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第二部 新王の後見人編
熟練度カンストの合流者2
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ソハン亭に戻っての作戦会議である。
うちの仲間が二人増えているのだが、使用人たちは誰何してこない。
だが、アンブロシアの姿にだけは驚きを隠せないようだ。
金髪碧眼というのもあるだろうが、精霊の巫女というやつは真に覚醒すると、髪の光沢や瞳の輝きがそれぞれ対応する属性のものになる。
アンブロシアは、屋内であっても金の髪に青い波がたゆたうような光沢がやどり、常に動き続けている。
サマラもまた、赤毛が燃え上がるように光り続けているのだが、こっちは肌色が褐色だし、自分たちに近いからアウシュニヤ人たちはそこまで気にしないらしい。
よしよし。
アンブロシアのインパクトが大きかったせいか、アムリタがいなかい事には気づかれていないようだ。
まずは俺たちの部屋に篭って作戦会議と行く。
「追跡はどうだアンブロシア?」
「途中途中、瓶とか桶を経由して水を補給してるからねえ。ちょっと見失いやしないけど、ちょっと時間がかかりそうだ。それから、もうあたしと水は繋がってないから、精霊が戻ってくるまでは状況は分からないよ」
「それなりに制限があるものなんだな」
「そりゃあそうさ。精霊を遠く離れて動かす事自体が、本来なら異常なことをしてるんだよ?」
そういうものらしい。
じっとローザを見る。
「私のシャドウジャックは特別性だ。自意識を持っているから、複雑な命令もこなすことはできるが、そのぶん使用回数が限られてな。……なに? 意思疎通? そんなもの、口頭で報告させれば良かろう」
つまり、外に出した精霊たちが戻ってくるまでは、情報は入ってこないってことか。
「しかし、呆れるほど豪勢な館だねえ……。こりゃあ、王宮よりもずっと華美に見えるんだけど、よくこんなものをあの王族が許してるもんさね」
「はい。ソハンはこの国の経済を取り仕切る大商人でもありますから。本来なら役職を持っているべきなのですが、ウーディル教では厳密に、生まれによる地位が設けられていますから」
「地位?」
俺は首を傾げる。
なんとなく察しはつくが、どういうものなのか聞いておこう。
「はい。一位は神を奉じる僧侶、二位は王族。三位は戦士、四位は只人、五位は奴隷となっています」
「面倒な話だな。只人の嫁を王族がもらっていいものなのか?」
「ソハンは彼の代で大きな功績を残しましたし、神殿へ大規模な寄進を行いましたから、じきに第三位を授かることになります。一位の差であれば、妻を娶ることもできるのです」
宗教上で決められている地位も、金次第で動くわけな。
「で、スラッジとしてはアムリタのどこがいいわけ?」
「えっ、そ、それを聞くんですか」
「ほう……ユーマも色を知る年頃か」
「いえ、ユーマ様しょっちゅう、アタシの胸とかお尻とか凝視してるし、すごく興味がある人だってことは確かだよ?」
「だよねえ。ユーマは事故を装って、あたしの胸に肩をぶつけてきたりするし」
「や、やめるのですお前たち」
女子たちの攻撃、俺はたじたじである。
スラッジとローザが目を細めて俺を見ている。
「ほーん……。私には何もして来ないけどな……。あれか。胸か。胸が大事なのか……」
「ローザ、落ち着け……! そして俺の胸ぐらを掴むのをやめてください」
「ユーマは盛んなんですね……」
「ヌウー」
一気に俺が窮地に陥ってしまった。
なんか女子三名にベッド側に追い詰められて、あれれ? これってサマラの他に二人増えたっていうのに、追い詰められっぷりが上昇してませんかねえ……。
