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王国の反逆者編
熟練度カンストの合流者
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地下水脈を、物凄い速度で下っていく。
こうしている間にも、並行して泳いでいたマーメイドが、何か合図しあって離れていく。
「あれ、多分目的たっせい! って伝えるんだと思うよ」
「ああ、そうか」
リュカの言葉に納得する。
地下から運河を抜けて河に出て、アンブロシアなりに報告するのだろう。
地上ではそろそろ、ザクサーンの軍勢も到着しているかもしれない。
うちの軍勢にいらぬ被害を出さないうちに、撤退するべきであろう。
一応、あの火竜を呼べばどんな相手だって一掃出来そうな気がする。だが同時に街も王国も一掃されてしまいそうなのである。これはよろしくない。
「ひとまず、俺たちが脱出しないと、こんな流れの中じゃ会話も出来ないよ」
「そうだねえ。ユーマが色々指示出して、みんな上手く行ってたもんね。サマラとアンブロシア元気かなー」
俺とリュカが会話できている理由は、マーメイドが作った泡の中で二人で密着しているからだ。
なるべく表面積を小さくして泡に包んだほうが、魔力の効率が良いとかで、こうして大変むらむら来る状況になっておる。
そして、何故か二人とも口数が多くなるのだ。
「ねえねえ、そう言えばへんきょうはく……じゃなくて、ローザさんも無事で良かったけど、きっと痩せてるとお腹すいてるよね? 私、私ね色々食べたいものがあって、えっと、えっと」
「うむ、うむうむうむ」
共にずっと喋り続けるのだが、互いに割りと無趣味で、会話をたくさんするような性格ではない。
すぐに話題が尽きた。
「…………」
「…………」
「…………!」
「…………!」
なんだ、なんだこの気恥ずかしい時間は。
地下水脈を運ばれている間は、俺たちに出来ることは無い。
ほんの数十分程度なのだが、この時間が無限にも感じるほど長い。
おかしい。
二月前までは、ここまで意識し合うほどでも無かったと言うのに。
何故、こうも今は二人っきりでいるだけで胸が苦しくなってくるのだ。
おおお、いかんいかん。
これはピンチぞ。
俺、この世界に来てから二回目の大ピンチ。
一回目は生水を飲んでお腹を下したあたり。あれは生まれてきたことを後悔するほどの危機的状況だった。きっと、生牡蠣に当たってノロになるのはあんな感じなのだろう……。
で、今回はだ。
いやあ……。
禁欲生活が長すぎましてねえ。
「ゆ、ゆ、ユーマ」
「な、な、なんですかな」
「そ、その、あた、あた、あたってる」
「アッ、こ、こいつは失敬」
なんとかしてくれえ!!
……と思ったら到着である。
フウ、助かった……!
俺の威厳は守られた。あと、リュカの貞操も。正直、俺もこういう状況が長いと我慢できる自信はない。
さて、目的地下方に到着したらしい泡が、一瞬水中に没したかと思うと、みるみるすごい速度で浮上していく。
それは、地下水脈の水面よりも遥かに高いところを目指しており、バルゴーンのぼんやりした明かりしかない空間から、何か狭い隙間を抜けた瞬間だ。
視界一面に揺らぐ光が広がり、気がつくとそこは王都から流れ出した河の下流だった。
やはり、太陽の光があるというのはいいな。
だが、ちょっと感激はしたものの、どうもこの河、変な色の水も流ているような。
あっ。生活排水が流れ込んでいるのか! ばっちいな!
