見つけた、いこう

かないみのる

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「そうか、可那人がそんなことを」



オレと健吾は新しい情報に困惑を隠せなかった。

これで恭平の話に現実味が帯びてきた。



「あれから児童相談所の人から連絡があり、息子が妻と不倫相手から暴行を受けていると聞いたんです。恥ずかしながら、私は仕事でいっぱいいっぱいでして、透の事は妻に任せっぱなしでした。でもこのままではいけないと、妻と離婚し不倫相手共々制裁を与え、今は有給休暇を使い透を育てています。まもなく残業のない仕事に転職予定です」



男性は笑顔を向けた。その笑顔から、可那人がいかに頑張ったのか伝わってくる。

可那人、お前は本当に色々な人助けをしていたんだな。



「透がテレビを見て、「カナトお兄ちゃん!」と騒ぐんです。児童相談所の職員さんに相談したら、面倒を見てくれていたのが橘さんと知り、何か力になれないかと……」


おれは男性に、一緒に可那人の両親に会い、可那人のことを詳しく聞こうと提案した。すると男性は「橘さんのご両親にお礼ができるなら」と快諾してくれた。



「透君、その可那人お兄ちゃんが透明人間だってこと、誰かに言った?」



健吾は透君と話している。



「言ってないよ」


「他に誰か知ってる人はいる?」


「あのときはお兄ちゃんと遊んでたからお兄ちゃんが知ってると思う。お兄ちゃんが作った紙飛行機を追っかけてたら池に落ちたの」


「そのお兄ちゃんの名前は?」
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