「あ、あの皆さん。その、アムリタを助ける話が……」
「おお、そう! そうだよ!」
俺は強引に話題を変えた。
「奴らの居所を探さないといかんな。精霊が戻ってくるまでは作戦タイムだが、あと二人いてな」
「あと二人、ですか」
「うむ。凄いぞ」
俺の言葉に、リュカをリスペクトしているサマラが腕組みをして深く、うんうんと頷いている。
あっ、腕組みした上に胸が乗っている。……やっぱりでかいなあ。
あっ、アンブロシアが対抗して同じポーズを。ぐぬぬ、背丈では劣るが、胸元のボリュームはいい勝負だ。
あっ、ローザはやらなくていいぞ。
「きちゃまーっ!!」
「うわーっ、ローザやめろーっ」
俺がローザの大攻勢に遭う。
そうしていると、この無駄にでかい部屋の窓際……というか、大開放されたベランダ際に飾られた観葉植物らしきものがガサガサと揺れた。
この観葉植物が、一本や二本という次元ではないのだ。
巨大な鉢に、小さな森でも作ろうというのか、葉色も鮮やかな南国の植物が何本も植えられている。
それらが、一斉に揺れたのだ。
これは、もしや……。
次の瞬間である。
「……っと!! やりました! パスが繋がりましたよ、リュカさん!」
転がり出てきたのは、草色の衣装に身を包んだ、トンガリ耳と明るい栗色の髪をした娘だ。
これは俗にエルフと呼ばれる人ですなあ。
そして俺の仲間でもある。
「よう、アリエル」
「あら、ユーマさんお久しぶりです! ……ローザさんに押し倒されているようですけど、衆人環視の前で、その、いたすというのは私は感心しません……」
「ちがーう! っていうか、それをパスにしてやってこれるのか」
「はい。今まで山岳地帯にいたんですけど、そこにもエルフがいてですね。新しい技法を教わりました。あれ? なかなか来ないな……」
アリエルは立ち上がると、観葉植物の群れに頭を突っ込んだ。
「おーい、リュカさーん? リュカさ~ん」
反応が無いようだ。
俺はローザを上に乗せたまま、そこまで移動してきた。
ローザを御者にしたお馬さんの如しである。なんでそんなに楽しげに鼻歌など歌うのかローザ。
「リュカも来てるのか?」
「もちろんですよ。彼女がいなければ何も始まらないじゃないですか。リュカさーん! こっちこっち! あー、このパス、ちょっと中身が入り組んでるんだなあ」
アリエルが腕を突っ込んで、何やらかき回している。
明らかにそこが異空間につながっているようで、観葉植物の向こう側に、彼女の腕は出ていない。
「あの、ユーマ、これは一体……!」
「うむ、うちの仲間はな。みんな凄いんだ」
呆然とするスラッジの眼前で、アリエルが弾かれたように出てきて尻もちをついた。
「来ますよ、リュカさんが!」
「お!」
俺はローザをおんぶの体勢に切り替えて立ち上がり、観葉植物の前に立った。
すると、
「ユーマー!」
ぴょーんっと、すごい勢いでパスを通り抜けてくる娘がいるではないか。
銀色の髪は七色の光沢を放ち、大きな瞳も虹色に輝く。
誰よりも小柄だが、四肢にパワーが溢れるこの少女こそが、
「リュカ!」
俺は彼女をキャッチした。
後ろにローザ、前にリュカ。
前後で重量バランスが取れているが、合わせてそれなりの重さである。
重いっ!
「おう、リュカ。これこの通り、ユーマは無事だぞ。サマラが真っ先に合流し、大きな炎を打ち上げてくれたからな、それを目印に私たちが集まったということだ。シャドウジャックの奴はそこにいるか?」
「うん、シャドウジャックさん来てるよー。でもほんと、ユーマが無事でよかった! 流されたときはもう心配で心配で! サマラもありがとうね!」
「あっ、はい!」
サマラ、ちょっとバツが悪そうである。
リュカのいない間に俺の貞操を狙っていたからな!