「すぐに上がっちゃいますから」
マーメイドの言葉通り、泡は河から飛び上がって地上へ。
そこで砕け散って、俺たちは晴れて土の上に立った状態になった。
「みんな、無事か?」
「おう、こちらは何ともありませんぞ!」
「いや、幻想的な体験でしたな!」
「お館様はご無事か!」
「ああ、私は問題ない」
点呼に対し、めいめいに答えてくる。
フランチェスコが放った追い打ちは不発だったようだ。
誰一人、欠けてはいない。
「じゃあ、ここから他のみんなを呼ぶね。えーと、どこにいるかな……」
リュカが視線を巡らしている。
すると、頭上を旋回している亜竜に気づいたようだ。
風を使って、亜竜に呼びかけ始める。
亜竜はリュカの言葉を受けて飛び去り、すぐにアリエルからの返信がやって来た。
『ご無事だったんですね! よく生き残ってますね!? えっ、欠員一人もいない? おかしいでしょあの規模の事をやらかしておいて! あっ、こっちもマーメイドさんから解散の指示を受けて、撤退中です』
アリエルが会話と同時に突っ込んでくる。とりあえず、うちの軍勢は上手いこと連携を取って動いているようでよかった。
彼女たちは撤退がてら、こちらに立ち寄って俺たちを回収していくそうである。
「ザクサーンはやり過ごせたのかね。正直、俺の作戦ってガバガバだからな」
「ユーマ殿の策は、相手の固定観念を逆手に取り、常に虚を衝き続けるというものですね。慣れて対策されてしまえば弱いですが、慣れる前に恐るべき早さで攻め立てる所が恐ろしい」
オーベルト評して曰く。
「ユーマ殿、あなたは何処かで、軍略について学んだことがお有りでしょう」
「ま、まあな」
ゲームでな。
今回の作戦も、事前に上空から亜竜で見渡した風景を、ゲームの盤面に見立てて立案したものだ。
それが成立するのも、巫女のみんなの便利な能力があるお陰である。
それに、所詮はゲームで短時間の作戦行動を学んだ程度だ。長期に渡る戦いは、ちょっと出来る気がしない。
他愛もない会話をしつつ、俺たちはのんびりとみんなで並んで座り込む。
一時間ほど過ぎた頃であろうか。
地平線の果てから、ぞろぞろとうちの軍勢がやってきた。
戦闘は、チェア君とそれに乗ったサマラ、アンブロシア、アリエルの三名である。
「ユーマ様! リュカ様も無事でしたかー! あっ、そちらが?」
「おお、その娘が辺境伯かい? 見事やってのけたねえ。まさか一国に喧嘩を売って勝つとは、たまげたもんだよ!」
「ほう……。リュカ以外にも、巫女が集まっていたのだな。火と、水か? 私を含めて、四人の巫女全てが揃うと言う事か」
ローザが興味深げである。
既にダミアンからは離れて、自分の足で立つことが出来るようになっている。
彼女曰く、連続して魔力を行使する状況でも無ければ、大地からじっくりと魔力を吸収し、回復することが出来るのだとか。
つまり、ローザは大変タフでもあるという事だ。
「この間の戦争で、何も魔法を使わなかったのは?」
「あれは、私が辺境伯であった頃だからだ。巫女ではない。特例として、ケラミスの精製のみを行っていたがな。それと……私は巫女としての力の多くを分離して、仕舞ってあったのだ」
「そいつが土の祭器ってことか」
「そのようなものだ。言うなれば、辺境伯領そのものが私の祭器になっていた。だが、かの地を離れるに当たって、私は領より祭器としての力を返却させたのだ」
サマラとアンブロシアがやって来た。
リュカも立ち上がり、これにて四人の巫女が顔合わせとなる。
ちなみに背丈は、リュカ、ローザ、アンブロシア、サマラの順番で高くなる。
見た目の肉体的成熟度合いもサマラを筆頭に、リュカまで。いや、アンブロシアもなかなかいい体をしてるぞ。ローザは全体がスレンダーだな。
リュカは尻。
「ユーマ、また何かやらしーこと考えてる?」
「何故俺の考えが読めるんだ……」
「ユーマ様、我ら種族の長も揃いましたゾ」
リュカに思考を読まれ、動揺する俺に、シュルシュルと息が交じる声が掛かった。
リザードマンの長である。
獣人、遊牧民、亜竜、ゴブリン、ドワーフ。マーメイドとマーマンは一緒にいるから、これで大体全員。
「あ、エルフの里も、今回の成果を見てユーマさんの支持に回るそうです。だがドワーフ、お前らはダメだ、との事です」
アリエルの報告に、髭もじゃドワーフどもがいきり立つ。
「おう、上等じゃ」
「いつでも来い、魔法なんて捨ててかかってこい」
「わしら勝負を受けて立つぞい」
「風竜だって殴ってみせるぞ」
