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風呂上がり、俺は携帯電話で奈菜に電話をかけた。
自分の手が見えないと細かい作業がなかなか難しい。
通話履歴の一番上、奈菜の番号に電話をかける。
奈菜はすぐに電話に出た。
「もしもし、可那人くんですか?」
「もしもし、そうです。奈菜ちゃんですか?」
「違います」
「そうですか、間違えました。かけなおします」
待って待ってと、奈菜が笑いながら引き留めた。
電話の向こう側の奈菜の表情が手に取るようにわかり、俺は一人でほっこり心温まっていた。
「ところで可那人くん、いつも思うんだけど、さっきまでビデオ通話だったのに、なんでお風呂上りは普通の電話なの?」
「それは女の子に言えない秘密です」
「えー、あやしいなー」
毎晩欠かさず電話をすることが俺達の日課になっていた。
アルバイトがあるため俺の方が帰宅に合わせて、たいてい風呂に入る前の十五分ほどはビデオ通話機能でお互いの顔を見て会話し、入浴後の三十分ほどは通常の電話で話している。
風呂の後の電話がビデオ電話でない理由は奈菜に秘密である。
「何もやましいことはないって」
隠していることはあるが、やましいことではない。
間違ったことは言っていないぞ。
しかし、いずれは奈菜に打ち明けなければいけないな。
将来奈菜と結婚する事になったら、いや、その前に、俺と奈菜が夜を共にする日が来るとしたら、避けては通れない問題である。
正直なところ、俺も健全な男子大学生であるから、その日が来るのを待ちわびている。
しかしその前には自分は普通の人間ではないという最大のカミングアウトを乗り越えなければいけないのだ。
「まあ、いいや。ところで可那人くん、今度の土曜日か日曜日、空いてる?」
奈菜の声で我に帰る。
頭の中を埋め尽くしていた煩悩を振り払って俺は奈菜の問いに答えた。
「日曜日なら空いてるよ。どこか行く?」
「うんっ。買い物したいな」
「ほしいものあるの?」
「ううん、ないっ!」
正直なところ奈菜が考えていることは全く分からないが、それが奈菜の魅力だとも思っている。
奈菜の何もかもが美しく見えてしまい、ますます俺を虜にする。
俺はまるで蜘蛛の巣でがんじがらめになっている哀れな蝶の様に奈菜に捕らえられているのかもしれない。
彼女を蜘蛛に例えるのもどうかと思うが。
日曜日、奈菜の希望でショッピングモールに来た。
もともと娯楽の少ない田舎であるため、買い物と言えばこのショッピングモールくらいしかないのだが、服屋や本屋、ゲームセンターやカフェなどもあるため、一日中いても退屈しない。
奈菜は服屋を三店舗回ったが、気に入ったものがないと嘆きながら俺の手を引いて歩き、四店舗目に向かった。
俺は自分の足元を見た。
自分には不釣り合いなプラダのスニーカー、奈菜からクリスマスにもらったものだ。
俺があげたブランド物の財布との差に愕然としたが、所有する資産が違いすぎるので仕方ない。
いつかは奈菜にもっと高価なものをあげられるくらい稼ぎのいい男になるからな! と情けなさの涙を堪えながら心の中で思ったものだ。
途中にゲームコーナーがあり、奈菜はUFOキャッチャーのとある景品に目を奪われていた。
ぽってりとした黄色いゴールデンレトリーバーの巨大なぬいぐるみが、腹這いに寝そべるようなポーズで無造作に重ねられていた。
「欲しい?」
奈菜に尋ねると、奈菜は首を傾げた。
「欲しいけど、難しそうだよ?」
「案外いけそうじゃない?」
「可那人くん、UFOキャッチャー得意?」
「全くと言っていいほどやらない」
「そんな気がした」
俺は奈菜の希望を叶えてやりたいと思い、彼女の反対を押し切りってUFOキャッチャーのコイン投入口にコインを入れた。
①と書いてあるボタンを押すとアームがゆっくりと右に動く。
狙うは犬の首のくびれた部分だ。
狙ったぬいぐるみの真上にアームが来たところでボタンから手を放す。
②のボタンを押してアームが奥に移動させる。
ここだ!