ともあれ、これでうちの陣営は勢揃いである。
炎の巫女にして、精霊王アータルを使役する巫女サマラ。もと遊牧民族だから、ステップや砂漠での生存には実に詳しい。
水の巫女にして、精霊王オケアノスを使役する巫女アンブロシア。船乗りとしての経験もあるから海では頼りになるぞ。
土の巫女にして、内政能力に長けた巫女ローザ。フルネームはローザリンデ。元エルフェバインのヴァイデンフェラー辺境伯で、執政者として長く勤めてきた経験から、交渉、管理、語学、軍学とさまざまな分野に一家言ある。
ハイエルフにして、風と植物の魔法を操るアリエル。元々はエルフ一族が俺と同盟を結ぶ際、人質として贈られた娘だったが、もうすっかり仲良しだ。この一行で一番の常識人だ。
最後は、風の巫女リュカ。
俺が一番最初に出会い、全ての始まりになった娘。
個人的に、俺は彼女を正妻って気分でいる。
この中で一番年下なんだけどね。
そろそろ十六歳になったはずだ。
「はえー……。あの……全員女性なんですねえ……」
「そりゃそうよ。ほとんどが巫女なんだもの。……ああ、巫女ってのはな、ウーディル教で言う僧侶みたいなもんだ」
「ええっ!? それじゃあ、すごい人達なんじゃないですか! そんな方々と一緒に旅をしちゃってていいんですかユーマ!?」
「西の方では色々あってな。おっ、シャドウジャック戻ってきた」
黒い影みたいなのが、植物の隙間からヒョイッと出てきて、俺の後ろに回り込んだ。
ローザの脇から手を差し入れて、俺からスッと下ろす。
おお、気が利くじゃないか、こいつ。
『お館様、お二人を連れてまいりました。では、私はまた明日』
報告の後、彼はスッとローザの影に消えていく。
「うむ、ご苦労。さあユーマ。これなら動けるのではないか?」
「ああ、そうだな」
俺は前にぶら下がってるリュカを、お姫様抱っこの形にした。
「きゃっ♪」
リュカが嬉しそうな声をあげる。
サマラとアンブロシアが、いいなーって顔をする。
だめだよ、お前たち色々付くもの付いてるから重いもん。
「アンブロシア、こっちから水の精霊を迎えに行くぞ。スラッジ、今度はこちらから反撃だ。ローヒト王子に一発ぶちかますぞ」
「! はいっ!」
スラッジが勢い良く立ち上がる。
「なんだか、また込み入ったことに首を突っ込んでますね? ユーマさん、たった3日くらいでよくぞ渦中に巻き込まれるものです……」
ため息を吐きながらも付き合ってくれるのが、アリエルのいいところだ。
「そうだねえ。ユーマは仲良くなった人を放って置けないもん。ユーマがしたいって言うなら、私も手伝うからね! 行こう!」
リュカの一声で、うちの嫁立ちは「おーっ」と声を合わせた。
うーむ、溢れ出るカリスマ。
俺ではこうは行かんな。
というわけで、反撃を開始するのである。
うちの仲間が二人増えているのだが、使用人たちは誰何してこない。
だが、アンブロシアの姿にだけは驚きを隠せないようだ。
金髪碧眼というのもあるだろうが、精霊の巫女というやつは真に覚醒すると、髪の光沢や瞳の輝きがそれぞれ対応する属性のものになる。
アンブロシアは、屋内であっても金の髪に青い波がたゆたうような光沢がやどり、常に動き続けている。
サマラもまた、赤毛が燃え上がるように光り続けているのだが、こっちは肌色が褐色だし、自分たちに近いからアウシュニヤ人たちはそこまで気にしないらしい。
よしよし。
アンブロシアのインパクトが大きかったせいか、アムリタがいなかい事には気づかれていないようだ。
まずは俺たちの部屋に篭って作戦会議と行く。
「追跡はどうだアンブロシア?」
「途中途中、瓶とか桶を経由して水を補給してるからねえ。ちょっと見失いやしないけど、ちょっと時間がかかりそうだ。それから、もうあたしと水は繋がってないから、精霊が戻ってくるまでは状況は分からないよ」
「それなりに制限があるものなんだな」
「そりゃあそうさ。精霊を遠く離れて動かす事自体が、本来なら異常なことをしてるんだよ?」
そういうものらしい。
じっとローザを見る。
「私のシャドウジャックは特別性だ。自意識を持っているから、複雑な命令もこなすことはできるが、そのぶん使用回数が限られてな。……なに? 意思疎通? そんなもの、口頭で報告させれば良かろう」
つまり、外に出した精霊たちが戻ってくるまでは、情報は入ってこないってことか。
「しかし、呆れるほど豪勢な館だねえ……。こりゃあ、王宮よりもずっと華美に見えるんだけど、よくこんなものをあの王族が許してるもんさね」
「はい。ソハンはこの国の経済を取り仕切る大商人でもありますから。本来なら役職を持っているべきなのですが、ウーディル教では厳密に、生まれによる地位が設けられていますから」