「だが水魔法だけは勘弁してくれ」
賑やかだなあ。
「ユーマ、これが貴様が作った軍勢か。私を救うために、三つの属性を一つにまとめあげるとは……。比肩しうる軍隊は、恐らくこの地上にあるまい。だが、彼らを以て、一体何を成そうとしている?」
「うーむ……。正直、目的はもう果たしたんだ」
ローザの言葉に、俺はちょっと考え込んだ。
別に俺としては、権力に興味がない。だから、この軍勢をここで解散してしまってもいいのだ。
しかしそれでは、ここまで付いてきてくれたこいつらに悪いような気がしてくる。
「ユーマ様、一ついいですか」
遊牧民が挙手した。
「最初は私どもも、たいへん驚いたんですが。まあ付き合ってみると他教の人間よりも、よほど話が通じる連中で。そりゃあちょっと頭がおかしいところもありますが。で、ですね。私どものような、大国に虐げられる少数派は何処にでもいると思うんです。この集まり、そんな、弱い者たちの受け皿にはなりませんかね」
「まつろわぬ民を迎え入れる場所、か。確かに、それならば私の民も安心できよう。どうだ、ユーマ?」
「なるほど。それ、いいな。その方向でやっていってみようか。ただ、俺だけだとやれる事は結構少ない。何せ人付き合いとか苦手だからな……。だから」
俺の視線の先には、四人の巫女がいる。
「ええ、お供します! アタシ、またお役に立ちますからね!」
「あたしも焼きが回ったねえ。あんたの頼みなら、聞いてやらなきゃって気になってるよ。大船に乗ったつもりでいな!」
「私は救われた恩義がある。私だけでなく、民も、我が騎士たちもな。貴族ではない、最早ただのローザリンデだが、非才な我が手で構わぬならば貴様の計画に尽力することを約束しよう」
最後に、虹色の髪の少女。
「うん? 聞かなくても分かるでしょ! ほらほらユーマ! これから忙しくなるよー!」
ああ、全くだ。
まずはどんな事をして行こう。
いつも通り、俺の隣に収まる温もりを感じながら、俺は思考を巡らせていく……。
――王国の反逆者編・了 ……東征の魔剣士編へ
こうしている間にも、並行して泳いでいたマーメイドが、何か合図しあって離れていく。
「あれ、多分目的たっせい! って伝えるんだと思うよ」
「ああ、そうか」
リュカの言葉に納得する。
地下から運河を抜けて河に出て、アンブロシアなりに報告するのだろう。
地上ではそろそろ、ザクサーンの軍勢も到着しているかもしれない。
うちの軍勢にいらぬ被害を出さないうちに、撤退するべきであろう。
一応、あの火竜を呼べばどんな相手だって一掃出来そうな気がする。だが同時に街も王国も一掃されてしまいそうなのである。これはよろしくない。
「ひとまず、俺たちが脱出しないと、こんな流れの中じゃ会話も出来ないよ」
「そうだねえ。ユーマが色々指示出して、みんな上手く行ってたもんね。サマラとアンブロシア元気かなー」
俺とリュカが会話できている理由は、マーメイドが作った泡の中で二人で密着しているからだ。
なるべく表面積を小さくして泡に包んだほうが、魔力の効率が良いとかで、こうして大変むらむら来る状況になっておる。
そして、何故か二人とも口数が多くなるのだ。
「ねえねえ、そう言えばへんきょうはく……じゃなくて、ローザさんも無事で良かったけど、きっと痩せてるとお腹すいてるよね? 私、私ね色々食べたいものがあって、えっと、えっと」
「うむ、うむうむうむ」
共にずっと喋り続けるのだが、互いに割りと無趣味で、会話をたくさんするような性格ではない。
すぐに話題が尽きた。
「…………」
「…………」
「…………!」
「…………!」
なんだ、なんだこの気恥ずかしい時間は。
地下水脈を運ばれている間は、俺たちに出来ることは無い。
ほんの数十分程度なのだが、この時間が無限にも感じるほど長い。
おかしい。
二月前までは、ここまで意識し合うほどでも無かったと言うのに。
何故、こうも今は二人っきりでいるだけで胸が苦しくなってくるのだ。
おおお、いかんいかん。
これはピンチぞ。
俺、この世界に来てから二回目の大ピンチ。
一回目は生水を飲んでお腹を下したあたり。あれは生まれてきたことを後悔するほどの危機的状況だった。きっと、生牡蠣に当たってノロになるのはあんな感じなのだろう……。
で、今回はだ。
いやあ……。
禁欲生活が長すぎましてねえ。
「ゆ、ゆ、ユーマ」
「な、な、なんですかな」
「そ、その、あた、あた、あたってる」
「アッ、こ、こいつは失敬」
なんとかしてくれえ!!