ボタンから手を放すと、アームは開いてぬいぐるみめがけてゆっくり下がっていった。
「わあ!」
奈菜が目を輝かせた。
その期待を裏切る様に、アームは犬の首より前の頭の部分に降りた。
頭は幅が広く、アームを目いっぱい開いても挟むことができず、アームは空をつかんで元の位置に戻っていった。
「……アーム緩くない?」
「緩いかどうか以前の問題だよ。ぬいぐるみ、1ミリも動いてないね」
奈菜はけらけら笑っていた。
もう一回やろうと思い財布を見たが、百円玉がなくなっていた。
「ちょっと両替したい。両替機どこかな?」
二人で周囲を見渡し探す。
不意に奈菜の動きが止まった。
何かに気付いたようだが、あまり嬉しそうな反応ではなかった。
「何?どうかした?」
奈菜が見ている方向を見ると、彼女の視線の先には派手な色のジャンパーを着た男が二人、両替機によりかかって大きな声で話をしていた。
感じが悪い。
どことなく両替機には近づきがたいオーラが出ていた。
「…なんでもない。もう、ぬいぐるみはいいや。早く行こう」
俺が怖気づいているのに気付いたのだろうか、奈菜はそう言って俺の手を引いて、ゲームセンターを後にした。
後ろで誰かが大声で叫んでいたような気がするが、奈菜に引っ張られるまま歩みを進めた。
四店目の服屋でもほしいものはなかったようで、奈菜は結局何も買わなかった。
建物を出て駐車場へ向かい、車に乗ろうとしたところ、男が二人こちらに向かって歩いてきた。
さっき両替機の前にいた二人組だ。
一人は紫のスカジャンに坊主頭、もう一人は茶色の短髪に革ジャンを着ている。
二人とも小太り気味である。
坊主頭のほうはうっすらと見覚えがあった。
意地の悪そうなふてぶてしい顔つき。
誰かはすぐに分からなかったが、この男の記憶は、いいものだったか悪いものだったかといえば、確実に後者だろう。
顔を見た時に抱いた不快感がそれを物語っている。
坊主頭が先を歩き、その後ろを茶髪が従うように歩いている。
俺と奈菜のそばに来ると、坊主頭は奈菜に視線を向けた。
奈菜はあからさまにいやそうな顔をした。
「奈菜、久しぶりじゃん。さっき呼んだのに、無視すんなよ。元気だったか?」
奈菜は無視をして車に乗り込もうとした。
「おい、無視すんなよ」
「なれなれしく話しかけないでくれる?」
奈菜は不機嫌を通り越して怒っているようだ。
「なんだよ。そんなに冷たくしなくてもいいじゃん」
奈菜に危機が迫っていると思い、俺は二人の間に割り込んだ。
身体が勝手に動いていたので策は何もないが、奈菜を危険から守らなければ。
坊主頭の顔をよく見て、思い出した。
この坊主頭は、俺の小学校の同級生で、ガキ大将の川田五大だ。
小学校時代の川田は他の子に比べて身体が大きく、それをいいことに好き放題暴れていた問題児だった。
そしていつもいじめられるのは俺だった。
その川田が、なぜ奈菜のことを知っているのだろうか。
「奈菜」となれなれしく呼んでいることも気になる。
「あれ?どこかで見た顔だと思ったら可那人じゃん?お前がなんでここにいるんだよ」
川田は俺を見るなり、顔をしかめて言った。
「え?可那人くん、知り合いなの?」
奈菜が俺を見る。
顔には「信じられない」という表情が出ている。
俺は何か言葉を発しようと口を動かそうとするものの、状況に思考が追い付かず、川田を睨みつけるだけだった。
「なんで可那人が奈菜と一緒にいるんだよ!」
川田は不満そうな顔で俺と奈菜を交互に睨む。
「関係ないでしょ。可那人くん、帰ろう」
奈菜はそう言って車の助手席に乗ろうとドアノブに手をかけた。