「地位?」
俺は首を傾げる。
なんとなく察しはつくが、どういうものなのか聞いておこう。
「はい。一位は神を奉じる僧侶、二位は王族。三位は戦士、四位は只人、五位は奴隷となっています」
「面倒な話だな。只人の嫁を王族がもらっていいものなのか?」
「ソハンは彼の代で大きな功績を残しましたし、神殿へ大規模な寄進を行いましたから、じきに第三位を授かることになります。一位の差であれば、妻を娶ることもできるのです」
宗教上で決められている地位も、金次第で動くわけな。
「で、スラッジとしてはアムリタのどこがいいわけ?」
「えっ、そ、それを聞くんですか」
「ほう……ユーマも色を知る年頃か」
「いえ、ユーマ様しょっちゅう、アタシの胸とかお尻とか凝視してるし、すごく興味がある人だってことは確かだよ?」
「だよねえ。ユーマは事故を装って、あたしの胸に肩をぶつけてきたりするし」
「や、やめるのですお前たち」
女子たちの攻撃、俺はたじたじである。
スラッジとローザが目を細めて俺を見ている。
「ほーん……。私には何もして来ないけどな……。あれか。胸か。胸が大事なのか……」
「ローザ、落ち着け……! そして俺の胸ぐらを掴むのをやめてください」
「ユーマは盛んなんですね……」
「ヌウー」
一気に俺が窮地に陥ってしまった。
なんか女子三名にベッド側に追い詰められて、あれれ? これってサマラの他に二人増えたっていうのに、追い詰められっぷりが上昇してませんかねえ……。
「あ、あの皆さん。その、アムリタを助ける話が……」
「おお、そう! そうだよ!」
俺は強引に話題を変えた。
「奴らの居所を探さないといかんな。精霊が戻ってくるまでは作戦タイムだが、あと二人いてな」
「あと二人、ですか」
「うむ。凄いぞ」
俺の言葉に、リュカをリスペクトしているサマラが腕組みをして深く、うんうんと頷いている。
あっ、腕組みした上に胸が乗っている。……やっぱりでかいなあ。
あっ、アンブロシアが対抗して同じポーズを。ぐぬぬ、背丈では劣るが、胸元のボリュームはいい勝負だ。
あっ、ローザはやらなくていいぞ。
「きちゃまーっ!!」
「うわーっ、ローザやめろーっ」
俺がローザの大攻勢に遭う。
そうしていると、この無駄にでかい部屋の窓際……というか、大開放されたベランダ際に飾られた観葉植物らしきものがガサガサと揺れた。
この観葉植物が、一本や二本という次元ではないのだ。
巨大な鉢に、小さな森でも作ろうというのか、葉色も鮮やかな南国の植物が何本も植えられている。
それらが、一斉に揺れたのだ。
これは、もしや……。
次の瞬間である。
「……っと!! やりました! パスが繋がりましたよ、リュカさん!」
転がり出てきたのは、草色の衣装に身を包んだ、トンガリ耳と明るい栗色の髪をした娘だ。
これは俗にエルフと呼ばれる人ですなあ。
そして俺の仲間でもある。
「よう、アリエル」
「あら、ユーマさんお久しぶりです! ……ローザさんに押し倒されているようですけど、衆人環視の前で、その、いたすというのは私は感心しません……」
「ちがーう! っていうか、それをパスにしてやってこれるのか」
「はい。今まで山岳地帯にいたんですけど、そこにもエルフがいてですね。新しい技法を教わりました。あれ? なかなか来ないな……」
アリエルは立ち上がると、観葉植物の群れに頭を突っ込んだ。
「おーい、リュカさーん? リュカさ~ん」
反応が無いようだ。
俺はローザを上に乗せたまま、そこまで移動してきた。
ローザを御者にしたお馬さんの如しである。なんでそんなに楽しげに鼻歌など歌うのかローザ。
「リュカも来てるのか?」
「もちろんですよ。彼女がいなければ何も始まらないじゃないですか。リュカさーん! こっちこっち! あー、このパス、ちょっと中身が入り組んでるんだなあ」
アリエルが腕を突っ込んで、何やらかき回している。
明らかにそこが異空間につながっているようで、観葉植物の向こう側に、彼女の腕は出ていない。
「あの、ユーマ、これは一体……!」
「うむ、うちの仲間はな。みんな凄いんだ」
呆然とするスラッジの眼前で、アリエルが弾かれたように出てきて尻もちをついた。
「来ますよ、リュカさんが!」
「お!」
俺はローザをおんぶの体勢に切り替えて立ち上がり、観葉植物の前に立った。
すると、
「ユーマー!」
ぴょーんっと、すごい勢いでパスを通り抜けてくる娘がいるではないか。
銀色の髪は七色の光沢を放ち、大きな瞳も虹色に輝く。
誰よりも小柄だが、四肢にパワーが溢れるこの少女こそが、
「リュカ!」
俺は彼女をキャッチした。
後ろにローザ、前にリュカ。
前後で重量バランスが取れているが、合わせてそれなりの重さである。
重いっ!
