ある勇士の話

火吹き石

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 さて、勇者は町に連れ帰ってもらい、門からいちばん近くの宿屋に泊めてもらいました。まるで死んだように、いちども目覚めることなく眠り続けました。

 そうやって寝ている間に、勇士が魔物によって抱かれたという話が、ひそやかに交わされました。あの四人組は、勇者が抱かれるさまがあまりに衝撃的だったので、自分から口を開けようとはしませんでした。しかし、しつこく質問されると、しぶしぶといくつか話しました。人々は、町々にその名の響く最強の戦士を打ち倒した魔物を恐れるとともに、魔物に抱かれてよがる勇者のことを思い描いてしまうのでした。

 次の日が来ると、ヒツルギはさっそく起き出しました。一晩の休息で、疲れはすっかり取れていました。寝床には、武器と兜とともに、魔物によって壊された鎧の代わりに、別の鎧がすでに用意されていました。破られた衣服も、一揃い新しいものが置いてありました。

 勇士は武具を身につけると、仲間たちとともに町の運動場で、軽く稽古をしました。それからしばらくして早い昼食を取ると、魔物がふたたび現れるのを待って、門のすぐ外で休みました。

 時が経つにつれ、周りに人だかりができはじめました。ヒツルギはみなを見渡すと、口を開きました。

「昨日は遅れを取ったが、今日はそうはいかない。あの魔物の宝玉を奪って見せてやる。」

 勇者は槍を持ち上げました。その槍は、投げ槍よりも頑丈で、背丈よりも頭ふたつは長いものでした。投げ槍が通用しないのはわかっていたので、今回は槍を使うことにしたのです。これなら、魔物に触れられることなく、距離を保って攻撃できるはずでした。

 さて、そのようにヒツルギは自信満々に言いましたが、町の人々はそれほど感心した様子はありませんでした。それどころか、ひそひそと小声で話し合ったり、疑わしげな視線を向けたりする者が多く、色目を向ける者すらもいました。

 ヒツルギは屈辱に思いました。しかし、勇者には、町の人々を非難することはできませんでした。魔物に負けたのは自分だったのです。その結果、誓いによって守っていた貞操を奪われ、そのうえ、快感に飲まれてしまい、恥辱を忘れて魔物に身を任せてしまったのです。

 この恥をそそぐには、魔物から宝玉を奪うしかない。そう思い定めていましたので、ヒツルギは人の声にも目にも気を煩わせるのを止めて、黙ったまま心を落ち着けました。

 やがて、昼下がりになると、狼の頭の魔物が町へと近づいてきました。ヒツルギは立ち上がると、自分からも近づいていきました。

 距離が縮むと、ヒツルギは槍に術を施しました。鉄の穂先が赤々と輝き出しました。それから、駆け出しました。魔物と問答する気などありませんでした。

 勇者は槍を鋭く突き出しました。刃は魔物の肩に当たり、火炎を吹き上げました。しかし、やはり穂先は刺さりませんでした。

 それから、昨日のように戦いは進みました。勇者は攻撃を加えながら、魔物の棍棒を避けました。魔物の体の至るところに、小さな刺し傷と火傷がつけられ、血に覆われました。それでも、魔物は倒れませんでした。むしろ、楽しげに低い笑い声を立てているのでした。

 ヒツルギはうろたえました。何度突いても、魔物は倒れません。激しい動きのために、また、呪術のために、勇者は少しずつ体力気力を失っていきました。その動きはだんだんと鈍くなっていき、ついに、魔物の棍棒をその身に受けました。

 棍棒に打たれると、勇者は地面に倒れ伏しました。すると、昨日のように、勇者はなぶり者になりました。何度も何度も棍棒で打たれ、蹴られ、踏みつけられました。ひとつ打たれるたびに、勇者は体を突き抜けるような痛みと衝撃を感じ、目の奥に星が散りました。

 さんざん痛めつけられ、ようやく勇者が抵抗を止めて力尽きると、異貌の魔物は若い戦士の上に屈み込み、鎧を引き裂き、衣服を破り捨て、丸裸にひん剥いてしまいました。

 そうやって勇者を裸にすると、昨日と同じく、魔物は若者を肩に抱えて、森のほうへとつれていきました。そして以前の広場に行くと、まずは全身を舐め回して味わい、それから尻穴を舌で解し、最後に抱きかかえて犯すのでした。

 ヒツルギは魔物に抱かれながら、あんあんと甘い声を上げていました。気持ちよくてたまりませんでした。敗北の屈辱はすぐに、征服者によって与えられる快感によって塗り込められてしまいました。勇者は尻を乱暴に犯されながら、逞しい首にすがって狼の毛皮に顔を埋め、血と汗の匂いを吸いました。

 その日もまた、宵闇が下りる頃まで、休みなく交わりは続きました。ヒツルギは喘ぎ続け、喉が枯れました。尻穴には何度も何度も精を注がれ、溢れかえっていました。日に焼けた肌は、滝のように流れる汗で濡れていました。勇者自身もまた、何度か射精していました。あたりには濃厚な性の匂いが漂っていました。

 魔物は勇者を地面に落とすと、森の奥へと消えていきました。勇者は、快感から目覚めると、きっと明日こそは倒すのだと、ふたたび闘志を燃やしました。

 さて、魔物が去ると、十人ほどの人影が現れました。その中には、昨夜、勇者を連れ帰った四人の若者も含まれていました。勇者は、町の人々を見ると、疲れて眠りに落ちました。

 一行は町から助けに遣わされたのでした。みなで気を失っている勇者の体を清めました。しかし、ほんとうのところ、勇者の抱かれるさまを見にきたのでした。勇者ひとりを助けるだけなら、十人も必要なわけがありません。誰も口には出して言いませんでしたが、みな勇者が魔物に抱かれて喜んでいるところを、淫らな思いで見ていたのでした。

 勇者の体を清めてしまうと、一行は勇者をつれて町へと帰りました。

 さて、ヒツルギは次の朝に目覚めると、ふたたび闘志を燃やしました。用意された鎧を着込んで町を歩き、今日こそは魔物を倒してみせようと、会う人、会う人に豪語しました。

 しかし、誰もその言葉を信じませんでした。二度戦って負けたのに、どうして三度目に勝てるなどと信じるでしょうか。多くの者が、勇者は初めて色事の喜びを知って、それに夢中になっているのではないかと噂しました。

 実際、勇者は勝てませんでした。昼下がりになると、勇者はまた魔物と戦いました。多くの傷を与えましたが、結局、倒すには至りません。最後には棍棒を受けて地面に這いつくばり、なぶり者にされ、それから裸に引き剥かれました。そして森の空き地へと連れて行かれ、荒々しく抱かれました。

 抱かれている間、勇者は恥も屈辱も忘れて、快感に身をゆだねてしまいました。魔物の逞しい腕に抱かれ、太い首にすがり、血と汗の匂いのする毛皮に顔を埋めるのは、とても気持ちのいいものでした。乱暴に尻を犯されるのも、喜ばしいものでした。休みなく犯され、精根尽き果てても容赦なく突きまくられ、声も上げられないほどに疲れ切ってしまう感覚も、たまらなくうれしいものでした。

 しかし、魔物との情事が終わると、屈辱の思いが込み上げ、むくむくと闘争心が湧き上がり、明日こそは倒してみせると決意するのでした。
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