川田は怒りを露わにしていたが、気が変わったのか何も言わずににやにやとしながら去っていった。
胸騒ぎがする。
杞憂で終わればいいのだが。
「奈菜、あいつと知り合いなの?」
車に乗り込むなり俺は奈菜に聞いた。
「うん、昔、ちょっとね」
歯切れの悪い返事だ。
嫌な記憶が思い起こされて気が立っていたのか、奈菜の態度に苛立ちを覚えた。
俺が車を走らせ奈菜の家に着くまでの間、奈菜は一言もしゃべらなかった。
夜はいつも通り電話で奈菜と話をした。風呂上がりのため、ビデオ通話ではなく通常の通話だ。
「気に入った服が見つからなくて残念だったね」
「うん。ごめんね、せっかく連れて行ってくれたのに」
「いや、そこは気にしないでよ」
俺はいつも通り話をしていたつもりだが、奈菜は明らかに元気がない。
今日を振り返り、奈菜から嫌われる行動をしていないか振り返った。
思い浮かんだのは川田の事だ。
川田と会ってから奈菜は明らかに元気が無くなった。
その事について追及してもいいが、奈菜は明らかに触れられたくない様だったし、それが原因で気まずくなるのも嫌だからやめておいた。
「ごめん。ぬいぐるみ取れなくて」
「そんなの気にしなくていいよ」
奈菜は笑ったが、どこか乾いたような笑いだった。
「でも、もう少しで取れそうだったのに。もったいなかった。…あれ?奈菜?聞いてる?」
「ごめん、キャッチホンが入った。また後で電話してもいい?」
「うん、いいよ」
そう答えると、携帯電話の画面には『通話終了』の文字がむなしく出ていた。
その後奈菜から電話がかかってくることはなかった。俺から再度電話を掛けても、通話中となっていた。
自分の手が見えないと細かい作業がなかなか難しい。
通話履歴の一番上、奈菜の番号に電話をかける。
奈菜はすぐに電話に出た。
「もしもし、可那人くんですか?」
「もしもし、そうです。奈菜ちゃんですか?」
「違います」
「そうですか、間違えました。かけなおします」
待って待ってと、奈菜が笑いながら引き留めた。
電話の向こう側の奈菜の表情が手に取るようにわかり、俺は一人でほっこり心温まっていた。
「ところで可那人くん、いつも思うんだけど、さっきまでビデオ通話だったのに、なんでお風呂上りは普通の電話なの?」
「それは女の子に言えない秘密です」
「えー、あやしいなー」
毎晩欠かさず電話をすることが俺達の日課になっていた。
アルバイトがあるため俺の方が帰宅に合わせて、たいてい風呂に入る前の十五分ほどはビデオ通話機能でお互いの顔を見て会話し、入浴後の三十分ほどは通常の電話で話している。
風呂の後の電話がビデオ電話でない理由は奈菜に秘密である。
「何もやましいことはないって」
隠していることはあるが、やましいことではない。
間違ったことは言っていないぞ。
しかし、いずれは奈菜に打ち明けなければいけないな。
将来奈菜と結婚する事になったら、いや、その前に、俺と奈菜が夜を共にする日が来るとしたら、避けては通れない問題である。
正直なところ、俺も健全な男子大学生であるから、その日が来るのを待ちわびている。
しかしその前には自分は普通の人間ではないという最大のカミングアウトを乗り越えなければいけないのだ。
「まあ、いいや。ところで可那人くん、今度の土曜日か日曜日、空いてる?」
奈菜の声で我に帰る。
頭の中を埋め尽くしていた煩悩を振り払って俺は奈菜の問いに答えた。
「日曜日なら空いてるよ。どこか行く?」
「うんっ。買い物したいな」
「ほしいものあるの?」
「ううん、ないっ!」
正直なところ奈菜が考えていることは全く分からないが、それが奈菜の魅力だとも思っている。
