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11 エピローグ

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「ひどいよ、ザナ! どうしてこんなことするの!」

 セージョの持っていた教科書を目の前で燃やしてやったら、セージョは慌てた顔をした後、涙目を浮かべながら私に抗議した。

「だってあなた、次の授業に出る価値ないじゃない? どうせ出たって、男をずっと目で追っているだけなんだから」

 私は言った。
 図星だったらしく、セージョは困った表情を浮かべながら少し照れた。
 そこへ、セージョと最近フラグが立ち始めたヒーローがやってくる。

「ザナ! なんてことをしてるんだ! セージョの教科書を焼くなんてひどい!」

 ヒーローは言った。

「教科書を焼いた? 何のこと? 言いがかりはよしてよ!」

 私は言った。取り巻き達にセージョを部屋へ連行するようにジェスチャー。
 目と口を覆われて連行されるセージョ。

「言いがかり? 現に君は焼いた教科書を手に持っているじゃないか!」

 ヒーローは言った。
 私は教科書を窓の外へ投げた。

「あっ、なんてことを!」

 ヒーローは窓から身を乗り出して、外に落ちた教科書を見た。
 私は彼を後ろから蹴って、窓から落とした。
 外から彼に止めを刺すための銃声が聞こえた。

「……痛ましい事故だったわ、ね?」

 取り巻きの下僕達に言った。下僕達は笑顔でうなずいた。
 私は下僕たちを引き連れて廊下を歩いていく。

「ヒーローは処理できた。セージョは授業に出させてあげなさい。先生にセージョに渡す教科書の予備を持たせておくことを忘れないように」

「はっ!」

 去っていく下僕達。
 その時、ポケットに入れていたスマホの着信音が鳴った。

『お嬢様。バムスタ機関から連絡が。チート転生者が現れたそうです』

「わかったわ。私が行くまでに情報を集めておきなさい」

 私は言った。

『了解しました』

 私は電話を切った。

 そう、私はマーティを神々から見捨てさせ、彼を殺すことには成功した。
 だが、そのことは私が神々に勝ったということでも、神々がこの世界から手を引いたということでもない。

 私は神々に反旗をひるがえした。
 神々は新たなチート転生者をこの世界へ送り込み、自らの意に背く私を粛清し、業火に焼こうと企むだろう。
 それでも私はそんな神々に屈さず、セージョとの日常を守らなければならない。

 なぜなら、私――ザナイド・マリネル・アランブールは、この世界のヒロインである彼女の、唯一の悪役令嬢だからである。

 了
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