俺のために子供を生んでくれ！伯爵様が若い私と浮気をしたことが許せない奥様の執拗な嫌がらせに遭う

俺のために子供を生んでくれ！伯爵様が若い私と浮気をしたことが許せない奥様の執拗な嫌がらせに遭う

「俺のために子供を生んでくれ」伯爵様が私の目を見つめながらそう伝えてくる。
手を握りながら真剣な面持ちで私に伝える伯爵様に「わかりましたわ」と私は応えた。
美しい奥様がいる位の高い伯爵様なのに、あえて位の低い私を選んでくださった。
そして、かわいい女の子を生んでくれと頼んでくる。
「ああ、なんて幸せなんでしょう。こんなにも伯爵様に愛されるなんて…」

奥様よりも私を愛してくれることに感謝し、その気持ちに応えるべく、玉のような子供を産んだ。
「おお、なんて愛らしいんだ。ありがとう。感謝するよ」
「ええ、伯爵様のためならなんでもいたしますわ」
伯爵様は、奥様よりも先に子供を生んでくれたティーナをいたくかわいがった。

しかし、かわいがればかわいがるほど伯爵の奥様は嫉妬に包まれた。
「なんてこと！私という妻がいるというのに、あの人は位の低い女を愛し、子供を生ませるだなんて」
怒りで全身が激しく震える。
「ああ、許せない！あたしはなんのために伯爵様と結婚したのだろう」
伯爵様の愛を一身に集めては離さないティーナを、奥様は苦しめてやろうと思った。

バシャンッ！
「キャッ！奥様、なにをするのですか？！」
「なにをするんですか？お前がボケッとこんなところに座っているから、目を覚まさせるためにも水をかけたのだろう」
ビシャビシャに濡れてしまったティーナは自分の部屋へと入り、体を拭いて乾かした。
「ティーナ！この濡れた床を拭きなさい！早く拭かないと、転んで危ないだろう」
「はい。奥様」床の水を拭き取るのを見届けると、奥様は私に「このドレスの切れたところを縫い合わせてちょうだい」と渡してきた。

そして、子供部屋に行き、スヤスヤと寝ている赤ん坊を抱えた。
目を開けた赤ん坊の顔をまじまじと見た奥様は「伯爵様には似てないのね。どちらかといえば…あの女に似ている！」そう感じると、奥様の中でふつふつと怒りの炎が燃え上る。

奥様は水をかけた廊下まで来ると「ティーナ、赤ん坊が起きたからあやしなさい」と抱かせた。
ティーナは受け取ると、庭へ出るために向きを変えた。
その瞬間、奥様はドレスの裾をすかさず踏みつける。
すると、赤ん坊を抱いていたティーナは前に転んでしまった。
転んだ拍子に赤ん坊を地面に落としてしまった。

「は！あなた、なんてことをしてくれたの！伯爵様の大事な子供が死んでしまったらどうするのよ！」
「す、すみません。でも、ドレスの裾を引っ張られたような気がしたんです…」
騒ぎを聞きつけてきた伯爵様は「どうした？！」と走ってくる。
「この者が赤ん坊を抱いたまま転んだのです。本当に危なかったわ」
「そうか、転んだのか。子供は大丈夫だったか？」
「はい」
「まったく、死んだりでもしたらどうしてくれたのかしら！あなたに子供を預けておくことは危険だわ。私に預けなさい！」
「そんな…奥様、それだけはお許しくださいませ」
ドンッ！！奥様は赤ん坊を力ずくで奪い取り、足蹴りをして、ティーナから奪い取った。

その後、奪い取られた子供の行方はわかっていない。

我が子を失ってしまったティーナは、嘆き、悲しみ、屋敷から姿をくらましてしまったのだった。