奈菜の何もかもが美しく見えてしまい、ますます俺を虜にする。
俺はまるで蜘蛛の巣でがんじがらめになっている哀れな蝶の様に奈菜に捕らえられているのかもしれない。
彼女を蜘蛛に例えるのもどうかと思うが。
日曜日、奈菜の希望でショッピングモールに来た。
もともと娯楽の少ない田舎であるため、買い物と言えばこのショッピングモールくらいしかないのだが、服屋や本屋、ゲームセンターやカフェなどもあるため、一日中いても退屈しない。
奈菜は服屋を三店舗回ったが、気に入ったものがないと嘆きながら俺の手を引いて歩き、四店舗目に向かった。
俺は自分の足元を見た。
自分には不釣り合いなプラダのスニーカー、奈菜からクリスマスにもらったものだ。
俺があげたブランド物の財布との差に愕然としたが、所有する資産が違いすぎるので仕方ない。
いつかは奈菜にもっと高価なものをあげられるくらい稼ぎのいい男になるからな! と情けなさの涙を堪えながら心の中で思ったものだ。
途中にゲームコーナーがあり、奈菜はUFOキャッチャーのとある景品に目を奪われていた。
ぽってりとした黄色いゴールデンレトリーバーの巨大なぬいぐるみが、腹這いに寝そべるようなポーズで無造作に重ねられていた。
「欲しい?」
奈菜に尋ねると、奈菜は首を傾げた。
「欲しいけど、難しそうだよ?」
「案外いけそうじゃない?」
「可那人くん、UFOキャッチャー得意?」
「全くと言っていいほどやらない」
「そんな気がした」
俺は奈菜の希望を叶えてやりたいと思い、彼女の反対を押し切りってUFOキャッチャーのコイン投入口にコインを入れた。
①と書いてあるボタンを押すとアームがゆっくりと右に動く。
狙うは犬の首のくびれた部分だ。
狙ったぬいぐるみの真上にアームが来たところでボタンから手を放す。
②のボタンを押してアームが奥に移動させる。
ここだ!
ボタンから手を放すと、アームは開いてぬいぐるみめがけてゆっくり下がっていった。
「わあ!」
奈菜が目を輝かせた。
その期待を裏切る様に、アームは犬の首より前の頭の部分に降りた。
頭は幅が広く、アームを目いっぱい開いても挟むことができず、アームは空をつかんで元の位置に戻っていった。
「……アーム緩くない?」
「緩いかどうか以前の問題だよ。ぬいぐるみ、1ミリも動いてないね」
奈菜はけらけら笑っていた。
もう一回やろうと思い財布を見たが、百円玉がなくなっていた。
「ちょっと両替したい。両替機どこかな?」
二人で周囲を見渡し探す。
不意に奈菜の動きが止まった。
何かに気付いたようだが、あまり嬉しそうな反応ではなかった。
「何?どうかした?」
奈菜が見ている方向を見ると、彼女の視線の先には派手な色のジャンパーを着た男が二人、両替機によりかかって大きな声で話をしていた。
感じが悪い。
どことなく両替機には近づきがたいオーラが出ていた。
「…なんでもない。もう、ぬいぐるみはいいや。早く行こう」
俺が怖気づいているのに気付いたのだろうか、奈菜はそう言って俺の手を引いて、ゲームセンターを後にした。
後ろで誰かが大声で叫んでいたような気がするが、奈菜に引っ張られるまま歩みを進めた。
四店目の服屋でもほしいものはなかったようで、奈菜は結局何も買わなかった。
建物を出て駐車場へ向かい、車に乗ろうとしたところ、男が二人こちらに向かって歩いてきた。
さっき両替機の前にいた二人組だ。
一人は紫のスカジャンに坊主頭、もう一人は茶色の短髪に革ジャンを着ている。
二人とも小太り気味である。
坊主頭のほうはうっすらと見覚えがあった。
