上がった。

「あいつら、Dランク程度の依頼をこなした程度で喜びやがってよ」

「ゴブリン退治だろ? だが、何組も依頼から戻ってこなかったらしいじゃねえか」

「最近の冒険者も質が下がったなあ」

 最近の冒険者についての話か。
 誰だって未熟なものだ。
 そいつをどう育てるかが大切だろう。

 最初から完成品を求めてどうする。
 エクセレンなど、角うさぎに追い詰められるほど弱かったのが、今ではゴブリンシャーマンの頭を棍棒でかち割るほどに成長したのだ。
 人は変わることができる!

 彼女が言っている勇者とやらにも、遠からず辿り着けるだろう。
 それがどんなものなのかはさっぱり分からないが。

 そう言えば、完成された冒険者パーティであった、古巣のフェイクブレイバーズはどうしていることだろう。
 きっと順風満帆だろうな。

「マイティ! このお肉凄いですよ! 筋に逆らって刃が入れられているので、簡単に噛み切れるんです!」

「ほんとか!! おほー! 美味いっ!!」



 一方その頃。
 フェイクブレイバーズは。

 山岳地帯にて、巨人族が暴れ始めたという連絡を受け、巨人討伐を行っていた。

「オーガにトロル、ジャイアント……。あれだけ多種の巨人族が同時に行動しているとは……」

 パーティリーダーのフェイクは、向かってくる巨人たちを見て唸った。

「種族も違う。当然、生活圏も異なり、性格も違う。そんな巨人族が同時に行動するのはおかしいぜ。だがっ!」

 シーフのローグが駆け出す。
 走りながらスキルによって姿を消し、どんな敵の背後も取ることができる。
 それが彼の身につけた暗殺スキルだった。

「後ろががら空きだ!」

 手近なオーガの後頭部にショートソードを走らせた。
 その一撃は、今までに知るオーガであれば確実に死へと至らしめただろう。
 しかし、ローグの手に伝わってきたのは、異様な感触だった。

「刃が通らねえ!?」

 尋常ならざる分厚い皮膚で攻撃を凌いだオーガは、驚くほどの反応速度で振り返った。

「ウガアアアア!!」

 吠えながら、手にした棍棒を振り回す。

「くっそ! こいつ!」

 ローグは撤退する他ない。

「おいおいローグ、油断したんじゃないのか? そらっ、これでも喰らいな!!」

 レンジャーのワイルドが、次々に矢を放つ。
 連続射撃が巨人の群れに降り注いだ。
 だが、矢が突き刺さろうとも、巨人たちの動きは鈍らない。

 目ばかりを輝かせて、進撃してくるのみだ。

「止まらない……!? なんだ、あのタフネスは!」

「ああ、もう、みんな手を抜きすぎ! 速攻で仕留めるのがあたしらのやり方でしょ! そおら! かの地に起こせ、炎の嵐! フレイムバースト!!」

 メイジのマジカが魔法を放った。
 炎が巨大な螺旋を描いて巻き起こり、さしもの巨人たちもこれには怯む。

「今です! 神よ、裁きの雷槌を降らせ給え……ホーリーサンダー!!」

 プリーストのプレイスが、空から雷を呼んだ。
 降り注ぐ稲妻。

「では、俺が仕留めに行く!」

 フェイクが駆け出した。
 立て続けの魔法で浮足立った巨人たち。

 それを、鍛え抜かれた剣の技で屠るためだ。
 一撃がオーガの首を捉え、一瞬の抵抗の後、跳ね飛ばした。

「むっ、少々硬いな……。だが! こんなもの!」

 トロルを、ジャイアントを、次々に切り刻んでいく。

「振り切ってしまえば大した問題はない! どうだ! 攻め続けていれば、守りなど必要ない! これが……フェイクブレイバーズの答えだあっ!!」

 ストームスラッシュと言う、フェイクの剣技である。
 巻き込まれた敵は、刃の嵐によってバラバラに切り裂かれる。

「これで……最後だ!!」

 巨人たちの最後尾にいた、一際大きな影に、フェイクは斬りかかった。
 フェイクは、あらゆる敵を、一刀で斬り伏せてきた剣士だ。
 大陸最強であろうという自負もある。

 だから、そこに驕りがあった。
 様子が違う巨人たち。
 攻撃されても、ひたすら前に進み続ける姿。

 そこに疑問を感じることができなかったのである。

 それは……追われていたのだ。

『ほう』

 ストームスラッシュが、止まった。

「なっ……!?」

『魔王様が降臨なさる前に、先遣として来た甲斐が少しはあったか』

「なんだ……お前は……!」

 フェイクが見上げる先に、その巨人の顔があった。
 明るい黄土色の肌をして、八本の腕を生やしている。

『魔将、ティターンだ。以後、お見知りおきをな。この星の戦士よ』

 ティターンと名乗った巨人は、歯を見せて笑った。
 そして、無造作に腕を振りかぶる。

「しまっ」

 次の瞬間、凄まじい勢いで放たれた拳がフェイクの胴を打った。

「ウグワーッ!?」

 吹き飛ばされるフェイク。

『そら、そら、そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!!』

 浮かんだフェイクを追って、ティターンが大地を走る。
 そして八本の腕が、嵐のような打撃を連続で放つ。

「ウグワー! ウグワー! ウグワー!?」

 空中で何度も跳ね飛ばされ、ついにフェイクは意識を失った。

「ま、まずい! 神よ! あなたの御下に我らを導き給え!! ホーリーエスケープ!」

 フェイクブレイバーズが、光りに包まれる。
 彼らは奇跡の力で、戦場を離脱したのである。

 これを見送りながら、ティターンはふん、と鼻を鳴らした。

『まだ武器も抜いていないというのにな。この星の戦士は、ひどく軟弱なようだ。どこかに俺の攻撃を受け止められる者がいないものかな。いるわけがないか! わっはっはっはっは!!』

 笑うティターンを、巨人たちが恐ろしいものを見る目をして取り巻いている。

『魔王様! これであれば、御身が降臨される事を急ぐ必要もありますまい! あなたがいらっしゃる前に、このティターンが大陸まるごと平らげて見せましょうぞ!!』

 天に向かって、ティターンが叫んだ。




「はっくしょん!!」

「わっ、お肉食べてる時にくしゃみしないでください、マイティ!」

「いや、なんかな。俺のニーズがあるような事を誰か呟いたのかな……」

「マイティならボクが必要としてるじゃないですか」

「わはは! そうだったな! 嬉しいこと言ってくれるぜ!」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。 ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか? *小説家になろう様にも掲載されております。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

北の魔女

覧都
ファンタジー
日本の、のどかな町に住む、アイとまなは親友である。 ある日まなが異世界へと転移してしまう。 転移した先では、まなは世界の北半分を支配する北の魔女だった。 まなは、その転移先で親友にそっくりな、あいという少女に出会い……

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...