……と思ったら到着である。
フウ、助かった……!
俺の威厳は守られた。あと、リュカの貞操も。正直、俺もこういう状況が長いと我慢できる自信はない。
さて、目的地下方に到着したらしい泡が、一瞬水中に没したかと思うと、みるみるすごい速度で浮上していく。
それは、地下水脈の水面よりも遥かに高いところを目指しており、バルゴーンのぼんやりした明かりしかない空間から、何か狭い隙間を抜けた瞬間だ。
視界一面に揺らぐ光が広がり、気がつくとそこは王都から流れ出した河の下流だった。
やはり、太陽の光があるというのはいいな。
だが、ちょっと感激はしたものの、どうもこの河、変な色の水も流ているような。
あっ。生活排水が流れ込んでいるのか! ばっちいな!
「すぐに上がっちゃいますから」
マーメイドの言葉通り、泡は河から飛び上がって地上へ。
そこで砕け散って、俺たちは晴れて土の上に立った状態になった。
「みんな、無事か?」
「おう、こちらは何ともありませんぞ!」
「いや、幻想的な体験でしたな!」
「お館様はご無事か!」
「ああ、私は問題ない」
点呼に対し、めいめいに答えてくる。
フランチェスコが放った追い打ちは不発だったようだ。
誰一人、欠けてはいない。
「じゃあ、ここから他のみんなを呼ぶね。えーと、どこにいるかな……」
リュカが視線を巡らしている。
すると、頭上を旋回している亜竜に気づいたようだ。
風を使って、亜竜に呼びかけ始める。
亜竜はリュカの言葉を受けて飛び去り、すぐにアリエルからの返信がやって来た。
『ご無事だったんですね! よく生き残ってますね!? えっ、欠員一人もいない? おかしいでしょあの規模の事をやらかしておいて! あっ、こっちもマーメイドさんから解散の指示を受けて、撤退中です』
アリエルが会話と同時に突っ込んでくる。とりあえず、うちの軍勢は上手いこと連携を取って動いているようでよかった。
彼女たちは撤退がてら、こちらに立ち寄って俺たちを回収していくそうである。
「ザクサーンはやり過ごせたのかね。正直、俺の作戦ってガバガバだからな」
「ユーマ殿の策は、相手の固定観念を逆手に取り、常に虚を衝き続けるというものですね。慣れて対策されてしまえば弱いですが、慣れる前に恐るべき早さで攻め立てる所が恐ろしい」
オーベルト評して曰く。
「ユーマ殿、あなたは何処かで、軍略について学んだことがお有りでしょう」
「ま、まあな」
ゲームでな。
今回の作戦も、事前に上空から亜竜で見渡した風景を、ゲームの盤面に見立てて立案したものだ。
それが成立するのも、巫女のみんなの便利な能力があるお陰である。
それに、所詮はゲームで短時間の作戦行動を学んだ程度だ。長期に渡る戦いは、ちょっと出来る気がしない。
他愛もない会話をしつつ、俺たちはのんびりとみんなで並んで座り込む。
一時間ほど過ぎた頃であろうか。
地平線の果てから、ぞろぞろとうちの軍勢がやってきた。
戦闘は、チェア君とそれに乗ったサマラ、アンブロシア、アリエルの三名である。
「ユーマ様! リュカ様も無事でしたかー! あっ、そちらが?」
「おお、その娘が辺境伯かい? 見事やってのけたねえ。まさか一国に喧嘩を売って勝つとは、たまげたもんだよ!」
「ほう……。リュカ以外にも、巫女が集まっていたのだな。火と、水か? 私を含めて、四人の巫女全てが揃うと言う事か」
ローザが興味深げである。
既にダミアンからは離れて、自分の足で立つことが出来るようになっている。
彼女曰く、連続して魔力を行使する状況でも無ければ、大地からじっくりと魔力を吸収し、回復することが出来るのだとか。
つまり、ローザは大変タフでもあるという事だ。