「おう、リュカ。これこの通り、ユーマは無事だぞ。サマラが真っ先に合流し、大きな炎を打ち上げてくれたからな、それを目印に私たちが集まったということだ。シャドウジャックの奴はそこにいるか?」
「うん、シャドウジャックさん来てるよー。でもほんと、ユーマが無事でよかった! 流されたときはもう心配で心配で! サマラもありがとうね!」
「あっ、はい!」
サマラ、ちょっとバツが悪そうである。
リュカのいない間に俺の貞操を狙っていたからな!
ともあれ、これでうちの陣営は勢揃いである。
炎の巫女にして、精霊王アータルを使役する巫女サマラ。もと遊牧民族だから、ステップや砂漠での生存には実に詳しい。
水の巫女にして、精霊王オケアノスを使役する巫女アンブロシア。船乗りとしての経験もあるから海では頼りになるぞ。
土の巫女にして、内政能力に長けた巫女ローザ。フルネームはローザリンデ。元エルフェバインのヴァイデンフェラー辺境伯で、執政者として長く勤めてきた経験から、交渉、管理、語学、軍学とさまざまな分野に一家言ある。
ハイエルフにして、風と植物の魔法を操るアリエル。元々はエルフ一族が俺と同盟を結ぶ際、人質として贈られた娘だったが、もうすっかり仲良しだ。この一行で一番の常識人だ。
最後は、風の巫女リュカ。
俺が一番最初に出会い、全ての始まりになった娘。
個人的に、俺は彼女を正妻って気分でいる。
この中で一番年下なんだけどね。
そろそろ十六歳になったはずだ。
「はえー……。あの……全員女性なんですねえ……」
「そりゃそうよ。ほとんどが巫女なんだもの。……ああ、巫女ってのはな、ウーディル教で言う僧侶みたいなもんだ」
「ええっ!? それじゃあ、すごい人達なんじゃないですか! そんな方々と一緒に旅をしちゃってていいんですかユーマ!?」
「西の方では色々あってな。おっ、シャドウジャック戻ってきた」
黒い影みたいなのが、植物の隙間からヒョイッと出てきて、俺の後ろに回り込んだ。
ローザの脇から手を差し入れて、俺からスッと下ろす。
おお、気が利くじゃないか、こいつ。
『お館様、お二人を連れてまいりました。では、私はまた明日』
報告の後、彼はスッとローザの影に消えていく。
「うむ、ご苦労。さあユーマ。これなら動けるのではないか?」
「ああ、そうだな」
俺は前にぶら下がってるリュカを、お姫様抱っこの形にした。
「きゃっ♪」
リュカが嬉しそうな声をあげる。
サマラとアンブロシアが、いいなーって顔をする。
だめだよ、お前たち色々付くもの付いてるから重いもん。
「アンブロシア、こっちから水の精霊を迎えに行くぞ。スラッジ、今度はこちらから反撃だ。ローヒト王子に一発ぶちかますぞ」
「! はいっ!」
スラッジが勢い良く立ち上がる。
「なんだか、また込み入ったことに首を突っ込んでますね? ユーマさん、たった3日くらいでよくぞ渦中に巻き込まれるものです……」
ため息を吐きながらも付き合ってくれるのが、アリエルのいいところだ。
「そうだねえ。ユーマは仲良くなった人を放って置けないもん。ユーマがしたいって言うなら、私も手伝うからね! 行こう!」
リュカの一声で、うちの嫁立ちは「おーっ」と声を合わせた。
うーむ、溢れ出るカリスマ。
俺ではこうは行かんな。
というわけで、反撃を開始するのである。
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