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第29話

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「私達は、西の山で鉱山を掘って生活していました。ですが数日前からアレクロン王国の兵士と魔術師部隊がやってきて生活していた鉱山村を支配されてしまいました……」
 なんか聞いたことない国が出て来たぞ?
「アレクロン王国って?」
「魔王領の更に西にある国で、確か魔獣使役術が発達していたと聞いたことが」
「それであの駄犬軍団を放っているのね……」
 鉱山村を支配したということはやはり鉱物狙いなのか? それ以外に狙う理由がわからない。
「王国の奴らは私達を捕えて奴隷として働かせようとしました。もちろんこちらも抵抗しましたが、ヘルハウンドなどの魔獣を放ち抵抗する者を容赦なく殺していきました……」
 結構残酷な国だな、帝国も結構好戦的だったけどこっちもこっちで過激というか攻撃的な雰囲気だなぁ……
「私も捕まってしまったのですが、ある噂を聞きつけてそれに掛けて無理矢理抜け出しここまで逃げてきました」
「逃げる時にヘルハウンドに見つかって追われてたって感じ?」
「はい、奴ら警備と脱走防止にヘルハウンドを大量に森に放っていたようです」
 シラユキもそれに巻き込まれたのか? この森に駄犬なんていらないんだけどなぁ……
「ところで、ある噂って何ですか?」
「終焉の森の中央に人の妻を持つ話の分かる魔竜が住みついたと、もし会えたなら助けてもらえるかもしれないと思いまして……」
 なんというかアリッサは豪運の持ち主なんだろうな、その魔竜とある日森の中ばったり出会ってしまったんだから。
「お願いします、どうか! どうか、私達をお助けください!! 早くしないと皆がっ」
 もう、これを断ったら罪悪感が積もるし俺は残酷になり切れないらしい……それにこのまま放置して俺の大事な者に手を出される可能性だってゼロじゃないんだならば迷うことはない!
「乗りな、アリッサ悪いけど道案内を。セリィ、ナナホシさん、シローゴミ掃除に行くぞ!」
 俺はドラゴンモードへと変身し西の山を見据える。今日一日くれてやる、だからそれで解決していつもの日常にさっさと戻る!
「はい!」
「ワン!」
 ナナホシさんもサッと乗り込み前足をあげて合図を送っている。
「あ、ありがとうございます!」
「お礼なら後だ。行くぞ!」
 俺は全員を背に乗せ、翼を広げて飛翔した。
「あそこです!」
 しばらく西へ向かうと小さな鉱山に居住区を付けたような小さな村が見えてきた。
「皆は鉱山で採掘作業させられてるのと武器を作らされているグループに分けられています」
「他の場所には村人はいない? はい、奴隷として一括管理しているので居ないかと」
 ということは先手必勝だろう、俺は魔力を溜める。イメージは爆撃かな、住人には先に謝っておこう、ごめんなさい!
「クリムゾンバースト!!」
 姿を見せると同時に村の兵士が集まっている場所、居住区として占領している家を連続ブレスで吹き飛ばしていく。
「襲撃! 襲撃だ!」
「ヘルハウンドを全部戻せ!」
「うぁああああああっ」
 指揮をしていたであろう男を踏み潰しながら着陸した。
洞窟の方は任せた、アリッサも頼む。
「は、はい!」
「外は片づけるからそっちは任せたよ!」
「ワン!」
「行きます!」
 アリッサを連れてセリィ、シロー、ナナホシは採掘鉱山へと突撃していった。
「さぁ、ゴミ掃除といきますかね!」
 急な襲撃に大パニックを起こすのはアズハの村を助けた時と同じだな、尻尾の一撃、足の一歩、腕の一振りで人が水風船のように吹き飛んでいく。ここにいる人々には申し訳ないが理不尽に蹂躙させてもらう。
「なんでこんなとこにドラゴンが来るんだよ! 聞いてねぇぞ!」
「こいつ中央に住みついたとかいう魔竜じゃないのか?」
「くっそ、それでもここにくる意味がわかんねぇよ」
「ドラゴンの思考なんてわかるわけないだろ! とにかく応戦だ応戦!」
「無理だ……勝てない……」
 いろいろな声が聞こえてくる。俺も来るつもりは無かったけど放置するのも可哀想だし侵略するからには死ぬ覚悟もあるでしょう。自分の運命を受け入れるがいい。
「ファイヤーボール!」
 魔術師だろうか? 魔法でちまちま攻撃してきて鬱陶しい……
「ファイヤーブレス!」
 お返しにブレスで焼き払って差し上げる。あたりは火の海になってしまうが後で鎮火するから許してね!
「うぉぉぉぉぉ!」
 急に雄叫びが聞こえた。そっちも見ると作業をさせられていたドワーフたちが状況を見て反撃に動き出したようだ。
「ヴリトラ様が降臨なされた! これは奇跡じゃ!! お前ら全力で応えるぞ!!」
「おぉぉぉ!!」
 すっごい気迫、てか俺の事普通に知ってるのね……
「ヘルハウンドだぁ!!」
 声の方を向くとまた大量の駄犬が集まってきた、めんどくさいのでご退場願おう。イメージは火炎球の連続発射と命中地点での爆発。
「フレイムナパーム!」
 降り注ぐ爆炎に駄犬は焼かれていく。
「動くなぁ!」
 一人の兵士? 装飾的に隊長らしく奴がドワーフたちに大声で叫んでいる。
「貴様ら、それ以上動いてみろ! 大事な姫様がどうなっても知らねぇぞ!」
 うぁ……テンプレな悪だ。てか姫様? 赤茶色の髪の毛の少女、アリッサに似ている気がする。ドワーフ達も動きが止まって困ってそうだ。
「おら、作業場に戻れ! わかったか!」
 ドワーフ達に兵士がにじり寄っていく、あのままじゃ不味いよなぁ……ちょっと熱いの我慢してもらうかな。
「ファイヤーブレス」
 兵士達を焼きながら騒いでる場所に近づいていく。
「漆黒の鱗に赤い翼、まちがいねぇヴリトラ様だ……ホントに来てくれた、奇跡だべ……」
 悪そうな隊長さんがこっちを見て唖然としている。悪いことしちゃダメでしょ! そのままベチンと叩き潰してみる、最近こんな感じのトマトスプラッシュ動画がよく上がってた気がするけど別に意識はしてない!
「ひっ!?」
 流石に隣に居たお姫様にはビビられてしまった。しょうがないとは思うけど……一応人殺しとか酷いことは言われなかった、よかった! 言われたら悲しくて全部焼き尽くしてたかもしれない。
「あらかた片付いたかな」
「お、お待ちください! 貴方は本当にヴリトラ様なのでしょうか?」
「そう呼ばれている者だよ」
 俺は鉱山の入口の方へと戻っていく。中を任せた皆の様子を見に行くためだ。そしてなぜこのお姫様は付いてくる……踏んじゃったらどうすんのよ。
「主様!」
 丁度入り口からセリィ達が出てきていた、皆無事だったようで安心した。
「皆無事そうだね」
「はい! たいした奴も居ませんでしたしシローさんとナナホシさんの敵じゃありませんでしたね」
「おねぇちゃん!」
 アリッサは俺の後ろについてきていたお姫様を見た瞬間駆け寄って抱き着いた。お姉ちゃんってアリッサもお姫様だったの? 普通の作業着来てたけど??
「とりあえず、皆無事そうでよかったね」
 暴れた張本人が言うのもあれだけど、兵士も駄犬も一掃したし大丈夫かな、消火したら帰りますかねっと。
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