「この間の戦争で、何も魔法を使わなかったのは?」
「あれは、私が辺境伯であった頃だからだ。巫女ではない。特例として、ケラミスの精製のみを行っていたがな。それと……私は巫女としての力の多くを分離して、仕舞ってあったのだ」
「そいつが土の祭器ってことか」
「そのようなものだ。言うなれば、辺境伯領そのものが私の祭器になっていた。だが、かの地を離れるに当たって、私は領より祭器としての力を返却させたのだ」
サマラとアンブロシアがやって来た。
リュカも立ち上がり、これにて四人の巫女が顔合わせとなる。
ちなみに背丈は、リュカ、ローザ、アンブロシア、サマラの順番で高くなる。
見た目の肉体的成熟度合いもサマラを筆頭に、リュカまで。いや、アンブロシアもなかなかいい体をしてるぞ。ローザは全体がスレンダーだな。
リュカは尻。
「ユーマ、また何かやらしーこと考えてる?」
「何故俺の考えが読めるんだ……」
「ユーマ様、我ら種族の長も揃いましたゾ」
リュカに思考を読まれ、動揺する俺に、シュルシュルと息が交じる声が掛かった。
リザードマンの長である。
獣人、遊牧民、亜竜、ゴブリン、ドワーフ。マーメイドとマーマンは一緒にいるから、これで大体全員。
「あ、エルフの里も、今回の成果を見てユーマさんの支持に回るそうです。だがドワーフ、お前らはダメだ、との事です」
アリエルの報告に、髭もじゃドワーフどもがいきり立つ。
「おう、上等じゃ」
「いつでも来い、魔法なんて捨ててかかってこい」
「わしら勝負を受けて立つぞい」
「風竜だって殴ってみせるぞ」
「だが水魔法だけは勘弁してくれ」
賑やかだなあ。
「ユーマ、これが貴様が作った軍勢か。私を救うために、三つの属性を一つにまとめあげるとは……。比肩しうる軍隊は、恐らくこの地上にあるまい。だが、彼らを以て、一体何を成そうとしている?」
「うーむ……。正直、目的はもう果たしたんだ」
ローザの言葉に、俺はちょっと考え込んだ。
別に俺としては、権力に興味がない。だから、この軍勢をここで解散してしまってもいいのだ。
しかしそれでは、ここまで付いてきてくれたこいつらに悪いような気がしてくる。
「ユーマ様、一ついいですか」
遊牧民が挙手した。
「最初は私どもも、たいへん驚いたんですが。まあ付き合ってみると他教の人間よりも、よほど話が通じる連中で。そりゃあちょっと頭がおかしいところもありますが。で、ですね。私どものような、大国に虐げられる少数派は何処にでもいると思うんです。この集まり、そんな、弱い者たちの受け皿にはなりませんかね」
「まつろわぬ民を迎え入れる場所、か。確かに、それならば私の民も安心できよう。どうだ、ユーマ?」
「なるほど。それ、いいな。その方向でやっていってみようか。ただ、俺だけだとやれる事は結構少ない。何せ人付き合いとか苦手だからな……。だから」
俺の視線の先には、四人の巫女がいる。
「ええ、お供します! アタシ、またお役に立ちますからね!」
「あたしも焼きが回ったねえ。あんたの頼みなら、聞いてやらなきゃって気になってるよ。大船に乗ったつもりでいな!」
「私は救われた恩義がある。私だけでなく、民も、我が騎士たちもな。貴族ではない、最早ただのローザリンデだが、非才な我が手で構わぬならば貴様の計画に尽力することを約束しよう」
最後に、虹色の髪の少女。
「うん? 聞かなくても分かるでしょ! ほらほらユーマ! これから忙しくなるよー!」
ああ、全くだ。
まずはどんな事をして行こう。
いつも通り、俺の隣に収まる温もりを感じながら、俺は思考を巡らせていく……。
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