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第24話

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「ここに置けばいいですか?」
「はい、ありがとうございます!」
 ホリィン達が来てから数日が経ち他の仲間達ともすっかり打ち解けてくれた。今も温泉建設の為に石材を運んでくれている、彼女達はホントにパワーがあって力仕事がスムーズになった。ちなみに牛達はどうにか平静を取り戻してくれた、ドラゴンモードを見てから完全にビビってしまっていたが平然としている馬達のお陰でどうにかなったようだ。
「それにしても、ドラゴンが農作業してるって……」
「主様は結構平和主義な方だと思いますよ? 敵意剥き出しだと容赦ないですけど……」
「間違いなく主様は他のドラゴンとは違いますね、何より私達を庇護下に置いて平和に暮らす環境を提供してくれてますし」
「そうなのです! ご主人様は最強最高なのです!」
 空を飛びながら木材を運ぶルーフェが誇らしそうに話している。まるで自分の事みたいだ。
「正直、セッカさん達にも驚きましたけど、帝国の白亜の終炎が堕天して住みついてるのに驚きましたよ……」
「彼女、主様とセッカちゃん達にボッコボコにされていろいろ吹っ切れちゃったんですよ」
「帝国最強がボコボコって……」
 新しく加入したミノタウロス三姉妹だがホリィンはのんびりしているが面倒見のいいお姉さんって感じで、ホルンはすごくしっかりしていて常識的、ホロンはちょっと恥ずかしがりやだが素直でとってもいい娘達だった。ここの生活も気に入ってくれているようで俺も助かる、なにせパワー系が俺だけだったから……
「ホロンちゃん、ちょっと運ぶの手伝ってもらってもいいですか?」
「ウルちゃん、任せて~」
 この冬場で変わったことがある。マリーの知識のお陰で特に鉱物関連がすごかった、採取した鉱物を研究し様々な用途を編み出してくれた。中でもガラスの元になる水晶鉱、各種染料となる鉱物の発見も大きい。というより染色液の精製に成功したためクーネリアが大喜びだった、今まで自然の色をそのまま活用していたが彼女の作成する皆の衣装が次第に鮮やかになって行った。
「温泉もですけど新しい家も作らなきゃですからね」
 マリー、ルーフェ、ホリィン姉妹と冬の間だけでも居住者が増えている。その分家も作らなければいけなくなった、仮宿としてとりあえず大型の家があるからそこで今は暮らしてもらっているがずっとそこというわけにもいかないだろう。建築技術が無いからセナ達に丸投げするしかないのが問題になる、人が足りない! 地球だと人件費とかいろいろ言って減らしたりするとこあったけどめっちゃ大事じゃん……
「そういえばクーネリアさんが後で来てほしいって言ってましたよ?」
「なにか仕事ですか?」
「たぶん服を作るのに採寸したいんだと思いますよ」
 だいぶ前、クーネリアがここに来てしばらくしたころに服を作ったり裁縫が得意と聞き地球知識を引っ張ってきていろんなデザイン(ファンタジー系ゲームの衣装メイン)を地面に書いて教えたところすごくインスピレーションを受けたらしくいろんな衣装を作り出し、新しく人が来るたびにその人に合わせた衣装を作って着せ替えして楽しむようになっていた。最初は獣の皮を巻いて隠していただけのアル達も今ではオシャレで実用的な衣装を楽しんでいる。
「アラクネの糸って高級品ですよね? 私服にしちゃっていいんでしょうか?」
「クーネリアさん的には着てる姿が見たいらしいので大丈夫ですよ」
「ちなみにですけど、ここで暮らしていると外の常識がバグります」
 皆苦笑いしていた。実際最高級素材ドラゴンの鱗がゴミのように落ちるはそれを粉にして肥料にするわで外から来た人はだいたい凄い顔をしてくれる。
「それは主様見ていて思いました……」
 農業ドラゴンは世界中探しても俺一匹しかいないと言い切られてしまった。
「春になったらやることが一気に増えちゃうので、できることはさっさとやっちゃいましょう!」
「はい!」
 一年暮らして聞いたりして知ったのだが、この世界の国々はすごく閉鎖的だ。各国で極端に文化が違う、特に顕著なのが食文化であり酷い場所だと村単位で生活に差が出ている。小麦を育てパンを主食にしてる国、豆が主食の国、お米が主食の国などなど様々であり育てている食物も全然違う。土地の影響もあるのだろうが地球のような食生活を実現しようとするとホントに全世界一周旅行でもしなければいけないらしい。
「主様のお陰で帝国は大人しくなると思いますし、もしかしたらホリィンさん達の村も助かるんじゃないですか?」
「難しいと思います、なんせ攻めてきていたのはシャジャル帝国じゃなくてエデウス王国でしたから……」
 ミノタウロスやケンタウロス族は亜人種の中でも身体能力が戦闘向きのせいか奴隷兵として価値が高いらしい、ケンタウロスなんて言葉の理解できる馬として使えるためなおさらだ。ちなみにエルフも用途は様々だが中でも性奴隷としての需要が高いらしい、理由は人に似ていて美人が多く、長寿で老けにくいため人間からすると一生楽しめるからだそうだ。閉鎖的な国々の癖に奴隷文化は共通って何なんだか……権力を持ったタヌキ親父の考えることはどこも一緒ってことなんだなぁ。
「デグラニア魔王国は人間国家に目の敵にされてますからね……」
「王都や戦闘能力の高い部族はどうにかなるんですけど私達みたいな辺境住みや獣に近い種族は苦労しますね……」
 ちなみにこの世界でも種族の差別がない職種がある、冒険者だ。冒険者は世界共通の支援組織ギルドにより保護されているため他国への移動に制限がないらしい。国的にも未知の領域の探索、他国の情報などを持ってきてくれるため貴重な情報源として機能している。上手いこと立ち回ってる感じだ。
「これからはご主人様の噂を聞いた行き場のない放浪してる人たちが集まってくるかもですよ~」
 後で聞いたが俺が食べ物探しにアズハを乗せて籠を背負って飛び回ってるせいで人と共存する黒い竜が終焉の森に居ると結構な噂になっていたらしい。冒険者の調査クエストにもなっていたらしいけど最高ランクが設定されていて誰も受けなかった、しかし放浪の民には竜の庇護を受けれるかもという博打のような話が一年でだいぶ広がっていたらしい。それにしては行く先々でビビられたけど!
「牛、馬……後は鶏が欲しいなぁ」
「タカト、どうかした?」
「ホリィン達のお陰で牛が来たから次は鶏が欲しいなって、卵があればまた作れるものが広がるしね」
「鳥を飼うの?」
「あれ? アズハのとこはそういう文化なかった?」
「うん、お肉と言ったら狩りで捕ってくる物だし自分達で動物を育てるってことはしなかったかな」
 なるほど、アズハが最初から動物の解体ができたのは村の習慣的に必須なスキルだったらしい。出会ってから一年、いろいろあったし仲間も増えた。地球のような生活は無理だけど、こっちはこっちで快適な生活を満喫できるよここをどんどん開拓していく、頑張ろう!
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