意地の悪そうなふてぶてしい顔つき。
誰かはすぐに分からなかったが、この男の記憶は、いいものだったか悪いものだったかといえば、確実に後者だろう。
顔を見た時に抱いた不快感がそれを物語っている。
坊主頭が先を歩き、その後ろを茶髪が従うように歩いている。
俺と奈菜のそばに来ると、坊主頭は奈菜に視線を向けた。
奈菜はあからさまにいやそうな顔をした。
「奈菜、久しぶりじゃん。さっき呼んだのに、無視すんなよ。元気だったか?」
奈菜は無視をして車に乗り込もうとした。
「おい、無視すんなよ」
「なれなれしく話しかけないでくれる?」
奈菜は不機嫌を通り越して怒っているようだ。
「なんだよ。そんなに冷たくしなくてもいいじゃん」
奈菜に危機が迫っていると思い、俺は二人の間に割り込んだ。
身体が勝手に動いていたので策は何もないが、奈菜を危険から守らなければ。
坊主頭の顔をよく見て、思い出した。
この坊主頭は、俺の小学校の同級生で、ガキ大将の川田五大だ。
小学校時代の川田は他の子に比べて身体が大きく、それをいいことに好き放題暴れていた問題児だった。
そしていつもいじめられるのは俺だった。
その川田が、なぜ奈菜のことを知っているのだろうか。
「奈菜」となれなれしく呼んでいることも気になる。
「あれ?どこかで見た顔だと思ったら可那人じゃん?お前がなんでここにいるんだよ」
川田は俺を見るなり、顔をしかめて言った。
「え?可那人くん、知り合いなの?」
奈菜が俺を見る。
顔には「信じられない」という表情が出ている。
俺は何か言葉を発しようと口を動かそうとするものの、状況に思考が追い付かず、川田を睨みつけるだけだった。
「なんで可那人が奈菜と一緒にいるんだよ!」
川田は不満そうな顔で俺と奈菜を交互に睨む。
「関係ないでしょ。可那人くん、帰ろう」
奈菜はそう言って車の助手席に乗ろうとドアノブに手をかけた。
川田は怒りを露わにしていたが、気が変わったのか何も言わずににやにやとしながら去っていった。
胸騒ぎがする。
杞憂で終わればいいのだが。
「奈菜、あいつと知り合いなの?」
車に乗り込むなり俺は奈菜に聞いた。
「うん、昔、ちょっとね」
歯切れの悪い返事だ。
嫌な記憶が思い起こされて気が立っていたのか、奈菜の態度に苛立ちを覚えた。
俺が車を走らせ奈菜の家に着くまでの間、奈菜は一言もしゃべらなかった。
夜はいつも通り電話で奈菜と話をした。風呂上がりのため、ビデオ通話ではなく通常の通話だ。
「気に入った服が見つからなくて残念だったね」
「うん。ごめんね、せっかく連れて行ってくれたのに」
「いや、そこは気にしないでよ」
俺はいつも通り話をしていたつもりだが、奈菜は明らかに元気がない。
今日を振り返り、奈菜から嫌われる行動をしていないか振り返った。
思い浮かんだのは川田の事だ。
川田と会ってから奈菜は明らかに元気が無くなった。
その事について追及してもいいが、奈菜は明らかに触れられたくない様だったし、それが原因で気まずくなるのも嫌だからやめておいた。
「ごめん。ぬいぐるみ取れなくて」
「そんなの気にしなくていいよ」
奈菜は笑ったが、どこか乾いたような笑いだった。
「でも、もう少しで取れそうだったのに。もったいなかった。…あれ?奈菜?聞いてる?」
「ごめん、キャッチホンが入った。また後で電話してもいい?」
「うん、いいよ」
そう答えると、携帯電話の画面には『通話終了』の文字がむなしく出ていた。
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