転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ

文字の大きさ
上 下
46 / 147

第46話

しおりを挟む
「アーシラと言います、先程は助けてくれて、ありがとうございます」
 先程助けたゴブリン娘はアーシラといい、ゴブリンプリンセスで間違いないようだ。
「巣穴が壊滅したとか言ってたけど?」
「はい、私を残して兄も弟も父も、皆やられてしまいました……」
 母が居ない理由、それは他種族のメスを捕まえて母体にするのがゴブリンやオークなどオスが多い魔物の特性らしい。ちなみに人間やエルフが母体として使われることが多いらしいし、ダメになったらそのまま食べてしまうらしい。
「アーシラは今後どうするつもり?」
 ゴブリンやオーク、オーガなどの中には知識の高い特殊な種族が産まれることがあるアーシラはそのパターンの一つだ。ちなみにアル達ハイコボルトもそれに該当する。
「わからない……もう帰る場所も生きる意味も分からない、教えてもらう前に皆死んじゃった……」
 プリンセスは群れを率いる長となる個体が多い、しかし彼女はその群れを失ってしまったのだ。話を聞く感じまだゴブリンとしての習性すら身に着けていないようだ、つまりまだ血に汚れていないゴブリンなのだ。
「それなら、ここに住んでみませんか?」
 アズハがアーシラを後ろから優しく抱きしめながらそう言った。
「私達と一緒にここで楽しく暮らしながら自分がどうしたいか決めていきましょ?」
「うん、うん……」
 アーシラは涙をながす、しかし嬉しそうに頷いていた。とりあえず俺もそのつもりだったしまぁいいでしょ。
「少しずつなれていこうな」
 俺も優しく頭を撫でてあげた、こういうのも悪くないでしょう。
「ねぇね! 手伝う!」
「じゃあ一緒にやろっか」
 アーシラが来てしばらく経った、アズハの事をねぇねと慕い寝る時まで常に一緒に居る。すっかり懐いていて良いことだと思う。
「主様」
「ルルネラ、どうしたの?」
「桃が美味しい頃合いですよ」
「了解、じゃあ今日は桃狩りと行こうか」
 実は昆虫軍団のサポートもあり、少々前から桃の木と柿の木が一気に増えていて既に十本は越えている。実を落とさないように運ぶのは大変だったが、土地の影響か地球で見たことのある木より遥かに大きく実の数も多い。ちょっと欲張り過ぎたかな?
「セナ、ちょっと数人手伝ってもらっていい? あと蜘蛛さんズも」
「は~い」
 やり方としては去年の柿とほぼ同じだ、ちょっと違うのは蜘蛛さんズに桃と採ってもらいそれをキャッチ、籠に入れていくという方法になった。理由は桃がダメージを受けやすいから下でネットを広げてそこへボトボト落下だと桃同士がぶつかって傷んでしまう、それの対策でこうなった。ちなみにドラゴンモードでごっそりも考えたが加減ができなくて的にぐちゃぐちゃにする未来と木をダメにする可能性があったのでやめた。
「まだ青い奴とか熟してないのはそのまま残していいからね」
 こういう判別は人間より昆虫である蜘蛛さんズの方が敏感だと思う、収穫の判断は任せて大丈夫だと思う。
「それにしてもすごい数ですね」
「野生のものを持ってきてこれだからね、来年はもっとすごいかもね」
 食べたいというのもあるが木を多く集めた理由はもう一つある、試したいことがあるのだ。
「おっと、さくさくですね」
 蜘蛛さんズは桃を上手く判別して次々と鎌足で器用に切り落としていく。俺らはそれをキャッチして集めればいいだけだから楽と言えば楽だがたまに勢いあまって落としそうになったりした。
「ヘラクスやタランドゥス達のご飯でもあるから数も必要だしさっさとすませちゃおう」
 ちなみに、彼らは時々美味しそうな桃をつまみ食いしてたりする、堂々と食べてくれても構わないくらいの活躍はしてくれてるのだけどね。
「とりあえず桃だけでいいんですか?」
「リリネラがブドウはもうちょっと時間を掛けたほうがいいって言ってたし柿は秋、とりあえず桃だけでいいよ」
 ここ数日でお願いして新しい樽の量産も進めている、お酒作りも時間かかりそうだし早く始めたいんだけどね。桃って今なんかできる料理あったかな? 知識がない……食材は揃ってきているし魔法で氷の部屋が作れるから保存もできる。調味料が足りな過ぎる……料理のさしすせそだっけ? まずそれを揃えたいな。
「とりあえずこんなもんかな、皆お疲れさま!」
 なんだかんだ一日かかったが結構な数が収穫できた、蜘蛛さんズに判別を任せたがそれでもまだ三分の一くらいは残っている。また収穫ができるのはいいことだ、そして既にヘラクスさん達が運ぶ準備をしている。手伝ってくれるのはありがたいが間違いなく食べたいよね?
「でもこんな量だと全部食べる前に傷んでダメになってしまうのでは?」
「そこは大丈夫、ちょっとやってみたいことがあるんだよね」
「はぁ?」
 果物は昆虫軍団以外にも妖精達の主食になる、彼女らは肉とかも食べれるけど好みで言うとやはり果物など甘い物なのだ。
「あるじ様、あるじ様!」
「ん? どうしたの?」
 収穫した桃を運んでいると妖精の一人が近づいて来た。桃を分けて欲しいのかな?
「植えさせてもらってた妖精の実ももうすぐ収穫できるよ! だから手伝ってほしいの!」
 妖精の実妖精族がここに移住してから速攻で植えて育てていた果物で形状や実の雰囲気はイチゴと酷似しているしほぼ同じ条件だと思う。既に四季の影響を無視しているという違いは出てるけど……地球知識は検索掛ければ出てくる。しかし完全にそれが通用するわけではないのだ。実際食べていて思ったが似た見た目でも味が濃かったりちょっと薄かったりとイメージ通りではあるが差がある。塩や砂糖も基本的には共通だか濃厚だったりさっぱりしていたりと条件によってだいぶ差が出ている。
「了解、ラウネラに聞いていい感じなら始めようか」
「わかった! 皆に伝えておく~」
 そういうと彼女は飛び去って行った。地球で発展した技術は間違いなく役に立つ、でも完全ではない。ベースにはできても完全コピーじゃ全くうまくいかない世界中に溢れるマナや魔法の影響も大きいし結局は多めに作って実験していくトライアンドエラーをしながら現地の皆知恵を組み合わせて最適解を導き出さなければいけないのだ。
「とりあえず、明日桃の加工を始めようか」
「はい!」
「せっかくだし今日はもぎたて生を楽しもうか!」
 そうして、今日は皆美味しそうに桃噛り付き食べていた。まだまだ始まったばかりだけど自信を持って言える、前世よりも遥かに楽しいし充実している。守らなきゃいけない物は増えていくがその分得る物が大きい、大きすぎるのだ。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...